ふかふかな世界の甘々ヒーラー 作:カタナちゃん
「それで!! それで!!! その後はいったいどうなったんで? 旦那!?」
「あー、期待してるとこ悪いけど、女の子が2人増えた所でお暇したよ。あれ以上目立つとアレだったし」
セイとの稽古の話。
女の子ゴブリンたちは、自分のペニスにだけしか興味ない、と言わんばかりだったのに、その口を、手を止めて気づけば皆目を輝かせながら話を聞き入っていた。
聞く所によると、勇者と名乗るだけあって、セイのことは皆知ってるらしい。人類側の最高戦力とも呼ばれているらしく、忌むべき相手として。
そんな相手を手玉にとるどころか、寧ろ稽古をつけてやる程の力の差を見せつけていた。
目を輝かせる理由もわかる、というものだ。
「はえー。やっぱ旦那はスケールが違うな!!」
「うおおお!! すげーー!! すげーー!!!!」
助けた男ゴブリンたちが勝鬨でもあげるのか? と言わんばかりに、声を挙げていた。
再三言うつもりは無いが………いや、味方にはならないからと、何度か言ったほうが良いか? と頭を過ぎるが、取り敢えず苦笑いだけで済ませる。
一応、怨敵、人間に分類する自分とは言え、命の恩人。力の差があるから、というわけではなく、多大なる恩義のある自分を困らせる様な事はしないだろう、とわかっているからだ。
「はー、賑やかなことだな」
気づけば大所帯になってるこの空間。
そろそろ食料の問題もあるし、皆の故郷である暗黒大陸へ向かうか、と体を起こした。
「ん? 旦那、またどこかへ行くんで?」
その行動を見ていたゴブリンの一人が声をかけた。
それを聞いたあと、軽く手を挙げて、そして横へ振り。
「そろそろ、暗黒大陸って場所に行こうと思ってな? 言ってたふかふかダンジョンってのも気になるし?」
そう言うと同時に、賑やかだったこの場が一気に静寂なものへと変えた。
その変わりぶりに、どうした? と振り返った途端。
何人かの女の子ゴブリンたちが突撃してきた。
「おわっ!!??」
「旦那様っ!!」
「大好き!! 大好きです!!」
「愛してます!!!!」
今生きてるだけでも十分すぎるのに。
子供が助かり、仲間たちが助かり、これ以上無いというのに、当たり前のように、故郷へと帰れる。故郷へと帰してくれる彼の姿を見て、感情が爆発したようだ。
圧倒的感謝。計り知れない程の恩義。どうすれば恩義を返すことができるか、想像すらできない。
取り敢えず、身体をくっつけると、爆発した感情以上に高まった性欲を思いっきり彼にぶつけるのだった。
………おかげで、出発がかなり遅れてしまったのは言うまでもない。
暗黒大陸――その名は、聞くものによればロマン。と呼ぶものもいるだろう。
複数の国家、大軍団を持ってしてもひたすら巨大過ぎて、精々一部程度しかわからない。全容を把握できない超巨大なダンジョン。
人工物があるのか、自然しかないのか、それも不明。ただただ邪悪なるモンスターの群れ。それを突破した先にあるのが、未知の古代都市。
超巨大な謎。それこそがロマンだと、冒険者になって踏破を目指そうとする者も後を絶たない。
だが、その内情を少しでも知れば、暗黒大陸とは恐怖と混沌の代名詞だとわかるだろう。
剣の刃と血の匂いが織りなす、終わりなき戦野。
荒涼とした岩場は風に削られ、黒々とした森は獣の咆哮を飲み込む。
深き不可知の迷宮――ふかふかダンジョンと呼ばれる。
その緩く愛らしいとも言える名のダンジョンな癖に、先刻でもあった通り、複数の国家の軍勢すら飲み込んだ底知れぬ闇。
人類はここを禁忌と呼び、そして放置すれば人類は食い荒らされる、と時の皇帝たちは宣言し、幾星霜の時を重ねて、戦果を残してきた。
それら果てがない、終わりなき戦い。戦争。
亜人たち、オークの剛腕、ゴブリンの狡猾、レッドキャップの血に飢えた刃。この地では生き延びるための試練に過ぎない。
そして、その頂点に君臨するのは、ドラゴン――古の炎と鱗に守られた、悠久の王者たち。
彼らにとって、人類も亜人も、巣に這う毒虫に等しい。
何をしようが構わない、と思う個体もいれば、気まぐれに踏み潰し、炎で焼き尽くす個体もいる。つまり全ての頂点と呼ばれる存在がドラゴン。人類も、亜人も、その他全てが本当の意味で禁忌と定め、不可侵を貫く存在。
ありとあらゆる手段を用いて、永遠の戦争を繰り広げる。
この大陸は、弱肉強食の理を体現する舞台。生きる者は、ただ戦い、喰らい、血を流してその生を証明するのみ。
その日、そんな暗黒大陸の空気が一変した。
「ん? なんや? ボーゲンのおっさん」
「……………」
弓の鍛錬を欠かせない男が、突如空を見上げ、固まっていた。
まるで、何かを察したかのように。
最初にその異変を察したのも、彼かもしれない。ボーゲンと呼ばれる男は、問に対して答えることなく、数刻ほど見上げた後に、何かを振り払うかのように、矢を射続ける。
鍛え抜かれた鋼の刃を握る手が、理由もなく震えていた。
戦場で幾千の敵を屠ってきた彼は、意味もなく矢を、鍛錬をする事はない。ただ、何かを振り払うように、只管何度も何度も。取り巻きたちが引き上げても、留まり只管に射続ける。
何百本をゆうに超え、千も突破した後もその背は冷たい。心臓が不快な鼓動を刻んだ。
「何だ……この感覚は?」
虚空を見据えた。まるでそこに、目に見えぬ巨獣が潜んでいるかのようだった。
「カタナちゃん? どうした??」
「………………」
それは、性交時。
剣の姫、剣姫と呼ばれる少女カタナは、陰部にペニスを収めた後、信じられないくらい震えていた。
膣が痙攣したかようにうねりあげ、それは男たちを喜ばせる事に繋がったのだが、その様子がいつもと違う事に、直ぐに皆は気付く。
息遣いが荒く、頬はとんでもなく紅潮し、これほどまでの彼女は見たことなかったからだ。
発情した? と言うのとはまた違う。
「ちょっと、休憩………」
彼女はそう言うと、傍らに置いていた剣を手にして、立ち上がる。
カタナの行動の意味がわからない男たちは、ただただ頭に疑問符を浮かべるが、それを問いただそうとする者はいなかった。
カタナの雰囲気が、それをさせなかった、とも言える。
「なに…………? この、感覚」
少し離れた場所で、天を見上げた。
今日の暗黒大陸は、信じられないくらい静かだと、この時初めて知った瞬間だった。
次に、亜人たちの心がざわめいた。
「…………」
「? 白面様?」
人間は皆殺し。
それを胸に抱き、全ての人間を殺すことだけを考え、鍛錬をそして作戦を、と行動してきた白面金毛と呼ばれるレッドキャップの種族の英雄。
手にした長槍を肩に、暫くの間空を見上げ続ける。
そこに、何かがあるわけではない。ただただ空だけを見続けていた。
「心が、休まりませんね」
暫くしてそう言うと、ゆっくりと身体を起こして長槍を振るう。
一度、二度、三度、目にも留まらぬ斬撃。
百斬の念を抱き迫り……心を無に、斬った先の事柄のみを念じる百斬無斬の理。
その念を、今は掻き乱されている。
何度振るおうとも、邪念が払拭できない。
人間の全てを滅ぼし、皆殺しにすると言う使命を果たそうと念じても、念じても、雑念が振り切れない。
「………何が、きた?」
白面金毛は空をまた見上げる。
こんな感覚は初めてだと、長槍を虚空に突き立てながら。
そして最後、
暗黒大陸の真の支配者――ドラゴンたちをも動く。
古の鱗に覆われた王者たちは、悠久の眠りから黄金の瞳を開いた。深淵の洞窟に響く彼らの息吹が、初めて不規則に揺れた。
炎を吐く喉が震え、鋭い爪が岩を抉り、大地そのものがその怒りに共鳴するかのようだった。
彼らは自らが頂点捕食者である事を自覚している。
故に他の生物を、人類を、亜人を、ただの毒虫。火を扱う程度の虫である。と蔑んできた。
だからこそ、自分たちを脅かす存在などあるわけもない。
何者であろうと、気まぐれに踏み潰し、炎で焼き払い、破滅させることなど造作もない。
これが常だった。
なのだが、この瞬間、彼らの本能が警告を発した。
何かが、異質なものが、すべてと異なるものが現れたのだ、と。
悪夢のような感覚だった。
彼らの炎も、爪も、鱗も、決して及ばぬ存在が、この暗黒大陸に足を踏み入れたのだ。
一頭の古龍が、翼を広げ、空を見上げて咆哮した。
その声は、大陸の深部を震わせ、ふかふかダンジョンと呼ばれる深淵の迷宮すら揺さぶった。
ドラゴンたちはまるで知っていたかのようだった。
異端なる存在が、この地を根底から覆すことになる、と。
その本能が吠えていた。
運命をかえ、この暗黒大陸を、ひいてはこの世界すらも揺るがす嵐となることを。
「だーかーらー。もーじゅーぶんだろ?? どんだけヤレば気が済むんだ???」
「あと、あと1………10回!!」
「旦那様❤まだ元気いっぱい! 旦那様、まだまだ出せるから!」
「種付け! もっと、もっとお願いっ❤」
「すげー………、今のでぬかずの10連発?」
「リアルに子宮破裂さす勢いで、精液出すの、初めて見た」
「生物として根本から違うって感じだ………」
暗黒大陸へ足を踏み入れ………、そして今。
故郷の地へ戻ってこれた事を歓喜した、各種族の女たちが、最大の恩義と共に、彼へと迫る迫る迫る。
ただならぬ気配をこの暗黒大陸へ持ち込んだ男の長い夜はまだ終わらない。