潜入捜査三日目
「そんじゃ今日は廊下の模様替えをしていくぞ。床の穴の空いた部分の張り替えは私がやるから、ユミナは壁紙の貼り替えを頼む」
「はい⋯!」
めぼしい情報を得られないまま二日⋯ユミナことベケスはメイドとしての仕事をこなしつつ、同時にボロボロの屋敷の修復を行っていた
本格的に働く事になった二日目に、素人のベケスに対し先輩メイドであるミズネが、朝から晩まで付きっきりで教えてくれたおかげで、やるべき事の流れは既に頭に入っていた。また、長く務めていたというだけあって彼女の手際も良く、目の前の問題を詰まることなく涼しい顔でテキパキと解決していく程の実力を持っていた。既に屋敷の八割の修復が終わってるのも、彼女の的確な判断と指示のおかげだった
「ところでユミナ、私のお下がりの服だが⋯動きにくいとかないか?」
「はい⋯!ちょうどいい、です」
「なら良かった。まだ沢山あるからよ、キツくなったらまた言えよ」
「ありがとう、ございます⋯!」
そんなベケスは現在、偽装の為に着ていた服ではなくミズネと同じメイド服を着て作業をしていた。彼女が前の屋敷を辞めた時、そこの先輩メイド達に餞別だと大量に渡されたらしい。お礼を伝えると彼女は笑って作業を再開させる
(最初は荒っぽい子かと思ったけど⋯蓋を開けてみればすっごく面倒見のいい良い子じゃない。譲って貰ったこの服、ヒラヒラがいっぱい付いてて可愛いしいつも着てるローブとはまた違った良さがあるわね)
「~♪~~♪」
「やあユミナ、お疲れ様」
「あ、レヘターさ──まぁっ!?♡ふっ⋯ぅ♡お⋯♡お疲れ様っ⋯♡ですっ⋯!♡んぅっ♡♡」
可愛い装いで働ける現状に上機嫌になったベケスが、鼻歌交じりで作業をしていると、そこに朝食を済ませたレヘターがやってきてベケスに後ろから抱き着き身体をまさぐってきた。ベケスは嬌声を我慢しつつ挨拶を返す
(それに対してコイツは⋯!隙あらば人の身体に触れてきて⋯!てゆーか何でこんなに手慣れてんのよ⋯⋯っ♡)
初日にやらかした失言のせいで事ある毎にレヘターが自分の身体に触れてくるようになり、それが三日目にしていつもの光景と化してしまっていた
昨日だけで少なくとも二十回以上は触られた記憶がある。多すぎて途中で数えるのを止めてしまったが⋯⋯ベケスは思わず口走ってしまったことを後悔し始めていた
「ユミナは健気で可愛いね」
「っ♡え、えへへ⋯♡ありが⋯♡とうっ♡⋯ございま、す⋯っ!♡」
(もう情報とかどうでもいいから今すぐ正体明かして変態としてコイツをつき出したい⋯!でもあの子はどうすれば⋯)
正直なところ、悪事を暴いて捕まえるという充分な理由は既にこうしてあるのだが、この男に長い間仕えてるであろうメイドのミズネの事を思うと、どうしてもベケスは一歩踏み出せずにいた
「ミズネは⋯いないのかい?彼女に用があったんだけれど⋯⋯いないならさ、ユミナ。今のうちにこの先をヤッてみな──────」
「──────ここにいますよ主様」
「うわっ!?ミズネ⋯!なんで床下に痛゛ったぁ!?」
セクハラに耐えているとミズネが床に空いた穴から顔を出し、レヘターの足首を掴んで思いっきり持ち上げ転ばせる。後頭部を打ち付け痛みに悶えてる間に穴から飛び出してベケスを自分の背中へ隠すよう移動する
「また⋯人の目を盗んでセクハラですか主様。このド変態ヤロー」
「ちょ、ちょっと待ってくれミズネ!誤解なんだ!」
「誤解?何がです?」
「いやだからその⋯ユミナとちょっと遊ぼうとしてただけさ!そうだろうユミナ!」
「あの⋯その、確かにされてもいいとは言いましたがその⋯回数がちょっと多いかな~って⋯⋯」
「⋯なるほど!つまり数で責められるより一度にじっくりヤる方が良いと「おい主様」────はい、控えます⋯⋯」
暗に減らして欲しいという言葉の意味を変な方向に解釈したレヘターを、ミズネが一言で黙らせる
主人のセクハラをミズネが殴る蹴る捻る吹き飛ばす等して止めて説教をする⋯⋯これもここでのいつもの光景となっていた。ベケスは頭を下げてお礼を言う
「ミズネさん、ありがとうございますっ⋯!」
ちなみに⋯ベケスが知る限りミズネがレヘターからセクハラを受ける事は無かった。もしかしたら昔はしていたのかもしれないが、彼女の膂力と容赦の無さを見るに過去に相当痛い目に遭わされたのかもしれない
「⋯⋯⋯⋯どういたしまして。それで?主様は私に用があるとの事でしたが」
「ああうん、後で僕の部屋に来てくれるかい?重要な話があるんだ」
(!?これは⋯)
さり気なく放たれた重要な話という言葉に、ベケスは息を呑んだ
「────分かりました。作業が一段落したら向かいますんで」
「うん。その間ユミナは自分の部屋で待機しててくれ。用事が済んだらミズネを向かわせるからさ」
「わ、分かりました⋯!」
立ち去るレヘターの後ろ姿に頭を下げて作業に戻るミズネ。ベケスも動揺を悟られないように自分の作業を再開させる
(三日目にしてようやく進展が⋯情報を得られるチャンスね)
◇◆◇◆◇◆
「ふぅ⋯そろそろ二人の会話が始まる頃かしら?よし⋯!」
数時間後、作業を終えて部屋に戻ってきたベケスはベッドに腰掛け、気合を入れると自身の耳に手を添える
(“強化魔法”で聴力を強化。やり過ぎると音を拾いすぎてめちゃくちゃ煩いから、なるべく範囲を屋敷まで絞って⋯⋯こんなものかしら)
「うっ⋯!?これ、は⋯キツイわね⋯!」
耳から手を離すと木の軋む音、隙間風の吹く音、ネズミか何かの生き物がカサカサと動く音など、様々な音が耳に流れ込んできた。急な音の奔流に襲われたベケスは思わず後ろに倒れベッドに身を投げ出す
(集中⋯集中⋯目的の音を探すのよベケス!)
自分に言い聞かせ何とか耐えると、音を一つ一つ聞き分けていく。その中から廊下を歩いていると思われる足音を見つけ出した
(見つけた!後はこれ以外の音を遮断して⋯⋯ふぅ、ようやく落ち着いたわね)
ベケスは目当ての音以外の音を全て遮断して、“強化魔法”の精度を高めていく。そのまま数十秒程待つと目的の話し声が耳に入ってきた
「主様、お待たせしました」
「来たねミズネ」
「はい⋯⋯それで重要な話とは?」
「あー、と⋯⋯その話をする前にさ、どうだいユミナは?仲良くやれてるかい?」
(わたしの話題?確かにミズネからの評価は気になるかも⋯)
「ユミナ、ですか?そうですね、覚えが早く手際も良い。少し引っ込み思案なところもありますが、物知りで話してみれば結構面白い子ですよ。あれならすぐにでも仕事を分担して任せられそう───ですが、主様のセクハラのせいでもう暫くは私の傍に置いておくことになりそうです」
「うっ⋯!」
(ああ⋯多分今、睨まれたんでしょうね)
「全く、隙あらばすぐに手を出して⋯前の屋敷でも先輩達の胸揉んでましたよね?主様は⋯⋯本能だけで生きる獣ですか?浮気しまくりの節操無し」
「待てミズネ!胸を揉んだのは確かだがそれ以上の事はしてないぞ!それに僕は結婚してないから浮気にはならないんだ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯ゴミクズ」
(うん、ゴミクズね)
レヘターの所業にベケスは呆れるしか無かった。あの行動がまさか普段からやっていた事だったとは⋯しかも本人は全く反省していない。こちらからは見えていないが、間違いなくミズネはゴミを見るような目を主に向けていることだろう
「ハァ⋯⋯もういいです。いい加減重要な話とやらを話してください────充分心の準備はできたでしょう」
「!?⋯⋯気付いて⋯たのかい。いや、予想してたって顔だね」
(何⋯雰囲気が、変わった⋯?)
「それじゃあ本題に入るけれど─────ミズネ、これはどういう事だい?」
レヘターの声色が明らかに変わり、パサッと何かが投げて置かれる。音からして紙の束を机に投げ置いたようだ。ミズネが歩いてそれを手に取り、ペラペラとめくる音はするが、彼女は一言も喋らない
「この街に引っ越してきた際に作った書類に、何故僕の実家の名前が使われてるんだ?僕が君に手渡した時、この名前は書いてなかった筈だ」
(!?)
「君が書いたんだろミズネ。どうしてこんな事をしたんだ?」
「⋯⋯⋯⋯そうすれば貴族として街の一区画の統治を任せられ、それにより税の一部を分けて貰えたからですよ、主様。実家でもそうだっただろ?」
(そういうこと──────名前を利用していたのは主じゃなくて、メイドのミズネの方だったのね!でも何でそんな事を⋯?)
新たに疑問が浮かんだが、会話が続いていたことを思い出し再び意識を集中させる
「君に住む場所を見つけたと、この屋敷を見せられた時薄々気が付いていたよ。ボロボロとはいえ、直せば立派なお屋敷だ。それに併せて今の説明とこの書類⋯ミズネ、君は僕に貴族の真似事をさせたいんだろう?」
「真似事じゃねーっす、主様は正真正銘本物の貴族です。それに私、付いてきた時言いましたよね?主様を立派な人にしてあげますって」
「ミズネ⋯君が僕に付いてきてくれた事はとても嬉しく思っているよ。でも僕はあの家から追い出された時点で貴族じゃ無くなったんだ。なのにその名前を利用して税を不当に受け取ろうなんて⋯これは立派な犯罪だ!」
「そうかもしれませんね⋯ですがまだバレてません。その間に土地を治めるという貴族の責務を果たし、実力を示してこちらからあの家からの独立を宣言すれば、あんたはまだ貴族でいられるんすよ!⋯⋯でも、もしそれが嫌だと言うのであれば──────騎士団に連絡して私を捕まえさせればいい」
「それは────出来るわけがないだろう⋯!」
ミズネの発言にレヘターの息を呑む声が聞こえた
「私は構いません。実際立場を利用してその税を受け取ることを選択したのは私で、主様は罪を犯していないのですから。もちろん、途中でバレた時には私が独断でやったと証言します。ああそれと、間違って書いてしまいましたお金は返しますという言い訳はできませんよ。頂いた税の一部は既に使いましたので⋯⋯もう既に、引き返せない所まで来てるんすよ」
「!?⋯⋯⋯⋯君は⋯何でそんな⋯⋯そこまでして⋯!⋯⋯いや、わかった。今日はもう下がっていい。対応は後で考えるよ⋯⋯」
「そう⋯ですか、それでは失礼します 」
◇◆◇◆◇◆
「なるほどね⋯全容が見えてきたわね」
会話が終わったことを確認し、“強化魔法”を解いたベケスは二人の会話から状況を整理する
貴族だったレヘターは何らかの原因で廃嫡、家を追い出されてしまうも一からやり直す為にこの街へとやってきた。けれどレヘターに付いてきたメイドのミズネがその事実を認められず、この街での戸籍を貴族として登録してしまった。目的は主であるレヘターの地位の維持と、本家からの独立⋯といった感じだ
途中彼女が言っていた通り、廃嫡がバレる前にこちらから切り捨てたという既成事実を作ればレヘターは貴族を続けられるだろう。しかしリスクが高い上に、実際には既にこうしてバレてしまっている
(名前を使っていた目的がわかった以上、対処は出来る。原因となったあの子をわたしが捕まえればいい。けれど⋯⋯本当にそれでいいのかしら?)
ベケスはまだ謎が残っていると感じた。ミズネの自分が一緒にいた時の主への態度と、主と二人きりの時に見せたどこか相手を尊重するかのような態度の違い
冷静な判断が出来るはずの彼女が、罪を犯すのも厭わないといった姿にも違和感があった⋯それに主であるレヘターにも⋯⋯
「よし、まずはミズネに話を聞きましょう。話が終わったら私の所に来るって言ってたしちょうどいいわ」
しかし五分、十分といつまで経ってもミズネが部屋を訪れることはなかった
「おかしいわね⋯“探知魔法”」
不審に思い魔法で探ったところ、屋敷のまだ修繕が行き届いていない倉庫の奥でしゃがみ込んでいる気配を見つける
(主人の部屋にも気配が一つ⋯こっちは主のレヘターだから倉庫の方がミズネね。でも、なんでこんな所に?)
「しょうがない、わたしから向かいますか」
ベケスは彼女に会うべく身だしなみを整え部屋を出ると、倉庫を目指して廊下を歩いていく
(⋯⋯⋯⋯あった。ここね)
少しして目的の倉庫の扉の前に立つベケス。直前まで中の気配が動いてないのは確認済みだ
彼女の話を聞き何とか説得する⋯覚悟を決め、扉に手をかけ押し開く
「ふっ⋯♡ん⋯⋯んっ♡⋯ふっ♡」
(⋯⋯⋯⋯んん?)
半分ほど扉を開いた時、中から聞こえてきた声で動きを止める。まさかと思い音を立てないよう慎重に中を覗き込むと、そこにはスカートの裾を口に挟み、自らの指で秘部を慰めているミズネの姿があった
くち⋯⋯♡くに⋯♡すり♡ずりゅ⋯♡
「ふっ⋯ぅ♡くそっ♡くそっ♡主様⋯♡何で⋯♡んぅ♡私には♡何にも⋯⋯うぅ⋯♡私だって⋯♡ううぅぅう⋯っ♡」
(どっ、どどどどういう事!?なんでオナニーしてるのこの子!?)
思わぬ光景に混乱して何も言えずに固まるベケス。その間もミズネの指は止まることなく、段々と激しさを増していく。ぐちゅぐちゅ♡と卑猥な音が倉庫に響く
「ふー⋯♡ふぅーっ⋯んんぅっ!♡♡主、様ぁ⋯♡」
ぢゅぷ⋯⋯♡つぷっ♡つぷっ♡♡くちゅ♡くちゅくちゅくちゅくちゅっ♡♡♡♡
指を二本膣に挿し込み、浅い所を掻くように刺激するミズネ。次第に水音は大きくなり、より一層激しい動きになっていく
「んぅっ⋯⋯♡はっ⋯ふっ、ううぅ♡♡主、さま⋯っ!♡♡♡あるじさま⋯⋯ぁあっ!♡♡♡」
プシッ⋯⋯♡プシュ⋯⋯♡ピュッ⋯⋯⋯♡♡♡
ビチャッ♡と液体が床を叩く音が響く。ミズネが潮を吹いてイッたのだ。ぽたぽたと股から滴る液体が床を濡らしシミを広げていく。足の力が抜けたのか背中を壁に預けながらゆっくり座り込む。すると壁から突き出た何かが引っかかったのか、ミズネの頭に乗っていた大きな帽子がずれ落ちる。そして──────
その帽子の中から明らかに人の物では無い、丸い大きな耳が飛び出したのだった