★★★(みゆ)
歓談の時間になった。
私たち、新郎新婦の席に、招待客である友達たちが集まってくる。
「元鈴木~おめでとう」
「れーな、ありがとう」
私は友達に挨拶を返していく。
皆、私たちを祝福しに来てくれた。
嬉しい。
「谷、おめでとう」
私が友達への挨拶返しに集中していると。
横から、知った声が降って来た。
悠介さんへ。
声の主は……平。
私の高校時代の友人のひとりで、さっき悠介さんの友人代表のスピーチをしてた人。
何故か、マイクのトラブルで上手くいかなかったみたいだけども。
「平くん。今日は忙しいだろうに来てくれてありがとう」
「気にすんな。俺だって呼ばれて嬉しいんだから」
悠介さんが平に頭を下げる。
頭を下げられた平は、少し照れ臭そうにそう返した。
悠介さんと、平は仲がいい。
どうしてかはちょっと良く分からない。
何か分からないけど、何かが合ったんだろう。
でもま、私も挨拶しておかないと。
忙しいところを、来てもらったんだし。
「今日はありがとう、平」
「元鈴木もおめでとう」
……さっきから、私は元鈴木と呼ばれている。
まあ、その通りなんだから、文句を言う必要は無いんだけど。
……なんだかモト冬〇みたいでちょっとヤダ。
「さっきはスピーチご苦労様」
「ん」
私の方を見る平。
「なんか平の名前だけにマイクのハウリング音が被ってたね」
「ったく……」
平、ちょっと不機嫌そう。
結構頑張って挨拶を考えてくれたのかな?
悠介さんのために。
それは嬉しいんだけど。
言っておきたいことがあった。
「なんか平の名前が放送禁止用語みたいでウケるんだけど」
「ウケるな」
しれっと、返してくれる。
平は私のボケを全部拾ってくれる奴だ。
面白い。
「元鈴木~久しぶり」
「アズ~! よく来てくれたね~」
そして。
東……通称アズが私のところにやってきた。
アズは、前も言ったけど、私の友達の中では一番美人だ。
艶やかな長い髪。モデル級の美貌。スタイルも抜群。
でもそのせいか、ろくでもない男を引き寄せてしまい、散々苦労してきた人で。
私がずっと心配してきた女性。
今日は、薄青色のドレスに身を包み、一流の女性をアピールしているいでたちだ。
彼女は口元に手を当てて、ホホホと笑いながら私に向かって
「見事ゴールインおめでとう。これで元鈴木の恋愛は終わりなのね」
「そういうアズは恋愛見つかった?」
高校時代、アズはまともな恋愛がしたいと言っていたけど……
どうなったんだろうか?
「ん、それは……まぁ、うん」
自分の唇に指を当てて。
なんか、濁している。
どういうことなのか。
「どうかしたの?」
「いや、何でも無いのよ。ちょっと気持ちの整理がついてないだけ」
アズはそう笑顔で言って。
この場から立ち去ろうとしていた平に近づき。
「非番でも呼び出されるときがあるし、休み取りづらいってブーブー言ってたのに、結婚式には来るんだ?」
って、平に話しかけに行った。
……んん?
アズの行動に、少し引っ掛かるものを感じた私は、思考の世界にダイブしようとしたんだけど。
それは突然打ち切られた。
別の友達の一言によって。
「やあ元鈴木」
少し小柄な長髪の女性。
渡辺真奈美。
通称ナベ。
高校からの友人なのだが。
彼女にはひとつ困ったことがある。
「ナベー! 久しぶりー!」
ナベはとても正直で、気持ちのいい人間なんだけど。
一個だけ問題があって。
それは……
「よくこんな結婚式を開くお金があったね。元鈴木、まだ社会人2年目じゃん」
「……それなんだけど」
ナベの言葉に、私は一瞬詰まる。
非常に言いづらい。お金は全額親持ちだ、なんて。
社会人になって、自分でお金を稼ぐようになってから、他人に施されるのは恥であると思えるようになってきたためだ。
だけど
「……全額親持ちです」
嘘を吐くのは絶対に違うので、正直に言った。
恥ずかしくても、本当の事を言うしかない。
私がそう、消え去りそうな思いで告白すると。
ナベは、そっかー、と言いつつ。
こう、続けた。
「良かったじゃん。これでもう、離婚できないでしょ」
相変わらず、君はそういう事を言う……。
ナベの悪癖。
それが相手にとって最良の選択を産むと判断したなら。
どんだけその場にそぐわなくても、発言してしまう。
前に、夏祭りで浴衣を着ていくべきか? で迷っていたとき。
コヤツはこう言った。
「来年も一緒とは限らないから、今年は着ていくべき」って。
……言ってくれた気持ちはありがたいけど。
結婚式で、離婚の話はするなー!!!
ナベはこういうときにこういう発言をする女だと私、信じてる!
本作の平は、警察やってる設定で書いてます。
なんか、やりそうではあると思ってる。
なんだかんだ言って真面目だし、モラル高いし、体格良いし。