さあ、いよいよこのクソ教室に入る。
一言目はなんだ、そもそもあたしだと気付くか?
1-Aは全員が私をいじめていた。
どうせ生意気な顔と態度が気に入らなかったんだろうけど。
壊すくらいの勢いで扉を開ける。
当然大きな音がするので一斉にこちらを向く。
賑わっていた教室が一気に静まる。
1人の男子が呟いた。
「おいおい転校生かぁ?担任も分かってんなぁ、来栖のヤツの席をとうとう消したか!」
「しっかし白髪とはまた派手だなぁ。ねえ君なんて名前?」
女好きの男共がこぞってこっちによってくる。
女共は全員引き攣った顔をしてる。
「来栖きあ。」
「ギャハハハハハハハ!!!!!」
「おもしれー冗談だな。」
「おいおい〜可愛くて面白い女の子かよ!最高かぁ?」
そろそろやかましいので、1人の顔面わ鷲掴みにして、持ち上げた。
「アンタらがいじめてた来栖きあだけど。」
「むごぁっ!?」
色々な声が混じって総じてざわっというような声に聞こえる。
さて、どうしようか。
「チッ、おい刺せ。」
はっきりと聞こえたその声。
わたしをいじめていた犯人。
名前は覚えてないけど、顔と声はよーく覚えている。
クラスカースト最上位、こいつには誰も逆らえない。
くだらない物差しだ。
命令されたのは私と同じように虐められていた教室の隅っこにいるような会話の下手な根暗な子。
きっと、やらなきゃもっと虐められると脳に染み込んでいるのだろう。
気の弱い人間はだいたいそうなる。
私は絶対に自分を曲げなかったけど。
「う、うああああっ!!!」
震えながらも、私に包丁を持って突撃してくる。
それはしっかりと腹部に突き刺さる。
もう、どうだっていいくらい痛みに慣れてきた。
ただ、頭はクラクラする。
やっぱり血が足りてないせい?
刺したという事実で腰が抜けてしまったこの子を無視してあのクソの目の前へ。
「おはよう。」
「ヒッ…な、何よッ。」
「は?」
両手で首を掴んで持ち上げる。
「か……ハッ……ぐるじ……。」
「なんて?」
酷く焦って、死にたくないのかやめてと言わんばかりに私の腕を叩く。
これがプロレスなら即終わりなのだが。
「聞こえない、もっかい言って?」
「ほん……とに……死ぬからッ……ぅが……ぎゅ……。」
静寂に包まれる教室。
私とコイツにみんなの目は釘付けだ。
「ああごめん、首閉まってたんだ。はい。」
死なない程度に地面に叩きつけた。
たんこぶで済めばいいね。
「がはっ…………。」
本気を出せば一瞬で殺せてしまいそうな程に今は力がある。
やったら面倒なことになるけど。
「大変そうだね、誰にやられたのそれ。」
「……あ、アンタでしょ……ッ!」
と、聞こえた瞬間に押し倒して馬乗りになった。
そのまま拳を高く挙げる。
「嫌ッ!?」
「もっかい聞くけど、誰にやられたの?」
「……ッ。」
なんと言えばいいか分からないという顔。
感情がぐちゃぐちゃで既に泣き出している。
「答えろって。」
軽く1発、血が出ないくらいの力で殴る。
「ぶえっ!」
普通に歯が欠けちゃった。
これ以上続けたら私が快楽に溺れてしまいそう。
もう遅いか。
楽しいや。
「この怪我は自分で転んでつけました。はい復唱。」
「こっ、この怪我は自分で転んでつけましだっ……。」
嫌に静まり返ってるせいで外の足音が聞こえる。
担任だ。
あっ、待てよ。
教師の癖にいじめ容認してたじゃんコイツ。
「なっ、何をしてるんだ!!」
「何もしてませんけど。ねぇ?」
馬乗りになったまま乗ったコイツに問いかける。
「…………はい。」
「そんな訳ないだろうッ!お前は一体誰なんだ!」
「自分の生徒の顔も覚えてないの?最悪。」
ま、赤い目と白髪じゃ誰も気づけないだろうけど。
こっちには容赦なく蹴りに行く。
金的。
男はみんなこれやればのたうち回るから。
「がああああああっっ!?!?!?」
股間を抑えながらうずくまって、倒れていく。
ちょうどよく顔面が目の前に来たので、躊躇なく踏んづける。
多分鼻は折れてる。
ポイ捨てしたタバコの火を消すみたいにグリグリと擦り付ける。
顔面血だらけ。
………………こういうヤツらの血とか飲みたくないんだけど。
「まともな奴は…………。」
と、教室中を見渡して目が合ったのはさっきの根暗な子。
まだ腰が抜けたままだった。
髪で目が隠れて表情が分かりにくいが、面白いくらいに震えて後ずさりしている。
「別に殺さないから。ちょっと血を貰いたいんだけど。」
「え、えぅ…………ぁ……ううう…………。」
さっきのやつより感情がぐちゃぐちゃになってそうだ。
どうやって血を吸うかだけど……。
「リストカット得意?」
有無を言わさず、制服の袖をまくった。
病的に白い肌だが、綺麗。
傷ひとつ無い。
別に私そういう趣味ないけど……まあいっか。
男と付き合うよりかはマシだし。
「やっ、やめっ。ころさないでっ……。」
「だから……まあいいか。」
何言っても変わんなさそうだし。
さっき私の腹を刺した包丁を拾って、この子の腕にするっと切り傷を入れる。
「ひぅぅぅっ……!」
ちょっとだけ深く入ったが、別に問題は無い。
そのまま溢れて来ようとする血を頂くことにする。
脳が腐ってるヤツらの血なんか吸ったらこっちまでイカれそうだ。
まだ根暗になる血を吸った方がマシだろう。
腕にかぶりついて、血を吸う私。
途端に気分が良くなる。
頭も回ってる気がする。
何が起きたかわかってないこの子。
「うま。血ってこんな美味いんだ。……鮮血少女になったからか。……ねえ、名前は?」
周囲をキョロキョロして、数秒後自分に問いかけられたと気付いた。
「わ、私ですかっ。柊彩香ですっ……。な、なぜぇ?」
「私のおやつになって。今みたいなのをずっとする役。」
「し、しぬんだぁ……うぅ……。」
「……いや………………まあいいか。」
根暗で卑屈なやつはどうしても時分をマイナスの方向に持っていきたがるから話が進まない。
そういうことにしとこう。
と、思った矢先。
窓ガラスが割れて、聞き覚えのある声がした。
「うわぁ、早速なんか面白そうなことしてるね?きあ。」
「どっから入ってきてんの。そこはドアじゃないけど。」
リオだった。
妙に笑顔だ。
教室中は大パニック。
逃げ出そうとする人が見えた。
「逃げんな。逃げたら殺す。黙って静かに席にお座りしてろ。」
「ほら、私達に付いてきて正解だったでしょ?」
「できるなら普通に過ごしたかったんだけど。なんで0か100かな。」
「で、どうするの?割とそれでも取り返しつかないことになってると思うよ?」
そう言いながら、顔面をぐしゃぐしゃにされた担任の顔をガンガンと叩きつけて遊んでいる。
「別に。殺したとてアンタらの大好きな正義のヒーロー警察様が来るだけだ。殺せるからいいんじゃないの。」
「学校崩壊しちゃうよ。住処が無くなっちゃう。」
「お前が私をこんなんにしたんだから責任はアンタが取れ。」
「私達に遅れを取らないクズだ、仲良く出来そう。」
「したくない、さっさとどっか行けよ。」
虫を払うように手振りをすると、窓から飛び出て上に落ちていった。
意味不明な挙動だ。
「私に味方はいないけど、彩香の味方は私。死ぬまで着いて来て。」
「ひ、ひぃ……っ。」
「お前らがいじめなかったら、私もこんなクソになり果てなかったのに。」
ボロっと零れる私の本音。
全部お前たちのせいだと。
私は何にも悪くないと。
「どうしようか、この後を何も決めてなかった。」
ただ、今までぶつけられたものをぶつけ返しただけではあるが、ただの大きな悪事と小さい悪事が積もりに積もって巨大化したものは全然違う。
なにがいいたいかと言えば苦痛で言えば私の方が断然上、こういうことしても別にいいだろって。
主観でしかないけど。
それと、周りのヤツらがコソコソと何かをしているのは分かった。
けど何をしているのか聞かなかった。
面倒だったし、何が起きても大丈夫だろうと思っていた。
その数秒後の事だ。
なにかの爆発音、衝撃波。
グラウンドに明らかに何かが落ちてきた音。
「ほ、本当に来たっ!ざまあみろ来栖ッ!」
「……なにが?」
「正義のヒーローだよッ!お前を倒す俺たちの味方だ!!」
へぇ、本当にいるんだ。
「彩香、アンタは私に付いてくる?それともその正義の味方とやらに助けを乞う?」
「ひ、ひぃいいいいいっ…………。」
「じゃ、私が彩香を拉致するってことで。」
彩香をそのまま抱き抱えて、窓から飛び出す。
同時に、空から降ってくるリオが見えた。
状況は今、窓を飛び出したところ。
何故か背を地に向けて落下しているリオ。
私達の空き教室に彩香を置いておこうと上を見上げたら、屋上にキリカ。
じゃあ、本当にいるんだ。
正義の味方。
空気を踏んで、急転換。
空き教室の窓に手を掛け、そのまま彩香を放り込む。
「キリカ、どうすんの私ら。」
屋上の方に向けて声をかける。
帰ってきた返事は冷たかった。
「殺す。」
「……ああ、人が変わるんだっけか。」
そう思い、顔を見るとそこにはお嬢様のおの字もない。
顔が悪魔のように歪んだキリカが居た。
「……と、失礼しましたわ。今回は貴方の実力試しと行きましょう。危なくなったらその時は援護します。思う存分暴れてくださいまし?」
ぴしゃんと頬を叩いて元のキリカに戻った。
再度グラウンドに目を向けると、クレーターと、人がいた。
直ぐにその場所へ向かうため、壁を蹴って加速。
同じクレーターをもう一個作ってやった。
「助けを求められやってきた。怪力のフィスタ、ここに見参。」
「……アニメの見すぎじゃないの。」
「なんとでも言え、勝って笑うのは俺だからな。」
なんとも、絵に書いた正義の味方だ。
ヒーロースーツみたいなダッサイ奴着てさ。
反吐が出る、蕁麻疹もでる。
吐き気も催すし、鳥肌が止まらない。
気色が悪い、さっさと消したい。
「女の子を殴ろうだなんて、それが正義の味方のやることなの?」
「ふん、女の悪人はよく言う。俺は嘘はすぐ見抜くのは得意だ。女の子以前に人ではないだろう。」
「まあ、そうだけど。でも私はここのヤツらにいじめられて性格ひん曲がって自殺したよ。挙句力を与えられただけ。」
「…………嘘は言っていないな。」
「人間じゃないのはどっち。人をいじめ殺す方が、それとも自殺した方か。」
「悪人がよくする手法だ。自分の悲惨な過去をひけらかして同情を誘う。引っかからないぞ。お喋りは終わりだ。一思いに1発で終わらせてやろう。」
腕を大きく振りかぶり、力を貯め始めた。
え、どこ狙うか私でさえわかるけど。
頭大丈夫なのかな。
「ゼエエエエエエッッッ!!」
かなりの速さでこちらに殴りかかってくる。
避けられず、学校の壁に叩きつけられる。
来るタイミングが速すぎ。
舐めてた。
そりゃ、戦いなんてやったことない私がこんなのに対応できるはずないし。
きっとリオとの喧嘩の時はまだ脳が勝手に処理してくれた。
けど今のは、脳が反応する前に殴られた。
「けほっ。しょうがないか。……血咲。」
腹に手を突っ込む。
奥まで入れて、掴む。
ズルズルと引っ張って、腹から刀が出る。
アイツもこっちに歩いてきた。
「血咲、一瞬だけ喋っていい。お前は強い?」
『……おう、よく切れるぜ。』
「ブラッドヴァイト。」
首を軽く斬って、血を出す。
発動条件を満たした。
吹き出た血が刀と私を包む。
私の白髪の先端は血の色に染まる。
おなじく血咲も、紅く染まる。
普通の刀から、綺麗な紅い刀へ。
とりあえず1発ぶん殴ってやり返し。
1歩踏み込んで、飛ぶ。
力が有り余って、ものすごい速さ。
フィスタとかいう奴が気がつく前に既に目の前へ。
狙いが定まらず、ラリアットの形へ。
綺麗に首に入ったラリアットで、フィスタは盛大にぶっ飛んだ。
見える、見える。
目で追える、体が追いつける。
直線に飛んでいくフィスタの先を回って背中を肘で突く。
見事その場で倒れる。
「がっ…………ふ……。」
「終わり?これが正義の味方?笑える。」
「まだァッ!」
起き上がろうとする、だがその瞬間は隙でしかない。
手に刀を突き刺してそのまま地面も貫く。
「ウガアアアアアアアッッ!!!!」
「逃げたいなら自分で手のひら動かせ。」
バタバタと暴れている、怪力だけあっても意味ない。
痛みへの耐性は力で鍛えられないから。
それに本当に正義の味方とか言うやつなら、くだらない戯言たれ述べて正義パワーで何とかするだろうし。
「リオ、コイツらは殺していいもんなの?」
「お好きにどうぞ。生け捕りにして飼うなりなんなり。そのまま帰すのだけは許さないよ。」
「ん。」
急所は外すようにして、画鋲みたいに腕に刀を刺す。
「お仲間はどこですか、答えてください。」
「言うものかッ……。」
「ふーん。」
まず腕1本ぶった斬る。
なぜだか血は吹き出さない。
切断面を見てみればしわくちゃになってる。
怪力を使って思い切り踏ん張って止血してるってこと?
「めんど、もういいや殺しといてよ。『先輩』?」
「ふふ、好物。」
気持ち悪い爽やかな笑みを浮かべて普通のナイフを取りだした。
それを背にして彩香の元へ。
「ひっ……。」
「私のことどう思う?」
「え……あぅ……う……あぁ……えとっ……っが…………うっ……。」
死ぬほど言葉が詰まっている。
話せるようになるまでには日が暮れて居そうだ。
まあ……そうか。
普通腕が切れたりしてるのをみて平然なわけないか。
「腕出して。」
「えっ……あっ……。」
未だに殺されると思っているのか固まって動かない。
人間ってどんくらい血を飲んだら危険なんだろう。
1リットルは流石に死ぬよな。
200mlくらいなら……大丈夫か。
「痛いだろうけど我慢して。」
血咲を本当に軽く当てて出血する程度の切り傷を作る。
腕には2つ目の傷。
溢れてくる血をしゃぶりつくみたいに吸う。
「んむ。」
「へっ……へえぇえっ?」
「
びっくりするほど血が美味しい。
そりゃあ血の味だけど、鮮血少女だからなのか美味しい味と感じてしまう。
人間全員ジュースサーバーに見えてくる。
なんか血を吸うって吸血鬼みたい。
「ご馳走様。貴方は今日からずっと私のおやつ。よろしく。」
「へぁ……?ど、どういう……。」
「黙って血を吸われろって言ってんの。」
「ひぃっっ!?!?ごめんなさいごめんなさい!!」
ああもう、強く言ったつもりないのにありえないくらい怯えてる。
「アイツらに見つかるまでは学校は拠点として使えますけど見つかったら終わりですわね。」
「やりすぎたか、どう責任とってくれんの先輩?」
振り返って拷問現場を見て後悔した。
「まさしく脳筋の止血方法、すごいよ。次は第2関節だね。握りこめなくなるからだんだん難しいね。」
「ぐっ……があああああああっ……!!」
「ザクザクザクザクっ。……あーあ、間違えて一気にいっちゃった。」
「ぐぁあああああああっっっっ!!!!?」
「失礼。」
心臓に一刺しして、強制的に私と会話させる。
「あっ。」
簡単に死んでしまったそれを見て声を漏らすリオ。
「この先どうすんの?」
「こっちのセリフだけどね。まあ、学校使えるのはあと一日ってとこ?当然だけど私らは勢いで家族も殺っちゃってるから家とかもないよ。」
「こっちだってレイプ魔のクソキモ親父の家に戻りたくない。」
「お、非処女かぁ。やるね!」
本気で殺してやろうと思ったが、歴が違うし返り討ちに会うのは目に見えてる。
ここでキレても思うつぼだし、収めた。
……収まるわけない。
「……あー。彩香。」
「は、はいいっ……。」
「……ッゥ!」
「ぶっ!?……なっ……でぇ……!?」
サンドバッグが目の前にいた。
良い奴隷手に入れた。
「お前、家ある?」
「へっ?」
「家あるかって聞いてんの。」
殴るぞと拳を振りかざして脅す。
「ありますありますっ!殴らないでっ!」
面白いくらいに反応する。
さすがに鬱陶しく感じてきたけど。
「一人暮らし?」
「は、はい……うぅ……。」
「アンタら、隠れ家見つけた。」
「了解ー、やるね新人。」
「一軒家ですの?」
「えっ?」
一気に彩香に詰め寄る。
あたしら総じて身長がそれなりにあるから、彩香との身長の差もあってカツアゲみたい。
やってることはそれ以上だけど。
「部屋は3人分あるかい?私は別にソファとかでもいいよ。」
「欲は言いませんわ、お布団さえあれば!」
「えっえっ、ま、待ってください。えっと……皆さん……来るん……ですか?」
「なんか問題ある?」
「ピッ!?ないですぅ……。」
「案内して。」
「ああ、少しだけお待ちになって?」
既に強引に家にお邪魔する流れの私達を止める。
振り返って銃を構えた。
「一応、証拠隠滅ですわ。」
ひとつの弾丸を、学校に向けて放った。
爆発も何も起きない。
……そう思って眺めていたら次の瞬間には、校舎の窓ガラス次々が赤く染まり始める。
悲鳴も多く聞こえて、もうとんでもない惨事になっているのは明らかだ。
キリカを見ると、少し身震いしていた。
「うっわ……。エグ……。」
「……フ。」
それを見届けて、こちらに戻るキリカの顔はこの世の何よりも恐ろしい顔をしていた。
悪魔みたいな笑顔で、到底お嬢様キャラからは考えられないゲスの顔。
「さ、案内して。自由ないから。」
「う…………。」
あまりにも酷い現場を残して、私達は学校を去る。
「普通の家だね。君みたいな陰キャの親御さんは金持ちが相場だと思ってたんだけど。」
どこにでもあるような家。
二階建て。
それ以外に特徴がない。
隠れ家にする以上特徴あっても困るけど。
「……ぅ。」
「早く、鍵開けて。」
「はいっ……。」
ドアが開けられて早速流れ込む。
中は意外と綺麗だった。
「おー、中はいいね。私はこのソファに住む。誰にもあげないからね。」
「私はそちらの空き部屋を使わせて頂きますわ。」
コイツら、私より自然に住み着いてる。
どこで寝れるか。
「彩香、あんたの部屋は?」
「えっと……二階です……けど。えっ……もしかして……?」
「……アイツらよりは邪魔しないから。……てかリオは気をつけた方がいいよ。目離したら何するか分からない。」
そう思ってリオを見たら、ソファでくつろぎながらこちらに向かって手を挙げてグッドポーズ。
鬱陶しい。
人の心すら失ってそうな奴らは放っておいて、2人で部屋に向かう。
「ど、どうぞぉ……。」
机、ベッド、本棚。
質素で殺風景、私の部屋そっくりだ。
「……っー。はあ……。」
何一つ迷うことなく、ベッドに倒れ込む。
一日にして私の性格も終わったみたいだ。
やってることはアイツらとなんら変わりない。
力を持つって、そういうこと。
「……広。アンタ体も大きくないのになんでこんなにデカいベッドなの?」
「えと……ネットで注文した時に……サイズ間違えてて……あは、あはは……。」
「ふーん。まあ、床で寝ることにならなくて良かったね。」
「あは……え?えっ!?そ、それって、えっ!?」
「何、男と寝るよりマシでしょ。」
さっさと制服を脱ぎ、上はブラウスをはだけさせる。
下も脱いで下着姿に。
「ひゃっ……!?ふ、ふくきてくださいっ……!」
「女同士別に何も無いでしょ。……それとも何?そういう癖?」
「いやっ……その……っ……ぅ……あああ……。」
顔を覆って後ろを向いて俯いてしまう。
男でもそんな事しないのに。
「制服しか服持ってないから仕方ないでしょ。家でも制服で過ごせっての?」
「そのっ、違くてえっ……うう〜……。」
と、勢いよく扉を開けられた。
リオとキリカだが。
「うわ、陰キャだと思ったのに意外とやるね。私達も食べられちゃう?処女喪失?」
「いやっ、ちがっ、そのっ!!」
「まあ、随分と殺風景で!私の家とどっこいって感じですわ。」
なだれ込んでくる災害の具現化みたいな2人。
「ちょっと、私の部屋だからはやく出てって。」
「そうでしたの?失礼しましたわね。」
「えっ。」
キリカはそのまま下の部屋に戻って言った。
「そうそう、きあ。話があるんだけど。」
「何。」
「この子気に入ったんでしょ?」
「ただのジュースサーバー。」
「鮮血少女にはそういうのにお得なシステムがある。主従システムなんだけど。」
「へえ。」
なんだか会社から貴族に変わったけど。
「とある儀式をすればこの子もほぼ不死にできる上に主従関係を築ける。死なないから血を吸い放題。」
「楽そ、さっさとその儀式教えて。」
「殺す。」
「……それ本当なの?」
「本当だよ。さあ行ってみよう!」
そう言ってリオは彩香にどこから持ってきたか分からない包丁を手渡した。
「は?」
「えっ?」
「殺されるのはきあの方ね。主従もきあが主じゃなくこの子。」
「へえ、余計都合がいい。このクソ陰キャが主になろうとイキることなんてないだろうし。」
彩香の両肩をぽんと叩き、私を指さしてゴーサイン。
「む、無理です無理です人殺しなんてっ!?」
「やれ。」
「ひっ……で、出来ません……!」
「……殺さないと殺す。」
「へぇっ!?……な、なんでぇ……っ。」
途端に手が震え出して、ガタガタする彩香。
まあ、普通はそうか。
私らがおかしいだけで。
「ちなみにしぶといよ。お腹とかをズブズブ何十回もやらないとなかなか死なないからね鮮血少女は。」
「い、家は血だらけに出来ないのでぇっ!そのっ……ええっ……。」
「大丈夫、血の回収は私が喜んでやるから。やっちゃえ。」
「い、いやっ……。」
それでも抵抗している彩香の手を後ろから被さって強制的に操っている。
トラウマものじゃん。
「ほら。このクソ白髪イキリ女が、私をこんな目に合わせやがって!許さないぞ!殺してやるっ!って。」
「そんなこと思ってないですからぁっ!おねがいしますぅっ……!」
世にも珍しい、命乞いの逆が起きている。
「あっ、手が滑ったー。」
わざとらしく、彩香を私の方向に突き飛ばした。
極度の緊張で体の位置は全て固定されていて、包丁と彩香が私の腹目掛けて突っ込んでくる。
綺麗に私の腹に刺さる。
「っ……ぁ……!っハッ……はァ……ハァッ……!!」
酷く動揺した後に、過呼吸に陥る。
別にめちゃくちゃ痛い訳でもないし、戦っている時なら耐えられる自信はめちゃくちゃある。
けど、今は戦闘とかそういうんじゃないので耐える必要も無い。
刺されるのは40℃以上の熱が出ていて貧血と立ちくらみした時に後頭部を思いっきり殴られたみたいな怠さ。
普通、耐えられるはずがなくそのまま押し倒れるのが当たり前。
「うぷっ……。がぼォェ……。」
余程ショッキングだったのか、私の体に馬乗りになったまま吐いた。
怒ろうと声を出そうとしたが、怠さが勝つので何も言わない。
「うわ、凄いそそる。でも見て、この白髪イキリ女。余裕そうな顔でこっちみてるよ?」
いい加減悪口で気分悪いので中指はこっそり立てておいた。
「げほっ……う……」
刺されてるのは私なのに彩香の方が死にそうになってる。
「手借りるよ〜。はい、ぐさ〜。」
鉛筆の持ち方を教える母親みたいに、手に手をかぶせて私の腹を滅多刺しにする。
彩香は彩香でまた吐きそうになってる。
そして、私も私でさすがに痛みと怠さで死ねそう。
……あの時よりはマシ。
落下で全身逝った上に腹に刀は本当にキツかった。
「本当に死ぬ前に、中古品の子宮の上辺りに印を刻む。ここは私がやる。」
そんて、リオは躊躇なく刺した傷口を無理やり広げて内蔵をぐちゃぐちゃにかき混ぜてきやがった。
「テメェっぁ……ぐぁぁぁうぅぁぁあうぅ……」
思わず反射で声が出る程には感じたことの無い気持ち悪さ、痛みが体を襲う。
「ごめんごめん、インクが足りなくて。」
そう言って血塗れの指で印を書き始めた。
「ブラッドスレイヴ。主、柊彩香。奴隷、来栖きあ。仲介、神崎凛音。刻印開始。」
部屋中飛び散っていた血が、私の中に入ってくる。
彩香にも首辺りに血が入っていくのが見えた。
「出来た。」
そう言って満足そうにしている。
私の様態は一向に変わらない。
「私はこのままその心白髪イキリ女を見殺しにしてもいいんだけど。ほらー、彩香ちゃーん。申し訳ない気持ちがあるなら血を吸わせてあげな〜?」
とはいうものの酷く発汗、極度の震え。
まともな精神状態じゃない。
「腕借りるね。ほい。」
細っこい腕が口元まで来たので、そのまま噛んで吸血。
気分がみるみるよくなっていく。
「ぅ…………ぐすっ……。」
ただ、彩香には消えない傷を負わせてしまったらしい。
殺されるよりマシだろう。
……それに、主従関係と言っていた。
私が彩香守るのが義務にでもなるのだろう。
まあ、私の心が変わらない限り好きにやらせてもらうけど。
「……で、リオ。」
「なぁに。」
もう既に我関せずと本棚を漁っている。
「何回腹を滅多刺しにされたい?大切なお友達だから刀でめった切りでもいいよ。」
「はは、部屋が汚れるからまた今度ね。」
本当にそのまま出ていこうとしたので、後ろから腰を掴んでジャーマンスープレックス。
プロレス技は技術がないと危ないけど、殺す目的なら見よう見まねでいい。
首が変な方向に折れ曲がった。
「部屋が汚れなければいいんだな?」
「たはは、鮮血少女のせの字もない。」
変な方向に曲がったまま起き上がって、そのまま首を思いっきり捻って元の位置に戻した。
……私自身もそうだがなんでもありだな本当に。
「まだ聞いてない、彩香にはなんにも被害はないの?」
「もちろん、主側は特に何も無い。きあの方はあるかもね?」
「常時下克上。」
本を何冊か盗んでいき、彩香の部屋から出ていく。
さて、どうしたものか。
「大丈夫……な訳ないか。」
まともな感性をしてるなら食事すら満足にできないだろう。
殺してはないものの、人を刺したという事実は変わらない。
普通生きていて、そんな経験はすることが無い。
私らは倫理も道徳も羞恥心もどこかに行ってるから何も感じないけど。
会話すらまともにこなせないような真っ当な人間の感性をしてるなら、尚更。
「寝てな。」
軽く持ち上げてベッドに寝かせる。
ふと、彩香の首に刻印された模様が気になったので首元をめくる。
なんの模様とかは分からないけど、タトゥーみたい。
それに、私の腹にあるものと同じだ。
「ぅ……あ……私…………。」
「よく考えてよ、私はこうやって生きてる。こんなので病んでたら世話ない。多分これからもっと酷い目に……。」
話してる間に、何故か彩香に少し同情してしまった。
私がこうなる前はいじめの対象にされてた。
抵抗すらしなかったし、何もかも諦めていた。
されるがままで、それが当然で。
嘆くことすらせずに、目の前の惨状を受け入れていた。
それで辛くて、死のうとした。
目の前にいる彩香も、私がもし虐められてなかったらいじめの対象にされるような人間だ。
もし、と考えて。
「主従関係なんだから、私を顎で使うくらいはできるようになれば?」
「……え?で、でも……。」
と、起き上がって話す。
「人を刺した人癖に何弱音吐いてるの。ムカついたら殴る、指図したら殺すくらい言って見せろ。」
「そ、それはダメっ……です……。悪いこと……ダメ。」
「言えるじゃん、それだよ。」
なぜだか、彩香の顔が緩んだ。
直ぐに、それは私に褒められたからということに気付く。
「……何?そんなに褒められたいの?」
「え、あっ、ちがっ……いやっ……ちがく……ない……かも。」
……私はまだ、人間なんだって思えた。
人間の頃に出来なかったことを、今するくらい許されるよね。
やりたいことが出来るなら、別にやったって今の私は誰にも咎められない。
「いいよ、今気分いいから1つ言うこと聞いてあげる。」
「……えと、その。じ、じゃあ、ハグしてもらって……いいです、か。」
「……なんで?」
「いやっ、えっ……と。……へ、ヘンタイに聞こえるかもしれませんがっ……その……匂いが、死んじゃったお姉ちゃんと……似てて。」
「へえ、嗅ぎたいの?」
「あっ、違っ……えぅ……。」
叩けば叩くだけ反応する彩香。
私をいじめているヤツらは、あまり楽しくなかっただろうな。
無反応、無抵抗、無表情の。
……いや、楽しいか。
そもそもいじめるのが楽しい。
「言うことは一つだけ聞く。……ほら。」
両手を広げて、包み込むように彩香を抱きしめる。
「あ……。」
そのままベッドに寝そべる。
この大きなベッドは、2人でちょうどいい。
ちょっと余るくらい。
「私まだ怠いから、寝る。」
「え。」
「何?文句ある?ハグしたでしょ。」
「わた、私、離れられなっ……。」
「それが?おやすみ。」
彩香の体は小さくて、抱き心地がいい。
ちょうどいい抱き枕を見つけた。
『おっ、やってるやってる。』
『あらぁ〜もう抱いたんですの?意外といやらしい女ですのねきあ!』
何故か窓から覗き込んでるアイツら。
声はほぼ籠って聞こえないが、言ってることが明らかにわかる。
もう一度中指を突き立てて、私は深い眠りに着いた。
「解説コーナーの時間だよ。」
「今日はブラッドスレイヴ。私と彩香にやられたヤツ。」
「と言っても難しいことは無い。彩香が主人で、きあが奴隷。それだけの話。」
「なんでそんなものがある?」
「ほら、普通魔法少女モノはマスコットがいると思うんだけどさ。ソレ。」
「説明にならないだろそんなのじゃ。」
「主人からの命令には強制力が働く……っぽい?」
「……なんで疑問形。」
「契約した主人側が生き残ってるの見た事ないからさ。」
「……。」