★★★(みゆ)
お正月三が日に、一家で実家に泊まりで帰った。
2日と3日。
2日は谷家。3日は鈴木家。
3日の実家には、兄ちゃんも帰ってきてるらしい。
兄ちゃんは、ずっと実家住まいだったけど、私が大学に行ってしばらく後くらいに、やっと実家を出て行って。
今は外で暮らしている。
で、私が実家に帰るとき、せっかくだからなのか、実家に顔を出してるときが多くて。
悠子はその流れで、兄ちゃんに懐いている。
2日のときは谷の実家に帰った。
悠介さんは盆とお正月くらいしか纏まった休みが貰えないから、久しぶりだ。
お義母さんに悠子は懐いているので、いいんだけど。
おばあちゃんには悠子が近づいていかない。
……前に、女性なら無条件に懐く、みたいなことを言ったけど、若干修正だ。
例外はある、って。
前におばあちゃんに会ったときは、まだ悠子は何も分からない状態だったからか。
普通に抱っこされてたんだけど。
今は、ちょっとだけ喋るようになってからは、明らかに警戒している。
悠介さんはそれを見てて、マズイと思ってるっぽい気がする。
座りながら、悠子の動向を注視しているから。
「すみません」
「ゴメンおばあちゃん」
二人で謝る。申し訳ない。
無理矢理抱っこさせようかとも思ったけど、それで泣かれたら救いようがないし。
「別にいいよ」
でもおばあちゃんはニコニコしてて。
悠子の頭を撫でてくれた。
……悠子はそれもすごく警戒してたけど。
……全くこの子は。
★★★(鈴木兄)
俺の妹は結婚している。
しかも、もう子供までいる始末。
事の起こりは10年近く前。
妹が高2のクリスマスのときだった。
その日は仲間と一緒にダベる予定だったんだが、家に財布を忘れた事に気づき。
家に財布を取りに戻ったら。
妹が男を家に連れ込んでいた。
それが今の妹の旦那。谷悠介。
そのときは顔を見ることができなかったんだが、イライラしたわ。
妹の分際で何を勝手に男作ってやがんだ、と思ったから。
あまりにムカついたので、靴ベラを投げたのを覚えている。
んで。
そのまま、どうなるものかと思っていたら。
……結婚しやがった。
マジか。
妹が男を家に連れてきたことはあのときまで無かったから、あれが初彼氏ということになる。
どういうことなんだ。そんなことがありえるのかと思った。
でも、実際にそうなってしまったんだよな。
……一応、結婚式には呼んでもらった。
そのときの新郎の紹介で、妹の旦那はかなり良い会社で研究職をやっていると知って。
……なんだか、ちょっとホッとした。意味わからねェ。
で。
妹が妊娠して、出産したという話を母さんから聞いた。
生まれた直後に病院に見に行ったんだが。
……まあ、なんだ。
妹の腹の中にいたヤツだと思うだけで、一定の愛着はあるわな。
で、構ってやってたら、なんか懐いてきて。
それなりに「可愛らしい」と思う程度には気にはしてるわけだ。
で、今日は妹が子供を連れて帰ってくる。実家に。
俺も仕事がその日は休みになるように頑張った。
どうしても、姪に会いたかったから。
「お兄ちゃん、何をソワソワしてんの?」
こたつに当たってたら、後ろから母さんがそう声を掛けてきた。
「いや、みゆの奴、いつ来るのかな、って」
……悠子にお年玉をあげようと思って、ワクワクしていた。
わざわざ、悠子の好きなイエティのポチ袋をコンビニで買ってきて、お金を入れたんだ。
去年は悠子が小さすぎてあげられなかったが、今は違う。
ちょっと喋るし、歩ける。
……だったら、お年玉をあげてもいいよな。
俺は、こたつの上に置いたポチ袋を眺めて、その時を心待ちにしていた。
靴ベラ投げ事件は当時ファンに叩かれていたけど。
あれは嫉妬では無いんだよ。多分。
ただの自分の世界を侵略されたことへのイライラだと。