★★★(みゆ)
今、私たちは新居にいる。
結婚式に合わせて、二人で選んだ物件だ。
「お二人とも、一般の不動産は初めてで?」
新居を探しに行ったとき。
不動産会社の人は、そんなことをにこやかに聞いてきた。
私は2年間社宅、悠介さんは学生用の集合住宅みたいな、毛色の違う賃貸住宅。
多分、そういう意味では真っ当な物件を借りるのは初めてかも知れない。
「大体ですね、こういった物件は、富裕層の方々が税金対策で建ててる場合が多いんです。なので、値段に見合わず条件のいい物件というのはあるものでして……」
そんなことを言いながら、こっちの出した条件に沿う形の物件を、いくつか紹介してくれた。
注目すべきポイントは、お家賃。
あとは風呂トイレ別。
特に後者。
所謂ユニットバス形式は絶対に避けたかった。
身体を洗う場所で、トイレを気にする……
それ、どうなの?
いやね、知ってるんだよ?
そっちの方が掃除するときが楽である、っていう面があるらしい、って話は。
でもね、嫌じゃん。
汚い場所と綺麗な場所が一緒なんて。
だから多少はお家賃がしたとしても、風呂トイレが別のところを選びたかった。
……住宅手当も出るしね。
私はこれまでは社宅住まいだったから、住宅手当は出なかった。
でも今回結婚して、新居に移ることになり。
住宅手当が出ることになった。
およそ1万円。
何の成果も上げていないのに、勝手にお給料が1万円増えた!
これは嬉しい。イエー!
ちなみに、悠介さんの会社も住宅手当が出るらしく。
そっちもおよそ1万円。
悠介さんの場合は、本来は独身寮に入るところを、いきなり結婚したので入寮条件を満たさなくなり。
住宅手当の対象になった。
真面目な悠介さんは、会社の総務部に「妻も住宅手当を受け取っているんですけど大丈夫ですか?」って確認したんだって。
まあ、私もしたけどさ。
だからこれは大手を振っていただける真っ当なお手当。
で。
……住宅手当は、お家賃の支払いを補助するためのお金だよね。
つまり、私の分と悠介さん。計2万円。
2万円以内なら、予算オーバーしても許される。そう考えて良いわけで。
これはかなり心強かった。
そして選んだのが……
リビング入れて4部屋。
10畳以上のリビングに、それより小さい部屋が3つつく。
そんな間取りの、ハイツ。
一部屋を二人の寝室にして、残り二部屋を二人で分けようか。
そういう話をした。
……将来の子供部屋がなくなるけど、それはまだいいか、と話し合って決めた。
家具も購入。
二人とも、前の部屋で使っていた家具の大半を捨て去って、二人の共同生活に向く家具を新たに購入することに。
食器棚、テーブル、椅子……
特に、ベッドの購入には気合を入れた。
だって、ここでこれから二人は一緒に寝ることになるわけでしょ?
いい加減には選べないよ……。
で、吟味して。
選んだベッドに今、二人で腰かけている。
別に特に豪華な、キングサイズのベッドじゃ無いけど。
安っぽくもない。
ごく一般的な、ダブルベッド。
部屋的には一杯一杯のサイズ。
おかげさんで、地震が来ても大丈夫な状態。
(周囲に物を置けないから)
そんなところに、寝間着姿で、二人並んで、座ってる。
緊張しながら。
何故って……
これから、初夜だから。
ドキドキドキドキ。
耳から心臓の鼓動が聞こえそうなほどに緊張している。
とうとう、来た。
その日が。
私は多分、今は顔が真っ赤だと思う。
悠介さんは分からないけど、きっと同じ気持ち。
お風呂には当然もう入って来た。
歯も磨いた。
問題は……無いはず。
あとは……どう来る?
悠介さん……?
色々脳内でシミュレート。
悠介さんのアプローチ。
すると……
スッ……と私の腰に、悠介さんの手が回って来た。
来た……っ!
心臓が停止しかねないほどに、緊張が跳ね上がる。
そのまま、私を抱き寄せて。
悠介さんは、私を押し倒した。
ああ……
見つめ合う私たち。
私が下で、悠介さんが上。
これまでずっと見て来た顔だけど。
今日の悠介さんは、これまでとは違う気がする。
「みゆ……」
悠介さんが口を開いた。
「はイ……」
返事するのが精一杯。
「僕、童貞だから……優しくできなかったらゴメン」
「わ……私もそうだから……気にしないで悠介さん……!」
緊張感MAXだ。
……死ぬ?
ああ……
しばらく見つめ合った後。
悠介さんの顔がゆっくりと、近づいてきた……!
これから、私はアズの世界に入門する……ッ!
つよきすというエロゲで、主人公が童貞を捨てるとき
童貞の友人に別れを告げ、非童貞の友人に挨拶をするシーンがありまして。