ご依頼主のオリジナルキャラクターであるお姉さん2人がランジェリーショップでわちゃわちゃえっちします。
この「月奏(つきな)」さんと「ありあ」さんがさらに気になる方は https://skeb.jp/@Arya_Einmal にて、彼女らの詳しい設定や登場する他作品が閲覧できるのでお勧めです。
※転載 pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。
***(ご依頼主への)まえがき
百合痴漢小説はいくつか書いておりますが、当方23番(水本ゆかりさんの電車痴漢)の作品のことかと思いまして
「一人ひとりはまじめだけど、集まるとなんだかばたばたわちゃわちゃしている」
という感じで仕上げました。
「ねぇ、ありあ」
「……ふふ」
少しだけ横顔に見とれたあと、もう一度呼びかけた。
「……ありあ、聞いてる?」
「あ、ごめん、つい」
「ずいぶんと、まぁ……興味津々のごようすなことで」
「かわいい、きれいがいっぱいの空間! 足を踏み入れて眺めるだけでときめくに決まってるでしょうが!」
「わかるから、わかるから、ね、ちょっと声を落として」
ぴょこぴょこはしゃぐせいで、一刹那、外見年齢が一気に10歳近く若返った少女らしくも見えた。
「……たまには月奏が着せ替え人形にされる側でもいいんじゃないかなぁ?」
「私が着る側だと思って見てたの!?」
「こら、声が大きすぎだよ」
“家を出るとき、しょうがないなぁ……みたいな態度だったくせに”と言いかけた声が、彼女のくちびるをもごもごさせただけで、せせらぐスムースジャズに紛れた。高天井、シーリングファン、そのほか純喫茶に間違えそうなインテリアのランジェリーショップのフロアへと溶けていった。
※
その数日前の朝。
「ありあ、アナタねぇ」
「……まだ寝られる」
「見せびらかしたいほどのカラダなのはわかるけど」
「……まだ」
「下着つけようよ」
「……まだ……ふぁあっ!?」
“ありあ”と呼ばれた女性が飛び起きた勢いで、クイーンサイズのベッドがぎしりと鳴った。
「月奏、ねぇ、いまあたし寝ぼけてたんじゃないかなっ」
「……そんな驚くことあった?」
「いまっ、下着つけようよ、って!?」
「……そんな驚くこと?」
“月奏”と呼びかけてきた女性からきょとんとした視線を向けられ、ありあは押し戻されるようにベッドへ腰を下ろした。幅1600ミリ、長さ1950ミリのクイーンサイズが少し窮屈そうなほどありあの痕跡がシーツに留まっていた。
ありあは、女性モデルをするなら少し低め、という背丈だった。頭から肩甲骨を覆いかけるまで銀髪が伸びていた。頭髪の流れが毛先に近づくにつれて赤みがかっていた。その銀・赤が寝汗などを吸って盛り上がるようにうねっているようすと、実際に胴からこんもりと盛り上がっている彼女の巨乳のようすと、本人が“ちょっと悪い……ちょっとだよっ”と称する寝相とのせいで、ありあの痕跡は“女性モデルができるかどうか”という体格以上に大きかった。隣に残る月奏の跡が比較的おとなしく、それらの境目が察せられるほどだった。
つまりありあは、20すぎに見える年格好に対して、やや子供っぽい寝起き姿だった。
「あたしが気付かないうちに自分で脱いじゃったかと思ってさぁ……さすがにそんな経験ぜんぜんないけどさぁ」
「寝てるときじゃなくて、外に出るときの話」
「ふあっ!?」
「……ありあ?」
「ごめん、いまのは、わざと」
「でしょうね」
起きぬけのありあは、文字通りの意味では下着をまとっていた。
下着はラベンダーカラーのベビードールだった。生地が巨乳によって肌側から押し上げられ、さらに寝汗“など”の湿気を吸って胸に貼りついてしまって、瀟洒なレースがみちみち苦しげに突っぱられていた。乳房のてっぺん近くも別の意味でベビードールが苦しげにしていた。左右どちらも乳首がくっきり浮いてしまっているうえ、その周りだけラベンダーカラーが濃く見えるほどしっとり濡れていた。
その乳房の稜線から少し視線を下げると、アンダーバストあたりでベビードールが吊られたカーテンのようにひらひらと下りていた。ありあのお尻や太ももの付け根をぎりぎり隠しきれず裾が終わっていた。ありあの身長に合わせたせいか、デザイナーやメーカーが意図したらしきチラリズムを実現できていなかった。ベビードールごしに透けるウエストから足にかけてのラインは、胸に比べると驚くほどすっきりとくびれていて、文句なしにモデルができそうな曲線美だった。
「まぁ、聞いてよ、ベビードールだって下着のうちじゃん、下着を着ている人間に“下着つけようよ”はないと思って」
「だから、外に出るときの話」
「はぁ……天下の公道を下着見せつけて歩くわけじゃなし」
「あ、そうなの……服がアレで?」
「アレって」
「アレよ」
「……ふだんはあたしが言うまで他人の目とか気にしてないくせに」
「いやにチクチクしちゃって……血圧低い? お茶かコーヒーでも淹れてこようか」
「ついでに姿見も見てきたらどうよ」
月奏が小首をかしげると、あくあはベッドに座ったまま月奏の立ち姿を足元から顔までジロジロと視線を投げつけようとした。わざとらしく目と首を動かして見せた。
けれど月奏の顔を見られなかった。あくあが下から視線を投げると、月奏の表情の下半分が月奏の胸で遮られてしまうのだった。
「そんなに変な格好かしら」
「あたしもさ、自分を棚に上げてね、月奏に小うるさく言うつもりないんだけどさ」
月奏は、背丈もバストサイズもありあより少しだけ大きく見えた。年格好は似たりよったりだった。黒から青のグラデーションを描く頭髪がハーフアップにまとめられ、毛先が腰までするすると伸びていた。赤くタイトなワンピースをまとっていて、大きくみっちりと収められた乳房や尻のボリュームが目立っていた。それらのふくらみに上下から挟まれているウエストでワンピースの布地がきりきりと緊張していて、綱渡りのロープや吊り橋のケーブルを思わせた。ワンピースの裾から、ありあよりむっちりと肉付きのよい太ももが見えた。
そこまではありあも気にしなかった。
「下着つけようよ、って呼びかけた人がノーブラなのおかしいでしょうが~!」
「そういえばそうね」
あくあが納得行かないのは、月奏がブラを着けていないこと――それも“ふだん”からノーブラなこと――だった。
そのやり取りがきっかけで、数日後に2人はとある女性用ランジェリー専門店へ向かうことになった。店は2人が同居している自宅の最寄り駅から電車に乗って30分ほどの立地だった。
やり取りはこんな具合に続いた。
月奏が“下着つけようよ”と言い出した理由が――「その店って最近オープンしたんだけど、品揃えが豊富で雰囲気の落ち着いて……って評判を聞いてね、一緒に冷や……見てみようよ、って誘うつもりだったの」――ありあはくちびるをへの字に曲げて見せ――「すみませんねぇ、あたしの服の趣味がアレで」――興味は湧いていたが、あえて少しごねてみた。
ありあの“ごねてみた”を受け流してか、月奏がありあの“服の趣味”についてフォローしようとしたらしく――「シースルーとかタイトなのとかは私も好きだからわかるけど、それでノーパンノーブラだと、他人の目を引きすぎ」「それはそうだけど、それにしてもいきなりだし、あとねぇ」――ありあがこんどは半ば本気でくちびるを曲げた――「その言葉も月奏にばっちり当てはまるって自覚ある?」「も、もちろん……でもさ、私以外にありあのカラダをあんまりジロジロ見られたくないから……」「……って言っておけば、しょうがないなぁ~ってあたしが付きあうと思ってるでしょ」――渇いてきたノドを潤すため、お湯を沸かして紅茶を淹れて、くちびるを濡らして、そのあいだに、ありあがごねって渋ってみせる気も薄れて、2人とも新しい下着を買ってみよう、という点で落ち着いた。
けっきょく買い物に誘われて本気で渋る仲ではなかった。
※
人混みを避けるため、平日昼の中途半端な時間にどうにか都合をつけて店に向かった。
「あたしだってね、好みに合う下着があったらほしいよ、いくらでもっ」
「私も、そう……思わないでもないかな、うん」
「でもさぁ、あたしたち選択肢が少ないし、すぐだめにしちゃうし……あー、こんなに真剣に下着を選ぶのって久しぶりだけどテンション上がってきた……!」
2人の下着の“選択肢が少ない”理由は、露出の多いアウターを好むファッションセンスよりも、胸が並外れて大きく一般的なランジェリーショップでサイズが見つかりにくいことよりも、体質の問題が主だった。
2人のアウターはセットアップのパーティードレスだった。2人とも10センチはあろうとかいうバックステップヒールのパンプスで並んで立っていた。あくあのほうが少し高いヒールであり、素足だと5センチほどある身長差が半分ほどに縮まっていた。
体質の問題といっても、2人はこの高いヒールを履いたまま平気で歩き回っている。体力ならば人並みよりずっと健康的だった。
「はしゃいでるのはいいけど、濡れてるのがバレバレに」
「え、そんなはずは、さっき……だ、だいじょうぶでしょこのぐらいっ」
問題は彼女たちからにじみ出てくる母乳や愛液などが人並み外れて多いことだった。
彼女らの好むタイトだったり薄手だったりのアウターではシミがつかないよう神経を使わされてしまう。にじみ出しそうになるたびにデリケートな部分をカバーする下着を脱着させられていた。水分を吸ってくれそうなパッドの類は美意識によって却下していた。そこで下着がたっぷり水分を吸わされて“すぐだめに”なってしまう生活が続いて、つい彼女らはノーパンノーブラになりがちだった(それが罷り通る《生業》であった)。
ありあは愛液が多め、月奏は母乳と尿が多めとの違いがあったが、けっきょくどちらも潤沢すぎて第三者が見比べたとしても違いがわからないほどだった。
「……《魔法》でなんとかするのも、限度があるものよね」
「こんな使い方してるって《敵》さんにバレたら、おかしすぎてみんな笑い死にさせちゃうかも」
「みんな死なれたらそれはそれで《商売》に困りそう……」
家からランジェリー専門店までの道のりで、2人は体質でかなりの、しかし慣れっこになっている苦労を味わった。“電車に乗って30分ほど”のうち20分ほどは、途中下車して化粧室に入ったためにかかった時間だった。こんな苦労など出かける前からわかりきっていたが――「タクシーにしておけばよかったかしら」「嫌だよあたし、男とあんな密閉空間に……でも女のドライバーにしてくださいって頼むのはワガママな気がする」「……電車ならいいの?」「……公共交通機関では、しょうがないっ」「いっそ《飛んで》いこうか?」「やめてよ、ただでさえ目立ってるのにさぁ」――彼女ら自身で運転する乗り物はヒールを履いたままでいきたい都合ですべて却下となり、徒歩やその他の手段もさすがにめんどうと判断し、けっきょく電車に乗り込んだ。服装の趣味も体質もそのほかに関しても、2人はところどころ似ていた。それが“朱に交われば赤くなる”か“類は友を呼ぶ”か定かでなかった。お互いに“彼女に惹かれる人はよくいるが、こんな調子だから、ついていけるのは自分ぐらいのもの”と薄っすら思っているのは彼女ら以外の周囲にもだいたい察せられた。
店の最寄り駅で下車して、駅近くの繁華街から目的地の方向へ歩いていくと、平屋や2-3階程度のビルに小さな店が何十軒と連なっている界隈に入った。サンダル、ベルト、リストバンド、チョーカー、イヤリング、仮面、メガネ、ウィッグ……など、特定の装身具だけを扱っている小さな専門店がひしめいて並んでいた。売り物一つひとつの質はなかなかだが、陳列がどこも所狭しとなっていて全体としてお手頃そうな雰囲気が漂っていた。やけに広い軒先の帽子専門店があったかと思えば、よく見るとカンカン帽とカプリーヌだけの店、キャスケットだけの店、ベレーだけの店が3軒続いているだけ、という光景さえあった。
途中、ハイヒール専門店の並びを見かけ――「わぁ、この店ウェッジヒールだけなんだ……こっちはフレンチっ」「アナタ、どっちも履かないじゃない」「でも、こだわりを感じるよ~」――寄り道しかけた。
さらに進んで、白無地のTシャツだけを扱っているらしき店を見つけ一瞬だけ驚いて足を止めた――「あ、いや、お店、ここの近くのはず……あら?」――目当てのランジェリー専門店の名前を記す木製イーゼルの置き看板が、シャツの陳列かたわらに立っていた。出入り間口の向かって左端から、階段が奥へ、さらに上階へ伸びていて踊り場で直角に折れていた。その先の2階が目的地らしかった。
階段はそばに並ぶ白シャツに張り合うような明るく白い踏み板をしていた。彼女たちが横並びで上ろうとするとややきゅうくつな幅だった。踊り場のところで先客らしき少女2人が下りてきて、ちょっぴりぎくしゃくとした会釈を交わしながらすれ違った。
「あら」
フロアまで上がり切る数段前のステップで、2人のどちらともなく小さい感嘆を漏らした。視界に広がるくだんの店は、足元にウォールナットの重厚な木目が床材として据えられていた。すぐ手前のつるつる硬質な白の階段から一線を画す色合いだった。壁にはやや軽い木質材が腰高ぐらいまで据えられ、その上に白無地のクロス、さらに上の天井に淡い色のアッシュ材が張られていた。シーリングファンが音もかすかにゆっくりそよそよと回っていた。天井からぶらさがっている棒型照明がほんのりオレンジがかっていた。間口に対して意外に天井高と奥行きがあり、2人は間違えてカフェに入ってしまった気がした。
しかし、テーブルとイスの代わりに女性用ランジェリーのディスプレイがゆったりと間隔を空けて並んでいた。
「これは……前に入ってたお店が、カフェとか雑貨屋さんだったのかしら」
「一服でもしながらじっくり選べます~って話だったらあたし長居しちゃうかも」
事前になんとなく2人が思い描いていたランジェリーショップとは少しずれていたが、居心地は悪くなさそうに思えた。
「……なんで月奏まで不思議そうにしてるの」
「いいっていう話を聞いただけで、あとは名前と住所しか調べてなくって」
「そんな下調べでだいじょうぶなの~?」
ありあの疑問は半分ほど――(あたしに下着を着せ替えさせて遊ぶってことばっかり考えてて、お店そのもののチェックがてきとうだったんじゃ?)――本気だった。
「だ、だいじょうぶよ」
「あーた、きょうノーブラで行こうとしてませんでしたかねぇ」
「いまは着けてるから」
「測ってもらうときびっくりされちゃうところだったよ」
フロアに入って、2人はディスプレイを眺めながら悶着とおしゃべりを行ったり来たりの小声で続けた――「店員さんに声をかけて出してもらおうよ」「……店員さんが女の人なのはわかってるけど……お話の最中に、その、濡れちゃったらどうしよ」「んー、でもブラジャーしばらくてきとうだったし……詳しい人に聞いたほうが」――中に店員の姿がいくらか見受けられたが、2人がまとまるまで待っているのか、ほかの客の対応や作業をしているのか、近寄ってくる気配がなかった。
ディスプレイに下着類がコンセプトごとに色と形を競っていた。瀟洒なアンティークやクラシック――「あたしたちにはちょっと早いかな」――セクシー、挑発的な――「シンプル、シック、グロリアスと言ってもだいぶ違うものね」――デザインだけでなく、つけ心地の良さやバストのケア用途――「寝る前ぐらい着けたほうがいいかなぁ……シーツもねぇ……」――初めての方に、優しく、軽やかに――「さっきの子らはここを見てたのかな」――それぞれに添えられた手書きのカードには、おすすめの用途、お手入れの注意事項、それらと比べていくぶんポエミーな言い回しの使用感、メーカーやデザイナーのこだわり――どれもサイズは“ご相談ください”とつづられていた。
と、ここまでは2人ともまともに下着を品定めできていた。
「……やっぱり聞いてみたほうがいいよ~」
ありあが手招きし、店員が1人応じて歩み寄ってきた。小柄でおとなしそうな童顔の女性で、白いブラウスと黒くかっちりしたロングパンツをまとっているのがどうにも背伸びして見えた。早足でもないのに歩く姿がどことなくぱたぱたして見えた。エプロンやヘッドスカーフをまとってハンディターミナルやラウンドトレイでも持ってカフェやレストランのテーブルを行き来しているほうが似合いそうな所作だった。
「めっ、めぃあい、へるぷゆー?」
「ふぁっ!? あ、あー……」
どうやら2人の出で立ちのせいで外国人と勘違いされたらしかった――(ありあの外見のせいじゃないの? お店の奥でも居たのか……私たちのあーだこーだを聞いてなかったらしいわね)(自分を棚に上げられるつもり?)――カタコトで心もとないが一生懸命そうな店員の英語に対して、ありあがうっかりつられて英語で返してしまった。
そして店員がメジャーを取り出し、計測兼試着スペースらしき一角に案内され――(どうしよ……いまさら日本語でいいよ、って言うの気まずい……)(さぁ、だいじょうぶかしらね~、びっくりされちゃうかもね)(他人事のつもり~っ!?)――2人が目配せで言い合うあいまに、薄いドレスの上からサイズを測ることになった。
姿見の真ん中に映るようにありあが立たされ、その胸囲に背後から店員がメジャーをめぐらせた。薄いドレスといちおう着けてきたブラごしに乳頭がぽってり自己主張していた。月奏が鏡の向こうで半笑いになっている、とありあは気づいた。店員の指先が少し戸惑ったように――(ほら、リラックス、リラックス、測りづらいでしょう、あとそれもなんとかしなさい)(なんとかって!? 月奏だって……むしろあたしよりひどいくせに~!)――店員からメジャーがきつすぎないかどうか相変わらずのカタコトで尋ねられた。ぎくしゃくと答えた――(ほらほらリラックス、リラックス、背筋を伸ばしすぎ)(あとで覚えてなさいよ……)――例の母乳があふれてしまわないか気が気でない。
店員のぎこちなさにつられて危なっかしい思考で、ごまかす方法を考える。《魔法》でこのスペースのうちごく一部の気圧だけ下げて蒸発させてしまえば隠せるか、と思いつき――(それじゃ匂いを嗅がれちゃうよね? しかも濃縮されたのが)(ええぃ……ダクトがどこかに……)(こんな使い方してるって“敵”さんにバレたらおかしくて)(それはさっき聞いたよ)――メジャーがこんどはアンダーバストにぴったりつけられる。トップの計測と違って、きりきりと締めつける具合で測ってくる。
「これはHカップで……あれ、えぇと、なんて言うんだったっけ……」
店員が懐から取り出して操作し始めたスマートフォンを2人もちらりと見た。どうもあんちょこらしかった。寸法の同じ品物でも国によってブラのサイズ表記が――(これサイズいくつ……? あ、そっか、ヤード・ポンドの国だとインチで書いてるのか)(イタリアだと号数ってブラにも使うんだ……)――まったく異なることを知った。
店員は自分がそれを取り出してまもなく、翻訳アプリを使えばもう少し円滑に2人から要望を聞き取れるだろう、と思いあたったらしかった。そう気づいた瞬間の店員の顔がとてもうれしそうで、2人はさらに“日本語でいいですよ”と言い出しにくくなった。2人はしばらくカタコトの下着講座を傾聴した。
少し経って、ありあが店員に申し出る――「だいたいわかったし、また気になることがあったら呼ぶから、別のお客さんのところ行ってきていいよ」――店員はいきなりありあが流暢な日本語を口に出してかなり驚いたようすだった。試着スペースの外で実際に来店客がやや増えてきていた――その増加を試着スペースの内側からありあが指摘した――ことにまで驚く余裕は残っていないらしかった。
「あれ、日本語が不自由な設定じゃなかったの?」
「いや、平日にしてはお客さん多いかな、って一瞬思っただけ、変な連中だったらイヤだしね」
「……まぁ、だいじょうぶでしょう、足どりも普通の女の子だし」
詳しくは伏せるが、ありあは風――むしろ気体全般に近い――を、月奏は地――むしろ固体全般に近い――を操る《魔法》が使えた。かなり尖った服装で歩いていける《生業》の所以だった。体液が多い体質との関連は不明だった。
「それよりさ」
「なぁに……きゃっ!?」
試着スペースのカーテンを閉じてから、ありあが月奏のパーティドレスをきゅうくつそうに収まっているバストをむんずとつかむ。
「あーたやっぱりあたしが触られてるところ見て面白がってたでしょ~!」
「んっ……なぁ~に人聞きの悪いことを、ふつうに……あっ♥ お店の人に、測ってもらってただけじゃない」
月奏はむんずと胸をつかまれたまま、ひじでありあの腕をぐりぐり押して抵抗するふりをしてみせる。その弾みでパーティドレスの一部分にほんのりシミが広がる。
「あなたからしてくれるなんて、んっ……珍しいね、しかも、お外で……」
パーティドレスやブラの上でも乳首が察せられるほどなありあと少し異なり、月奏のそこの自己主張は比較的おとなしく見える。頂き近くのラインがいくぶんぽってりしているぐらいである。“ぽってり”で済んでいるのは陥没乳首であるのと、乳輪が大きくて相対的に突起がなだらかに見えるせいだった。
そこをありあが指先でちくちく乱暴にくすぐると、嬌声とともにシミがどんどん目立っていく。
「いや、ツッコミ待ちみたいでさ、いつ言ってやろうかと……人のこと言えた乳かこれが~!」
「やぁんっ♥ 乱暴はやめなさいな」
「このっ、この~っ! こんな可変バストじゃいつ測ってもらえばいいのよ~!」
「まずヒモとかゴムとかで調整できるかどうかが問題になるのよね……」
シミは母乳のせいである。ありあに輪をかけて潤沢すぎる母乳体質のせいで、搾乳を怠っているとバストサイズがますます大きくなってしまう。ありあは――(月奏はあたしに搾らせるのが好きなんだな、しょうがないな)――と思っていて、月奏は――(ありあは私の搾るのが好きなのね、しょうがないわね)――と思っている。いまドレスとブラごしの乳首からあふれた母乳をどうするかはどちらも何とも思っていない。それより妙に笑い出したくなりそうな興奮に身を任せてしまう。
「ぜったい怪しまれるでしょ、これ」
「それこそ、あなたが人のことを言えたかどうか……っきゃんっ♥」
「声が大きい、聞こえちゃうよ」
「誰のせいよ~!」
ありあの手が月奏の胸からいったん離されたが、またすぐ指で左右両方のふくれ始めの乳輪を取り囲んでくりくりといじめる。もちもちした弾力を味わう。まだまだ肌の下に欲望がうねっているとも感じ取る。月奏もありあに言葉と手でなぶられているとさらに大きく貪欲に乳首が自己主張するのを感じる。
「は、あ、はひゅっ♥」
その乳頭が、いきなり生温かい感触に包まれる。ドレスとブラをずらして、母乳と唾液でぬるぬるになった乳輪のふくらみがむぐっとゆがみほど、ありあがくちびるでかぶりついている。
「ほーいえぁふぁ」
「人のおっぱいくわえながらしゃべらないで?」
「さっき店員さんが言ってたけどさ」
「うん」
「左右のバストサイズが違うときは大きい側に合わせて、小さい側はパッドで調整して、って」
「そうね」
「あたしが月奏の片側だけちゅうちゅう吸ってたらパッド何枚いるようになるかなぁ~って」
「こら! 人のおっぱいで遊ぶんじゃありません!」
2人がふだんレズセックスに及ぶときはもっと恍惚的な睦言をささやいている。ただここに至っては、ふだんと違ったシチュエーションなうえシュールな笑いをこらえさせられていて、どこかテンションがおかしくなっているらしかった。
「えひゅっ!? あ、あっ♥ こらっ、んきゅっ、ふ……!? くっ……♥」
「あたしにこうやって遊んでもらいたいんじゃないの?」
「う、うぅ……いじわるは、しないで……」
「おっぱいのサイズが違うスタイルもアシンメトリーって言うのかな、ヘアスタイルみたいに」
「いやそれはホントに勘弁して、バランスよくやって」
「はいはい」
月奏は陥没乳首のごく浅いところをぴたぴた指の腹でほじられて悶える。さらにミルクを漏らせて喜ばせられる。完全にむき出しにされそうで寸止めされた陥没乳首が指先でぴんぴん刺激されて、乳輪からしらじらあふれ出してきた母乳が、舌でねぶりとられていく。
「ひ、ぅ、ぁ……ふぇ、ぁ、あふぁ……っ♥ つ、つよいってば♥」
「声、抑えて、聞こえちゃう」
「ありあがさぁ、空気なんとかしてうまく……っひゃっ!?」
「人任せにしないの~!」
ありあは目先を変えて、月奏のバストのアンダー側にくちびるをあてがってくる。淡く甘い母乳を堪能していた味蕾がかすかに驚く。汗がやけに塩辛く、ありあ自身の唾液が酸っぱく感じられる。
「ぇ……あっ、んっ、あっ……」
月奏の胸から鈍くて強い電流が流れる。バスト全体がゆさゆさ揺れてありあの額や頬を半ば包みこんでいる。ありあのくちびると舌がぴりぴり強く小さく吸いつく。歯のような固く滑らかな感触まで食いこむ。
「こ、こらっ、跡、つけられたら……♥」
「店員さんに見られたら、なんて言い訳する?」
「そんな、の……ひゃんっ、あ、あっ……はぁっ!」
体質は当人が注意してもどうにもならない部分があるいっぽうで、キスマークは意図的に見せているともとられかねない。ありあのくちびるでさっきさんざんいじめられた乳輪が、さっきを恋しがるようにますますぷっくりふくれあがる。乳首がだんだん充血してスリットからはみ出すほど自己主張している。ありあがくちびるで乳輪をなぞりあげる。乳首との段差を探すように、舌触りをたしかめるように、ゆっくりゆっくりと舐め上げていく。
月奏は腰をくねらせて逃れようとするが、ありあの腕ががっちり抑えこむ。さらにドレスの上からおしりを撫で回されて力が抜ける。
「店員さんにお手洗いの場所を聞きそびれてた」
「ん……ありあ、飲んで……♥」
「はいはい、あたしは月奏のおトイレですよ~……ってナニ言わせるのさ~!」
「んひぃっ!? ふひっ、あっ♥ あなたが、勝手に、ぃ、はぁっ、ぁう! あっ!」
「こっちも蒸発させて匂い嗅がせてあげようか」
「え、やだ」
「自分のでしょうが」
「ありあだって私のあそこ舐められても自分のあそこ舐めたくないでしょ」
「口が届かないよ」
ありあは月奏のスカートをまくり、ショーツの中に手を突っこもうとするが、下着の面積が小さすぎてむしろ手こずる。月奏は濡れてしまった下着が肌に張りつく感触を避けて、着ける場合でもTバックが多かった。
「あらら、こっちも搾り出すように飲んでくれるんじゃないの?」
「人をおしっこ飲むのが好きみたいに言わないでくれる?」
「違うの?」
「……その、あの、ね……っきゃっ!?」
ありあが指を月奏のショーツへ引っ掛ける前に、こんどは月奏がありあの胸に挑みかかる。
「あなたはとても触りやすくていいわね~♥」
「五十歩百歩だよ~!」
「ん~、ここについては完全に他人事よ~」
「それは……んっ、っ……♥」
月奏がありあの乳房をドレス越しにほんの一撫でして、すぐに指先で乳首突起をとらえる。
「ほら、ここ……いっぱいいじってもらいたくて、おっきくなって、かわいいね♥」
「そ、そんなこと……っおっ……♥」
ありあの乳首は、陥没している月奏のそれと対を成すように、ドレスを内側から押し上げて自己主張している。月奏がそこをたしなめるように指先でぐにぐに押しこんでもこりこりと反発したままである。ありあの腰がびくっと跳ねる。
「いじってもらいたくないの?」
「だ、め……っ……」
「いっぱい血が流れ込んで、顔だったらリンゴぐらい真っ赤になってるぐらいの……あ、本当に顔が真っ赤だった」
言われてどちらともなく試着室の鏡を見る。2人のみだらな立ち姿が映って、ますます羞恥を催す。
「顔が赤いのはお互いさま……んくっ……!?」
「あらら、服越しにおっきな乳首をいじめてもらいたいの~?」
ありあのHカップがゆさゆさ揺れるほど指で乳首を押しこむ。ありあはすぐに目をぎゅっとつぶって、悩ましい嬌声を漏らす。手を両手で覆ってかろうじて押し殺す。立ったまま肩をこわばらせてがくがく震えてしまう。ありあの口を覆う両手は、手首で両乳を挟む形になっている。もっといじって、という仕草と月奏は解釈して上機嫌になる。
「っ……っっうぅー……ぅ……! ちくび、だ、め……っ……♥」
「さっき店員さんに見られてたときも、おっきくなって、いじって♥ いじって♥ っておねだりしてたね」
「してなぃ……ふぁあ、はぁ、ッ、くぅ♥」
「してた。私見てたよ」
「してないって……! あっ、う、ううっ、うあ……っ!」
「してた」
「してない……♥」
「してた、って認めるまで乳首にいじわるしようかな」
「……それ誘導尋問じゃない?」
「ちがーうっ」
「あうっ、も、いゃあ……っ♥」
月奏に執拗に乳首を刺激され、ありあはゆさゆさ肉を揺らしながらもだえる。あふれる体液は母乳より愛液のほうが目立っている。
「あ、床がびちゃびちゃになっちゃう」
「だったら、ちょっと、休んで……っきゅうっ♥」
「ありあが乾かしてくれればだいじょうぶっ」
「あっ、あぅ、あーっ……匂いが、残るってっ!? あっ、あっ♥」
「……香水ということにしてもらいましょう」
「こんな香水があって……あひっ、んひぃぃっ、んやっ、ああっ、にゃっ♥」
さらに月奏がありあの乳輪も乳首も刺激すると、ありあがさらに切なく喘ぐ。月奏のドレスも、ありあのドレスも汗と愛液でしっとりと湿っている。まるで通り雨に降られた有様だった。
「だめっ、ほんとに、みつかっちゃ、あ、あっ♥」
「ほんとかな」
「どうして逆に見つからないと思うのさ」
「……なんとかして♥」
「こういうときいっつもごまかすのあたしだよね!?」
「だって……ほら、しょうがないじゃない、私のは……」
「こ、この……おっ♥ あっ♥ だめ、ぇ♥ 止められ、なっ、あっ♥」
「はいはい」
愛撫されてありあがこぼす愛液や母乳も、愛撫している月奏が興奮してもらすそれらも雨のようにしとしとしていた。それで絡み合って嬌声をあげていて、店員から怪しまれてカーテンを開けられた瞬間に一巻の終わりである。そんなスリルと背徳感もスパイスとなって2人を高めていく。この倒錯した遊びをやめられない。
「もう、もうむぃ……むりぃぃいっ、おかしく、なっちゃう……っ!!」
「えいっ、えいっ♥」
「人の話を聞いて……くひっ、ひんっ! はぁぁっ、んぅぅぅっ……!」
「まだまだいけるね……♥」
「わ、あっ……いけない、いけないから……あああっ♥」
「いっちゃえ」
「あっ、くる、くるくるっ……イク、いっちゃう、のぉ……あ……あ……っ♥」
※
しばらくして店員が戻ってきたとき、2人は――主にありあのおかげで――体液や匂いの処理をどうにか間に合わせていた。
「あの……具合が悪かったりします……?」
「え」
しかし顔が真っ赤なままだった。例の店員に指摘されて挙動不審になり、体調不良を心配された。
あまりに気まずく――(ああ、うん……あるね、選択肢、大きなサイズでも……さすが専門店……どれがいい?)――散漫な思考のまま、どうにかそれぞれブラジャーとショーツ一揃いずつ下着を決めて買って帰った。
「ぜったいに顔を覚えられてしまった」
「……あの場で出禁にされてないだけマシじゃない……?」
2人がまともに下着を選ぶ日がいつ来るかは決まっていない。
(おしまい)