※この作品はR-18です。

男の子が欲しい夫婦の話。   作:XX(旧山川海のすけ)

41 / 43
100%じゃ足りないんです


奥さんが科学を超える話。

★★★(みゆ)

 

 

 男の子を産みたい。

 そう思った私は、男の子を産むのはどうすればいいのかを調べた、

 そしたら。

 

 ①精子を増やすために最低5日前まで禁欲してY染色体を増やしておく。

 ②排卵日を正確に特定する。

 ③排卵日当日にセックスを行う。

 ④深い挿入で精子が卵子に到達する距離を短くする。

 ⑤女性がオルガズムを感じる、時間をかけたセックスをする。

 

 ……この5点が重要、とあった。

 ①②③はやってないかも。

 子供を作ると決めたとき、単に避妊しないでほぼ毎日頑張ってただけだし。

 でも④⑤は確実にやってるよね。

 

 じゃあ、①②③を押さえれば男の子を妊娠できる?

 

 ……私はそれだけじゃない気がした。

 なんだか……私の体質の問題のような気も。

 

 それぐらい……⑤

 ⑤が大きかったんだ。

 私は絶対に悠介さんに満足のいくセックスをしてもらってる。

 男の人は悠介さんしか知らないけど、これは絶対に間違いない。

 あんなに幸せで満たされたセックスが、満足できないセックスであるはずがない。

 ④だって満たしてるよ! 満たしてないはずがないじゃん!

 それこそ、他の①②③を補って余りあるくらいに、④⑤を満たしてもらってる。

 

 それでも出来ないのは……私が男の子を産みにくい体質。

 そういうことも考えられる。

 

 ……もしそうだったらどうしよう?

 

 妊娠出産は時間が掛かる行動だから、何度も挑めるものでもないし。

 

 それにやってみて、また女の子が産まれたら、色々と不幸というか。

 それは健全じゃない。

 望んで作ったのに、性別のせいでその子は望まれていない子になってしまう。

 そんなの可哀想。許されない。

 

 ……だから。

 

 100%……いや1000%の確率で男の子を妊娠する方法を考えないと。

 

 そのためには……

 

 科学を、超える……

 それしかないか。

 

 よし……

 

 科学にファンタジーで勝ってやんぞ。唆るぜこれは……!

 

 

★★★(悠介)

 

 

 みゆが最近、ちょっとおかしい。

 あの日、男の子を作ろうと決めたとき。

 僕が「みゆ、排卵日を調べておこうか」と持ち掛けたら

 

「それはいいです。悠介さん」

 

 と、断られた……

 ちょっと意味が分からなかったので

 

「男の子を妊娠するのに、排卵日を調べるのは重要なんだよ?」

 

 と言っても

 

「ごめんなさい。悠介さん。70%の確率ではダメなんです。1000%でないと」

 

 と言われた。

 ……1000%?

 

 僕の知らない確率の概念だった。

 

 そして。

 

 日々のごはんに、煮物が増えた。

 しかも作り置きが多い。

 

 僕はいいけど、子供たちが

 

「ハンバーグが食べたい」

 

 って騒いでいる。

 これはどういうことなんだ?

 

 何のためにそんなことを、と思ったら

 

 みゆが、何か一生懸命勉強していた。

 煮物が増えたのは、空き時間を増やして、勉強の時間を確保するためらしい。

 

 何を勉強してるのかと尋ねたら

 

「漢文です」

 

 と返って来た。

 ええ……

 

 ……何故、漢文?

 

 そして、国会図書館から荷物が届いた。

 受取人はみゆだった。

 

「ああ、やっと届いた。これでやっと先に進める」

 

 笑顔のみゆ。満面の笑み。

 だいぶ睡眠時間も削って勉強しているらしく、ちょっと憔悴している。

 

 大丈夫なのか……?

 

 荷物の内容物は、何かの古文書のコピーだった。

 

 そして……さらに1か月の時間が過ぎた。

 

 

 

 その日。

 僕は家に帰ってくると、みゆに耳元で囁かれた。

 

「今度の土曜日の晩、お願いします。悠介さん」

 

 ……正直、興奮してしまう。

 このところ、みゆはずっと何かで忙しかったから。

 

 久しぶりに、みゆと全力で愛し合うことが出来る。

 嬉しくないはずがない。

 

 みゆ……

 僕はみゆを想いながら、土曜日の晩を待った。

 

 

 そして土曜日がやって来た。

 子供たちを寝かしつけて、夫婦の時間。

 

 もう、二人とも風呂にも入り、準備万端だ。

 

 ……なんだか、初夜のときを思い出す。

 

 ベッドでみゆを待つ。

 何か準備があるって言ってたけど……

 

 夫婦の寝室のドアが開く。

 

 ……来た!

 

 そしてドアを開けて入ってきたのは……

 

 高校時代のセーラー服に身を包んだみゆだった。

 髪型も、あのときのようなお団子ヘアーに戻している。

 髪の色こそ黒のままだけど。

 

「へへ……どうかな? 悠介くん?」

 

 その姿のままで、くるり、と回ってみせる。

 まるで高校生のときのみゆがそこにいるようだった。

 

 ドキドキが高まってくる。

 

「すごい……付き合い始めたときみたいだよ。みゆ……」

 

 僕はそう返す。

 みゆはそんな僕の言葉にニコリと微笑み。

 

 そっと、こちらへと歩を進めてきた。

 

 僕はそれを見守る。

 

 そして……

 

 僕から2メートルの距離で、ピタリとその歩を止めた。

 何……?

 

 それが不可解で、僕はみゆの顔を見つめる。

 

 みゆの顔は……

 決意と、不敵な笑みに満ちていた。

 

 そしてみゆは、仁王立ちの姿勢で

 

 スッ……と、中指に人差し指を絡めた妙な形の右手を、顔の前で構えて……

 

 言った。

 

「領域展開」

「思出歩道橋」

 

 その瞬間。

 景色が、変わった。

 

 部屋の中だったのに。

 外になっていた。

 

 僕は見まわす。

 

 夫婦の寝室のベッドも消えていた。

 

 そこは道路だった。

 道路に尻もちをつく感じ。

 

 時刻は夕暮れ時。

 

 傍にあるのが、歩道橋。

 

 その歩道橋の階段の中ごろに、一人の少女が立っていた。

 

 その少女は……

 

 ピンクに染めたウェーブのかかった長髪。

 その一部をお団子にまとめたヘアー。

 

 釣り気味の目が可愛い、綺麗な少女。

 

 僕の最愛の人……谷みゆの高校生のときの姿だった。

 

「みゆ……?」

 

 何故君はそんなことに……?

 

 彼女は……歩道橋の階段の上で、微笑んでいた。

 

 そして、言ったのだ。

 

「谷くん……好き」




愛があれば科学も超えられる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。