今日BUILD DiVERSのメンバーはそれぞれ所用があり、GBNにダイブで来たのはヒロトとイヴの二人だけだった。予定が合わない以上は仕方ないと、二人は当然どこで何をして遊ぼうかと思案する。先に案を出したのはイヴの方だった。
「エルドラに行きたい。ほら、前に少し大きな村を見つけたよね?あそこ」
「ああ、じゃあそこに行こうか」
「お金もちょっとは使わないとね」
「そうだな」
本人たちからしてみればそんな事は決して思えないが、エルドラという星に生きる人々を全て救ったヒロト達はエルドラでは英雄扱いだ。特にBUILD DiVERSと直に接した事のある山の民からの感謝の念は深い。星一つ救うという偉業は何を持ってしても報い難く、村一つが所持しているお金を寄せ集めたところでつり合いが取れる訳もない、ただでさえフレディの暮らす村も少なからず被害を受けているので当然だ。
個人的な感謝の言葉を受けてヒロト達からすればそれで十分であったが、その次に渡された贈り物中には当然お金もあった。それには『筋』や『道理』といった大事な情が含まれていて、まさかそれを受け取らない訳にはいかなかった。
そうしてお金を貰ったはいいが純エルドラ産の物を買ってもGBNにすら持って帰る事はできず、向こうでの軽食や飲み物以外に特に買う物がない事がBUILD DiVERSにとって目下の悩みとなっている。エルドラで遊ぶときに各々お小遣いの範疇で使えば良いと皆で決めた物のお金の山はまだまだ有り余っているのが現状だ。
二人はエルドラに繋がる路地からいつものようにクアドルンに声をかけエルドラへと転移した。
BUILD DiVERS全員で使っているお金を幾らか持っていき、コアガンダムⅡで目的地へと飛んでいく。
「そのカーディガン、いいね。似合ってる」
「そう?えへへ、ありがとう」
コックピットの中でイヴは無邪気に甘い笑顔を浮かべた。
その可愛らしい反応に思わずヒロトの頬も少しだけ赤くなる、外見に関する誉め言葉を言う際に抱く気恥ずかしさには少し耐えれるようになったが彼女の甘い表情に彼は未だ慣れそうにない。
「この生地凄く肌触りがいいみたい」
「へぇ、そうなのか」
イヴはエルドラに行く直前いつものドレスから動きやすいように白いワンピースに着替え、その上に水色のカーディガンを羽織っていた。淡い水色は彼女の目の色によく似ており、ヒロトに印象深く目に映った。
ヒロトは自身の服装にあまり執着がない、操縦桿から片方の手を離して羽織っているポンチョを指先で触る。ポンチョはGBN内で稀に遭遇する砂塵や雨よけ対策として選んだもので、今まであまり意識してこなかった。
「固いな」
「ん?」
何が?と首を傾げるイヴにヒロトは操縦桿を持ち直して答える。
「俺が被っている……外套?コート?あんまり気にしてなかったけど、こういう感触もGBNに居る時と比べたら違うんだろうな」
ポンチョという名称が思い浮かばなかったヒロトは、こうは言わないのだろうなと半ば確信をもちつつも伝わればいいかと言葉にする。意を得たイヴは頷いて、彼の背中に片手を当てる。
「うん、全然違う」
イヴからすれば違いは明白だ。
エルドラに居る時は触れた物がどんな感触かしっかりわかる事は勿論、服越しの微かな熱すら感じる事が出来る。GBNではここまで細かく感覚を得る事はできない。こんなに細かく物理データを入れていたらサーバーに対する負荷が尋常ではないという問題もあるが、そもそも過剰なフィードバックは全年齢対応のゲームでは禁止されている。
今日の目的地である村の近くにコアガンダムを下ろしたヒロトは機体が悪目立ちせぬように光学迷彩を起動して透明化させた。コアガンダムの外に二人で出た後に彼は透明化した愛機の装甲を撫でて呟く。
「よし、見えなくなっているな」
「オプションアイテムを取りに行った甲斐があったね」
抜け目なく確認するヒロトにイヴは微笑みかけて、彼女自身も透明化したコアガンダムに触れた。
「静かにしててね」
「……じゃあ、行くか」
子供にお留守番を頼むかのような口調で語りかけるイヴを見守りヒロトが促す。彼女はヒロトの腕を取ると上目遣いで問いかけた。
「今日はどうしよっか?」
「うーん。奥に湖があったから、何か食べ物を買ってそこまで行くのはどうだろう」
提案を聞いたイヴは絡めた腕をギュッと抱いてヒロトに寄りかかる。
「ボートが有ったら乗ってみたい」
「そうだな。……なら借りれたらやってみるか」
かなり前の事ではあるが、GBNで手漕ぎボートに乗った事があるヒロトは焦らず操作すれば船が転覆するような事は無いだろうと考えながら彼女の言葉に頷いた。
二人はゆったりとした歩調で村の入り口へと歩き始める。
村の中に入るとそこそこに賑わっている商店街が見えてきた。この星の常識で見ると変わった見た目をしている二人は人目を引いたが、くっついて話をする様子からどこにでもいるカップルなのだろうと大した時間を掛けずに周囲に溶け込んだ。
いろんな露店を吟味した後に売られているサンドイッチらしきものを買い込んで二人が村の奥へと足を進めると後ろから声を掛けられた。
「お、あんたらこんな所で何やってるんだ?」
ヒロトとイヴはその声に反応して振り返り、二人そろって首を傾げた。ヒロトは自身の記憶と目の前の住人を照らし合わせたが名前が出てこない。住人は二人の様子にすまんすまんと謝った。
「悪いな、慣れなれしく声を掛けてしまって、俺はガバン、フレディの親戚だ」
「なるほど、フレディの。すいません、分からなくて」
「いや、あの時は俺が一方的にあんたらの話を聞いただけだったからなぁ」
分からないのも当然だとガバンは頷いた。イヴは先ほどの問いに対してガバンに返答をする。
「私たちはただ遊びに来ただけなんです、奥の湖まで行こうとしていて」
「あー、なら今はやめて置いたほうが良いな」
やはり引き留めてよかったとガバンは安堵する。ヒロトは彼の言葉に何故と問いかけた。
「何か立ち入ってはいけない理由があるんですか」
この村特有の聖域だったり、あるいはお墓であったりするのかもしれないとヒロトは考えていた。だがガバンはあっけらかんと否定する。
「いや、別にそんなことねぇ。ただ――」
「あら?」
その時一滴の雫がイブの頭に落ちてきた。同じく水滴に当たったガバンがゲッと声を上げた、そうなるとヒロトもすぐに察する。
「雨か」
「そういうこった。ここはすぐ大雨になるぞ、とりあえず家に来い」
「「えっ」」
そういうや否やガバンは大きな体躯を活かして二人を抱えるとドスドスと音を立てて走り始めた。
ガバンの言う通り見る間に雨が強くなっていき、つい先ほどまで開いていた露店がもう閉じている。この天候の急変に慣れた対応をしているのだと理解した二人は、問答無用と駆ける彼に揺られながら視線を交わし、とりあえず成り行きに身を任せる事にした。
◆◆◆
酒場と宿を兼ねた店がガバンの家だった。軽く濡れてしまった二人に彼はタオルと上階の一室のカギも渡してきた。
「二階に上がって一番奥の部屋のカギだ、雨が止むまでゆっくりしてくれ」
「……じゃあお言葉に甘えて、ありがとうございます」
ここまでいたあれこれと世話を焼かれると遠慮してしまいそうになるが、ヒロトはグッと堪えて厚意を受け取る事にした。エルドラのいろいろな場所でふいに厚意を向けられる事があり、経験上こういうパターンで遠慮した所で押し切られるだけなのだ。
ヒロトとイヴは連れ立って二階に上がり、言われた部屋に入る。
「エルドラに来てからこういう泊まれる所に入ったのは初めてだな」
大きめのベットと机、二脚の椅子くらいしかないが一夜を過ごすには十分な空間だ。イヴはヒロトの手を引いて彼をベットの上に座らせた。
「拭いてあげる」
「ん」
ヒロトは素直にイヴに身を任せる事にした。思った通りのデートとはいかなかったが彼女は気にした様子もなく上機嫌に鼻歌を歌いながらヒロトの髪を拭いて、ついでに彼のポンチョを取り去った。イヴは壁にかかったハンガーにヒロトのポンチョを引っかけ、ハンガーを元あった場所に戻す。
「はい、交代っ」
「……わかった」
彼女に強請られてヒロトはイヴの髪についた水分を丁寧に拭う。
さらさらとした髪はタオル越しにもその柔らかさを伝えてくるようだった。
――そういえば、こんなふうにイヴの髪に触れた事がないな。
手を繋いだり、何度かキスをした事はあるがGBNではそれが限度だ。イヴは日頃からヒロトに抱き着いたりしているが、力加減を間違えればシステムの防壁が二人を別つ。エルドラではその縛りが効かない、ヒロトは理屈として理解はしていたが感覚として強くそれを認識したのは水辺でBBQをしたあの時だ。
イヴはヒロトが少し上の空になっていること見抜いて、悪戯気に彼の頭を引き寄せる。
「っお」
驚いたヒロトの唇に柔らかな感触が伝わって来た。イヴにキスをされたと分かったのは数秒後でヒロトは混乱したように呻いた。
「な、なんで?」
「したかったから、ダメだった?」
ヒロトが戸惑った反応をしてきたのでイヴは素直に答えて首を傾げる。彼女の不安げな声にヒロトはすぐさま首を振った。
「そんな事は無いけど」
「ふふっ、じゃあもう一回」
イヴは嬉し気に微笑んでヒロトに顔を寄せてきた。まってくれ、と止める暇もなく彼女からのキスは二度三度と続く。いつの間にか髪を拭くという名目は零れ落ちて雨音に隠れるような僅かな音だけが二人の聴覚を満たす。
――やばい。
ヒロトは血流が有らぬところに集中するのを感じた。エルドラでは陰部も再現されているというのはそれこそ感覚で理解していたが、まさかそういう意味で機能するとは思って居なかった。そして分かってしまえばみるみる内に股のあたりが窮屈になってきた。
ヒロトは思わずイヴの肩を掴んで引き離す、彼女は目を見開いた。
「どうしたの?」
「い、いや、ちょっとまってくれ」
「うん?」
イヴはヒロトの様子を見て、小さく声を上げた。
「……ぁ。ヒロト、もしかしてこういうことした事ない?」
「……」
何も答えられずにいるヒロトにイヴは俄かに興奮を覚え、彼に身を寄せて微笑みかけた。
「大丈夫、恥ずかしくないよ」
「ぅん」
ヒロトは健康な男子高校生でこう言う事に興味がない訳がない。ただ彼は過去に凄まじい心の傷を受け、それに伴ってこの手の欲求をうまく消化できなくなってしまっていた。現代の子供としての価値観もある、言葉にできずともこういう行為にはそれ相応の準備が必要だとか、こんな勢い任せで良いのかとかという戸惑いがあった。
そんな心に囁かれるイヴの言葉はもはや劇薬だ。
「この身体なら病気になったりしないし、子供が出来たりもしない」
イヴはヒロトと結ばれることはないと理解している、心がどれだけ溶け合ってもどうしたって彼女に肉体は取り戻せない。
「意味なんて無いかもしれないけど、私はヒロトに触れたいし触れて欲しい」
ヒロトはどう?とイヴは甘やかにどこか切なそうに問いかける。ヒロトは万感の思いを込めて答えた。
「俺も、イヴに触れたい、触れて欲しい」
「うんっ」
ヒロトが顔を真っ赤にして答えると、イヴは心底幸せそうに声を上げた。そしてヒロトはもういっぱいいっぱいになって呻く。
「でも、今すぐは無理だ」
「……えぇー」
イヴはぷくーっと膨れ上がる。
「ごめんっ、でも、俺、こんなつもりで今日ここに来たわけじゃなくてっ」
ヒロトが珍しく泡を食っている様子を見てイヴは留飲を下げる事にした。
「いきなりすぎたよね、わかった」
「……ごめん」
申し訳ない気持ちを抱きつつヒロトは正直な所で助かったととも思う。イヴが目をぎらつかせてヒロトを押し倒したのはその瞬間だった。
「うわっ!?」
「あのね、ヒロト」
彼を押し倒したイヴは視線を合わせて告げる。
「な、何?」
「練習をしよう」
「練習?」
オウム返しにするヒロトにイヴは頷く。
「ヒロトは照れ屋だから、練習」
そうしてイヴはヒロトの首筋に舌を這わせた。ぬるりとした感覚にヒロトは身を固くする。イヴは彼の初心な反応に微笑むとそのまま彼のベルトに手を掛けた。
「ちょ、イヴ!?」
「練習だから、ヒロトは気持ち良くなるだけでいいよ」
度重なるスキンシップで彼のモノが臨戦態勢にある事は変わらない。ヒロトのズボンにイヴの小さな手が入り込みそっとそこを撫でる、彼の反応は劇的だった。
「っあ」
「怖くないよ」
イヴはヒロトに囁きながら彼のズボンのボタンをはずしチャックを下ろす。その後、直ぐに窮屈な空間から解き放たれた彼の陰茎は硬く反り立っていた。
「イヴっ」
「恥ずかしくないよ」
小さな手は柔らかく陰茎を撫でさすり、次第に掴む形になって優しくモノをしごく。ヒロトは快感に眉を寄せて僅かに唸る。
「ぅ、くっ、うぅ」
「いっぱいきもちよくなって、一番いい時に出していいからね」
彼女の手は時に角度を変えて先っぽを弄ったり竿をしごいたりとヒロトを気持ちよくさせるために余念がない。我慢汁でぐちょぐちょになった手と彼のモノが卑猥な音をぐちゅぐちゅと立てていた。
「だめ、だ」
「ん、
「んぐっ、くっ」
びゅるっ!
「っあ」
ぶるぶると震えた陰茎からねばついたものが噴き上がる、イヴは手の動きを早くしてヒロトの更なる射精を促した。
興奮のあまり体感時間がおかしくなったヒロトは何分も射精をしていたように感じながら荒く息を吐く。イヴは右手にべっとりとついた白い液体をみて満足気に呟いた。
「いっぱいでたね」
「はぁ、っ、はぁ……」
イヴは自身の手で絶頂を迎えたヒロトに微笑みかける。
「きもちよかった?」
「……」
その問いに対してどう答えていいか分からずにヒロトは小さく頷いた。イヴはクスクスと笑うと、こう呟いた。
「じゃあ、次は口で気持ちよくしてあげる」
「……もう勘弁してくれ」