★★★(みゆ)
保育園に受かった。
しかも認可。
良かった。
私はそのときホッとした。
そろそろ育休が終わるからと、悠子を保育園に入れる手続きを開始して。
お役所に行ったり、書類を出したりして。
認可保育園を狙ったんだけど。
……落ちたらどうしよう?
前に「保育園落ちた、日本〇ね」と言った人が居たけれど。
私もそうなってしまうんじゃないの?
そんな不安に怯えていた。
保育園に落ちるのはマジでヤバい。
悠子を預けないと、私、職場復帰できないし。
働けなくなるのはマジで困る。
もし認可保育園を落ちてしまった場合。
即座に認可外を探さないと。
ぐずぐずしている時間はないんだ。
で、ドキドキしながら手続して。
無事、受かったから。
ホッとして。
後は、悠子が入園する日に向けて、その他の準備を進めて行った。
通園服と体操服。
通園服は水色のスモッグ。
体操服は白い、いかにもなやつ。
それを用意して。
入園前に着せてみて、似合ってるのを写真に撮って、楽しんだ。
そして、入園日当日。
私は続きで会社に出向くため、出社用のスーツで送り出す。
悠子を連れて、保育園にやってきた。
……普通の保育園。
特に大きいとも思わないし、小さいとも思わない。
普通に園舎があって。
普通に園庭。
園庭には、遊具。
滑り台とか。ブランコとか。砂場とか。
……ここが、これから悠子が過ごす環境なのか。
私は親として感慨深いものを覚えてしまった。
「ほら、悠子。今日からお母さんがいないときはここで過ごすんだよ?」
手を引いて連れてきていた悠子に、私は話しかけた。
通園服姿の悠子は私を見上げて、キョトンとしていて。
よく理解できていないみたいだった。
私は悠子の手を引いて、保育園に足を踏み入れる。
事前に聞いていた説明通りに、今日からお世話になる保育士さんに悠子を預けた。
引いていた手を離し、引き渡す。
じゃあね。今日から保育園で頑張るのよ、悠子。
そういう思いを込めて、私は悠子に手を振り。
自分は自分で、会社に向かおうとした。
そのときだった。
悠子が火のついたように泣き出したのだ。
反射的に振り返ってしまう。
悠子は、私に手を伸ばしながら、泣いていた。
行かないで、というように。
……そこで、私は自分がしようとしていたことが、悠子にどれだけ辛いことだったのかを思い知ってしまった。
悠子にとって、私はそんなに大切なものだったんだ……
固まってしまう私。
……でも。
私には仕事がある。社会人としての責任がある。
今日は会社に出向くことになっている。
遅れるわけにはいかない。
「……よろしくお願いします」
私は保育士さんに頭を下げて。
その場を後にした。
泣き叫ぶ悠子を振り返るのを堪えながら。
……なんて酷い親なんだろう。私は。
泣く我が子を置き去りにして、こうして仕事に向かうなんて。
会社に向かってバスで移動しながら、私は保育園での事を考えていた。
……何も考えてなかったよ。
やっぱ私、バカだ。
保育園に悠子を預けることが、ここまで悠子を苦しめることになるだなんて。
想像してなかった。
どうせ夕方には迎えに来るのだから、大したことはないだろう。
そんなのは、大人の勝手な考えなんだよ。
……やっぱ、仕事を辞めた方がいいのかな?
そうすれば、ずっと悠子と居られるし。
正直、悠介さんの稼ぎだけでも食べていくのは無理ではない。
多分、いける。
でも……
子供を育てるのには、お金が要るよね。
教育費もだけど。
食費も掛かるし、光熱費だって余計に掛かる。
誕生日プレゼントだって買ってあげたいし。クリスマスだって……
それに私は、悠子のきょうだいを作ってあげたい。
それにはもっとお金が要る。
そのためには……夫婦共働きが必須。
避けられないことなんだ。
うん……間違ってないよ。
そう、思い込もうとした。
そのとき。
……本当にそう?
お金を稼ぐことを言い訳にしてない?
私の中の誰かが言う。
アナタは、タダ単に、仕事をして社会に認められたいダケなんジャなイの?
……私は動けなくなった。
どうなんだろう……?
私は、自分の働きたいというエゴのために、娘を犠牲にしようとするろくでもない母親なんだろうか……?
どうなんだろう……?
考えているうちに
私は、気が付いたら泣いていた。
頬を、涙が流れていた。
初日は泣くんだよ。
嫌だから