★★★(悠介)
僕はみゆに申し訳なく思っている。
普段仕事ばかりで悠子の育児に参加できていないから。
家事もほぼ任せきりだし。
だから、家に居るときはなるべくみゆの肩代わりをしようとは思ってはいるのだけど。
……正直、それが少しやりづらくなってきた。
僕の仕事は、仕事外でも自発的に知識の拡大に努める必要がある。
そのため、僕は海外の科学雑誌を定期購読してる。
理由は、会社で社内回覧で回ってくる技術雑誌が、全部日本語だからだ。
学生時代は英語の技術論文を訳して要点を纏めることを勉強の一環でしていたから、自分で読むならこっちなのかな、という考えだ。
とりあえず、僕は学生時代よく訳していた科学雑誌を買って読んでいる。
悠子を抱っこするときに。
これなら、悠子を抱っこしながらでも出来るから、育児と仕事の一環の読書が両立出来て良かったんだけど。
……最近これがやりづらくなってきた。
理由は、最近悠子は抱っこではなく肩車を求めるからだ。
……現に今、僕の首の上には悠子が鎮座している。
原因はどうも、みゆが実家に帰ったときに、向こうの義兄さんが、悠子を構うときによく肩車をするかららしい。
悠子はそれをすっかり気に入ってしまい、こうして僕にもそれを求めてくる。
悠子を可愛がってくれるのはありがたいけど、正直辛い。
……何故なら、肩車を本格的にすると、読書の時間が取れなくなるからだ。
肩車を本格的にするなら、立つ必要がある。
立つとなると、読書しながらでは出来ない。危な過ぎるから。
なので僕は、肩車を求められたとき、立つかどうかの決断に迫られている。
……それでなくても、辛い部分はある。
暑いんだ。
幼児は体温が高いから。
悠子が肩に乗っかると、首周りの血管が、悠子の高い体温で温められてしまうことになる。
これが非常に暑い。
だけど「暑いから降りなさい」なんて可哀想だから言えない。
耐えるしかない。
それぐらい耐えられないのか? 我が子だろう?
……いくら悠子が可愛くても、暑いものは暑いんだ。
これに関しては、愛情とは別問題だと思う。
★★★(みゆ)
子供が生まれて、気づいたことがある。
まず、女性はほぼ無条件で子供に気に入られる。
男性はその逆で、なかなか気に入られない。
男性が気に入られるのには、何か理由が必要なんだ。
父親であるとか。遊んでくれるとか。
現に、鈴木家と谷家、両方の実家に遊びに行ったとき。
私のお母さんや、谷のお義母さんにはすぐ懐いたのに、お父さんやお義父さんには懐かなかった。
……特にお義父さんに懐かなかったのは申し訳なく思ってしまった。
すごく良くしていただいたのに。
これが何でなのか分からなくて、悠介さんに相談したら
「男は異臭がするんだよ。こればかりはどうしようもない」という返答。
……そういうもんなの?
で。
そういうわけだったから、最初悠子は兄ちゃんには懐かなかった。
メッチャ警戒して、私の後ろに隠れていた。
兄ちゃんはクソだけど、ここまで悠子に警戒されるとさすがに……
悠子、一応伯父さんなんだから、礼儀は守りなさいよ。
あなた、ここでは一番の新参者なんだからね?
と、言いたくなってしまう。理解できないだろうから伝わらないんだけど。
どうしたもんか、と思っていたら。
兄ちゃんは……
私が実家に帰ったからと、お母さんの手伝いをするために働いていると。
悠子が私をストーキングしてくる。
例によって。
まぁ、別に邪魔ってほどじゃないんだけど、作業の邪魔かな。強いて言えば。
だけど。
それが突然来なくなった。
何故か?
……兄ちゃんが、邪魔をし始めたからだ。
悠子が私のストーキングを開始して、一定以上私に近づくと。
兄ちゃんがひょいと悠子を持ち上げて。
私から引き離す。
近寄っては引き離され、近寄っては引き離され。
自分のストーキングが邪魔されるので、悠子はそのうちに兄ちゃんの動向を気にするようになった。
……まあ、どうやっても邪魔されるので、気にしたところで意味は無いんだけど。
で。
そのうち高い高いとか、肩車をされるようになって。
「キャハハハハハ!」
と笑うように。
……おや?
なんかいつの間にか懐いとる。
どういうことなの?
俺は鈴木兄を信じている。
クリスマスで妹のイチャコラの邪魔をしたのは、単に「勝手に俺の家族を増やすな」という兄特有の理不尽であることを。
だから叩かないであげて(なんでさ)