※この作品はR-18です。

褐色マゾ肉便器リョシーセ♡   作:ミダレウチ

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何とか今月中に間に合った⋯!でも新しい章の導入だからえっちシーン無し


ミミック編
別れ、そして出発


 

「皆さんにお知らせです。リョシーセが試験の為、一ヶ月後にはこの街を出るそうです。彼女は冒険者として日々、周りを助けている忙しい身⋯皆さん、今の内にそれぞれお別れと激励の言葉を伝えるように」

 

冒険者ランクを上げるために、旅に出る事になったリョシーセ。さっそくその事を自分が育った孤児院の院長に伝えると、孤児院の子全員を集めた送別会が行われた。発表が終わった途端、孤児院の子達がわっ!と一斉に近付き、リョシーセの周りを囲う

 

「おめでとうリョシーセ!冒険者になるー!って小さい頃からずっと言ってたもんな!本格始動だな!」

「リョシーセ!後で私のイチオシの冒険譚が書かれた本をプレゼントするわ。旅の餞別よ」

 

「ありがとう!ここからさらに有名になってみせるから、見ててね!うん、旅の途中で読んでみるね、ありがとう!」

 

「リョーねーちゃんどっか行くのー?すぐ帰ってくるー?」

「おみやげ買ってきてね!えとね、えとねぇ⋯大通りで売ってる飴がいいー!」

 

「そうだよー。うーん、すぐには無理かなぁ。おつかいじゃないからね!?でも、帰ってきたら買ってきてあげるね」

 

「ねーちゃん見てー!でっけーハナクソ取れたー!」

「おねーちゃんあれやってー!目の前から消えるやつー!」

 

「うんうんでかいねぇ。ちゃんと捨てるんだよー。しょうがないなぁ、いくよ?」

 

リョシーセはもみくちゃにされながら、一人一人丁寧に受け答えしていく。その内の一人のリクエストに応え姿を消すと周囲がさらに盛り上がった。

 

「消えた~!」

「すごーい!」

「どっか飛んでった~!」

「お!でたなリョシーセの得意技。ほら皆で探すぞ!見つけた奴は院長先生からお菓子もらえるからなー」

「お菓子!」

「「「きゃー!」」」

 

このリョシーセが気配を消して隠れ、それを他の子供達総出で見つけるという遊びが、この孤児院における最近の流行りとなっていた。年長者の合図でリョシーセを見つけ出そうと全員が方々に散る

 

「隠れるのが上手くなりましたね、リョシーセ」

 

「────────よく分かりましたね、院長先生⋯⋯」

 

後に残された院長が背後の斜め上を見上げ、彼女の名を呼ぶ。するとそこからリョシーセが姿を現した。気配を消し即座に跳び上がり、壁に張り付いて隠れていたのだ。見つかったことに戸惑いながら、元の位置に戻る

 

「その才能を伸ばすようにと言ったのは私ですよ。当然、どれだけ使いこなせるようになったのか見るのも私の役目です」

 

「それじゃあ聞きたいんですけど、どうでした?」

 

「不意打ちだったとはいえ、皆が注目している中で気配を消せたのは見事でした。そこら辺にいる輩程度になら、絡まれても問題は無いでしょう」

 

「!えへへ⋯院長先生のおかげです!」

 

見事と言われたリョシーセは頭を掻きながら照れる。夢を叶えたいと孤児院を抜け出した自分を、応援すると言って送り出してくれた院長先生が褒めてくれたのだ。リョシーセも感謝を伝える

 

「しかし提案してきた子には跳んだところまで見られていました。ソレができる、今からやるはずと分かっている相手、即ち警戒心が強い相手にはまだまだ通じてません。気を逸らせる別の手段を常に持っておくといいでしょう」

 

「う⋯!なるほど確かに⋯⋯わかりました、参考にします」

 

その後すぐに問題点を突かれたが、これは院長先生なりの優しさでありリョシーセもそれは理解していた。本番で敵はそんな指摘しないし、その場ですぐ改善できるとも限らないからだ。現に院長先生はすぐ改善方法を提案してくれた。教えられたことを交え、リョシーセも改善方法を頭の中で模索する

 

「それから、こちらをどうぞ」

 

「これは⋯⋯マント?」

 

一通り話し終えた院長が、折り畳まれた布をリョシーセに手渡す。広げてみるとリョシーセが普段から身に着けているフード付きのマントと一緒の物だった。ただし普段のは薄茶色に対しこちらは表面が紺色で、裏地が赤色をしていた

 

「旅に出る貴女へ、私からの贈り物です。何の変哲もない、過去に私が身に付けていただけの、ただのマントですが⋯⋯旅の無事を願うお守りと思っていただければ。替えの着替えの一枚に加えておいてください」

 

「わああ⋯!ありがとうございます!今日からこれ着ていきます!!ぃやったー!!!」

 

「────────そうですか」

 

リョシーセの感謝を院長はサラリと流す。しかし新しく受け取ったマントを両手に、目を輝かせながらくるくると回るリョシーセを見る表情はどこか嬉しそうだった

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

街の大通りに並んだ飲食店の一つに、大きな耳と細長い尻尾を携えた少女が訪れた。待ち合わせでもしているのか、誰かを探す様にきょろきょろと店の中を見渡している。すると自分に向かって手招きをしている人物に気付き、その人物がいる店の奥へと歩みを進めた

 

「よ、ベケス。久しぶりだな」

 

「久しぶり、ミズネ!そうね、二ヶ月ぶりくらいかしら」

 

少女─────ミズネは待ち合わせをしていた人物であるベケスの前に座る。そして店員を呼び止めて適当に注文をし、久し振りの再会を祝して乾杯をした

 

「⋯⋯⋯帽子、取ったのね」

 

「ん?ああ⋯この街も、獣人は珍しいもんじゃ無くなったからな」

 

ミズネの言う通りついこの間、獣人達で作られた商人ギルドが街の治安改善の噂を聞きつけて商売目的でこの街にやってきた

最初は獣人の存在を知らなかった街の住人達に驚かれ警戒されたものの、クヴィチ司祭長が直々に商談に乗った姿を見せたことでその場は治まった。統治者の献身的な姿と、それに対し終始丁寧な対応をしてみせた獣人達の姿を見た街の人達も、その後次第に警戒を解いていった

そこからはあっという間だった。獣人達との友好的な関係が築かれ、今では獣人達が街を歩いている姿が当たり前になったのだ

 

「私がいたところみたいに敵対して奴隷を作るところもあれば、この街みたいに獣人を知らないところもあって、獣人が商売を出来るところもある⋯⋯耳も尻尾も隠さず歩けるとか、故郷を出た時は思いもしなかったな」

 

「世界は広いもの。自分らしく胸を張って生きていばいいのよ。それでどう?少しは獣人で良かったって思えるようになった?」

 

「まあ、な。というか、それ以上かもしれねぇ」

 

「ん、どういうこと?」

 

ベケスが聞き返すとミズネが周りに視線を巡らせ、誰もこちらを見てないのを確認してから服を捲り上げお腹を見せる。するとそのお腹が若干膨れていたのがわかった

 

「え?まさかそれ⋯⋯!?」

 

「そのまさかだよ。どうやらあの時デキちまったらしい。発情期にヤると妊娠しやすいんだと。さらに私タイプの獣人は成長も速いらしくてな。三ヶ月後には産めるって獣人の医者に言われたよ」

 

「そんなに速いの!?」

 

「ああ、しかも双子らしい」

 

「ふた⋯っ!!?」

 

「おいおい、驚きすぎだろ⋯ま、気持ちはわかるけどよ。へへ⋯♪」

 

そう言ってお腹をさするミズネの表情は、ベケスが今まで見た中で一番幸せな顔をしていた。自身の事を中途半端な存在だと嘆いていた彼女はもう居ない。これからは幸せな人生を歩んでいけるだろうとベケスは確信する

 

「おめでとう!自分の事のように嬉しいわ!」

 

「ありがとな。本当に⋯あの時ベケスが来てくれなかったら、私は自分を好きになんてならなかったかもしれねぇ」

 

「ふふ、どういたしまして!わたしも幸せそうなミズネが見れて良かったわ。それにしても話があるって言われて来てみれば、結婚通り越して妊娠してたのには驚かされたわね」

 

「ああいや、この事も報告したかったのはそうだけどよ。本命はこっちだ」

 

「?これは⋯お金?」

 

ベケスが手渡されたのは金貨の入れられた袋だった。そこそこの重さがあり、それなりの量が入っているのが伺える

 

「実はあの後、屋敷を売っ払って小さな家を買い直したんだ。で、住んでた時私らで修繕してただろ?そのおかげで結構な値で屋敷が売れてよ。だからそれはベケスが働いてた時の給料分と⋯私のやらかしを立て替えてくれた分のお金だ」

 

「そんな、別にいいのに」

 

「聞いたぜ、魔法の資格試験を受けに二週間後には街を出るんだってな。だったら何かとお金は必要だろ?多いに越したことは無ぇ。それに⋯⋯私のケジメでもあるんだ。受け取ってくれ」

 

「⋯それを言われちゃ受け取らないわけにはいかないわね。わかったわ、ありがたく使わせてもらうわね」

 

「おう!⋯⋯⋯ああでも、無駄使いすんなよ?私みたいにな」

 

「────────あはは!ええ、そうね。気を付けるわ」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「────────というわけでキスメ殿、我々は三日後にこの街を出て行く訳っすが⋯⋯姉さんをどう説得するか考えないといけないっす」

 

ルアーナは街外れの実験室で過ごすキスメの元に訪れる。彼女はセラーカの報告を受けて、不穏な動きをしていると噂の他の姉妹の様子を探る事を決めた。その際、キスメの力がどうしても必要になるため連れて行きたいのだが、このままだとキスメに依存気味であるクヴィチと衝突するのは目に見えていた。その事を相談しに来たのだが、当の本人であるキスメには秘策があるようだった

 

「大丈夫だよ!その事について僕に考えがある!ほら、これを見て!」

 

「?⋯⋯なっ!?それは─────」

 

キスメが背中に隠していたものを見せる。その全貌を見たルアーナは驚きのあまり言葉が続かなかった。その反応が見たかったとばかりの得意げな顔でキスメは話を続ける

 

「いい?作戦はこうだよ────────」

 

 

 

「────────なるほど、しかし本当に上手くいくっすかね?」

 

「いけるいける!物は試し、当たって砕けろだよ!というわけで作戦開始ー!」

 

「いや、砕けちゃダメっすよ!?」

 

キスメの作戦を聞いてもルアーナは懐疑的だった。しかしポジティブ思考なキスメは気にすることなく、見せたものを掴んで実験室を飛び出したため、ルアーナは慌てて追いかけることとなった

 

 

──────────

 

 

カチャーン⋯ッ

 

「今⋯⋯なんと⋯⋯⋯⋯?」

 

そして案の定、ルアーナからの言葉を聞いたクヴィチは手に持っていたペンを床に落とし、そのままの格好で固まるほどの動揺を見せた

 

「いえ、ですからウチとキスメは三日後にこの街を出るっす。なので姉さんにその事を報告に来たんすけど⋯」

 

「な、何故⋯?」

 

「何故って言われても⋯ウチは元々一年掛けて魔王に囚われていた姉さん達八人のメンタルケアを行ってたんすよ。そろそろ他の姉さんの所にも行かないと⋯寧ろ長居しすぎたくらいっすよ?」

 

「いえ、そうではなくっ!ルアーナが出て行くのは分かります。寂しいですが、それがお仕事ですので⋯⋯ですがその⋯ご、ご主人様まで連れて行く必要は無いでしょう⋯!」

 

「それがあるんだよ、クヴィチちゃん!」

 

ルアーナの背後からキスメが待ってましたとばかりに顔を出す

 

「ご主人様⋯!どういうことですか?」

 

「実はちょっと前にこの街周辺のスライムを、僕が生み出した無害なスライムに変える作業が終わったんだ。後はほっといても緩やかに勢力を広げてくれるから、同じ事をする為に別の街に行くんだよ」

 

「冒険者ギルドの十数回に及ぶ調査の結果、スライムの無害化が認められこの街からスライム討伐の依頼は無くなったっす。ウチはこの成果を全国に広げるべきと判断したっす。その為にはキスメ殿の力がどうしても必要なんすよ」

 

「し、しかし⋯⋯」

 

「ま、食い下がってくるとは思ってたよ。わかるよ⋯僕に会えなくなるのが寂しいんだよね⋯⋯というわけで!そんなクヴィチちゃんにサプライズ!入って来ていいよー」

 

「は、はい!失礼します!」

 

二人の予想していた通り、食い下がるクヴィチに対し用意していた次の手を使う。扉に向かって呼びかけると返事と共に扉が開き、少年が緊張した面持ちで入ってきた。

 

「!?その──子は─────」

 

その少年は、見た目こそ人間の子供だが髪先や肌の表面がよく見ると透けていて、ぷるぷるとした艶があった。そしてこれこそ、キスメがクヴィチに対し用意した秘策だった

 

「この子は僕の核の一部を切り取って作った「別の僕」だよ!だから分身と違って僕が遠くに離れても消えることはないんだ。この子を僕の代わりとして、クヴィチちゃんの傍に助手として置いてもらうよ!」

 

「私の助手⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「は、はい!司祭長さまの助手になる為に生み出されました!よろしくお願いし⋯ま⋯⋯?⋯えと、その⋯司祭長さま?⋯むぐ!?」

 

「すうぅぅぅう⋯⋯⋯はあぁぁぁあ⋯⋯⋯」

 

クヴィチが立ち上がり、キスメの説明を受けながら少年へと歩み寄る。そしてそのまま戸惑う少年を抱きしめると髪に顔を埋め深呼吸した

 

「⋯⋯⋯確かに、ご主人様と同じ匂いがします」

 

「匂い、あるんすか?」

 

「え⋯知らない⋯⋯何それ⋯⋯僕の匂いって何⋯?」

 

クヴィチの呟いた言葉について、ルアーナがキスメにこっそり聞くと明らかな戸惑いの声が返ってきた

 

(まあでも、反応は良い感じっすね。⋯いきなり匂いを嗅ぐのを良いと言っていいかわかんないすけど)

 

「~~~~っぷは!し、司祭長さま!?僕、何か失礼な事をしてしまったのでしょうか⋯?」

 

「いいえ、とんでもない。ご主人様、この子の名前は何ですか?」

 

「え?えーとね⋯スライム⋯スライム⋯⋯ライスくん!」

 

名前を聞かれたキスメは目を泳がせた後、閃いたという顔で名前を告げる

 

(絶対今適当に決めたっすね⋯)

 

「あ、あと言い忘れてたけど⋯記憶とか引き継がせた訳じゃないから、ほとんど何も知らないよ。一応業務の手伝いとかは出来るはず。だからクヴィチちゃんがしっかりお世話してあげてね!」

 

「!⋯そうですか⋯⋯ライスさん、よろしくお願いしますね。分からないことがあればすぐに私に聞いてください。手取り足取り、しっかり教えますから⋯♡」

 

「!?⋯は、はい!ありがとうございます!僕、司祭長さまの助けになれるよう頑張りますから!」

 

「はい⋯♡それと、私のことは名前で呼んでくれると嬉しいです」

 

「では⋯クヴィチさま!これからよろしくお願いします!!」

 

ゾクゾク⋯⋯♡♡

 

「♡♡♡⋯ええ!どうか末永く、よろしくお願いします♡」

 

自分のことを受け入れてくれるか不安だったライスは、クヴィチの言葉に素直な喜びを見せる。しかしそれを傍で見ていた二人は、少年が名前で呼んだ瞬間、背筋を震わせ視線の鋭さが変わったクヴィチの不穏な様子に気が付いていた

 

「ルアーナ、ご主人様⋯⋯今日はありがとうございました。これなら私、頑張っていけそうです⋯♡」

 

「そっか、良かった!それじゃあそろそろ失礼するね!ライスくん、クヴィチちゃんと仲良くね」

 

「うん!」

 

「あ、ちょっとキスメ殿!えと、それじゃあ姉さん、失礼するっす⋯!」

 

「ええ────────いってらっしゃい、ルアーナ♡」

 

慌てて出て行くルアーナにクヴィチは見送りの言葉を贈る。しかしその視線は抱き寄せたライスに向けられており、扉が閉まるその瞬間まで外されることはなかった

 

 

──────────

 

 

「いやぁ、まさか本当に上手くいくとは⋯」

 

「大成功だったね!『身代わり作戦』!」

 

キスメの作戦⋯⋯それは身代わりを用意するという実にシンプルなものだった。自分の核を問題の無い分だけ切り分け、それに粘液を分け与える事で自分とは別の自我を持ったスライムを生み出したのだ

ただし好き勝手に動くわけではない。基本的にキスメには絶対服従でありそこは他のスライム達とは変わらない。そしてライスと呼ばれたスライムに与えられた命令は三つ⋯「人と共存し生活に溶け込むこと」「必要以上に体積を増やさないこと」「クヴィチ司祭長の助けになる事」である

 

「しかし姉さん、キスメ殿とはあんまり似ていなかったのに、代わりにされたあの少年を意外とすんなり受け入れてたっすね」

 

「ふっふっふ。実は僕はね、度重なるクヴィチちゃんとの交わりであの子の本当の好みを知ったんだ」

 

「本当の好み?⋯⋯もしかして、それがあの少年ってことっすか?」

 

「そう!魔王に歪まされてたけど、本当はああいう風に自分を支えようと頑張ってくれる年下の子が好きなんだよ!だから見た目もちゃんとクヴィチちゃん好みに調整したんだよ」

 

「それは⋯知らなかったっす。あれが姉さんの好み⋯⋯」

 

「もちろんアッチの方もクヴィチちゃん好みに仕立ててるよ♡いや~夜の執務のお勉強も楽しんでくれるといいな~♡」

 

(う~ん、姉さんの立ち位置が優位になっただけで結局あんまり変わってないような⋯⋯でも自分からリードしに行くのは成長してる⋯って言っていいんすかね?)

 

スキップするキスメの後ろでルアーナはうんうんと唸ってそんな事を考えるが、やがてキスメを連れて行けるならいいやと自分を無理やり納得させ、歩みを進めたのだった

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

そして、出発当日────────

 

「リョシーセ、いってらっしゃい。道中も鍛錬を怠らないように」

 

「はい、院長先生!」

 

「ベケス、忘れ物ないよな?」

 

「大丈夫よ。朝一緒に確認したでしょ、もう」

 

街の出入口である大門の傍ら、歩道に接するように止められた馬車の前でリョシーセ達はそれぞれ最後の別れを済ませていた。孤児院の子供達も来る予定だったが、大通りの道を遮るわけにもいかず、早朝だったのもあり見送りは孤児院の院長とジャックの三人と小規模なものになった

 

「それではよろしくお願いします、騎士様」

 

「はっ、お任せ下さい!我々騎士団が責任を持って目的地までお連れします」

 

「それじゃあね、ベケスちゃん。試験頑張るのよぉ。私達はここから応援してるからねぇ」

 

「ありがとうございます、院長先生。それではいってきます」

 

「いってきまーす!」

 

リョシーセとベケスが馬車へと乗り込む。騎士が手綱を握ると馬車はゆっくりと動き出した。ジャックがそれに合わせ並走する

 

「⋯⋯⋯っ!向こうに着いたら、手紙出せよ!そしたら俺も、手紙書くから⋯!そっちのこと、色々聞かせてくれよな!」

 

「ええ、もちろんそのつもりよ。ただあんたが真っ先に聞く事になるのは、わたしが合格したって報告になるでしょうけど」

 

「自信たっぷりだね、ベケスちゃん!あ、その時は私がいっぱい書くよ!私達の「冒険譚」をね!」

 

「ああ⋯⋯リョシーセ、俺との約束忘れんなよ。任せたからな!」

 

馬車はやがて大門を抜け次の街へと足を進める。二人を乗せた馬車はあっという間に遠く離れ、少年はそれが森の奥に消えた後も、しばらくの間眺め続けていた

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「見えなくなっちゃったね」

 

「そうね」

 

「はぁ~あ⋯これで故郷の街とはしばらくお別れかぁ。寂しくなるなぁ」

 

見えなくなる最後まで街の方を眺め続けたリョシーセがガックリと頭を下げて落ち込む

 

「なぁに?もう故郷が恋しくなったの?この一ヶ月間「冒険に出れるー!」って、あんた喜んでたじゃない」

 

「それとこれとは別だよう。ベケスちゃんだって、ジャックくんとしばらく会えないの寂しくないの?」

 

「寂しくないわ、別れはしっかり済ませたもの」

 

「ふーん⋯ならちゃんと釘は刺した?」

 

「釘?何の話よ?」

 

ベケスが首を傾げながら聞くと、リョシーセが両手を大きく広げる

 

「ジャックくんが浮気しないかだよ!実は一度こっそり観察した事があるんだけど、真面目に奉仕活動してるジャックくんって色んな子からかっこいいって思われててモテモテなんだよ?ベケスちゃんがいなくなった今、その隙をついて寄ってくる女の子が────────!」

 

「ああ、その事なら問題無いわ。付き合いたい子がいるなら付き合っていいって言っといたから」

 

「なーんだ、ちゃんと対策して⋯た⋯⋯⋯って、えぇぇぇえっ!!?」

 

親友の爆弾発言を一度は流そうとしたリョシーセが、その言葉の意味を理解した瞬間大声を上げて驚く

 

「ビックリした⋯何よいきなり」

 

「こっちのセリフだよ!?いいのそれ!?アリなの!?」

 

「いいも何も、わたし達は冒険者よ。騎士の人達に守られてるからって、道中だって絶対安全って訳じゃないわ。魔物に襲われて命を落としたり、賊に捕まっていいように使われて殺されたりする可能性だってあるのよ?そうなった時に、ジャックにいつまでも帰ってこないわたしのことを待って欲しい、なんて思わないわ」

 

「あぁー⋯確かに、そう言われればそうだね」

 

ベケスが言うにはいつ死ぬか分からない旅に出る以上、残された恋人に別の拠り所を残すのは必要だということらしい。そう説明されるとリョシーセも腑に落ちた。大穴から離れたこの街でさえ、年に一、二人の冒険者が魔物に殺されたりしている。それだけ街や村の外は危険なのだ

大切な人を置いていく以上別れはきっちり済ませるべきであり、ベケスの言ったジャックとのやり取りもまた、その中に含まれている内容だったというわけだ

 

「それにちゃんと付き合う条件も色々決めてきたから大丈夫よ。「自分には恋人がいることとその人が第一であることを相手に伝える」「それでもいい!って言ってくれたなら付き合ってもいい」って具合にね。たしか「肉体関係を持つのもいいけど妊娠はその恋人が一番最初」って条件はその状況になったら相手に伝えるって言ってたかしら?」

 

(ま、条件云々を言い出したのはわたしの言い分に渋々納得したジャックからだけど)

 

「へぇー⋯ちゃんと考えてたんだ。それなら安心だね!」

 

「そもそもこっちが協力を頼んだとはいえ、ジャックと寝たあんたがそれ気にする?」

 

「私は別にジャックくんのこと、ベケスちゃんから奪おうとは思ってないも~ん。ついでに使われてるほうが気持ちいいしね♡」

 

「お二人とも、相変わらず仲が良いっすね」

 

話が一段落したところで、御者のいる席から騎士が一人、荷台のリョシーセ達の所へとやってくる。その人物はすっかり顔なじみとなった騎士ルアーナだった

 

「あ、ルアーナさん!えへへーそうでしょそうでしょ!」

 

「おはようございます、ルアーナさん。あそこから離れて大丈夫なんですか?」

 

「少しの間なら大丈夫っす。こっちに来たのは、お二人にこれからやってもらう事について話したかったからっす」

 

「!⋯⋯つまりそれは────────」

 

「お仕事の話!ですね!」

 

少女達の言葉に、ルアーナが頷く。「人を襲う魔物を大人しくさせる方法を探す」⋯それが特別騎士と呼ばれるルアーナの長年の目的だった。そしてその方法が「大人しくさせたい魔物との性交を試みる」であり、その協力にという申し出を引き受けてくれたのがリョシーセとベケスの二人だ

今回の旅は、そんなルアーナからの依頼をこなす前提で組まれたものとなっていた。これに関しては事前に聞いていたため、二人に驚きは無い

 

「そうっす。この旅の合間に、いくつかやって欲しい依頼があるっす。そのかわり前にも言った通り、負担は全てこちらが請け負うっす。今回の場合はホウマ聖王国までの道のりっすね。足や泊まる場所の心配はさせないっすよ。他にも何か欲しい物があったらウチに言ってください。こちらで全部揃えるっす」

 

「そこまでしてくれるんだ⋯!」

 

「正直助かります。馬車や船に乗るのにかかるお金も馬鹿にならないので」

 

「これくらいお安い御用っす!それと二人を目的地まで運ぶことが最優先事項となってるので、長引きそうだった場合や別のトラブルで足が止まった場合、中止して先に進むんでそこは安心してください。あ、あと護衛はウチともう一人で行うっす」

 

「もう一人?誰ですか?」

 

「はーい!僕だよお母さん!」

 

リョシーセが質問すると馬車の屋根上から声が発せられる。そこからひょこっと顔を出したのはスライムのキスメだった。驚くリョシーセの顔面に目掛けて、キスメが飛び付く

 

「キスべぶぁばぼぼ⋯!⋯っぷは、キスメも一緒に来てくれるの!?」

 

「そうだよ!僕も僕のスライムを増やす為について行く事になったんだー。しばらくの間は一緒だよ!ママも嬉しい?」

 

「もちろん嬉しいわ!わたし達の護衛、よろしく頼むわね」

 

「うん!」

 

キスメがベケスにも身体を伸ばし抱きしめる。三人が一緒になって抱きしめ合うという微笑ましい光景に、ルアーナも笑みを浮かべていた。少しして、ベケスがキスメに離れるよう促す

 

「さて、そろそろ本題に入りましょ。それでルアーナさん、わたし達が今度相手にしなきゃいけない魔物は⋯⋯」

 

「おっと、そうでした。お二人には五日後⋯⋯お二人の故郷から北西にある街、その付近に隠されてるダンジョンに行ってもらうっす」

 

「ダンジョン!?」

 

「⋯目を輝かせてるところ悪いっすけど、ダンジョンといっても既に攻略済みっすよ?今はウチがとある魔物を管理する実験室⋯⋯いや、倉庫みたいなもんになってるっす」

 

「倉庫って⋯もしかして沢山いるんですか?街の近くでそれはさすがに危険なんじゃ⋯⋯」

 

攻略済みと聞いてがっくりと肩を落とすリョシーセ。落ち込む相棒の代わりにベケスが気になった事を質問をする

 

「大丈夫っす!自力ではほぼ動かないし、出入口には見張りもしっかり立ててるっすから」

 

「むむ⋯⋯!待ってルアーナさん、私分かったかも。倉庫になってるダンジョン⋯自力ではほぼ動けない⋯⋯つまり私達が相手にする魔物って、宝箱とかに擬態してるあの────────!」

 

相手の言葉から推測し、答えにたどり着いたリョシーセがその魔物特徴を上げる。するとそれを聞いたルアーナが力強く頷いて、その魔物の名を告げた

 

「はい、お二人には────────『 ミミック』と交尾してもらうっす」




というわけでこの四人をメインに話を進めていくよ。表側の話がリョシーセとベケスでその話の裏(おまけ編)でルアーナとキスメが⋯という感じ。おまけの中に新キャラや今まで出てきたキャラの話も咥えていく予定
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