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「腰、よじっちゃったかなぁ……」
呻きながら廊下を歩く。連戦を乗り越えて身体が重い。
キッチンで水を飲もう。
打ちっぱなしのコンクリート壁は、ジメッと冷えた空気を蓄える。
床面のカーペットが、点々と薄いシミで汚れていた。
液体がこぼれた跡→昨日はなかった→昨夜ここにレティがいた。
連想ゲーム式で、昨夜のレティの痴態が思い浮かぶ。
……ああ、このシミって愛液?
「大人のヘンゼルとグレーテルかよ」
児童書のはずだろ、あれ。
本人の名誉のためにも、この事は黙殺しよう。
キッチンから明るい光が
ふたりはまだ寝室だ。消去法で、室内の人物は絞れた。
「マツリカおはよー」
「…………おはよう、ハルくん」
優しく垂れた瞳と、人なつっこい笑み。
桃髪を後ろに結い、
隣に並んで彼女の手元を見ると、発育豊かな胸の
昨日までの俺ならば、多少は目に眩しかったろうが、今は違う。一皮剥けたのだ。がはは。チチでけーな。
「気になる?」
「お、おいしそうな匂いだから。何これ?」
「生クリームパンつくってるの」
オーブンから焼き上がった小麦の薫り。
取り出すや、マツリカは俺を振り返った。
「焼きたてのパン生地だよ、味見する?」
「食べたい食べたい!」
小皿にほかほかのパンを載せ、手渡してくる。
「柴犬と焦げ茶の中間の色から焦げ茶を抜いたみたいな焼き色だ」
「なにそれ、変な例え」
解し割ってみる。湯気をまとって薫りが立ち上った。
口に含むと、久しく食べてなかったパンの味わいが広がる。
ほのかなバターの甘み。焼けた麦の舌触り。
美味しいと感じるのと同時に、安心する。
感動だ。転生してからどうも栄養食が続いてたし、人の温もりに直接触れられたような感慨がある。
「パンも作れるなんてすごいね」
「作り方だけはたくさん
「勤勉だ。自己研鑽に余念がない」
「食べ物がなきゃ無駄になっちゃう知識だけどね。やっぱり、すごいのは調達経路を確保したふたりだよ」
にこやかなマツリカの表情。だけどちょっと、疲れて見えた。
「目、充血してるよ。寝不足?」
「あ……ううん、なんでもない」
化粧下地で隠れてはいるものの、隈が少し浮かんでいる。
覗き込んでいると、その頬に赤みが差してきた。
「それより! これからクリームを入れるからもっと美味しくなるよ!」
「おー」
絞り器を片手に、華やいだ声で誤魔化された。
無理に気分を上げているのか、大仰に手を掲げている。脇がエッチでした。
「ほら、そっちで見てて」
ダイニングテーブルまで追いやられてしまった。
手持無沙汰だ。
水を飲みながら、マツリカの後ろ姿を眺める。
露出した白い首筋。
胴から腰にかけての、魅力的なくぼみを作る
……女性的な彼女の姿を見てか、胸がざわついた。
さすがに自制しよう。
「俺にもやらせてよ」
「手伝ってくれなくていいのに」
「こういう作業すきなんだよ。ワガママに付き合ってよ」
渋々と、絞り器を預けてもらえた。
生クリームを絞り、注入する。
ここ1ヶ月で生活拠点を整えたおかげで、とても終末世界とは思えない豪勢な食事にありつけている。
隣では、マツリカが洗い物を始めていた。
「……身体、平気なの?」
「んー、ちょっと脱水気味になったけど、もう大丈夫」
「どこも変なとこないんだよね」
「なんだろ。しいて言えば、脇腹のとこ……
服をめくり、脇腹を露出する。
爪痕が、ちょっと皮膚の少しだけ深いところをなぞっていた。
今朝、夢中になったアリスが文字通り掻き抱いたのだ。男冥利に尽きる。下手人はまた失神してしまった。被疑者不在につき、糾弾はできません。
パキン、とシンクで陶器の割れる音。
こっちを見ていたマツリカは、割れた食器に目もくれず、食い入るように俺の腹を見つめていた。
さっきまでの笑顔は失せていた。光が亡い。
限界まで開かれた飴色の瞳。
凝視され、俺はたじろいだ。
「それ、してるときの?」
「……うん」
話題が話題だし、頷くのに躊躇した。
そりゃやることはやってきたけど、赤裸々に告げるのは品がなさすぎる。
「痛くない?」
「ちょっとズキズキするくらい」
冷水で濡れたタオルを絞り、甲斐甲斐しく腫れた箇所に触れてくる。
作業を中断し、されるがままになった。
彼女の世話焼きにも、そろそろ慣れないとな。
「……やっぱり、あたしは反対だな。ハルくんの負担が大きいよ」
「俺は大丈夫だって」
「だめ。絶対に無茶してる」
「無茶って……いや、俺はみんなと深くつながれるから、むしろ歓迎だ。それに、もう決定したことだし」
「だけど、ハルくんが傷つくだけで、あたし達だけが得をしているだけじゃない」
「大げさだよ。昨夜だって悪くなかった」
この話題は、どうにも着地点が見つからない。
俺達の安全を保証させるために、俺には命尽きるまで種付けする義務が課せられた。今更撤回しようものなら、この生活は立ち行かなくなる。
マツリカは、まだ俺を案じてくれている。レティみたいに。
思い違いだ。俺は、性的興奮で勃起できるから、無理なんかしてない。
気まずい。横腹をタオルで拭う彼女の手に触れて、離れるよう促す。
その手が、絡まる。
「マツリカ?」
握られた手。
……少女の膂力は、俺の動きを容易く封じてしまった。
逃げられない。振りほどけない。
動物的な恐怖が刺激され、息が固まる。
マツリカの剣幕は尋常じゃなかった。
「次、誰とするの?」
「次って……」
「…………あたしじゃ、だめ?」
だめなわけがない。
生唾を呑む。互いの息が溶け合うほどの距離。これが、最後の呼吸と思えるほど、腹の底に息が溜まってきた。
手と、身体から、彼女の緊張が伝わってくる。
悲壮とすら思えるほどの覚悟だった。
俺自身も震えてた。
視線を下ろす。
切なそうに見上げる彼女は、ひどくアンバランスに思えた。
マツリカの目は、
ほのかに飾られた唇。
艶っぽい色づきの表情は、彼女自身の気持ちに振り回されているのか、興奮で真っ赤だった。
「…………」
沈黙を拒絶と受け止めているのか、マツリカの表情が曇っていく。
眦に溜まる小粒の涙。小刻みに開く唇。俺を拘束する力が弱くなる。体温が、遠のく。
ああ、もどかしい! こっちはバッチこいなんだよ!
無防備な彼女の唇に、口づけを降らせた。
「────!?」
薄目を開くと、目を白黒とさせるマツリカが視界に広がった。
触れあうだけのキス。
気持ちは十分注げた。
胸元で感じる息は、炎のように熱くなった。
細い鼻梁の横で、飴色の瞳が落ち着きなく揺れている。
「い、いいいきなり……?」
「マツリカは、俺のことがだめだった?」
「そんなわけない!」
「じゃあ合意だね」
手を握り返す。
鼓動が高鳴る。
身体を引き寄せると、彼女の花の香りが鼻腔いっぱいを満たした。
どこを触れても柔らかい。心地良い。ずっとここにいたい。
「ハルくんって……いっつも、反則みたいなことばっかり」
「幻滅する?」
「何回惚れ直させるのって感じ、むかついちゃう」
「俺にどうしてほしい? ……いや、俺をどうしたい?」
初夜を経て、少し誘い方を学んだ。
俺の優位で進めるよりも、女性側の性欲を増進した方が、最初はうまくいく。
クリームの味がした唇で、甘い声を囁く。
「口で、したいの」
「…………」
「唇で、ハルくんをめちゃくちゃにレイプしたい」
「そう……」
マツリカは、ガラス細工を触るような手つきで、頬の輪郭をさわり始めた。
夢じゃないか、疑うみたいに。
こそばゆいんだけど。
やがて意を決したマツリカが、体温と同じ息で呟いた。
「準備できたら、言って」
「いや、準備っていうか」
「言って」
「え……」
肩を尋常じゃない力で拘束され、睨むような表情で俺を見据えた。
俺の了承を得た時点で、それってレイプじゃなくなるのでは?
疑問符は、
「……よしこい」
理性の
踵を上げ、頭を引き寄せてくる。
体が傾けられた。
唇が舌で割られる。歯列をなぞられる。舌と舌が絡まる。
甘い匂いと、やけどしそうなほど熱い唾液。
灼けるほど喉が渇く。
俺の背に絡みついた手が、服の下をまさぐり始めた。
「……ん、ふ」
唇をきつく押し付けてくる。
胸を惜しげもなく密着させ、意識を蕩けさせてくる。
キッチンカウンターに腰を据えると、マツリカとの距離はなくなってしまった。
背中を這う指が、ぎこちない仕草で服を脱がせようとしてたのに気づいた。
口が触れあったまま、俺は薄く笑う。
「裸、興味があるの」
「……黙って脱いで」
半目で睨まれた。
挑発を受け取って、マツリカは俺の服を乱暴に剥ぎ始めた。
彼女の支配欲を刺激したのか、服を脱がせながら、首筋が舐められる。
触れる舌が、神経を敏感に刺激して皮膚が粟立つほどの快感が走った。
そのまま、露出した肌に舌が這いまわる。
赤々とした舌先は、傷口を緻密に舐めた。
執拗だった。骨の浮き出た箇所が特に気に入ったのか、鎖骨や肋骨、そして、腹筋の輪郭を舌でなぶる。
耳たぶを噛まれて呻いた。
「……マツリカも、脱いで」
「ん……あっつい……」
彼女は自分で服を脱ぎ始めた。
白い素肌。双丘を包むレースで縁どられた下着。
下着に手をかけるのも待てず、俺は
重質な肉感。掌で納まらない事実に、情欲を滾らせた。
切ない喘ぎが、小ぶりな唇から漏れていた。
唇を合わせる。抱擁のまま、胸に触れ続ける。
マツリカの目が潤んでいた。
「ハルくんの唾液、飲みたい」
せがまれるまま、口のなかで溜めた唾液を、彼女の舌先に溢した。
そのまま、粘っこい液を繋ぐ梯子を辿って、口が触れ合う。
胸を揉んでいると、窮屈そうな乳房が、少しずつはみ出てくる。
布地よりも柔らかい。
指に誘われ、尖った乳首が露出する。
「マツリカ、胸……やわらかいな」
「ハルくんも、硬いところばっかり」
直接肌を密着させる。
熱い吐息。お互いの口を通じ、体の中を共有し合う。
暴発しそうなほど、俺の体の芯は熱を持ち続けていた。
ペニスの先端から漏れた分泌液が、マツリカの股を伝う愛液と混ざりあっていた。
「……ここが、一番硬いんだね」
柔らかく手足がしがみついてくる。
獣の口が、告解をこぼす。
「ずっと、ずっとだよ。あたし、こうしたかった」
「好きにしてよ。マツリカなら大丈夫だから」
「あなたに会ってから、ずっとこうなの。ごめんなさい、あなたの気持ちに甘えて」
「俺も、マツリカに甘えたい。同罪だよ」
「ふふ、そっか。おんなじだね。あたしたち」
甘い呟き。
こつんと、汗ばった額が俺の胸にぶつかる。
ぐりぐりと、愛し気に桃髪が押し付けられる。湿った髪は、肌によく絡まってきた。
顔を見せようとしない彼女。髪に指を滑り込ませて頭を撫でてみる。
「あたしなんかにこんなこと許していいの」
「マツリカだからだけど」
「あたし、もうふたりに遠慮しなくていいよね」
小悪魔めいた彼女が、尻尾をみせていた。
それを掴むように、俺は体を預けた。
一足。踏み込んだ踵を中心に、亀裂が迸る。
弾丸の速度を超越する槍先の速度。
少女の目には、金属の反射が閃光に映った。
振る動作では槍の立ち回りに追いつけない。
正面に刀を構え、槍の切っ先を逸らす。
肌の感覚で身体を捩る。避けきれない連撃が、少女の肌に生傷を刻んでいく。
鋭い痛みが熱を生む。風が血潮を巻き上げる。
「……っ」
「あなたも、昂ぶってきましたかっ?」
甚振る快感か、はしたない笑みで令嬢が唇を歪める。
二十合を越えても、互いの息は乱れない。
刀が、槍が、洗練されていく。
打ち合う金属音は、削岩しているかのように轟く。
何者も近づけない破壊の嵐。
絶対的な速度の結界。
吹きすさぶ轟風が、屋上の設備を破壊していく。
制服が、
「ほら、感じているのではなくって? ああ、わたくし、こんな野良犬のようなメスになぶられてしまいます!」
「…………」
少女とエマの技巧は、不気味なほど拮抗している。
エマがボルテージを上げれば、少女もその上昇分に追いつかなくてはならない。
乱撃。頬に迫る穂先に刀を差し入れ、軌道を逸らす。
下段に刀を揃え、優美な太刀筋をなぞった。
「甘いっ! ですわ!」
エマが牙を剥く。
槍の持ち手を返し、衝突。
ふたりの間で衝撃が伝播する。
刀と槍。異種の鍔迫り合いが重なり、エマが猛々しい歯並びを見せた。
力の押し合いでは、エマに分がある。
弾かれ、少女は体勢を崩してしまう──
「──っ」
「そこ、感じやすいのでしたね」
横薙ぎに振るわれた槍が、少女の腹を直撃する。
内臓が裏返る
肺腑が無理矢理に呼吸を絞り、意識が瞬間的な空白に襲われた。
ゴム鞠のように、地面で跳ねる。
崩れかけた鉄条網が背中を叩き、かろうじて少女は起き上がった。
吐き出す息に血が混じる。
追撃を警戒してエマを睨むが、槍に熱っぽい視線を送り、
「ああぁ……最っ高……」
「けほっ……」
「ほら、まだ果ててしまっては困ります。早くお立ちになって?」
「さっさと、殺せばいいものを……何が、狙いですか」
時間稼ぎの問いで、きょとんと令嬢が呆ける。
頬は興奮で紅潮しているが、妙に冷静だった。
「人的リソースの確保に決まっていましてよ。我々の世代で子種が尽きましたし、
少女は地面に血色の唾を吐いた。
ダメージが回復してきた。起き上がりながら、思考を冴え渡らせる。
政府の狙いは、一貫して人類保全戦略。
その内訳は、不能の男から生殖器官だけを摘出し、実質的な単為生殖を成立させるプラン。
そこに、利権への支配的な感情が透けて見えた。
「甘言を囁く者は、
「…………なるほど、得心しました。あなたの抵抗がしぶといから、機関はあなたの離反を引き起こすように、オオミヤへと働きかけたのですね」
嘆息と共に、下品な熱を帯びた言葉が少女に向けられる。
「わたくしの鞘になりなさい。貴女の生んだ損失を、その身で支払っていただきます」
「誰が、あなたなどに」
「どうかそう仰らないで。貴女も群れのリーダーならば理解できますとも。
「世界など、簡単に変わります──たったひとつの出会いで」
刀を握り直し、静かに立ち上がる。
上体が振り子のように揺れていた。
刀を構える。刀身には、少女の晴れやかな顔が映った。
「メルヘンなことを仰いますのね。血も涙もない〝殺戮人形〟と耳にしましたが、ユーモアが堪能でありませんこと……おーほっほほほ!」
哄笑が響く。
淫らに蕩けた目は、もはや少女を映していない。
少女は嘆息し、腹をくくった。
「あなたの間抜け面は
「口が減りませんこと」
仕切り直しだ。
もう、互いの意思は示された以上、問答は無用となった。
嵐を予感させる気配。
張り詰めた空気。次の瞬間には、雌雄は決する──
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!」
そこに、少年が現れた。
──裸体で。
世界はその瞬間、衝撃にひっくり返った。
屹立する少年の股間。
ふたりは目を奪われ、自分の獲物を取りこぼすほどの混乱に襲われた。
エマが唇をわななかせ、
「な、な、な、なんですの、あれ……」
戦闘の余波で、あちこちに瓦礫が飛散している。
3階の廊下は、天井が所々落下していた。
瓦礫で灰色と化す大地。
築き上げられた牙城。
屋上へ続く踊り場。階段はほとんど崩れてしまっている。
三人を説得した俺は、打合せもそこそこにして、屋上へと駆け出していた。
「あっちか!」
バツ印の書き込まれた体。
不要な
地を揺るがす震動。足を縺れさせ、転倒してしまう。
立て、立て、立て──!
焦燥が脚を動かしていた。
「はっ、はっ、──! ぅづ!」
鋭い痛みが腹部に走る。
くそ、鉄骨が擦り傷つくりやがった。
狂ったように堰を切る。
ああくそ、ちゃんと走り込んでおけよ、この体の持ち主!
知らないのか、体づくりは積み重ねが大事なんだぞ!
男には必ず土壇場が訪れるって心得ろ!
まあ、俺は死んだから、そんな機会はなかったけれど!
「は、はは──」
なんてブラックジョークだ。
そう、俺は単に命拾いしただけなんだ。
少女達が繋ぎ止めようとした命。
超常的に移植された俺の意思。
生き残るための考察。
すべての事柄には理由がある。そう思いたい。
誰が、俺になにを求めている?
つまり、俺がここにいる理由。
少女達は『若』の面影を尊び、
絶命寸前の社会は延命を望み、
『俺』は、誰にとっても異分子、
そうだ。社会の構造的に必要な問いだ。
誰しもが役割を持つ。
どこにでも、隙間みたいに居場所はあるはずだ。
けれど俺はどうだ。
振り上げた腕すら、肌に✖︎を記されている。
合理的な判決が、俺をどんな理念で改造しようとしていたのか示している。
種馬としての性能。逆算で得られる答えは、最悪なシナリオ。
滅びかけた人類を延命させるための生命線、それが俺の体に記された意義だ。
男性のEDで終末を迎えそうだから、生存戦略としてデザインされる生命線──精子をとことん生産する、それが、俺の肉体に与えられた役割。
だったら!
「だったら、とことん孕ませてやる! なりふり構わず──俺が、少子化に、終止符を打ってやる!!」
顎を伝う汗が粒になり、瓦礫の海に落ちる。
行き詰まった絶望。極まる希望。
背反する心境。
狂った充実だ。思考が血走って、変なロジックに結びつく。
俺は俺の意思で、10000人を抱いてやる!
というかちょっと役得だと思ってる!!
それなら、誰もが納得するはずだ。
元々の役目を推し通す。
システムそのものが構造的に破綻しかけているなら、俺が土台として支えれば良い。
そこに、俺という自我があるかないか、それだけの誤差でしかない。
血流の熱。
火花の激情だった。
思考はほとんど無茶苦茶な軌道で論理を辿る。
みんな『若』と呼ばれる少年の面影を見ていた。
俺はここにいる。
ただそれだけを発する信号が、魂の叫びとなって口をついて出る。
「俺のことを、少しは見てみろってんだ──!」
不安定な足場を蹴り、一直線に屋上へと駆ける。
俺がどうすればいいかなんて、はっきりしている。
やることはいつもと変わらない。
迷いはとうに晴れた。
そうだ。こんなにも丁寧な舗装路、走り抜けるなんて簡単だ。
破裂しそうな心臓。胸を掻き抱き、膨張する肺を抑えようと努めた。
患者服を脱ぎ捨てる。
鋼鉄を握りしめる。
武器を左手に、渾身の力で瓦礫の海を駆ける。
「誰に求められて、いなくても──! 誰が望まずとも──俺は、ここで俺自身を曝け出してやる!!」
これが、俺の全身全霊──正真正銘、ズル剥けの命乞いだ!
各人物から見た主人公(ハル)の感想
・アリス
運命の人。行き倒れていたところを少年に見つけてもらい、忠誠を誓う。
情事では勝てないと奴隷精神を体に刻まれてしまった。
・レティ
わたしが最も彼に寄り添えると自負している。薄幸美少年に見えているため、彼が性欲を露骨に出すと脳が破壊される性質を持つ。一生煉獄だね。哀れ。
・マツリカ
生きる幸福を思い出させてくれた存在。いつかふたりだけの楽園をつくりたい。
・カナデ
ハルのう〇こを水で薄めたらどんな臭いがするか気になってる。
・エマ
見せ槍。