※この作品はR-18です。

真剣で肉欲に溺れなさい!IFルート【完結】   作:寝坊助

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ごめん、今回エロ無し




マロードルート4

 

 

 

 

 ———カーニバル。

 

 それは、突如マロードに宣言された川神の落日。

 大勢の不良の一斉大暴挙。親不孝通りで抑圧された獣達が、川神の街に一斉に解き放たれるのだ。

 

 それを阻止せんと、風間ファミリーは立ち上がっていた。秘密基地にて、最後のミーティングを始めている。

 

「…………というわけで、ワン子、クリス、まゆっち、ガクトの四人は街で暴れる不良どもを抑えて欲しいんだ」

 

 風間ファミリー軍師である俺が、メンバーに指示を出す。敗北も失敗も許されない、重要な役割を与えると、確かな信頼を込めた目でみんなそれに力強く応えてくれる。

 

「わかったわ!」

 

「了解した!」

 

「力の限りを尽くします!」

 

「こっちは任せな!」

 

「そしてキャップ、京、俺は敵の本拠地に乗り込んでマロードを倒す」

 

「おう、大将は俺がやってやるぜ!」

 

「大和、絶対に守るから」

 

「モロはここで情報の整理と伝達を。そして姉さんは、秘密基地の守護を頼む」

 

「わかったよ」

 

「なんなら最前線で戦いたいんだが……仕方ない」

 

「敵の本拠地は、その……チャイルドパレスとかいう建物で間違いないのか?」

 

「一週間で調べはついてる。そこで敵の親玉を討ち取ってしまえば、ゲームセット。暴動は治まる」

 

 マロードからカーニバルが宣言されてから一週間、俺はマロードについて情報収集に熱を注いだ。今まで広めた人脈を全て駆使して、確かな情報を集めたんだ。

 全ては生まれ育った街を守るため、巨悪を倒すために。

 これは川神大戦のようなルールありの試合じゃない、相手は闇の世界で君臨してきた極悪人。容赦なんてしてこないだろう。多くの血が流れるのは確実、だが勝たなければならない。

 今こそ、風間ファミリーの存在意義が試される時だ。

 

「油断は禁物だ……けど安心してくれ、この戦いは勝てる。情報では、やつの手駒は殆どが不良、チンピラだ。注意すべき戦力は、釈迦堂刑部と板垣一家ぐらいだな」

 

 正直、拍子抜けしたぐらいだな。闇の王、川神裏社会の支配者と呼ばれるぐらいだから、もっと軍隊や超兵器なんてものを所有しているのかと思っていた。蓋を開けてみれば、多少喧嘩慣れしたチンピラどもの手駒達。

 所詮は、じめじめした陰の世界で生きてきた男。頭の足りないミーハーどもに大袈裟に持ち上げられて、イキっているだけだと俺は確信した。この大袈裟な祭りも、その奢りが招いたものなのだろう。

 川神を敵に回せばどうなるか、思い知らせる必要がある。いつもとなにもわからない。思い上がったバカを上から叩き潰せばいい。

 

「さすがは軍師だぜ!」

 

「素敵だよ大和、結婚して!」

 

「お友達で……はっきり言う、マロードは雑魚だ」

 

 これまでの情報が詰まったスマホを掲げて、俺はニヒルに笑った。

 

「こんな学生に情報を丸裸にされてるんだ。知能も、戦力も、俺たちの方が優っている!」

 

「そうだぜ、風間ファミリーに不可能はねぇ!」

 

 キャップがリーダーとして大きく声を上げる。

 流石のカリスマ性、メンバーに不安は一切ない。

 そうだ。子供の頃に空き地を取り戻した時もそう、川神大戦の時もそう。圧倒的不利な状況から、俺達はいつだって勝利してきた。

 だから今回も上手くいくに決まっている。

 そんな中、クリスが残念そうに呟いた。

 

「しかし、タイミングが悪いな。カーニバル宣言がもう少し早ければ、ユウ先輩もこの戦いに参加してくれていただろうに」

 

 クリスのいう通り、この場に水城ユウはいない。

 この場というか、川神……日本にいない。

 カーニバル宣言が始まる少し前に、水城は編入生として海外へ向かってしまったのだ。本格的に武道家を引退し、勉学に集中したいと。

 そんなタイミングを狙ったかのように、マロードの動きが活発になった。計画的なのか、それとも偶然なのかは分かりかねない。

 あいつがまだ日本に残っていたら、編入をやめてともに戦ってくれていただろう。曲がりなりにも、川神百代と互角に戦える戦力がいないのは惜しい。

 

「確か、矢場先輩も一緒に編入したのよね?京」

 

「うん、多分あれは……愛ゆえに」

 

 編入生は水城だけでなく、矢場先輩もだった。

 この中では、同じ弓道部院の京が一番詳しい。

 あの人が水城に好意を抱いているのは知っていた。うじうじと悩む自分を振り切り、必死に勉強して編入資格を手に入れたらしい。

 

 話が脱線しているな、パンと手を叩いて話を戻す。

 

「いないなら仕方ない。でも、必要ないじゃないか。水城ユウ一人いなくても、俺達は勝利する!」

 

 寧ろこれは好機と考える。鬱陶しい恋敵がいない状況で勝利することにより、直江大和はさらに前へ進むことができる。

 

 やがて各々が準備に入る。筋トレや武器の整備などをしている中、俺は屋上で姉さんと一緒に川神の街を眺めていた。

 

「姉さん……」

 

 夕日が沈み、夜が迫ってきている。戦いが近づいているのに、俺の中では戦とは別の緊張が生まれていた。

 風に揺られる川神百代の姿を見て、心臓がトクンと脈打つのを感じる。あの美しい髪を、瞳を、美貌を手に入れるために何度足掻いたことか。

 

「本当なら最前線で戦いたいんだろうけど、モロの役割は俺達にとっても要なんだ。ごめんよ」

 

 情報の伝達は戦場において最も重要だ。

 今回の戦いの場は川神の街全域。そこでの混戦となるからには、あらゆる状況が動くことだろう。新たな情報と、これを迅速に伝えることが勝利の鍵となり得る。

 その守護を姉さんに任命したんだ。

 最強の盾がある限り、モロに被害はない。

 そんな俺に姉さんはふっ、と笑みをこぼす。

 

「まぁ、お前の指示だ。従うさ」

 

「この戦いが終わったら、俺は改めて姉さんに告白するよ」

 

「おいおい、それはフラグだぞ?」

 

「漫画やアニメじゃないんだ、ならないさ。絶対に勝ってくる。川神大戦で男として認められたんだ。今度は、そうだな……大人になるよ」

 

「ふふ、大人ってそういう意味か?このすけべめ」

 

「本気だ」

 

 力強く、はっきりと応える。

 姉さんの目を真っ直ぐに見つめ、本気だと証明しながら一歩前に出た。

 

「俺は本気で姉さんが好きなんだ。マロードを倒して、平和な日常を取り戻す。そして、姉さんの心も射止める」

 

「大和……」

 

 そして遂に、決戦が始まる———

 

 

 ———すでに負けているとも、知らずに。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 

 始まった川神の命運をかけた決戦。

 開戦の狼煙が上がった瞬間、その地でいたる所で戦いが繰り広げられていた。

 大和達が通う川神学園。

 通学の時に渡っていく橋。

 また、その下に流れる河川敷でも。

 さらには普段はにぎわっている商店街まで。

 

 暴れている不良の群れを、自分達も街を守らんと立ち上がった者達がぶつかっていく。

 川神学園の学生達、九鬼家、街の人々。一癖も二癖もある強者達が手を取り合い、巨悪に立ち向かう。

 

 こうしてマロード軍に対抗する勢力が出ているのも、風間ファミリーの一週間の呼びかけがもたらした結果だった。

 戦闘面ではあまり役に立てない師岡卓也も、はりきって街をまわった。そして今、街全てが襲いくる脅威と戦っている。

 

「凄い、どんどん敵の勢力が減っていく!」

 

 秘密基地で情報の整理を行っていた卓也は、メンバーに連絡をとりながらパソコンで戦況を観ている。

 何かあれば、すぐに対応できるようにだ。

 戦闘員でない者も活躍する。

 そしてそれを守るのは武神、川神百代。

 これほど安全な守護者はいない。

 

 勝利は目前、そう思っていると部屋のドアが開いて何者かが入ってきた。ビクリと肩を震わせて振り向くと、そこには百代が立っていた。敵襲かと思えば、最強の護衛であると分かり安堵する。

 

「な、なんだ……モモ先輩か、脅かさないでよ」

 

「他に誰だと思ったんだよ?まさか私が倒されて、敵が秘密基地に侵入したとでも?」

 

「ははは、そんなの天地がひっくり返ってもありえないって」

 

「それに、勝敗はすでに決まっている(・・・・・・・・・・・・)。私がここに(・・・・・)いる意味はない(・・・・・・・)」

 

「ホント、一時はどうなることかと思ったけどね……拍子抜けしちゃ———」

 

 その時、卓也の意識はトンだ。 

 自分が気絶させられたことも知らずに、ゆっくりと眠るように意識を深く鎮められながら倒れ込む。テーブルには、未だ戦況を映しているパソコンとスマホが置いてある。次の瞬間、それらは無惨に砕け散った。

 

 あまりにもあっさりとした、あっけない仕事。

 卓也を気絶した張本人———川神百代はスマホで主人に報告をする。

 

「【敵】の司令塔は確保しました」

 

『よろしい、では私の元へ戻れ。来る途中に相手の戦力を削ることも忘れるな』

 

「はい❤︎」

 

 そこにはもう川神百代という女はいなかった。

 身も心も主人に支配された、一匹の雌が蕩けた顔で身体を弄っている。ただ声を聞いただけで、顔を朱に染めてしまっていた。

 

『それと——————衣装も、な』

 

 この日のために、秘密基地に隠しておいたマロードからの衣装。それを見て、百代はペロリと舌舐めずりをした。

 

 ———全てが、終わる。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 

 チャイルドパレス内部。

 様々な障害がありながらも俺とキャップ、京の三人は敵の本拠地へと辿り着いていた。建物の内部に足を踏み込む。この馬鹿げた祭り、カーニバルを終わらせるために。

 内部に入り長い廊下を進んでいくと、開けた空間に出た。小さいコンサートホールのようで無数のライトに照らされた部屋。そこの中央に、目的の敵の親玉が立っていた。

 

「やぁ、ここまでご苦労だったね若者諸君」

 

 高級そうなスーツを見に纏った二十代の男。

 その存在を肉眼で目にした瞬間、俺達は理解した。この男こそが、マロードであると。

 全ての元凶、川神裏社会の支配者、闇の王。親不孝通りを中心にユートピアを広げ、不良達を集めてこのカーニバルを開催した。

 

 侵入者である風間ファミリーを前にしても、一切の不安や焦りを見せない。それどころか歓迎するように拍手をしていた。

 

「あんたがマロードだな」

 

 俺が一歩前に出て問う。

 

「そういう君達は、風間ファミリーだね?噂は聞いているよ」

 

「へぇ〜、裏社会の王のアンタにも俺達の名が知られてんだな」

 

 随分と名が売れたと、続けるキャップ。

 マロードはくつくつと喉を鳴らして、俺の方へ視線を向ける。その目は負け犬を見下し、嘲笑うような。

 

「最近、こそこそと俺を嗅ぎ回っている学生がいたからね。調べはついている」

 

「で、その学生に今、追い詰めらてるってわけだ」

 

 負けじと言い返す。事実、こうして首元まで近づくことができた。あらゆる情報を仕入れ、戦力の面でも風間ファミリーが有利なのは間違いない。

 

「街じゃあ、俺達の仲間と川神の人々が暴動を鎮圧してるよ。釈迦堂も板垣一家もクリス達が倒した。部下にも恵まれていないお前がほざくな」

 

「これはいうなれば、社会勉強だよ。子供が大人の世界に軽い気持ちで踏み込めばどうなるか……とね」

 

「余裕だね。実は焦ってるんでしょ?」

 

 京はいつでも仕留められるように、弓矢を構えてマロードに狙いを定めている。その視線、動作に一片の狂いもなく、確実に当てることができる。

 彼女の目をもってしてこの男を観察してみると、やつは大して強くないと結論づけた。多少、護身術に心得があるだろうが、素手の京でも十分勝利できる程度だ。

 

 俺のような軍師タイプ。

 こういうタイプは逃げ道を用意しておくか、側に強力な護衛を付かせておくかの二つ。しかしマロードは今、街に戦力の全てを投入している。その証拠に、チャイルドパレス内に侵入した際には、兵隊どころか護衛の一人もいなかった。

 

「俺達が学生だからってナメ過ぎだ……いや、これがお前の限界ってわけさ。大人しく裏の世界で閉じこもっていればよかったな」

 

「今さら謝ったって許しはしねぇ。きつ〜いお仕置きを覚悟するんだな」

 

 指を鳴らすキャップに続いて、俺と京も取り囲むようにマロードの周囲を固める。

 誰が見てもマロードの敗北。ジリジリと近づいてくる侵入者に向けて、支配者はそれでも笑っていた。

 

「それはどうだろう……勝敗は、始まる前にすでに決している」

 

「そうさ。俺達の勝ちで、お前の負けだ間抜け」

 

 ただの負け惜しみだ、俺は確信した。

 

「お前のことは全てわかってる。諦めるんだな」

 

「これを見てもそう言えるか?」

 

 そう言うと、マロードが天井に向けて指を刺した。つられて視線を上へ向けると、数台の巨大モニターが設置されているのが見えた。全員がモニターの存在を認識したと同時に、映像が流れ始める。

 映し出されたのは、現在まさに戦場と化している川神の街。そこでは暴れる不良達が、風間ファミリーと街の人々によって鎮圧されているころだった……はずなのに。

 

「なに……これ……」

 

 最初に声を上げたのは京だった。

 その声は震え、目を見開き構えていた弓矢を落としてしまう。それほどの衝撃的な映像だった。

 俺とキャップも同様だ、信じられないものを見てしまって声も上げられない。

 

 モニターに映し出されたのは、マロード軍を圧倒していたはずの仲間達が追い詰められている光景だった。

 

『ぐぁッ……なんなんだよこいつら……⁉︎』

 

『どっから湧いて出たの⁉︎』

 

『大和さんの情報だと、不良しかいないはずなのに……!』

 

『く、こいつらみんな……強い……!』

 

 どこからともなく現れた黒ずくめの戦士達が、次々と川神に住む対抗勢力を潰していく。

 長年、武士娘の戦いぶりを見てきたからわかる。やつらの動きは洗練されており、多少喧嘩慣れしたチンピラとはわけが違っていた。確実な戦闘のプロ、俺が仕入れた情報と全く異なる存在に呆然とする。

 

「大和!あいつら、いったいなんなんだ⁉︎」

 

「知らない……俺が集めた情報には、あんな奴らの存在なんて一切なかった!」

 

「彼らは、海外の傭兵部隊でね。そこら辺の武道家なら簡単に屠れる」

 

「傭兵部隊だと⁉︎」

 

「ここは川神だろう?奇人変人強者が跋扈するこの地を手に入れるため、何年も準備してきたんだよ」

 

 自慢げに鼻を鳴らすその様は、なんて腹立たしいものか。悔しさにギリリと奥歯を噛み締めながら、頭の中で状況を整理する。

 確かに、切り札を巧妙に隠していた手腕は認めよう。しかしまだ勝利の光が消えたわけじゃない。

 スマホを取り出して、秘密基地にいるモロに電話をかける。

 

「モロ!戦況を教えてくれ!モロッ!」

 

 状況さえ理解できれば、味方の配置を変えるなどして持ち直せる。驚きはしたが、川神にはまだまだ強者は沢山いる。みんなが力を合わせれば、傭兵なんて恐るるに足らない。

 しかし……

 

「大和、どうしたの?」

 

「なんでだ……モロと繋がらない⁉︎」

 

 再び衝撃が走る。さっきまで逐一報告をしにきていたモロが、全く電話に出ない。明らかな異常事態に、キャップが俺の肩を掴んできた。

 

「どういうことだよ⁉︎まさかモロに何かあったってのか!」

 

「バカ言うなよキャップ!あそこには、姉さんがいるんだぞ⁉︎」

 

 そう、秘密基地は絶対に破られることのない最強の戦力が守っている。モロに何かあったと言うことは、あの武神にも何かあったということだ。

 何年もあの人の強さを見てきた俺達にとって、それは絶対にあり得ないことだ。

 俺達の狼狽えた姿がそんなに面白いのか、マロードはやれやれと呆れ笑いを浮かべていた。

 

「武神も、俺の手に堕ちたというわけだ」

 

「笑えない冗談はやめろ……‼︎」

 

 今すぐにでもぶん殴ってやりたいが、この状況をどうにかしなければ仲間が危険だ。

 映像を見れば、ますます戦況は不利になっていく一方。抵抗していた街の人々も、圧倒していた際の勢いは消えて逃げ惑っている始末。

 完全に戦況をひっくり返されてしまった。

 

「どうなってるんだ……こんなはずじゃ……」

 

「まだ分からないのか?その情報は全てガセだと」

 

「は……?」

 

 マロードの言葉に耳を疑った。なんとか連絡を取ろうと画面をタップし続けていた指がピタリと止まる。意味が分からない、そんな表情のまま動かなくなる。

 

「こうして傭兵を雇えたのも、この俺が様々な人脈を持っているからだ。メディア、情報屋……彼らを駆使して、偽の情報を流した」

 

「偽……偽だと……?俺が今まで集めた情報が……そんなバカな!確かな人脈から手に入れたんだ‼︎」

 

「人を操るなんて簡単だよ。偽の情報(エサ)に食いついた獲物を誘導すればいい、そうすればホラ……間抜けヅラの完成だ」

 

「貴様……!」

 

 俺を侮辱する言葉に、京が怒りの形相で弓矢を構える。

 それでもマロードの口は止まらない。

 

「メディアだけじゃない。政治家や団体にも、今回の作戦に手を貸してもらっている。外部から援軍を呼ぼうとしても無駄だ、電波は完全に遮断して今この川神は陸の孤島と化しているのだ」

 

「な、なんなんだ……お前は……ただの、チンピラのリーダーじゃ、なかったのか……⁉︎」

 

 俺の中でマロードという男の印象が変わっていく。

 最初はただの名ばかりのチンピラどものボスだと思っていたが、今では底の知れない怪物のようにさえ思えてならない。

 もはや使い道のなくなった情報が詰まったスマホを床に落とし、後ずさる。

 

 掌で転がされて、それに気づけなかった愚かさ。

 

 取るに足らない存在だと思い、勝利が当たり前だとのぼせ上がった前までの自分がピエロに見えてくる。

 

 もしかしたら俺達は、とんでもない存在に手を出してしまったのではないか?

 

「50点」

 

「なにを……言って……」

 

「俺が君に対しての評価さ。若いながらもよくやった。だがその若さ故に、マイナス50だ」

 

 社会勉強と言っただろ?と、マロードは続ける。やつから見た風間ファミリーというグループに対する印象、思ったことを口にしていく。

 

「君たちはいわゆる、閉鎖的なグループだな。内部の結束力は強いが、外部に対して必要以上に不信感を持つようになる」

 

「それが俺達、風間ファミリーの強さだ!」

 

「ものはいいようだな。それ故に仲間への不信感(・・・・・・・・・・・)を一切持たない(・・・・・・・)、内側から食い破られる予想もしていない」

 

「……どういう……ことだ……」

 

「おやおや、君は軍師だろう。質問だけか?自分の頭で考えることを放棄してはダメだろう」

 

「もういい!お前は黙れ!」

 

 京が怒声を上げて、マロードとの会話を無理矢理終わらせる。普段の物静かな彼女からは信じられない、激しい怒りとともに矢の先端をやつに定めている。

 この状況の中で、京だけが風間ファミリーの勝利を疑っていなかった。

 

「私達の勝ちは変わらない。モロに何かあったとしても、モモ先輩が助けてるはず!そしてこの状況を察して、傭兵も片付けてここへ向かってる!お前がどう足掻いたところで、無駄なんだ‼︎」

 

「そ、そうだ……やれ京!」

 

 京の言う通りだと、俺は自分に言い聞かせた。

 どんなに戦況を変えようと、大将が負ければ戦は終わりだ。雇い主がいなくなれば、傭兵達も消えることだろう。

 モロだってそうだ。あの姉さんが負けるはずない。この先、マロードがどんな戦力を投入しようが、最後の切り札であるあの人がチャイルドパレスに来てくれさえすれば勝ったも同然なんだ。

 風間ファミリーの勝利は揺るがない。

 

「では、やってみるといい」

 

 明らかな挑発。京は限界まで引いた矢を離した。放った矢は三つ。それぞれが別々の軌道を流れて、相手に向かっていく。

 この決戦のために、本物の弓矢を準備した。

 学園のレプリカとは訳が違う、本当に人を突き刺せる代物だ。狙うは逃げられないように足、抵抗できないように腕、そして最後に腹。致命傷は避けながらも、確実に身動きができないように仕留める。京の腕なら、それを可能にする。

 美しい曲線を描きながら迫り来る矢がマロードの身体を貫く…………ことはなかった。

 

 

 

 






次回、エロあり

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