★★★(みゆ)
谷家の玄関にて。
悠介さんのご家族に挨拶する私。
「よろしくお願いします」
悠介さんのご家族。
義両親、おばあちゃん。
私は高校時代、おばあちゃんには顔を合わせたことがあった。
私よりちょっと背が低くて、優しそうな人。
いい人だと思う。
当時の私はファッションでピンク髪だったのに、お土産をくれた。
家庭菜園で作ってたお野菜なんだけど。
それを袋一杯、くれたんだ。
ピンク髪の私に。
「お久しぶりです」
高校の時は何度かお会いしたけど、大学生になってからは全くお会いして無くて。
すごく緊張。
「本当に久しぶりね」
ニコニコと微笑みながらおばあちゃん。
こっちはコチコチなのに。
悠介さんのご家族なんだから、失礼が無いようにしないと!
悠介さんに無理言って、来させてもらってるんだし。
「高校以来だと思います!」
ペコペコ頭を下げながら。
ここでは私が新参者だから。
決してお客さんの顔をしてはいけないはず。
「今回はご苦労様ね」
「ご苦労様?」
……いきなり労われた。
何で?
私が疑問符を顔に浮かべていると。
「……おなかに触っていいかしら?」
おばあちゃんがそう私に言ってきた。
……へ?
おなかを触らせてくれと言われた……
言われるがままに、私はバンザイをしておなかを差し出す。
おばあちゃんは、私のおなかを撫でて
「ここに私の曾孫がいるのね……」
と言う。嬉しそうに。
あ……
私は……悠介さんのおばあちゃんに、曾孫を作ってあげたんだな……
なんだか、嬉しくなってくる。
私たちの愛の結晶が、他の人の喜びになるなんて。
「お母さん」
傍でそんな様子を見ていたお義母さんが、声を掛けて来た。
「そろそろみゆさんに家に入ってもらいましょう」
悠介さんのご両親。
悠介さんに似て、落ち着いた人たちだ。
私は、悠介さんがかつて使っていた部屋を宛がってもらった。
付き合い始めて最初の夏休み。
なりゆきで訪問させてもらった悠介さんの家。
そのときに、入らせてもらったけど。
今は、何も置いてない。
空っぽの部屋。
お客さん用なのか、かなり上等の布団が一式置いてあるだけ。
そこでポツンと一人、私は立っていた。
……あのときは、卒業アルバムを見せて貰ったり、勉強机を見せて貰ったりしたけど。
あのときにあったものが、今は何も無いな……
ここで、私は赤ちゃんを産むまで生活することになるんだね……
お義母さんは「何か要るものがあったら言ってね」って言ってたけど。
とりあえずは、布団だけあれば大丈夫かな。
自分のスーツケースを壁際に寄せて置いて。
私はスマホを取り出して、悠介さんに連絡を取る。
『今、着いた』
投稿。
すると、しばらくして返答が来た。
『何か問題あった?』
悠介さん。
時間は……今はお昼休みかな?
忙しい中、ありがとうございます。
『ううん。何も無かったよ。そっちは?』
『みゆが居なくなったから、寂しいよ』
……じ~んとした。
私と同じ気持ちで居てくれる……
『家の事は出来る限りやるけど、みゆが帰って来たとき、多少荒れてても怒らないでね』
うん……それはしょうがない……
『掃除は週に1回、洗濯は週に2回まとめてやる』
……そうなるよねぇ。
忙しいんだから。
『食事はまぁ、なんとかするよ』
……男性の料理って、テキトーっぽいイメージあるけど。
大丈夫だよね……?
『分かった。お仕事頑張って』
私の返信。
それに
『うん。そっちも元気な赤ちゃんを産んでね。みゆ』
そんな返信が返って来た。
私はスマホを抱きしめる。
悠介さん……!
離れていても、繋がっている。
それを私は感じ入って、立ち尽くしていた。
会えない間が愛を育てるのさー(ばいみゆ