★★★(みゆ)
悠介さんとの初夜の翌日。
なんだか、歩きにくかった。
痛かったのだ。ジンジンする。
ようやく、精神的にも、法的にも、神様的にも、そして生き物としても夫婦になれた翌日なのに。
朝、起きると悠介さんが先に起きてて。
簡単な朝食を作ってくれてた。
この家の二人のテーブルに並んでいるのは……パンと、目玉焼きと、野菜サラダ。
ホント簡単。
昨日はドタバタしてたから……
「おはよう、みゆ」
「おはよう、悠介さん」
朝の挨拶。
したんだけど……
そのときに、昨日の初セックスのことが頭を過ってしまう。
反射的に顔を伏せる。
男の人に全部見せて、全てを捧げてしまった……
おっぱいとか、アソコとか弄られて、乱れているところも見られてしまった……
恥ずかしい。流石に。
でも。
これから二人で経験を積んで、これが普通になればそういうことも無くなるのかな?
……恥ずかしいのは私だけでは無かったようで。
見ると、悠介さんも私から視線を逸らしていた。
昨日のこと、思い返しているんだろうか?
私で満足してくれたんだろうか……?
私、色気ないと思うから、心配だったんだけど。
でも……
私は下腹部を見る。
ここに……あるんだよね。
昨日のが。
私のお腹の中に、悠介さんが注いだ赤ちゃんの素があって。
精子が泳いでるんだよね……。
それを想像すると、ゾクッ、とした。
あ、そっか……
今、私は赤ちゃんを身籠れるかもしれない状態なのか……
所謂、スタンバイ状態?
なんか興奮してきた……
また、心臓の鼓動が早くなる。
顔も紅潮してくる気配がある。
イカン……これはイカン……!
これから、私だって仕事あるのに。
仕事……仕事か。
営業のお仕事……
このまま、子宮の中に悠介さんの出した赤ちゃんの素を溜めたまま仕事に行って。
もし、そのときに私が排卵したら……。
仕事中、お客さんや同僚の見てる前で、私、受精してしまうのかもしれない。
それって……
イカンイカン!
詳しく考えてるととんでもないことになる予感がする!
とりあえず!
ご飯を食べよう!
私はテーブルの椅子を引いて、悠介さんの向かいに座った。
悠介さんは黙々と食事している。
私も食事を開始する。
ひと言も喋らずに。
……夫婦の生活、超興奮する!
★★★(悠介)
夫婦の最初の朝は、ちょっと気まずかった。
まあ、お互い他人に見せられないものを見せたわけだから、当然かもしれないけど。
これが日常化するのか……
ちょっと、複雑だった。
果たして、慣れるんだろうか?
……まあ、皆慣れるから社会が成り立ってる気もする。
皆が慣れなくて、パートナーとセックスするたびに落ち着かなくなってたら問題だ。
みゆと二人、黙々と食事をして。
二人一緒に、新居を出た。
僕たちは別々の会社に向かう。
僕の職場は、研究所。
工場に併設された研究所だ。
僕は更衣室で研究員としての作業着に着替え、職場である研究室に向かった。
「おはようございます」
いつものように挨拶をする。
「おはよう。どうだ? 結婚生活は」
上司である研究室長が僕の挨拶に挨拶を返してきた。
「まあ、慣れてませんね。まだ初心者みたいなものですから」
「これからは家族を支えるためにバリバリ仕事してもらうからな。まだ若いんだし、徹夜の2日や3日は平気だよな?」
ガハハと笑いながら、そんなことを言われる。
……これが冗談でないのは、先輩たちの働き方を見てれば分かるんだよな。
気を引き締めないと。
「それに子供が生まれたら、一気に忙しくなるぞ。自由時間なんて無くなるかもな! 女房も、暴れるようになるし。ワシなんぞ、趣味のパチンコで5万円負けた、って言ったら湯沸かしポットを投げつけられたわ」
……いや、さすがにそれは室長が悪いでしょ。
と、内心思ったが、口に出すのはやめておいた。
会社に居づらくなると困るしね。
昔だったら言っていたかもしれない。
でも、今は色々違うから。
守らないといけない人がいるから。
みゆと結婚したことで、僕は色々変わった気がする。
子供の話題も、自分の話題と思えるようになってきた。
これまでは、他人の話題だったのに。
そんな自分の変化が、面白い、と思った。
パチンコ5万で湯沸かしポットは実話です。(誰の?)
※身内の話では無い。