※この作品はR-18です。

男の子が欲しい夫婦の話。   作:XX(旧山川海のすけ)

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良くない訪問者


幼児用玩具を探している奥さんの話。

★★★(みゆ)

 

 

 娘の悠子の首が座ってきて、高這いでハイハイができるようになり。

 悠子の機動力が上がってきて、より目を離しにくい状況になったころ。

 

 そろそろガラガラやらボールやら以外の玩具を用意してあげるべきなのかな、と思っていた。

 

 悠介さんは「粘土で良くない? 僕はそれで遊んでたよ」って言うんだけど。

 粘土は……ダメでしょ。

 

 女の子だよ?

 

 ああ、でも……こういう「女の子だ」っていうの。

 良くないかも知れないんだよなぁ……。

 

 粘土……アリなのかな?

 

 私は粘土を買う前に調べてみようとパソコンで検索してみたら

 

 対象年齢:3歳以上

 

 ……ちょっと早いんじゃないかな?

 

 でも……

 

 私は床でボールを転がして遊んでる悠子を見た。

 悠介さんの子供だし、いけるか……?

 

 どこかに1歳未満で3歳の可能性の片鱗ない……?

 

 悠子の可能性を探ろうと、その動きを見ていたら。

 

 ピンポーン。

 

 インターホンが鳴った。

 

 ……誰だろう?

 

 今は昼下がり。

 変な人が来る可能性は……ないよね。多分。

 

「はいー」

 

 私は悠子を抱き上げて。

 来客の応対をしに出て行った。

 

 

 

「どなた様でしょうか?」

 

 私はドア越しに応対をする。

 念のため。

 

 こんな日の高いうちに強盗は来ない。

 そう思っていたけど。一応。

 

 すると。

 

「こちらさん、若いご夫婦とお伺いしておりまして。私ども、幼児用玩具の通信販売を手掛けておるのですが……」

 

 お……?

 

 幼児用玩具の訪問販売?

 

 たった今、それを探していたため。

 そのあまりのベストタイミングさに、私は警戒心を解いてしまった。

 

 これを、後から後悔することになるとは。

 そのときは思わなかった。

 

 

 

 玄関ドアを開けると、スーツ姿の中年男性が立っていた。

 片手に鞄。

 体型はちょっと太り気味。

 頭髪は整えられていて、一応の身だしなみは整えている感じ。

 

「玩具の訪問販売ですか?」

 

「ええ、まあ」

 

 ニッ、と笑顔を浮かべ。

 揉み手をせんばかりの態度で私に向かってくる。

 

 うーん。

 悪いけど、ちょっとキモいかもしれない。

 

 でも、気になるんだよなぁ。

 女の子にも男の子にも、共用で使用できて、良い感じの玩具があれば買いたくはあるわけだし……。

 

 だって男女共用だったら、悠子の趣味がどっちでも対応可、でしょ?

 

「どんなものがあるんですか?」

 

 まぁ、とりあえず見せて貰おう。

 私はカタログ的なものを要求した。

 

 すると販売員のおじさんは、鞄から小冊子みたいなものを出してきて。

 

「このようなものを揃えております」

 

 って言った。

 

 悠子を抱きながら、パラリ。

 

『海外で大人気!』

 

『天才を育てる!』

 

『最高の知育環境を!』

 

 ……様々な触れ込みで。

 色々なタイプの玩具がカタログされているんだけど。

 パズルだとか、噛むタイプの玩具とか、色々。

 

 色々な玩具がある。

 それは分かった。

 

 ……問題は値段。

 

 ……全部、万単位の値段がついてる。

 これはちょっと……買えない。

 

 うん。ありえない。流石に。

 私は冊子を閉じた。

 

「……どうでしょう?」

 

 ……逆上しないように、丁寧に断らないと。

 マズったなぁ。

 それを私は後悔した。

 

 こういうとき、女は不利だと思う。

 男性が逆上したとき、女にはなす術が無いから。

 

「大変良い商品ばかりだと思うのですが、ちょっとウチの子はまだ1歳になってませんので……」

 

 こっちも愛想笑いを浮かべて、冊子を返そうとする。

 すると

 

「先に購入しておく方もいらっしゃいますよ」

 

 冗談じゃない!

 万単位の玩具をホイホイ買えるほど、ウチは裕福じゃないから!

 

 私は心で叫びつつ、こう返した。

 

「いえ、そのときになってから改めて考えてみようかなと……」

 

 冊子を差し出したまま。

 

「是非、ご検討を。絶対にお子さんにいい影響があると思うんですよ」

 

 受け取らない……

 どうしよう……?

 

「いえ、本当に結構ですので……」

 

「結構ですか。ならばこちらはどうでしょうか?」

 

 ……別の冊子を取り出してきた……!

 終わらない……

 

 作り笑顔が強張ってくる。

 

 どうすればいいのやら……

 

「いえ、本当に要らないんで……」

 

 言い直す。訪問販売員あるあるの揚げ足取りを避けるために。

 

「どうかご検討を!」

 

「ですから、要らないです。申し訳ありませんが」

 

 そして。

 しばしの沈黙。

 

 なんだか、空気が凍り付いている気がした。

 

 そしたら

 

「……ふざけんなよクソ女が!」

 

 男性の怒声……

 

 私は青ざめる。

 ……これを恐れていたから。

 

 どうしよう……

 

 悠子だけは守らないと……!

 

 娘を抱え、後ずさる。

 可能なら、そのままドアの内側に逃げ込んで、鍵を掛けたかった。

 

 だけど、その前に来た。

 

「お前な! ここのアパートから動くなよ!? お前のガキがどんなもんになるか見てやるからな!? どうせクソみたいなもんにしかならんだろうけどな! じゃあな! クソが!」

 

 唾を飛ばしながら一気に捲し立て、そのまま男性は去っていく。

 恐れていた直接暴力は何も来なかった。

 

 来なかったけど……

 

 男性が去って、恐怖が消えてから。

 

「……よくも……よくも私たちの悠子を……!」

 

 私は震えていた。

 怒りのあまり。

 

 私はバカだからバカにされるのは構わない。

 だけど、娘までバカにされたのは許せない……

 

 許せないよ……悠介さん……!




こういうとんでもねー訪問販売はマジであったりするから、育休で家に引っ込んでるママさんは大変ね
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