琥珀色の瞳で寛哉を見つめていた美依那だったが、興味を失ったのか再びスマホに目を落とした。
画面をスクロールしながら、ときおり含み笑いをうかべては「まじウケル」と呟いた。
呼吸をしているだけでもシャツを突き破ってしまいそうな乳房が、小さな笑みにも呼応してダプンッと弾む。
バストのサイズは1メートルを余裕で超えているだろう。
ほどなくして母親が料理を運んできた。
「みぃちゃんお待たせ」
寛哉にも饗された筑前煮が大きな鉢いっぱいに盛られていた。続いて生姜焼きが抱え持つほどの大皿でやってきた。さらには他の家族には出されていないキロ単位の蒸し鶏と一パック分のゆで卵、おまけに山盛りのハンバーグがテーブルの上に並べられた。
「いただきまぁす」
少女はすかさず箸をつけると、獣のような貪欲さで料理を口に運んで行った。力士やプロレスラーでもこんなには食べないだろうという量を、美依那は大きな丼に盛られたコメといっしょにガツガツとかっ喰らう。
「美依那は陸上の選手だから、カラダを作るために結構食べるんだよ」
娘の大飯喰らいを少し恥じるように、義父は寛哉にうちあけた。
たしかに初めて見たときはオッパイに目が奪われてしまったが、美依那の手足は筋肉が恐ろしく発達していた。
シャツから覗く腕は寛哉よりも確実にデカい。
それでも滑らかな脂肪に覆われているため、その筋肉は女らしいボディラインをグラマラスに強調していた。
美依那が手を動かすごとに瑞々しい乙女の柔肌の下で鍛え抜かれた筋繊維がグリグリと動く様すら艶めかしい。
しかしどうしても陸上競技をするにしてはこの筋肉は大きすぎるように思えた。
「陸上って何やってるの?」
不愛想な義妹とも何か打ち解ける糸口があるかもしれないと、にこやかに声をかけた。
「……いろいろ」
返事はそっけない。
「けっこう本格的にやってるんだ?」
あのバストでスポーツをするには不利なんじゃないかと訝りながら尋ねると、美依那は無言で豚肉を口に放り込んでから、部屋の隅を顎でしゃくって指した。
ガラス戸のついた大きなサイドボードが置かれており、その上には無数のトロフィーがずらりと並べられてキラキラと輝いていた。ガラス戸の中も賞状や盾で埋め尽くされている。ひとつくらい盗まれても気づかれることはなさそうなほどだ。
「すごい数だね」
「日本記録とかも何回か破ったし」
白米を咀嚼しながら答える
「何の競技?」
「いちいち憶えてない」
まるでとるに足らないことかのように言う。その言葉が本当なら何かのニュースにはなっているはずだ。
「まじで?」と絵梨那を見ると、スマートフォンを手にとりサーチエンジンで検索して画面を見せてくれた。『双羽美依那、100m走で日本新記録』という見出しが目に入る。そのニュース記事に掲載されている写真は、目の前で大量の飯を食っている小麦肌の美少女のものだった。
「100m走で日本記録出してるんだ。すごいじゃん!」
これから家族になる人物が、そんなトップアスリートだったとは驚きだった。
「おねえちゃん、いつのやつ?」
姉が差し出すスマホの画面をちらりと見る。
「それ、みぃなが一年の時のじゃん」
「みぃちゃん去年も新記録出したんだよ」
絵梨那が新しい記事を見つけ出した。寛哉が画面をのぞき込むとそこには『またも新記録』という見出しが躍っていた。
「……今年も記録狙えるといいよね?」
驚きのあまり顔が引きつってしまう。
「去年より筋肉だってデカくなってるんだから新記録が出るのはあたりまえでしょ?」
美依那は口をとがらせて言う。
この娘は自分が頂点にいることが当たり前なのだ。自身の筋肉が成長すれば日本記録が更新される。そこに他者の入り込む余地などはない。
寛哉も【双羽 陸上】と検索してみた。砲丸や、ハードル、棒高跳びで美依那が新記録を樹立させている記事をいくつも見つけることができた。むしろ記録を破っていない種目を探すのが難しいくらいだ。
持久走ならばさすがにないだろうと調べてみたが一万m走でも同じく二年連続で新記録を打ち立てていた。
ありえない!
瞬発系と持久系の競技を同時に制覇してしまうなんて不可能だ。
唖然としてニュースを読み進めているうちに、寛哉は不意に違和感に気づいた。
一緒に写真に写っている他の競技者が皆、男子だ。
あらためて文章を読むと確かに「男子一万m走優勝」とある。
「これって……男子の競技に出てるの?」
「メスどもがアタシの相手になるわけないじゃん。ごちそうさま」
美依那は箸を置くと腹をさすりながら席を立った。
「みぃちゃんは身体能力が高すぎるっていうから、その……陸上競技連盟みたいなところから、男子の種目に出るように要請があったみたいなの」
絵梨那はひそひそと耳打ちをした。
性別の垣根を越えて、ありとあらゆる種目で優勝を総なめにしてしまったというのか。だとしたら、この少女の体力は本当にバケモノだ。
食卓の上は、あれほど大量にあった料理が、すっかり皿だけになっていた。美依那の手元にあった五合炊きの炊飯器もあますことなく平らげられている。このケタ違いの食欲が、少女の人間離れした 運動能力を支えているのだろうか。
キッチンに向かった美依那は戸棚から1㎏のプロテインの袋を取り出していた。袋の封を切り、中身をスプーンですくい取りシャイカーに移すと、ミネラルウォーターで割ってグビグビと飲み干した。
さらに続けて二杯目、三杯目とプロテインドリンクを飲み下していく。
「みぃちゃんちょっと飲みすぎじゃ……いくら栄養でも採りすぎると」
さすがに母親が止めようとする。
「うるさいなぁ……これでちょうどいいの」
上目遣いで母親を睨んで黙らせた。
「なんだか今日はカラダが欲しがっちゃうんだよね♥」
その声はどこか艶っぽい。
美依那はふいに寛哉に流し目を送った。
そしてまた次々とプロテインを底無しの胃袋に流し込んでいった。
ドリンクを飲む少女の、密度の高い背面の筋肉の隆起がブラウスの白い布地に浮き上がっている。
背丈は150㎝ほどしかないのに、美しくくびれた腰から肩にかけては、広背筋が力強い逆三角形を描いている。
鍛えこまれた大きなお尻の半球の盛り上がりが、学生服のプリーツスカートごしでもよくわかる。
やがて1㎏のホエイプロテインもすっかり空になってしまった。
少女の背中は、大量の栄養を摂取したことで、ひときわ大きくなったような錯覚さえ起こさせる。
シェイカーの中の最後の一滴を名残惜しそうに舐めとると美依那は「ふぅ」と深く一息ついて、キッチンからこちらを振り返った。
そのとたん、バカデカいオッパイに限界まで引き延ばされていたブラウスのボタンがいっきに引きちぎられた。
ブルバインッッ!!
純白のバカデカいブラジャーでも堰き止められきれない褐色の柔らかな乳球が弾んだ。
次の瞬間、何かが寛哉の額にコツンとぶつかり、テーブルの上に転がり落ちた。つまみ上げてみたそれはブラウスのボタンだった。
もはや乳の暴力としか言いようがない。
ぽかんと口を開けた寛哉の間抜け面を見て、ほとんど表情を崩すことのなかった美依那が含み笑いをうかべた。
「ゴメンゴメン。会ったばかりなのに恥ずかしいとこみせちゃったね」
美依那は前かがみになってテーブルに身を乗り出すと、寛哉の手からボタンを拾い上げた。
寛哉の視界が小麦肌の壁に埋め尽くされた。
ボロンと零れ落ちた巨大な乳肉の織り成す深く長い谷間が目の前に迫っていた。
暴力的な艶めかしさの乳房を間近で目の当たりにした寛哉のペニスはすぐさま痛いほど勃起した。
汗の匂いと、制汗剤のシトラスの香りに包まれた、女子高生の健康的なオッパイフェロモンが鼻孔をくすぐった。
今すぐこの乳房に屈服したい。そんな思いが脳裏をよぎった。
ペニスの先端から先走りしたカウパー液がパンツの中にドクドクと溢れ出してきている。今にも射精してしまいそうだ。肛門に力を入れて必死に精液の流出をこらえる。
危うくオッパイを見せつけられただけでイカされてしまうところだった。
少女は、ソファに転がっているスポーツバッグを手に取るとリビングの端に設えられた二階へと続く階段を、逞しくも形のいいお尻を揺らしながら上がっていった。
食欲も体力も筋肉もバストも、どれも規格外の少女だった。
「ねぇヒロ君」
絵梨那が神妙な面持ちで声をかけてきた。
美依那に欲情してしまったことを咎められるのかと思ってドキリとした。
「今日はもう帰らない?」
申し訳なさそうな顔をうかべながらも妙にきっぱりと言い切った。
「えっ! どうして?」
双羽家から、寛哉の住む街までは新幹線も乗りついでいかなければならない。自宅まで帰り着くには、少なくとも四時間は要する。
泊めてもらえるものだと聞いてやってきたのに一体どういうことだろう。
「そうよね。早く帰らないと、電車がなくなっちゃうんじゃないの?」
義母まで帰宅を促すので、寛哉はもしかしたら歓迎されていないのでは、という思いがして、本当に帰ろうかと立ち上がってバッグを手に取ろうとした。
「イヤ! ……せ…せっかく来たんだから。泊まっていくといい。……ホ、ホラ。一緒に呑もう」
とっさに義父が引き留めた。その声は切羽詰まったように引きつっている。
ぎこちなく立ち上がると、戸棚から一目で高級品とわかるブランデーを取り出し、水割りを作って寛哉の前に差し出す。まるで病人のように震える手だった。
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