魔法大学に入学した。
そこで――シルフィと再会した。
だが、
「き、君は誰? ボクのことを知ってるの……?」
「なんだと……?」
サングラスを掛けて髪が白くなっていようと見間違えるはずはない。彼女はシルフィだ。オレの魂がそれを肯定している。
なのに返ってきたのは拒絶だった。
「っ、離して……ッ」
「――お前、何をしている! 模擬戦はもう終わったはずだ!」
「あ? 誰だお前は」
「俺はルーク・ノトス・グレイラット。フィッツの友人だ」
「フィッツ? 誰だそれは。こいつはシルフィ――オレの女だ」
「なんだと……? 貴様見抜いて……いや、今はいい。フィッツは男だ。お前の勘違いだ」
――死ね。
「――ルーデウス殿ッ!」
「――は。なッ……」
教員の静止でギリギリ止まった刀はクソ野郎の首の皮を一枚切り裂いていた。
止められなければ反応する間もなく首が飛んでいた。
それを理解してルークは絶句する。
「チッ」
「っ、ルーデウス殿……事情はわかりませんが、この大学で刃傷沙汰はご法度です。何かあれば貴方と言えど除籍処分が下されるでしょう」
「…………………申し訳ありません、気の迷いでした」
取り繕って頭を下げる。
「っ、ふん、もういい。いくぞ、フィッツ」
「う、うん………」
ちらっとこっちを見たシルフィはしかし、振り切って男についていった。
オレ以外の男に。
「―――。」
「……あ、あの、ルーデウス殿、――ひっ」
――ふざけろ。
溢れ出した膨大にして絶大な魔力と壮絶にして凄絶な殺気が訓練場を満たす。模擬戦用の魔法陣が砕け散り、その悍ましい殺気にその場にいた多く者が失禁、失神した。
「…………」
それを無視したルーデウスは顧みることなく訓練場を後にした。
――
「ぉ゛っ♡♡ ぉ゛っ♡♡」
「にゃ゛っ♡♡ んお゛っ♡♡」
「………」
「あらあら、これはまた荒れてますわね。何かありましたの?」
教室に転がる下半身だけを露出した獣族二人。
二人とも白目を向いて舌をだらしなく垂らして絶頂していた。
びくっ、びくっと痙攣する様は打ち上げられた魚のようだ。
その場で立ち尽くしていた男に気負うことなくエリナリーゼは話しかけた。
「何があったんですの?」
「………オレのモノが、オレを忘れて他の男といた」
「ふぅん、それで苛立っているんですのね。この子らまで食い散らかして」
「こいつらは喧嘩を売ってきたから買っただけだ。いい仕置きだろ。ほら、へばってないで起きろ」
「ぅ、うにゃぁあっっっ♡♡ もう無理にゃぁあああ♡♡ 許して欲しいのにゃぁ……うぅっ……♡♡」
「ごめんなさい……ごめんなさいなの……許してなのぉ……♡♡」
「やめてあげたらどうですの?」
「……じゃあお前が相手しろ」
「うふん♡ 喜んで奉仕しますわ♡ ――今日は少し乱暴でも構いませんわよ♡」
オレは湧き上がる苛立ちを彼女にぶつけた。
こいつの穴でセンズリこくように乱暴に扱い、物のように扱った。
それをエリナリーゼは粛々と受け入れ、オレを胸の中に抱擁した。
――
「……悪かった」
「いいんですのよ。強引な貴方も男らしくて良かったですわ♡」
苛立ちを発散して落ち着きを取り戻したオレは、爪で引っ掻いたところや痣になったところを治癒魔術で治しながらエリナリーゼに謝った。
治しきると抱き着いてきた彼女を突き放すことはしない。彼女の好きにさせた。
「それに、貴方のことをエリスに頼まれていますもの、これくらいなんてことないですわ。それより、件の女の子のことはどうするんですの」
「………」
「もしかして、その子、記憶喪失なんじゃありませんの?」
「記憶喪失……?」
記憶、喪失。
……転移事件の後遺症。
はっとした。
こんな簡単なことも思い至らないほどに取り乱していたということだ。
「――なるほどな。なら、手はある」
「うふふ、男の顔になりましたわね」
「ありがとな、エリナ――む」
「違いますわ、言って欲しい言葉は
いつもなら頼まれても言わないが、今回は負い目もある。
大人しくこいつの求めている言葉を言った。
「……愛してるぞ、エリナリーゼ」
「私も貴方を愛していますわ、ルーデウス♡」
桜色の唇が重なり、そのまま二回戦に入った。
――
「こほん、ご歓談中のところ申し訳ありませぬ。貴殿はもしや以前シーローン王宮に侵入し常駐する騎士を軒並み再起不能にさせたルーデウス殿ではありませぬかな?」
「………」
食事中に知らん男が声を掛けてきた。メガネのヒョロヒョロ。――だが、そのくせ不釣り合いに完成された肉体をしている。気味が悪い。こういう奴は無視するに限る。
「……? 余はシーローン王国第三王子、ザノバ・シーローンである」
だからなんだ。
まるで無視されることが理解できないという顔だ。
そう名乗ればこちらが気を使って答えるなどと考えているなら大間違いだ。
「こ、こほん……別に罪に問おうというわけではないのだ。少し聞きたいことがあるのだが……」
「………」
「少し可哀そうじゃありませんの。この方って確か貴方と同じ特別生ですわよね? 答えてあげたらどうですの」
そのまま無視を決め込んでいると、膝の上にいたエリナリーゼが忠言してきた。
彼女の言葉に仕方なく対応してやる。このまま付き纏われても面倒だしな。
「なんだ」
「い、以前貴殿が詰問した騎士の中におかしなことを言う者がおりまして、貴殿が性具を一瞬で作り出したとかなんとか……」
「無駄話はいい、結論を言え」
「は、はいっ! これを作り出した者に心当たりがあれば教えていただきたいッ!」
「……あ?」
そう言って差し出してきたのは――ディルドだった。
それも土系統魔術で作り出された色、形状、柔軟性ともに実物そっくりの精巧なものだ。
この世界の技術ではまず量産できない一点もの。
そんなの触らずとも分かる。――オレが作ったものだ。
なんでこいつはこんなものを堂々と人目に付くところで晒してきたんだ。馬鹿なのか?
「オレが作ったものだな。それがどうした?」
「………お、おお、おおおおおおおおおおおお!! ――あばっ」
「近づくな離れろ気色悪い。あと騒ぐな、飯に唾が入る」
「な、なんと……指の力だけで余が弾かれるとは……いえ、申し訳ありませぬ。我が心の師と
心の師? こいつディルドに心酔でもしてるのか。狂ってるな。
しかしなんで男のお前がそんなの持ってやがる。使用済みとか言ったらはっ倒すぞ。
「余は、余は確信しているのです! これの製作者とあの神造に等しき至高の人形の製作者が同じであると……!!」
「至高の人形?」
「――そう! 人と人形という決して交わらぬ関係をいともたやすく超越させた人形ですッ!!」
なるほどな。だいたい読めた。
オレが今まで作った人形は一つだけ――それはダッチワイフだ。
それも効率をよくするために中学生くらいの少女を象ったダッチワイフだ。
こいつまさかそれを買ったのか?
確か相当な金持ちに買われたと聞いたが、お前かよ。
んだこいつ、ラブドールマニアかよ。
それにしても神造だの超越だの大袈裟すぎるだろ。
「ああそう、お買い上げどうも」
おかげでかなり資金に余裕ができた。
それこそ子供がいても、スペルド族がいても問題ない程に。
「おぉ……っ……うくっ……」
「……」
男泣きしてやがる。
こんな気色悪い奴と関わりたくないのは山々だが、あの人形の良さが分かるという点だけは評価できる。こいつは見る目がある奴だ。
「師匠!」
誰が師匠だ。
「何卒……何卒このザノバに人形作りの秘技をお教えくださいぃぃぃいいい!!!」
一国の王子が目の前で五体投地していた。
土下座の上位互換だ。
――ぷっ。
「なんだお前、変な奴だな」
「人形の為ならば、この程度の事なんてことはありません! 何卒、何卒ぉぉおお!!」
「――いいぞ、お前がオレの言うことを何でも聞くなら教えてやらんでもない」
「な、なんと! 本当でしょうか!!」
「ああ。取り合えずオレが許可するまでオレに話しかけるな。視界に入るな。いいな」
「ははっ!」
言うが早いか、ザノバは黙り込んで明後日の方向へと走っていった。
「やっと静かになったな」
「……本当に教えるつもりあるんですの?」
「気が向いたら教えるさ。あいつが使えそうなら
「そうですの」
結局、あいつはこれと言って特技もなく、土系統魔術のセンスもまるでないことが分かった。まったく持って使えない。評価できる点があるとすればオレに絶対従順なところとぐらいだろうか。
あの肉体も木偶の坊じゃ宝の持ち腐れだな。あいつにできるのはせいぜい見張り役くらいだろうか。
まぁいい。別に計画に支障はない。
ザノバから得た情報でシルフィの住んでいる部屋や周囲の人間の関係性、地位、評価など諸々のことは知ることが出来た。
あとは計画を実行するだけだ。
――
『ぉ゛っ♡♡ ……なにこれっ♡♡ なんですかっ♡♡ あたまがびりびりって……んほぉ゛っ♡♡』
「喘ぐ時は闘神語なんだな」
ザノバに付き添って奴隷を一人買った。
炭鉱族の五歳のガキだ。
しかし生きることに絶望して死にたがっていたから――生きる理由を与えてやった。
「またこの快楽を得たいなら付いてこい、オレの言うことを聞くならご褒美に
『ぉ゛っ♡♡ ぉ゛ぅっ♡♡ ……イきますっ♡♡ いっしょにっ、いっしょにイかせてくださぃ、ぃああああああああっ♡♡♡』
少し弄っただけでこの有様、相当感度が良いようだ。見どころがある。それに頑丈なようだし、肉便器にはぴったりかもしれない。最も、五歳では入るものも入らないが。
こいつが自分を象ったダッチワイフを作れるようになれば飛ぶように売れるだろうな。
「ほら、教えた通りに言ったみろ」
「……じゅり、は、ごしゅじん、さまの、にくどれい、ですっ♡♡」
「まだたどたどしいが、悪くない」
もう一回イかせてやって、気絶したところで大学へ連れ帰った。
こいつが最後のピースだな。
作戦は明日決行する。
――