屋上へ向かう前に、みんなの協力を仰ぐ必要がある。
俺の交渉を成功させるために、何が必要か、見極めなければならないのだ。
つまるところ、俺の市場価値を知る必要がある。
車内に満ちた緊張。
固い眼差しで、カナデさんが俺を観察する。
「それ……勃起してるの? どうやって?」
「どうもこうもない。性欲です」
恥は承知の上で言い切る。緊急事態につき、セクハラ問題は棚上げさせてもらう。
緊張で
「ほかの人がどうかはわからないけど、俺は性的興奮をトリガーにして勃起する。『遺伝子病』が治療された結果なのか、ほかのイレギュラーによるものなのか、そこらへんは不明だけど、
「せ、性的興奮って……」
微妙な空気感が漂う。
なんだよ、気になる女子の猥談するときの部室みたいな雰囲気出さないでくれよ。思春期か? ……思春期か。
ともかく、
「ぁわわ……」
酸素が足りないみたいに口をパクパクとさせるレティちゃんとマツリカ。申し訳ない。
彼女らを尻目に、カナデさんが学者然と口を開いた。
「少年は発情するの?」
「ちょっと!」
「──します、発情」
隠してもしょうがない。
カナデさんの怜悧な瞳を見据える。
「恐怖と錯誤しているんじゃない?」
「命の危険は感じています。正直、女性だらけの環境にドギマギする気持ちが勝ってます。ずっとドキドキしてて、気が変になってきました」
「不整脈だねぇ……」
「ち、違います! マツリカといる時だって、緊張して目が泳ぐんです!」
「それは恐怖だよ」
「誤診です!」
身体いっぱいにつかって抗議する。
こっちは自分の命も天秤に載せてるんだから、もっと真面目に取りなしてほしい。
「ハル、安心して。わたし達は決して、あなたに危害を加えないから」
「レティちゃん……」
「だから、ほら……銃をこっちに」
「う、うん……」
「いい子ね」
血色の目を穏やかに微笑ませ、レティちゃんが近づいてくる。足音を殺して接近する猫みたいだな。
その小柄な体に腕を回して拘束する。
「にゃにゃなななな!!?」
「ごめん、説得する方法が浮かばなかったから、不快だろうけど我慢してほしい」
「わ、わたし達を突き出して、政府に取り入るのね? それだけはダメ、アイツらは容赦なくあなたの尊厳を奪う。わたし達のことを信じられないのはわかるけど、本当のことよ。実験の計画書だって入手したんだから」
「え、この短時間で? すごいな、レティちゃんって」
「……………………」
なんだよ黙りこくって。あ、腕の中で縮こまった。可愛い。無抵抗である。
「少年、落ち着いて話を」
「早まっちゃダメ!」
「…………」
より混乱が大きくなってきた。
仕方ない。レティちゃんには申し訳ないが、このまま我慢してもらおう。
「論より証拠、だ!」
彼女を抱き寄せ、髪の匂いを嗅ぐ。
女の子らしい石鹸の香りと、エンジンオイルの油臭さが
髪に顔を埋める。
俺は腰のあたりが熱を持つのを感じた。
徐々に硬くなる芯が、レティちゃんの背筋に触れる。
その感触に怯えているのが伝わってきた。
小柄な彼女は身を固め、肩越しに俺を振り仰ぐ。
「そう……殺すのね。でも、わたしはあなたを恨まないから……」
「殺さないって」
「あれ……? 銃、構えたまま……? じゃあ、背中のこれって……?」
レティちゃんの視線が下がる。
あ、背中を圧迫するものの正体に気づいた。
ブワッと、髪が逆立つ。顔が真っ赤に染まる。
声にならない声が響き渡る。
「せ、背中に当たってるから!」
「当ててんだよ(セクハラ)」
レティちゃんを解放すると、すごい速度で俺から離れた。ごめんなさい。
3人に向き直る。
みんなの表情は三者三様。
実物を前にしても、受け入れ難いのか。
赤縁の眼鏡を押し上げ、カナデさんが股間を注視する。いやん。
「確かに、少年は勃起してる」
「誰も勃起できないんだよね。俺が世界的な問題を解決できるなら、この蟠りも解消できないかな」
「不可能だ。少年が思っている以上に、簡単じゃない」
「解決するのに根本から変える必要があるなら、男根を使うのが理に適ってるだろ」
「……?」
「…………?」
「ごめん、いまのノーカンで」
その場の全員が首を傾げていた。変なことを口走ってしまった。思考を整理しながら話さないと。
「勝利条件を確認させてほしい。
①俺の身柄
②ここからの脱出
③脱出後の生活
以上の3つかな。これらを、全員無事な状態で達成するためには、武力制圧じゃ人が足りない」
「もう3つとも対策案は出てる。
「俺が道を開く。必ず、あの子も外に連れて行く」
道を拓き続ける──それが、己に課せられた命題のように感じた。
「①の俺の身柄については、この体質──というか、女性に対して正常な興奮を持てる点をカードにして、なんとか確保できるかも」
「そう……ね。わたしの入手した実験データには、報酬系の機能に関する作用は言及されてないし、政府にとっても想定外のはず」
レティちゃんが、赤らんだ頬を俯かせて呟く。
カナデさんは片眉を持ち上げ、問いかけた。
「猶更じゃないの? 貴方の身柄を拘束するのに、全力を費やすでしょ」
「いいえ、つけ入れる……でも」
「教えて、レティちゃん。君の考えを訊きたい」
瞳を覗く。逡巡と、羞恥。
俺の顔と股間とを行き来させた視線で答えた。
「あなたの、その……勃起する条件を限定的にすればいいの。自分たちでは再現できない事象に、政府がこれ以上のリソースをかけるのは、合理的じゃない……はず」
「限定的……なるほど」
そこに恣意的な根拠を持ち込み、証明すれば、あるいは──
光が見えた。今度こそ、はっきりと。
「俺、やれます。失敗するかもしれないけど、みんながフォローしてくれれば」
「…………」
強く見つめると、カナデさんは重い嘆息をこぼした。
「……わかりました。どうせ生きるか死ぬか、貴方の可能性に賭けてみましょう」
「カナデ、どういうつもり?」
「このまま少年を放置しても、私達の悪いようにしか転ばない。せめて、
「……ありがとう」
「お礼はいいから、拳銃を下ろして。手つきが危なっかしくて見てられない」
差し込んでくる斜光は、蒸気で薄く曇っている。
遠慮しない。そう告げた彼女は、俺の手首をがっちりと掴んだまま、体とキッチンとで挟んで拘束してしまった。
下着で隔てる距離さえ煩わしいのか、彼女はブラのホックをさっさと外してしまう。
至近距離で、マツリカが鼓動を速めている。
激しい運動を行ったあとみたいに、荒い息が俺と彼女との間で籠る。
「ふー……ふー……」
一定のリズムだけど、ひどく落ち着きがない呼吸だ。
密着した肌で、彼女の胸が呼吸で上下するのを感じる。
「マツリカ……?」
彼女は顔を見せようとしなかった。
やると覚悟を決めた割りに、アクションが薄い。
俺の腹部でつぶれた豊かな胸で、息と体温の熱が循環している。
時折、俺の股間で疼く
もどかしい。悶々と、性欲だけが膨らんでくる。
目の前の女体を、好きに味わいたい。
「……しないの?」
「ちょっと、黙って」
「うす……」
誘いを断られて閉口する。
手持無沙汰な俺は、視界一杯に広がる彼女を観察するしかなかった。
胸の谷間を視線でなぞっていると、ホクロをみつけた。多分、俺しか知らない。優越感だ。
不意に、手首に痛みが走った。
「マツリカ……?」
「…………ハルくん」
据わった表情で見上げてくる。
穏やかに垂れた瞳は獣欲にまみれて。
肩で揺れる桃髪は汗を含み、じっとりと俺の胸元に絡みついたまま。
飾られた薫りの奥で、汗臭さがある。本能を刺激してきて、不快じゃなかった。
「ハルくんがいけないんだよ」
「なんだよ、いけないことしてないけど」
「こんな、固くて、あたしの前で無防備にいるから」
ふと気付く。彼女も、俺の身体に興奮しているって事実。
レイプしたい、そう俺に言ってきたのだから。
俺が彼女に興奮していても、それを上回るほどの欲望が彼女に満ちているのだ。
全部、ぶつけてほしかった。
彼女の胸を焦がす灼熱が、俺を巻き込む。
「ハルくんの味、確かめさせて」
キッチンの縁に俺を押さえつけたまま、マツリカはおもむろに俺の腰を横に動かす。手を拘束したままだから、ひどく動きが鈍くなる。
当惑したまま、つま先立ちで移動した。
「え、あ? なになに、マツリカ、なにするの」
「ちょっと、取りたいものがあるの」
「え、離れた方が」
「だめ、やだ。このままがいい」
「えー」
彼女が喋るたびにくすぐったい。
マツリカが手探りでなにかを掴み取る。
生クリームの入った搾り袋だ。
疑問符を持つより先に、彼女は自分の谷間に向けて生クリームを絞り出した。
ちょうど、イチゴサイズの白い小山だ。
それを示し、ぶっきらぼうに言い放つ。
「舌で舐めて」
「え……?」
「ほら、舐めて。ハルくんは、あたし達に興奮するんでしょ。だったら、できるよね、やってよ」
余裕のない口調。その圧に戸惑う。
俺の右手を拘束する力が、痛みを覚えるほど強まる。
長い睫に縁取られた半目で睨み付けられて、俺は、おずおずと舌先をのばす。
薄目で、彼女の瞳が期待で歪むのを目視する。
俺を性欲の捌け口にしか見ていない、熱情の眼差し。
「…………」
少し身を曲げる。彼女は、俺の挙動を食い入るように見つめている。
視線を感じながら、谷間に顔を預けた。
「あ、ぁ」
肌に触れた瞬間、マツリカは腹を中心にびくりと身体を震わせた。
股を伝う汁気が増えた。
舌触りで、彼女の肌を堪能する。
柔らかくて、すべすべしてる。
舌先を沈ませると、弾力を感じる。くぼみを作るほど執拗に押すと、マツリカは電流に打たれてるみたいに身体を痙攣させる。
生クリームを口腔に含みながら、ゆっくりと小山を舐め取った。
そのまま呑み込もうとするのと、頬に絡まった指が静止させてくる。
背筋を震わす微笑みが、近づいてきた。
「ん」
と、口がきつく押し当てられ、彼女の舌が俺の口腔に這い回る。
なるべく奥まで味わおうとしているのか、唇あたりで彼女の舌がうねうねと動くのを感じた。そのまま歯の輪郭をすべてなぞって、彼女は小さい喉を、小さく、何度も震わせた。
唾液と生クリームでぐちょぐちょに混ざり合った橋が、唇同士を繋ぐ。
甘い吐息。
鼻先を触れあいながら、互いを見つめた。
「……ハルくんの、ミルク味」
「……これがしたかったの?」
「ハルくんも、やる?」
「……………………やる」
夢じゃん。そんなの。
おずおずと、マツリカが少しだけ身を離した。
朝陽を浴びて、汗粒が彼女の裸体に反射していた。
いつもの振る舞いを思い出す。
幼い表情を見せる彼女。
誰よりも、女を感じさせる官能的な姿態。
瀟洒な彼女の、剥き出しの姿。
感嘆が漏れる。
搾り袋を掴み、彼女の小ぶりな乳輪をなぞる。
冷たい感触で、マツリカが眉を曲げる。
締まらない、媚びた笑み。
「そこ、舐めてくれるの?」
もう我慢できなかった。
彼女の乳首に吸い付く。
甘くて、柔らかい。
口のなかで、ぷっくりとした固い突起が収まる。きつく吸うと、鋭い反応が彼女から返ってくる。
「ぇ、あぁ……! こんな、動物の赤ちゃんみたい、かわいい……」
恍惚の響きが頭上に降りかかる。
前歯で甘噛みし、舌先で乳輪をなぞる。
口をすぼめた。
歯で噛み、舌でなぶる。
「や、あぁ、ぁん」
短く、かすれるような声。
羞恥心はとっくに熱で
無我夢中に貪った。
腕、足が絡んでくる。
ほとんど息ができない。脳髄に浸透する甘味が、じわじわと暗闇に誘ってくるようだった。切なく首に回された腕が、柔らかな胸に頭を埋めさせてくる。
「ハルくん、ぁあ、ハルくん……!」
艶っぽい嬌声。
耳朶を舐める吐息。
夢中になりながら、身体の反応を頼りに、マツリカの絶頂を導く──
「あぁ、ああぁ────!」
強く抱きしめられ、密着した股で狂ったように潮が噴くのを感じた。
上気した胸。
目眩と動悸。
心臓の音。
彼女の吐息だけの世界で、わななく身体が落ち着くのを待つ。
段々と、息苦しさが失せてく。
力なく、身体を預けてくる。
その無防備さが愛おしい。桃髪を撫で、彼女の頭を肩に載せる。
「気持ちよかったんだ?」
「うん……」
「このままする?」
彼女が息を呑む。
俺だって限界なんだ。
暴発しそうになった竿の先端を凝視し、マツリカはかすかな声で囁いてきた。
「ハルくん、本当に……あたし、するよ?」
「…………」
「まだ、ほんとに、ハルくんがほんとに拒絶したら──」
我に返る。
キッチンで繋がるのって、どうなんだ。
慌てて手を引き、誘導しようとする。
だけど、それ以上に強い力で、びくともしなかった。
え? 首だけで振り返る。
情欲で濡れた瞳。
蠱惑的に開かれた唇。
唾液に塗れた体と、淡い茂みの奥でこぼれた蜜。
「どうなっても、知らないんだから」
「あ──」
俺、いまから食われるんだ──
設定紹介
『遺伝子操作』
派手めな髪の美少女とか、ケモノとか、獣耳を出すための設定
『オートマタ』
メカ娘を出すための設定