※この作品はR-18です。

行き遅れ女軍曹は年下部下を無下に出来ない。   作:もすもす。

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【13】誓い。【R18】

 

―くらくて、さむい・・―

 

滲み込んでくる冷気で身体が動かない。

 

『エトラさん?!エトラさんっ!!』

 

焦ったジルの声。

薄らぼんやり、呼ばれているのだと認識するも声は出ず。

身体の末端から魔力が勝手に零れ出て行く。

不味い。このままでは・・・死・・

 

聞こえていた音が遠くなり、意識すら落ちようとした時、熱が灯った。

 

『起きてください・・起きて、謝るまで許しませんからね!エトラさんっ!!』

 

―すまない・・じる。そうだな・・もうすこし、がんばってみるよ―

 

愛しい声に励まされ、与えられた熱を少しでも留めようと意識すること暫し・・

突然流れ込む熱量が増し、朧気だった自身の輪郭がはっきりしてくる。

 

先ず背中。肩。頭。腕。手。胸。腹。腰。脚。

体勢も認識出来た。

手足は力なく投げ出しているが、どうやら後ろから抱えられて座っているらしい。

 

―せなかが、あつい・・―

 

火傷するような熱だと感じるのに、どこか心地よい。

身体の中が、じわじわと熱で満たされていく。

 

揺蕩(たゆた)う意識。

微睡の中で、聞こえる音が次第に明瞭な物へと変化していき・・

その過程で、愛しい人に抱えられているのだと理解した。

 

―ジルに、抱かれている?―

 

自覚した途端、熱の質が情欲の物へと変化した。

流し込まれ続ける魔力に炙られ、吐き出す息にも熱が混じり体温が上がり始める。

伝わる声や衣擦れといった僅かな刺激が、驚くほど敏感になった肌を伝い痺れるような快感を伴って指先をぴくぴくと震わす。

ぴたりと寄り添われ、燃える様に熱い背中は既に汗ばんでいた。

 

じわっと、身体の真ん中から体液が溢れ出る感覚に、ますます体温が上がる。

 

―こんな状態・・ジルに知られるのは・・―

 

羞恥に身を捩りたい衝動に襲われていると、咳き込む音と共に振動が背中から伝わり、少し経って周囲の音が消えた。

一瞬焦るも、すぐにゴソゴソと物を動かす音と振動がして胸を撫で下ろす。

続いて、ぼそぼそ呟く声。

 

その声に耳を傾ける反面、意識が戻っているのを覚られたくなくて・・

投げ出した手足をそのままに、自然体を装う。

 

「回復薬・・魔道具・・ジェル・・なるほど・・うおっ・・ありがとうございます・・あ、これはまだちょっと・・・・避妊薬?!」

 

―ひ、避妊薬?!―

 

一際大きく聞こえた単語に反応しそうになり、必死で身体を抑える。

でも頭の中は様々な感情が渦巻いて落ち着くどころではない。

 

―ひ、ひ、避妊薬って・・あれ、だ。魔法薬の一種で、飲めば数日妊娠を妨げるという・・―

 

意識がはっきりしても、敢えて目を閉じていたが・・

どうしても状況が気になり、薄目を開ける。

わずかにぼやける視界の中、木箱らしき入れ物があるのが見え・・瞬きすればその中に透け感のある下着らしきものや、ガラスの小瓶等が収められているのがはっきりと目に映った。

 

―こ、これはどう見て、もっ・・せ、せ、性行為に使われる品々!!―

 

確かに、ジルの魔力に中てられて身体はすっかり準備を済ませているが・・感情は全く追い付いていない。

今までに状況に流されて触れ合ったり、感情が高ぶって自分から誘うなどしたことはあったがそのどれもが場当たり的な、勢いに任せてのものばかりで・・

こんな、準備万端、用意周到な・・改めて場を整えられるとっ!!

 

―あ・・わ・・そんな!ど、どうすれば!どうすればいいのだっ!!―

 

状況を理解し心の準備が出来ずに焦る中、不意に抱き寄せられ・・・

柔らかな感触が項に触れて堪えきれずに身体が跳ねた。

 

不味い、不味いと焦りや不安が強まり混乱する胸中で『流してくれないだろうか』と一抹の希望に縋るが、婚約者からの「・・エトラさん?もしかして・・起きてらっしゃいます?」との呼びかけに、儚い希望は呆気なく崩れ去る。

観念して、羞恥に身を縮こませながら「あぁ」と答えた。

 

腹に回された腕にぎゅっと力が込められ、喜びが伝わって来る。

続いて首筋に呼気が触れ、熱い舌が押し当てられた。

ぬるりとした感触に思わず「ひゃっ」と声が漏れる。

 

「なっ!いきなり何だジル!」

 

照れを含んだ抗議の声を上げるが、返事は無い。

代わりに、ふるふると腕が震えて力が込められると、苦しい程に締め付けられる。

温かい雫が首筋を伝い、胸元に零れ落ちた。

 

「・・ジル?」

「心配、しました・・とても」

「・・すまない」

「エトラさんが・・い、いなくなるかと・・」

「あぁ・・」

「もう、こんな思いは御免です」

「・・悪かった・・」

 

震える声でぶつけられる想いが痛い・・

次々に零れ伝う雫で胸元が濡れていく。

 

「お願いですから・・もう俺の知らない所で無茶しないでください・・」

「努力する」

「・・・約束は、してくれないんですね・・」

「・・すまない。こんな仕事だ・・善処はするが・・・」

「仕方ない、ですね・・今は、それで許してあげます」

「ありがとう。ジル」

 

ぐすっと鼻を啜り「魔力は回復しましたか?痛いところはありますか?」と訊かれ「何ともない、回復も十分だ」と胎の奥から溢れ出る情欲を抑え、隠して告げる。

しかし、恋人に泣かれるのがこんなにも辛いとは・・

守れない約束は避けられたが、これからも出来る限り心配させないように気を付けて・・

 

「ではお仕置きです」

「えっ?」

 

許しが出た事に気を緩めていると、思いもよらない言葉が耳に届く。

嫌な予感に身を捩って逃れようとするも、回された腕で体が固定されて身動きが取れない。

そんな状態で両脇腹に指が食い込み・・そのまま怒涛の勢いで責め立てられた。

 

「ははははっ!!あーっはっはっはっ!や、やめ!やめてくれ!!」

「本当の本当に心配したんですからねっ!!」

「ははは!分かったっ!申し訳ないっ!あははっ!すまなかったジル!!あははははっ!!」

「反省してます?!」

「し、してる!反省してる!」

「本当に?!」

「本当だっ!!」

 

ピタリとくすぐる指が止まる。

しかし手はそのまま脇腹に添えられており、背後からはじとっと疑う視線を感じた。

首根っこを押さえられた危機的状況から逃れたくて、婚約者の気を逸らそうと咄嗟に言葉を発する。

 

「そ、そうだジル!心配させた詫びに何か一つ願いを叶えよう!私に出来る事なら何でも言ってくれ!」

「・・・何でも?」

「ああ!何でもだ!」

 

少しだけ間があって、すっと脇腹から手が離された。

続いて、ずっと触れ合っていた背中がぺりぺりと音を立てて解放され、肌が空気に晒されて一気に涼しくなる。

 

胸を撫で下ろし、背中が冷え行く感覚にぶるりと震えた。

乱れた呼吸を整えるべく胸に手を当てて深呼吸、息を整える。

と、背後から肩越しに腕が延ばされ、目の前にとても扇情的な布が広げられた。

 

「ん?」

「それじゃあ、コレをお願いします。着て見せてください」

「じ、じる?」

「何でも、叶えてくれるんですよね?」

 

肩越しに、恐る恐る振り向けばニッコリ笑う婚約者の顔。

前髪の隙間から覗いたヘーゼル色の瞳は、愉しそうにしつつも有無を言わせぬ気迫が込められていて・・

 

「ね?お願い、聞いてくれるんですよね?エトラさん」

「・・・ハイ・・」

 

『早まったかも・・』そう思いながら返事をした。

 

順番に洗浄の魔道具を使用してさっぱりした後は「じゃあ後ろを向いていますから」といよいよのっぴきならない状況になった。

手渡された布を広げてみる。

 

真っ白な、レースがあしらわれた服?だった。

形状から判断して着ることは出来る。ただ・・

 

―こ、これでは何も隠せないのでは?!―

 

細い肩紐。膝を覆うくらいの丈で胸元や裾に可憐なレースが飾られている。

問題はカーテンの様に波打つ布の部分が透けている事だ。

しかも、胸元のリボンで留める形なので中央が開く形状をしており、少しでも動こうものなら捲れて腹が丸出しになる。

 

―まぁ、腹より気にするべきところがある・・な―

 

足元に視線を落とせばセットであろう下着が目に留まる。

これも殆んど肌が隠せない代物で、尻の部分などまんま紐である。

僅かにレースで彩られてはいるものの・・

前の部分も透けていて何も隠せてない上、大した面積もない。

更に更に、腰に掛かる部分すら紐だった。

 

指で摘んで広げてみたが『コレを今から着用するのか・・本当に?』と、変な汗がじわりと滲む。

 

両方着用したとして・・それは裸より恥ずかしい格好なのでは?と想像し・・硬直。

下着を両手で広げ持ったまま冷や汗を流し、暫し無言で佇む。

 

「エトラさん?もう振り向いていいですか?」

「ま、待て!もうちょっと待ってくれ!」

「いいですけど・・あまり長く待たせるようならコレ、追加しちゃいますよ?」

 

持ち上げられ、ジルの肩越しにちらりと見えたモノに「ヒッ!」と小さく悲鳴が漏れる。

 

「わかった!分かったから、もう少しだけ時間をくれ!」

「ではもう少しだけ。楽しみに待ってますね!」

 

背を向けたまま、弾む声でジルが許可を出してくれた。

ホッとした後、握りしめた布を睨んだが状況が改善されるわけもなく・・

 

―ええいっ!自分で蒔いた種だ!女は度胸!!―

 

気合を入れて一つ頷き、背中を切り開かれた服を脱ぎ去る。

続いてズボンと一緒に下着を引き下ろした。

と、先程洗浄の魔道具できれいにした筈なのに、溢れた体液が糸を引いたのが見え・・

羞恥に顔が火照り一瞬手が止まる。

 

だが、ここで躊躇えば更に恥ずかしいモノを追加される可能性が・・

先程、少しだけ見えたモノが脳裏を過ぎり慌ててズボンを脱いだ。

次いで靴下を脱ぎ、結っていた紐を解いて髪を下ろす。

服としての用を成していない透けた布を頭から被り、そのまま勢いに任せて紐な下着を穿いた。

意外にも、布地はさらりとして肌触りがよく、敏感になった肌にも負担が少ない。

 

さて。着替えは終わったが・・このままの姿を晒すのには強い抵抗感がある。

何かないかと箱を漁ると、大きな薄手の布が出て来た。

これ幸いと頭からすっぽり被り、前を合わせて顔だけ出す。

 

「も、もういいぞジル!」

 

呼べば満面の笑顔で婚約者が振り向き、こちらを一目見てスンと表情を消した。

 

「エトラさん・・その布は余計ですよ?おまじない人形みたいで可愛いですけどね?」

「そ、そうは言っても・・まだ心の準備が、だな・・」

「えぇ~・・そろそろ覚悟を決めましょうよ・・」

「う・・うむ・・」

 

『仕方ないな』と苦笑した婚約者はすいと近寄ると、ぎゅっと布ごと抱きしめてくれた。

頭をよしよしと撫でられ、背中も優しく擦られる。

暫くそうして、緊張や恥ずかしさが和らぎ肩の力が抜けた頃、耳元で優しく囁かれた。

 

「エトラさんの素敵な姿・・見たいな・・」

 

ドキリと心臓が跳ねる。

次いで「ね?見せてください・・お願いします」と請われ、少ししてこくりと頷いた。

婚約者がぎゅっと力を込めてから腕を解放すると一歩下がる。

 

ドクンドクンと体内を巡る血潮が耳元で煩く響き、どこか現実感の無いふわふわとした心持のまま羞恥に震える手でゆっくりと布を開いていった。

 

顔、肩、胸元、腕と順に肌が外気に晒され僅かに粟立つ。

やがて、用を無くした布は背中から足元に落とされた。

 

ジルの顔を直視する事が出来なくて・・斜め下を向き目を閉じる。

手の置き場に困り、両脇に添わせたままぎゅっと拳を握った。

 

暖色の明りが照らす中、しん・・と静まり返る天幕内。

 

ドサリと音がして反射的に目を開くと、目の前に四つん這いに崩れ落ちる婚約者の姿があった。

 

 

△    ▽    △    ▽

 

 

迂闊に「何でも」だなんて言ってくれた婚約者。

心配でささくれた感情に任せ、目に留まった寝屋着(ネグリジェ)を手に取り広げて見せると困惑した顔が振り向く。

『絶対に着てもらいますからね』と感情を込めて見つめれば、ひくりと口元が引き攣っていた。

 

二人して身を清めた後、背を向けて支度を待つ。

怒り混じりの感情は、この時既にワクワクとした期待に塗り替えられていた。

 

―まさか着てもらえるなんて!―

 

こういった事が苦手そうな彼女に着用を頼むのは憚られていたのだが、天は自分に味方した。

ころりと手元に転がり込んできた幸運を噛みしめ拳を握る。

躊躇う婚約者と、背中越しに何度か言葉をやり取りして説得に成功。

期待に胸を膨らませながらもう暫し待った。

 

呼ばれ、振り向いてちょっとガッカリ。

でも布を被り、顔を真っ赤に染めて震える彼女が可愛くて許してしまう。

緊張するのも当たり前だよなと思い直し、抱きしめて落ち着かせるように体を擦った。

自分だって、さっきから心臓が煩いくらいに暴れている。

 

「エトラさんの素敵な姿・・見たいな・・ね?見せてください・・お願いします」

 

切なくも希(こいねが)えばこくりと頷く愛しい人・・

ぎゅっと抱きしめてから解放して一歩下がり、その全身を視界に収めた。

 

幕が上がるように、徐々に開かれる布。

ゆっくり現れる、白いレースの寝屋着が興奮を加速させる。

とうとう邪魔な布が取り払われ足元に落とされた時、そこに居たのは女神だった。

 

愛しい婚約者の寝屋着姿を余すことなく視界に収めたら・・

その想像以上の美しさに足の力が抜け、腰から崩れ落ちて四つん這いの姿勢になった。

 

さらりと流れる長い黒髪に、対照的な白い寝屋着が映える。

火照る肌と透ける白との対比が美しくて眩暈がした。

恥ずかしそうに視線を落とすその頬に黒髪が一房流れ落ちる場景は、どんな画家でも描き表せないであろう完璧さだ。

透け感のある布越しに、胸の頂がツンと主張する様子は淡い桃色なのも相まって神々しくすらある。

寝屋着の裾。幅があるレースからすらりと伸びる素足の造形美といったら堪らない。

太過ぎず、細過ぎず・・正に理想の曲線美だ。

 

―神様ありがとうっ!!生きてて良かった!!―

 

両手両膝を地に着けたまま、胸中で普段は意識もしない神に全力の感謝を捧げる。

 

「ジル?!どうした?大丈夫か?!」

 

焦った様子で、心配そうに呼びかける声に顔を上げれば・・

淡い明りの中、レースをなびかせ目の前に降り立った黒髪の女神が、潤んだ瞳で見下ろしていた。

 

自然と、片膝を立てて上体を起こし、おろおろと目の前を彷徨っていた手を取る。

片手で捧げ持つようにして、手の甲に触れるだけの口づけを落とした。

下から見上げ、真っ直ぐに視線を絡め、片手を胸に置いて祈りのような神聖な想いを込め、告げる。

 

「エトラさん・・俺と、結婚してください・・」

「ジル・・」

「俺と一緒に・・どうか、ずっと傍にいてください・・」

 

切なる願いを聞いて、彼女は驚きに目を開いた後、優しく眦(まなじり)を下げた。

 

「あぁ・・ジル・・ジルコニア。ありがとう・・勿論だとも」

 

美しい涙が一筋、ぽろりと零れる。

 

「ずっと、一生傍にいよう・・誓うよ。結婚しよう、ジル」

 

じんわりと、胸に火が灯り熱が生まれた。

今のこの記憶と感情は、一生忘れる事のない大切な物になる。そう確信した。

 

立ち上がり、ぽろぽろと雫が伝う頬を両手で包み込む。

親指の腹で目元を拭い、濡れた瞳と視線を合わせた。

 

「きれい、です。エトラさん・・凄くきれい・・」

 

呟くと、婚約者はぱちりと瞬きして、嬉しそうに微笑み瞼を閉じた。

誘われるように、自分も目を伏せて唇を重ねる。

じんと痺れるような感覚に、胸が震えた。

 

ちゅ、ちゅ、と啄ばむようなキスを重ねながら、肩を伝い下ろした手の指を彼女の指と絡め合う。

もう片方の手は背中に回し、軽く爪先で肩甲骨をなぞった。

ピクリとした反応と共に小さく声が漏れると、互いの体温がぐんと上がる。

口づけは次第に深くなり、合間の呼吸に熱が籠り始めた。

 

クチクチと水音を立てながら舌を絡め合う。

深く互いを喰い合うような口づけに、未だ慣れない彼女は一生懸命応えてくれている。

そのいじらしさに、喜びと共に嗜虐心を煽られ興奮が加速した。

自分の瞳がじわりと紅く染まるのを自覚する。

 

口づけを頬へ、こめかみへ、首筋へ。

啄ばみながら移動して、辿り着いた鎖骨の上を軽く吸い痕を付ける。

「んっ!」と漏れた声が可愛い。

 

絡めた指を離して胸の膨らみに手を伸ばし、触れた。

目の細やかな布越しに、指が沈む柔らかな感触。

ビクリと肩が跳ね、逃げようとする身体を背中に回し添えた手で押し留める。

腕の中に閉じ込めた身体は身を捩り、僅かな抵抗を示した。

 

「ジルっ!はっ・・んうっ!」

 

言葉を口づけで塞ぎ、舌を絡めて唾液を送り込み・・

やわやわと優しく手の平で包み、揉みながら唯一無二の感触を堪能した。

こちらを押し退けようと胸元へ添え置かれていた手は震え、逆に弱々しく戦闘服を握りしめる。

絡めた舌を吸い上げるようにして口づけを終えると、唇の端から唾液が伝った。

 

とろんと焦点の合わない潤んだ瞳が情欲をそそる。

零れた唾液を指の腹で拭い、頬にキスを落とすと、足腰の立たなくなった彼女を抱え腰を下ろした。

 

左腕で肩を抱き、脚の間で横向きに座らせると、膝を立てて彼女の背中を寄りかからせる。クッションを手繰り寄せ、床と膝の間に重ね支えにした。

額の生え際に唇で触れてから、また口づけて舌を絡める。

右手で胸に触れ、やわやわと揉んでから指先で肌を伝い降りる。

 

心臓の上を滑り、肋骨を辿って鍛えられた腹筋を爪先でなぞり・・臍を通って辿り着いた秘所。

薄い布地の上から優しく触れる。

 

「んっ!ぷぁっ!ジルっ?!そこ、はっ。あっ!?」

 

柔らかい・・でも思いの外強い反発力に感動しながらぷにぷにと何度も指先で押す。

胸元に縋りつき、服を握りしめて声を抑える婚約者・・

ぎゅっと抱き寄せ「痛い、ですか?」と耳元で問う。

 

びくんと肩が跳ねるが、ふるふると首を振られたので痛くは無いらしいと判断して、愛撫を続けた。

薄布の上から擦り、押し、捏ねる。

直ぐに指先が湿り気を帯び、そう時間を置かずに染み出た愛液で指が濡れて来た。

 

「エトラさん・・下、直接触っても?」

 

優しく問うと、二呼吸ほど間が空いて頷きが返って来た。

こめかみ辺りに口づけ、煩い心臓に急かされながら下着の隙間へ手を伸ばした。

臍の下から、真っ直ぐに指を滑らせ薄布の下へ潜り込む。

すると、つるりとした予想外の感触に一瞬、息が止まった。

 

―え?・・あ、茂みが、無い?―

 

そういえば下着。黒く透けて無かった・・

ドクン、ドクンと脳が揺さぶられるような鼓動に手を震わせ、衝動的に下着を押し上げて隙間を作り覗き込む。

 

そこには茂みのしの字も無く、ただ火照った肌がつるりとあって・・

 

―ありがとうございます!大好物ですっ!!!―

 

ぎゅんっと心臓を摑まれたような衝撃が走り、感動に肩を震わせて何度目かの感謝を上位存在へと捧げる。

まさか見えない所も自分好みなだなんて・・何、この有り得なさ~興奮するでしょ!!

 

「エトラさん。下、つるつるなんですね・・じっくり見てもいいですか?」

 

訊けば伏せていた顔が勢いよく上げられ、真っ赤に染まった顔が焦りの表情で左右に振られた。

『無理だ』と濡れた瞳が訴えて来る。

 

「駄目、ですか?どうしても?」

 

今度はこくこくと頷かれた。

・・仕方ない。今日のところは引くとしよう。

最初から無理をさせては次が遠のくかもしれないし。

それはとても悲しく、寂しくなってしまうので今は我慢だ、我慢。

 

「じゃ、触りますね・・痛かったら言ってください」

 

再び額が胸元に押し付けられ顔を伏せて隠されると、こくりと頷きが返って来る。

浮かせていた手を下腹部に添え、震える中指を割れ目に添わせた。

びくんっと跳ねる身体を左腕で優しく抱えて頭に口づけを落とし、右手に意識を集中させる。

 

添わせた指が愛液に濡れ、割れ目をなぞる潤滑液の役割を果たしてくれた。

最初はそっと・・優しく、優しく。

壊してしまいそうな恐怖を押し殺し、指の腹で弾けそうなくらいに膨らんだ中心を撫でる。

時折入り口まで指を下ろして僅かに沈め、愛液を足しながらひたすら愛でた。

 

最初はふるふると震えるだけだった身体は、時間が経つに連れ自然と脚が開き腰が揺れだす。

これだけ反応しているのに、ずっと声を押し殺しているのが寂しい・・勿体ない・・

何より自分が声を聴きたい。

 

「エトラさん顔、上げてください?・・キス、したいです。ね?」

 

顔を見せたくないのだろう。最初はふるふると額を擦り付ける様に首を振っていたが、側頭部やこめかみに口づけ「お願い」と耳元で囁くこと数回。

震えながらようやく上げられた顔、その表情に目を見開く。

 

火照り、赤く染まった肌。

唇は戦慄(わなな)き眉根はぎゅっと寄せられ・・頬は涙に濡れていた。

 

 

△    ▽    △    ▽

 

 

普段、自分でも触れる事の無い箇所に恋人の指が宛がわれる。

途端、腰から背中を駆け上がる痺れに身体が震えた。

前回膝で押された時とは全く違う感覚に戸惑う。

すりすりと割れ目を撫でられる度、ビリビリと痺れるような感覚が撫でられた箇所を中心にして胎に響き、腰から背中、腕へと伝い駆け回った。

 

―何、これ。何?・・知らない。こんなの知らない―

 

不意につぷりと指が浅く沈められると腰が跳ね、自然と足が開いてしまった。

撫でやすくなったのか、僅かに擦る速度が速くなる。

 

―あ。あ。あ。これなに。これなに・・・こわい―

 

初めて得た感覚。

衝撃的な体験に翻弄され、自分の身体なのに余りにも制御が利かなくて戸惑いが強くなる。

撫で擦られる度に痺れが折り重なり、下腹部に溜まっていく感覚にゾクゾクと背中が震えた。

恐れにも似た感情が胸を満たし、涙となって溢れる。

 

顔を伏せ、刺激の荒波に翻弄されていると「顔を上げて」と請われた。

絶対に酷い顔になっている。そう思うととてもじゃないが従う気になれなかった。

けれども、口づけがそこかしこに振って来て。合間に耳元で「お願い」と囁かれ・・

「キスしたい」と熱の籠った声と熱い吐息が耳に触れれば応えたくなってしまった。

 

恐る恐る顔を上げる。

視線が合えば、恋人は目を丸くしていた。

 

「あ。ごめんなさい!痛かったですか?!」

 

慌て、焦りながら謝罪され、指が下着から引き抜かれる。

声を出せずに「痛くない」と首を振って伝えれば戸惑いが返って来た。

 

「なら、嫌でしたか?不快になったとか・・」

「ち、ちがう・・」

 

漸く絞り出した声は酷く頼りなく震えており、それが情けなく思えてまた涙が溢れて来る。

ますます焦る恋人に申し訳なさが募った。

 

「すまない・・自分の身体が、自分の知らない物になったみたいで・・」

 

「怖いんだ」と正直に告げる。

困らせたい訳では無いのに、他にどう伝えれば良いか分からず身を縮こませた。

 

「俺も、怖いですよ・・」

「え?」

 

思ってもいなかった言葉に思わず聞き返す。

だって、あんな・・とても余裕があるように見えたのに?

 

「怖がる中身は違うと思いますが・・エトラさんを壊しやしないかと・・自分が抑えられなくなりそうで・・怖い、ですよ。俺も」

「・・君は絶対に私を傷つけたりしないよ・・」

「・・・噛んだりしますけど・・」

「・・そういう意味ではないよ。理解してるだろう?」

 

ふいと目を逸らし「まぁ・・はい・・」とどこか納得できない様子で頷く。

そっぽを向いた視線を取り戻したくて手を伸ばし頬に触れると、期待通り視線が合わせられた。

 

「ジル・・私は君を信じている。君も、私を信じてくれ。何、そう簡単に壊れやしないさ。これでも鍛えてるんでな」

「・・知ってます。知り合ってからずっと、見てきましたから・・」

「だろう?」

 

話すうち、怖れはどこかに消えていた。

もう大丈夫だと心の何処かで理解し、納得も出来ている。

きっと目の前の恋人も。

 

ぐいと首を引き寄せ、唇を合わせた。

至近距離で見つめ合い、言葉を紡ぐ。

 

「つ、続きをしようかジル・・その、もう平気だから・・」

 

照れから、今度はこちらが視線を外す。

 

「はい・・優しくしますね」

「君はずっと優しかったさ・・私が勝手に戸惑っただけだよ」

「それでも、配慮が足りなかったかと・・もっと、大事にします」

 

強い熱意に思わずふふっと笑みが零れた。

一生懸命な年下の恋人が、とても可愛く思えて。

 

「あぁ・・そうだな。くれぐれも頼むよ」

「了解です」

 

微笑み合い、また唇を重ねる。

さぁ仕切り直しだと、心の底で気合を入れた。

 

長い、愛のやり取りが始まる。

 

 

 

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