※この作品はR-18です。

男の子が欲しい夫婦の話。   作:XX(旧山川海のすけ)

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当事者になったら皆考えるよね


一時金二重取りに積極的な奥さんの話。

★★★(悠介)

 

 だいぶ良い企業の研究職の内定が取れた。

 修士をとったら、僕はそこで働くから。

 彼女にそう電話で連絡したら

 

「悠介さんおめでとう。じゃあ今週末にお祝いデートしようよ」

 

 って返ってきて。

 

 僕は通話を終えた後。

 彼女にプロポーズする覚悟を決めた。

 

 ……女性には、時間制限がある。

 言ってしまうと、妊娠適齢期、だ。

 

 それを、男は考慮に入れなければならない。

 僕はそう思うんだ。

 

 だから相手にプロポーズをする覚悟が決まったのであれば、すぐにやるべきだ。

 それが、僕の考え。

 女性の時間は待ってはくれないんだ。

 時間が経てば経つほど、女性の時間制限の刻限が近づいて来る。

 

 それを考慮に入れず、男として今はみっともないからとか、今だと人間関係で苦労しそうだとか。

 そんな男側の都合で引き延ばすべきではないと思ってる。

 

 就職先が決まったことで、僕には最低限、結婚後の生活が成り立つ条件が整った。

 今の僕に、彼女との結婚を躊躇う理由はどこにもない。

 

 

 

 そして、お祝いデートの日。

 夕食を一緒にするために、ふたりで居酒屋に入った時。

 

 僕は、彼女に、みゆにプロポーズをした。

 指輪も何も用意していない。

 言葉だけのプロポーズ。

 

 非常に申し訳ないけど、僕は急ぎたかった。

 彼女に、僕の意思を伝えておきたかったんだ。

 

 もちろん、指輪は後で買うつもりだ。

 先輩から聞いた話だと、夏のボーナスは1年目は出ないらしいけど、冬は普通に出るらしいから。

 そのとき全額つぎ込んで、彼女のために指輪を買うつもりでいる。

 

 結婚式だって、後からだって出来る。

 先に入籍しておいて、後からお金を貯めてやるという方法。

 そういう選択肢だって、あるんだ。

 

 どうしても何か結婚前にしておきたいって言うなら、とりあえずドレス姿の写真を撮る方法だってある。

 本番前の予行演習みたいな意味合いで。

 

 それでも、どれも嫌だって彼女が言うなら、そのときはそのとき。

 いつがいいのかを相談して決めればいい。

 

 僕らはこれまでだって、こうやってやってきたんだから。

 

 

 

 僕のプロポーズの言葉を聞いた彼女は、一瞬硬直し、その後に顔を真っ赤にしてきた。

 息遣いも荒くなる。

 

 釣り気味の彼女の瞳。

 激しく瞬いていた。

 

 落ち着かなくなってるのか。

 僕の言葉で。

 

 以前、高校の修学旅行で一緒にUSJを回ったとき。

 僕の言葉で彼女が激しく動揺したときに。

 

 殺しに来てるのか?

 

 って言われたことがあるけど。

 今の彼女も、それと同じ状態になってるんだろうか?

 

 僕は、彼女の返答を待った。

 きっと、OKしてくれると願いながら。

 

 そんな、僕の視線を浴びながら

 

「分かりました……これからよろしくお願しますね……悠介さん」

 

 彼女は、みゆは、僕のプロポーズを受けてくれた。

 嬉しかった。

 みゆが、僕にとって最高の女性が、僕の奥さんになってくれると言ってくれたんだ。

 

 僕がその喜びを噛み締めていると

 

「……ところで。悠介はん」

 

 声に少し、悪戯っぽさがあった。

 視線を上げた。

 

 さっきまで、顔を真っ赤にしてたのに。

 満面の笑みを浮かべていた。揉み手をしながら。

 

 それが可愛いのだけど。

 一体、何だろう?

 

「入籍はいつ頃になさる予定で?」

 

 ……入籍?

 

 正直、その質問は予想していなかった。

 

 まず「指輪は無いの?」「結婚式のお金どうするの?」……これを聞かれると思ってた。

 

 そこなのか? それが、このときの僕の気持だった。

 

「えっと、今すぐがいい?」

 

 今この場面で気にすることは、彼女に僕と一緒になってくれる意思があるかどうかだった。

 僕としては、入籍はいつでもいいって思っていたんだけど……

 

「できれば、悠介さんが会社に入ってからがいいかな」

 

 ……なんで?

 正直、婚姻関係の法律はまだよく調べて無いから断言はできないんだけど。

 結婚したら、即同居生活を始めないといけないとか。

 そんなこと、無いと思うんだけど……

 単身赴任の夫婦、普通にあるよね?

 

 僕には、彼女が入籍を僕の入社後にしたがる理由がよく分からなかった。

 

 そしたら、彼女はこう続けてきた。

 

「……悠介さんの会社に、結婚祝い金の制度があったら、結婚祝い金の二重取りが狙えるじゃん」

 

 ヤター、と続けながら。

 

 ……結婚祝い金の二重取り?

 僕にはそういう発想が無かったので、少し混乱してしまう。

 

 でも、二重取り。

 なんだか、少しルール違反のような気がするんだけど……

 

 僕がそう感じていることを伝えると

 

「甘いよ」

 

 彼女は、真顔になって、僕に顔を近づけて来た。

 そして、言うのだ。

 

「……会社に社員は全力で貢献するけど、会社から貰えるものは全部貰う。これが社会人の正しい在り方だよ」

 

 神妙な感じで。

 ……まあ、社会人としては彼女が先輩だし。

 そういうものなんだろうか?

 

 僕が見ていると彼女は身をひるがえして

 

「しかしこうなってくると……」

 

 んー、と唸りながら顎に手を当てて、思案の顔をする。

 

「出産祝い金の二重取りも、積極的に狙っていきたいところだよねぇ……」

 

 出産祝い金。

 そうか、そういう一時金もあるんだな。会社には……

 

 そう、ふと思った時だった。

 

 出産。

 その言葉から、僕は想像してしまった。

 

 裸で、ベッドの上で、僕をうっとりとした表情で見つめながら、僕に抱かれるのを待っているみゆの姿を。

 

 彼女とは夫婦になるのだから、そんな未来が確定している。

 それを自覚してしまい……

 

 僕は顔にそれが出るのを恐れて、目を伏せた。

 悠介さんは考えていることが顔に出ない、と彼女は言っているけれど。

 なんとなく考えていることは分かる、とも言っているから。

 

 ……一応だ。




貰えるもんは全部貰う。
これが社会人の生き様よ!
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