※この作品はR-18です。

男の子が欲しい夫婦の話。   作:XX(旧山川海のすけ)

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タイトル回収回。


男の子が欲しい夫婦の話。

★★★(みゆ)

 

 

 それについて、私は唐突に知ることになった。

 娘からは、娘の父親に似た子供は生まれない、ということを。

 

 それを知ったのは、あるお金持ちの男性がやってたネットの生配信を見て、いや……聞いていたとき。

 配信主は、生まれながらのお金持ちで、お金持ちの世界の話が面白くて。

 乗り物の話とか。ペットの話とか。

 あと、お金持ちなのに庶民臭い話とか。

 それをご飯を作るときのBGM代わりに、配信を流し聞きしてたんだよね。

 

 で、キッチンで包丁使ったり、味見したりしてたんだけど。

 

 骨ばった顔が特徴的なお金持ち男性は言ったんだ。

 

『托卵ってのはね、顔でまあ分かりますね。DNA検査要りません。男の子が生まれたとき限定ですが』

 

 ん……?

 どうして? と思える言葉が出たので思わず作業が止まってしまった。

 托卵は分かる。悪い女が、旦那さんの子供でない子供を妊娠して、騙して旦那さんに育てさせる事だよね?

 

 最低の行為だと思う。私には兄ちゃんいるし。

 兄ちゃんはクソだったけど、いくら元クソだったとはいえ、それはあんまりに酷い。

 そんなことをもし兄ちゃんがされたら、私はその女を殴りに行く。絶対に。

 

『思い浮かべてみてください。あなたのお爺さん、お父さん、そしてその息子。顔が似てると思いませんか? 顔に連続性を感じたりはしませんか?』

 

 ……私の……お爺さん。

 そして、お父さん。兄ちゃん。

 ……あ!

 

 確かに。

 血縁関係を想像させる顔してるよね!

 

 想像の中で顔の比較を行い、私はお金持ちの言葉に納得した。

 

『これがY染色体の力なんですよ。……でね。このY染色体は男にしか引き継がれません。そのため、男の子は高確率で父親に似る。だからバレますね。男の子が誕生してしまった場合は高確率で』

 

 なるほど……!

 お金持ち男性、博識で面白い話をするなぁ。

 

 私の手は止まり続けている。

 話に聞き入っていた。

 

 お金持ち男性の話。

 それはさらに続き、こう言ったんだ。

 

『で、これは托卵とは関係ないんですが、女の子はY染色体を引き継がないため、女の子から生まれる男の子は、女の子の旦那の顔を持つ男の子になります。つまり、顔の系譜を描けない孫なんですな』

 

 え……?

 

 空気が、止まった。

 

 孫の顔が……夫に、似ない……?

 

 それが意味するところは……?

 

 ウチの家。

 子供は二人。そして二人とも女の子。

 これは……!

 

 今のままだったら、孫に悠介さんに似た顔の子供は一人も含まれないってこと?

 私は想像する。

 

 ……大切な、悠介さんによく似た男の子が、この世に残らないって状況を。

 

 それはヤダ! 絶対にヤダ!!

 

「ままー、今日のご飯は?」

 

 そんなところに、娘の悠子と美子がやってくる。

 美子と手を繋いで、仲良く悠子が。

 

 ……この二人は可愛い。

 愛している。

 宝物。間違いない。

 

 けど……

 

 この子たちから生まれる子供は、絶対に悠介さんに似ないんだよね……。

 

「ああ、野菜の煮物と焼き魚」

 

 娘たちの献立への質問に答えながら、私はそんなことを考えていた……。

 

 

★★★(悠介)

 

 

 帰宅したら、みゆが深刻な顔をしていた。

 

「悠介さん。ちょっといいかな?」

 

 出迎えてくれた後。

 ご飯の前に話があると言って、椅子に座らされた。

 

 そしてみゆが切り出してきたのは……

 

「悠介さん。私、三人目の子供が欲しい。それも、男の子が欲しい!」

 

 向かい合って座って、言ってきたのはそれだった。

 子供を持つにはお金が要る。

 もう、僕は二人も子供をみゆに産んでもらった。

 僕としてはもう充分かなと。そう思っていたんだけど。

 

 ……しかし、なんでまた?

 

 そう聞くと、みゆは険しい表情でこう言ったんだ。

 

「私、孫に悠介さん似の子供が一人も居ない状況は嫌なの!」

 

 ……あ。

 そういうことか。

 

 知ってはいたんだけどな。

 何を言いたいのかはすぐに理解できた。

 

「……天皇陛下の家系じゃないんだから、別に気にしなくてもいいと思うんだけど。僕のY染色体のことなんて」

 

「私は嫌!」

 

 ……目が釣り上がっている。

 こんなみゆを見るのは初めてかもしれない。

 

 何が何でも、自分の意見を通したい。

 答えはもう決まってる。受諾して! と。

 

 そんな彼女の意志が感じ取れた。

 

 だったら……

 

 僕の答えも決まったんだ。

 みゆがそう言ってくれるなら……

 

「分かった……作ろう。男の子……」

 

 僕は承諾する。

 彼女ともう一人子供を作ることを。

 

 ……男の子を。




遺伝の秘密。
リアルで周囲をよく観察すると、否応なく納得せざるを得ないです。
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