※この作品はR-18です。

男の子が欲しい夫婦の話。   作:XX(旧山川海のすけ)

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2人目出来た後。


新しい職場で働く奥さんの話。

★★★(みゆ)

 

 

 妊娠二人目なので。

 今回はギリギリまで働くことにした。

 私は子供をたくさん欲しい。

 だから、なるべく会社にダメージを与えないようにして子供を産みたい。

 

 私が異動した部署は、会社の書類を作る部署だ。

 主に、商品の仕様書だったり。品質調査書だったり。

 そこで密接に関わってくるのが、法律。

 

 良く来るのが、あなたの会社の商品が法律違反じゃないですか? という調査依頼で。

 営業さんがそういう話を持ってくる。

 

 私も営業時代によくそういう話をお客さんからもらってきていた。

 それを、今度は私がやる側になったわけだ。

 

 法律……

 

 いっぱいあるね。

 

 毒劇法、RoHS、輸出貿易管理令……

 

 法律の厄介なところは、不変のものでは無いってことで。

 法律で制限のかかってる事象が、過去と今とでは違う可能性があるってことなのだ。

 

 だから、一回覚えて終わりじゃないんだよね。

 毎回、キチンと調べる必要があるというか。

 

 常に最新情報を確認する姿勢。それが問われる。

 

 私が何も考えないで書類作成の依頼書を出している陰で、こういう苦労があったのか。

 私はちょっと考えてしまった。

 

 結構、面倒だったんだな、って。

 

 そして。

 

 ……あれ?

 結構楽しいかも。

 

 働き続けているうちに、私はそう思うようになってきた。

 

 少なくとも、私の経験が生きる部署ではあった。

 例えば、こういうことがあった。

 

 その日、電話が掛ってきたんだ。

 

 電話は2コール以内に取るのが常識。

 私はそのように対応し。

 

「ハイ。多中化学工業です」

 

『こんにちは。谷さん? 頑張ってる?』

 

 ……営業職時代の同僚だった男性だった。

 

「あ、お久しぶりです。山葉さん」

 

『久しぶり~』

 

 山葉さん。

 がっしりした体型の、頼りがいのある男の人だ。

 仕事ができる人で、難しい契約をいくつも纏めたことがあるやり手。

 私も営業時代に仕事を教えてもらったことがある。

 

『谷さん、ちょっとお願いしたいことがあるんだけどさ。お客さんからウチの商品を海外に輸出したいんだけど、法律的に許されるのか知りたいって要望もらってね』

 

 ……あ。

 これは輸出貿易管理令か。

 

 物質の輸出管理に関する法律だ。

 

 これに違反すると……ちょっと洒落にならない事態になる。

 その企業が平和の敵になってしまうというか。

 

 私はこの部署に回されたとき、基礎教育として勉強させられ、それを知った。

 

 だから言った。

 

「分かりました。だったら山葉さん、該非判定書の作成依頼書を出していただけますか?」

 

『うん。分かってるんだけど、その書類、後で出すからさ、先に輸出OKの調査書を作ってくれないかな?』

 

 ……それは。

 こういうところ、あるんだよな……山葉さん。

 ルールに囚われないというか、自由なの。

 だから臨機応変に動けて、難しい契約も結べたりするんだろうけど。

 

 でも……

 

 私は言った。

 

「すみません山葉さん。それは出来ないんです」

 

『え?』

 

 ……あ。

 ちょっと、声のトーンが変わった気がする。

 ひょっとして、怒らせたかも……?

 

 肝が冷える。

 どうするべきか……

 

 そこで、閃くものがある。

 

「でも、ちょっと待ってください……」

 

 私はデスクのノートパソコン上に、今までの該非判定書の提出履歴を呼び出した。

 パソコン操作をしながら、続ける。

 

「商品名は?」

 

『KA-ME-N-RAI-10』

 

 KA-ME-N-RAI-10……えっと……ああ。

 あるな……半年以内に。

 

 法律的には1年に1回程度の改正だから、多分大丈夫なんだけど……

 ルールは守っておかないとマズいから……。

 

「一応、半年前に作成実績があるので、先に調査書を作りますね。ですけど、同時進行で該非判定書の作成も進めてください。ルール守らないのは本当にマズいんです」

 

『……分かった。すぐにやるよ。谷さんが言うならきっとそうなんだろうね。僕らの仕事の状況を知ってるしな……』

 

「ありがとうございます」

 

 ……なんとか上手く纏まった。

 安心して、私は電話を切る。

 

 ……そこで、気づいた。

 

 私の営業職の3年間。無駄になってなかったじゃん、って。

 そこに気づいたとき。

 

 私は笑みを抑えられなくなった。




法律的にはモノを海外に持ち出すことを「輸出」という。
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