人妻ライブ配信 -Sex or Money- 作:Scorcher
新たに登場した配信者、紋子はほぼ完璧な女です。身長と乳のデカさ以外は。あと性格も。やっぱり割と残念な気がしてきた。
次回は尋問パート、そして紋子からの提案へと至ります。
一般的に18禁コンテンツの配信者は、その多くが顔を覆い隠している。それは顔に自信がないこと、などという理由もあるかもしれないけど、多くは顔バレ、身バレという個人情報の流出を恐れているからだと思う。
かくいう私、稲葉千鶴も一人の配信者として顔だけは未だに視聴者へ見せたことがなかった。その理由はもちろん後者、顔バレと身バレを考えてことであった。
とはいっても、多くの人が見ているとはいえ所詮はインターネット上の配信活動。顔も分からない、どこにいるかも分からない不特定多数の人間に見られたことで、どんな実害が発生するというのか。
アイドルや歌手みたいな人間であればともかく、一般人である私が顔を覆い隠す意味など大してない。事実この時まではそう考えていた。そう、この時までは。
◇
勤務先であるスーパーマーケット内の売り場フロア。品出しの応援に来ていた私の前に現れた一人のお客様。商品の場所を尋ねに来た若い女性、そんな彼女と顔を合わせた瞬間、私は言葉を失っていた。
「あ、あの……ええっと、そのっ……!」
私の前にスーパーの客として現れたアヤと呼ばれていた配信者。マスクで顔を覆ってもいないがすぐに私は気が付く。そもそも彼女は、配信においても顔を隠してはいなかったのだから。
「あの、歯ブラシとかの日用品は……」
「あっ……!は、はいっ!日用品ですね!こちらですっ!」
顔を合わせた瞬間は心臓を鷲掴みにされたような気分であったものの、彼女の声を聞いて私は我に返る。こちらは顔を知っている一方で、向こうは私が同じサイトの配信者であることなど知るわけがなかった。
そして何よりも、今は一人の従業員とお客様という間柄に過ぎない状況だった。下手に動揺しておかしな行動をすれば、客として従業員が不審に思われてしまう場所でもあった。とりあえずは一人の従業員としてお客様を案内することにする。
「当店へのご来店は初めてでしたか?」
「ええ。知り合いの家が近いので、あまり来るような場所もないですから。」
それでも案内場所までは少しだけ距離があったので、私は当たり障りのない範囲で世間話程度に彼女に問いかけてみる。配信の時とは打って変わり、その口調は非常に落ち着いており、佇まいも年相応かそれ以上に大人しさを感じるのであった。
「お知り合い……ですか?」
「友人……というわけでもないですけど。どちらかといえばパートナー、という存在かもしれません。まだそんなに長い付き合いじゃないですけど。」
おそらくは配信で一緒に映っていた、あのマーくんという男性ことなのだと理解した。どうやら彼女はこの辺りに住んでいるわけではなく、彼のほうがこの辺りに住居を構えている、そう判断することが出来るのだった。
「そ、そうなんですか……あ、こちらが日用品のコーナーとなります。」
「はい、ありがとうございました。」
案内を終えた私に小さく会釈をしてくれ彼女に、私もまた小さく頭を下げてその場を後にしようする。
「あのっ……!」
「は、はいっ……!な、なんでしょうか!?」
後ろから声を掛けられたため、必要以上に大きい声で返事をしてしまう。何かを感付かれたのかと、私は些か身構えながら顔を振り向かせる。
「いえ……なんだか、少し忙しそうにしていた時に案内をさせてしまったみたいですから。ちょっと申し訳ないと思ってて……」
「あー……ふふっ!大丈夫ですよ。困っているお客様のご案内をするのも、お仕事ですから。」
大人しくも礼儀正しい美少女、そんな印象でしかなかった。顔が似ているだけで別人なのでは?などと思いもしたものの、その小柄な身体と控えめな胸も間違いなく配信の時と同じくらいなのであった。
しかし、いくら偶然や運命の巡り合わせとはいえ、顔を見てすぐに分かってしまうには驚いてしまった。顔を隠すことにどれほどの意味があるのか、そうした考えを改めるいい機会となるのであった。
◇
その後もアヤは買い物のため、私が勤務するスーパーへと結構な頻度で来客をするようになり、私と彼女は顔なじみのような間柄となっていた。
「それじゃ、また。」
「はい、ありがとうございました。」
とはいっても、レジ対応で顔を合わせるだけであったり、店内フロアで挨拶をする程度の関係であり、何よりも彼女は私の名前すらも知らないという一方的な関係でもあった。
「うーん……これだけ顔見知りになると、返って色々と言い出しづらくなってきたような……」
店を出ていくアヤの背中を見ながら、私は彼女の裏の顔を忘れそうになり、自分もその裏の顔があることへ後ろめたさを感じることとなる。
こうして来店の頻度が増えたことは、おそらく私の接客態度が功を奏しているのだと思う。少なくとも、今のところ私は彼女の信用や信頼を得られている立場だと判断出来た。
◇
このままスーパーの客と従業員という関係が続くだけ、というのも私の中では何かが納得をしなかった。そうしたある日、私はついに行動を起こすのであった。
「え?連絡先?」
「こうして店で話すだけじゃなくて、もっと落ち着けれるような場所で会えたらなぁ……ってね。」
「うーん……連絡先……ね。」
中々に疑いの目を向けられていた。いくら偶然の出会いで顔見知りになったとはいえ、突然こんな提案を他人から受けてしまえば不審に思うのは当然。ただ、それ以上に私は彼女との縁を信じようしていた。
「ダメ……かな?」
「……別にいいわよ。でも、そんなに面白ことなんてないからね。」
「本当!?ふふっ……それじゃあ、明日またきてくれる?連絡先を控えておくから。」
「わかったわ。それじゃ、また明日。」
思いの外、アヤは私と連絡先の交換をあっさりと了承してくれた。パート先以外では珍しく築くことが出来た交友関係。ただこの時私は、その関係の前提となったものの存在を半ば忘れかけているのであった。
◇
「2年ってことは……まだ新婚みたいなものかしらね。」
「うーん……たぶん、そんな感じかな。」
カフェで食後のお茶を楽しむ私とアヤ。互いの身の上を話したり、既婚者であった私の話に彼女は興味を示してくれていた。
「子供でも出来ちゃえば、そんな気分もなくなっちゃうんでしょうね。」
「こ、子供って……それは、そうかもしれないけど……」
平瀬紋子。それがアヤと呼ばれた配信者の本名。齢は19才で、大学に通っている女子大生とのこと。大学では陸上競技に精を出しているらしく、小柄ながらも均整の取れた身体つきは、その賜物でもあるようだった。
「ああごめんなさい、ついデリカシーないことを言っちゃったかしら。」
「ううん、そんなことないよ。私も……欲しいってずっと思っているから。」
口調こそツンツンとした素っ気ない話し方であるものの、配信中に見せていた傍若無人な態度は全く感じずにいた。むしろ、髪を短くしてボーイッシュともいえるような容姿は、異性に興味などない雰囲気さえも感じられた。
「結婚……結婚ね。そんなの、まだ全然考えたことなかったわ。」
「紋子ちゃんはまだ考えなくていい年頃でしょ。まだまだやりたいことだって、いっぱいあると思うし。」
「そうねぇ……卒業しても陸上が続けられたらなぁ……とは思うけど、それ以外に面白そうなことなんて……ほとんどなさそうだし。」
まるで私と違うタイプの子だというのに、その退屈そうに飲みかけのアイスティーをストローで掻き回す姿は、少し前までの自分を見ているようであった。
「あいつの言った通り……少しは誘いにでも乗ってみればよかったかも。」
「うん?どうしたの?」
「……なんでもないわ。ただの独り言。それよりもちょっと気になったことがあるんだけど。」
そう言いながら紋子はグラスを掻き回していたストローから手を離し、椅子にもたれ掛かりながら腕を組んで、私に顔を向けて問いかけてくる。
「ねぇ千鶴さん、どうして私と連絡先を交換しようなんて思ったのかしら。」
「えっ……!?」
穏やかだったはずのお茶会に、突如として緊張の空気が流れる。明らかに紋子は私に疑いの目を向けていた。
「ど、どうしたの急に?別に私はその……本当に紋子ちゃんと話が出来ればと思って……」
「そうかしら?割と見かけるのよね。こうやってカフェや喫茶店で、特に親しくもなさそうな客同士が話をしている姿とか。」
どうやら彼女は、私が何かおかしな誘いを目的に接触を試みたのかと疑っているようだった。
「そ、そんなことないわっ!それに……あなたが私に声をかけてきたのは本当に偶然でしょ!?」
「ええ。確かに声をかけたのは偶々よ。あの時の私は本当に困っていて、あなたを頼っていたのだから。でも……」
一息をつくように紋子はグラスを手に取り、残っていたアイスティーを一気に飲み干す。そして、グラスを置いて再び私に顔を向けると、その美しく整った顔で真っ直ぐ見つめてくる。
「私に何か用があるから、こうしてゆっくり話したいと思ったんじゃないかしら?」
「………」
心臓が飛び出すかと思うような感覚。恐怖や不安、得体の知れない感情が向けられているという現実を前に、私は声を発することも出来なくなっていた。
ただ、この異常な緊張感の中、私の中にはそうした負の感情とは別に、期待や願望というものも芽生えていた。その証として、私は下腹部に心地の良い疼きを覚えているのであった。