今回は二話投稿。こっちは一話目
“『ミミック』────────主にダンジョン内で宝箱に擬態している軟体生物である。宝箱を開けようと油断している冒険者に触手を伸ばし絡め、宝箱の中に上半身を引き込み頭部を噛みちぎる。鋭利に硬質化させた触手を目にも止まらぬ速さで横薙ぎに振るい、近くまで来た冒険者の胴体を切断するなど極めて凶暴である。数こそ少ないものの殆どのダンジョンで目撃されており、ダンジョン攻略の経験が浅い冒険者ほど引っかかりやすい事から『初心者キラー』と恐れられている”
「────────っていうのがミミックという魔物だよ!」
「おかあさんすごーい!物知りだね!」
「えっへへ、まあね!」
次に交配する相手を教えられたリョシーセが、人差し指を空に向けながらミミックについて簡単な説明を行う
「説明をありがとう、リョシーセ。それじゃあルアーナさんに一番重要な部分を聞きたいんですけど⋯どんな風にミミックと子作りを?聞いた限りでは危険な魔物っぽいんですが⋯」
「大丈夫っす!相手にするのはそんな攻撃
「繁殖型⋯そんなミミックがいるんですか?」
「はい!開けると触手がいっぱい生えてるんすが、それだけっす。首とか絞められますが離れれば解放してくれるし、繁殖期に入ると増やすのを優先しているのかそれすらしてこなくなるっす。他の型と比べても死亡率が圧倒的に低いんすよ!」
「ミミックの中でも比較的安全な方ってことですね」
「へぇー種類があるんだ!私まだミミック見たことないんだよね!楽しみー!」
「呑気ねぇ⋯」
「昔はそれしかいなかったんすけどね⋯⋯」
「?⋯ルアーナさん、何か言いました?」
「いえ、何でもないっす!それでミミックの繁殖方法っすが⋯⋯彼らは繁殖期を迎えると、箱の中で特殊な管から小さな触手の塊みたいな幼体を生み出すっす。それを箱の外に吐き出して、空気中の魔力を餌に成長していくんすが⋯」
ルアーナはそこで一旦言葉を区切り、リョシーセに目を向ける
「今回はそのミミックの幼体を、一度リョシーセ殿の子宮内に入れて貰いたいんすが⋯いいっすかね?」
「うん、いいよ!」
「待って、一旦ちょっと待って。落ち着く時間をちょうだい⋯!」
ぶっ飛んだ要求を即快諾した親友を、ベケスがすかさず手をかざして止める
「つまりっすね⋯リョシーセ殿の子宮を空箱に見立てそこにミミックの幼体を入れて欲しいんです。人の魔力だけで育てるとどうなるのかを確かめるのが今回の目的っすね」
「なる、ほど⋯⋯
「もう、ベケスちゃんは気にしすぎだよー。私は別に大丈夫だよ。キスメの時も私の膣内にスライム入れたでしょ?」
「そ、それはそうだけど⋯⋯いえ、やっぱり今回ばかりは危険よ。今回は体液じゃなくて魔力を吸われるのよ?」
「それは分かってるけど、そんなに危険なの?あんまり変わらなくない?」
リョシーセが吸われるのが体液だろうが魔力だろうが別に問題は無いはずだと発言したところ、ベケスから信じられないモノを見るような目を向けられた
「全っ然ちがうわよ!?いい?魔力はこの世の誰しもが持ってるものよ。でも魔力の上限は人によって違うわ。あんたはその中でも平均より少ないくらいの位置にいるの。そして魔力はね、無くなった状態で更に魔力を消費しようとすると、代わりに生命力が消費されるのよ」
「え、そうなの!?」
魔力の無い状態で魔法を使うと生命力を代償に発動してしまう⋯それは魔法を扱う者なら誰もが知っている常識だと彼女から説明される
「あんたなら知ってるでしょ?“大穴”の付近ではそこから這い出して来ようとする魔物と、それを防ごうとする人類との戦闘が毎日のように行われてるってこと。そこではこれが原因で亡くなる魔法使いも珍しくないって話よ」
「ひええ⋯⋯」
「それを聞かされると僕も反対かなぁ、おかあさんに死んで欲しくないし⋯それに子宮に入れたとして、どうやって取り出すの?長く入れておくのも危険なんだよね?」
「そうっすね。ある程度成長するとリョシーセ殿の子宮がミミック化するんで、放置は危険っすね。リョシーセ殿の魔力が少ない問題⋯その事についてもこちらで把握してます。ですが大丈夫!子宮から取り出す方法も含めて両方ともちゃんと対策は考えてきたっすよ!」
そして当然その事は、魔法を創り世に広めた女神を姉に持つルアーナもよく知っていた。子宮にミミックの幼体を入れることに関しても対策はあるようで、安心させるように胸を叩き、纏った甲冑から金属音を響かせる
「まずリョシーセ殿に繁殖型のミミックの中に入ってもらい、幼体を子宮に入れてもらうっす。そうすると箱の外に吐き出されると思うんで、そうなったらベケス殿の出番になります」
「わたしですか?」
「はい!ゴブリンの一件でクヴィチ殿から教わった魔法があったっすよね?」
「たしかにありますけど、まさか⋯⋯」
あの時司祭長から教わった魔法は、男性器を生やしそこから自身の魔力を放出するというものだった。そこまで思い出したところで嫌な予感がしたベケスの頬に、冷や汗が流れる。そして案の定、ルアーナの口からは予想した通りの答えが返ってきた
「その魔法を使ってリョシーセ殿の子宮内にいる幼体に目掛けて魔力をぶちまけてください!そうすれば栄養となる魔力をさらに得ようと触手が先っぽに絡みついてくるっす。その瞬間引き抜けばすぐに取り出せるっすよ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」
喉まで出かかった「絶対に嫌」という言葉を飲み込みつつ、ベケスは歯を食いしばった。頭のネジが飛んだような、とんでもない対処法に思えたが、人の魔力を短期間に大量に与えつつ取り出す、となると一応理にはかなっていたからだ
もう一つ、別のやり方も思い付いていたが⋯ベケスとしてはそちらは絶対に試したくなかった
(てことは⋯本番ではベケスちゃんとセックスすることになるんだ!ベケスちゃんとヤるの、久しぶりだなぁ♡でも、人の魔力で育てるのにそんなに早く子宮から引っ張り出していいのかな?)
(ママが明らかに困ってる⋯!ここは僕が助けにならないと!)
「あのー、人の魔力で育てるんですよね?そんなにすぐ取り出していいんですか?」
「その取り出す役目って僕じゃだめなの?僕も生やせるよ!」
「ベケス殿の魔力を注ぐやり方ならすぐに取り出しても大丈夫っす!キスメ殿には別の件で頼みたい事があるので⋯申し訳ないっすが当日は二人とは別行動になるっす」
「そっかぁ⋯⋯ママ、助けになれなくてごめんなさい⋯」
「い、いいのよ。その気持ちだけで十分嬉しいわ。ありがとうキスメ」
「出来ることならベケス殿に最初から最後まで頼みたかったんすが⋯⋯それは契約違反になってしまうっすからね。最終的にこの形に落ち着いたっす」
「え、ベケスちゃんなら一人で出来るの!?」
驚いた顔で自分を見るリョシーセを見て、ベケスは先程思い付いたもう一つの方法を口にする
「そうね⋯⋯“避妊魔法”で子宮や膣内の壁を薄い魔力の膜で覆って入れる、魔力を与えて成長したら膜ごと取り出すってやり方なら一人で出来るわ。わたしなら長く入れてても平気だろうし⋯⋯けどそれってつまり魔物を産むのと変わらないわけで⋯わたしとしては遠慮したいというか⋯⋯」
(そういえばあの時そんな事言ってたっけ?)
リョシーセはルアーナから最初の依頼を受けた時、手伝うのはいいが魔物を産む事はしないと彼女が話していたのを思い出す
確かにこの方法なら一人でもできるが、子宮内で育てて取り出すさまは正しく出産という行為そのものだ。彼女からしてみればそれは避けたいのだろう
「という事なので、リョシーセ殿への負担が大きいですがこのやり方で話を進めてもいいっすかね⋯?」
「うん、いいですよ!私は魔物とヤれさえすればそれで⋯♡えへへ♡」
「ごめんなさい、リョシーセ。わたしのワガママで迷惑をかけるわね⋯⋯そのかわり、あんたが少しでも耐えられるように魔力の上限を上げる手伝いをするわ!さっそく今から特訓を始めましょ!」
「え、魔力の上限って上げられるの?」
「魔法を使い続ければね。生命力を削るギリギリまで消費し続ければ、今のあんたよりはちょっとだけマシになる⋯筈よ!」
「魔力って無くなったらしばらく動けなくなるんじゃなかったっけ?それって結構キツいんじゃ⋯⋯ま、まだ五日もあるし大丈夫だよ」
「五日
「うえぇ⋯⋯はぁ~い⋯」
「じゃ、僕は馬車周りの見張りに戻るね!おかあさん、特訓頑張ってねー!」
「ウチも席に戻るっすね。何はともあれ目的地までは時間がかかるっすから、それまではゆっくり寛いでてください。それでは」
こうして、リョシーセの初めての魔法の特訓が始まった
◇◆◇◆◇◆
「んむむむむむむ⋯⋯!」
「余計な事を考えちゃ駄目よ。指先に意識を集中させて⋯そう、そうしたら指先から外側に広がるイメージをするの」
「指先から外側に⋯⋯⋯“火の魔法”!⋯できた!─────あ」
数時間後、ベケスの指示に従い修行を開始したリョシーセが呪文を唱えると、指先に小さな火が灯る。喜んだのも束の間、その火は指先からすぐに消えてしまった
「消えちゃった⋯八回目にしてようやく火が付いたのにー!」
「大丈夫よ。今の感覚を覚えておけばまた唱えられるわ。それじゃ一旦休憩しましょ」
「え、でも今ようやく成功したところだよ?感覚を覚えないとなら続けてやった方が⋯⋯」
「魔力は動かすだけでも消費するの。実際あんたの身体は見た目以上に体力を消費しているはずよ」
「言われてみれば⋯⋯なんだか身体がだるいような⋯?」
調子の確認をする為に、リョシーセが軽く身体を動かす。確かに軽く走った後のような疲労を身体に感じていた
「指先に灯す程度の小規模初級魔法でそのレベルの疲労⋯消費も思ったより少ない⋯⋯なるほどね、なるほど⋯⋯⋯う~~~~~ん⋯⋯⋯」
(⋯え、もしかして私の魔法を扱う才能って相当酷かったりするの?)
「ね、ねぇベケスちゃん。ベケスちゃんが初めて魔法を使った時はどんな感じだったの?やっぱり最初は苦労した?」
「え、わたし?わたしはこの魔導書に書かれた通りにやったら一発で出来たわ。こんな感じに、ほら」
唸り始めたベケスを見て微妙な空気を感じ取ったリョシーセが今度は質問を投げかける。すると彼女は拳くらいの火の玉を手のひらに浮かべ上下左右に動かしたり、指先の動きに合わせてクルクルと回したりして操って見せた
「むー⋯!この天才児めぇ!」
「褒め言葉をありがとう♪けど練習し続ければあんただっていつかこれぐらい出来るようになるわ。練習あるのみよ」
「ぐぬぬ⋯はぁーい」
今にも飛び付かんとばかりに両手を広げるリョシーセを見て、ベケスがにこやかな笑顔を見せながら火の玉を握りしめて消す
休憩ついでに楽しくお喋りできたおかげで、リョシーセは感じていた僅かな疲労感もすっかり消えていた。余裕が出来た少女はもう一つ気になった事を聞く
「⋯ところでもう一つ聞きたいんだけど、ベケスちゃんが持ってるその魔導書?だっけ、どんな事が書かれてるの?」
「ん、これ?」
「うん。記憶違いじゃなければ私と出会った時からずっと読んでる⋯よね?確か両親からの贈り物なんだっけ?」
「ええそうよ。パパとママが亡くなる前にくれたわたしへの最後の贈り物⋯そうね、丁度いい機会だし面白いもの見せてあげる。リョシーセ、さっき教えた魔法の他に何か覚えてみたい魔法はある?」
「え?覚えたい魔法かぁ⋯⋯⋯⋯うん、やっぱりあれかな。鳥みたいに自由に空を飛べる魔法!」
「わかったわ。じゃあわたしの隣に来て、本に目を向けてくれる?」
ベケスは魔導書を膝の上に置くと、隣に座るよう指示する。言われるがままに少女の隣りに移動した少女は、開かれた本を覗き込んだ。
「“火の魔法”⋯さっきベケスちゃんから教わった魔法が書かれてるね」
「面白いのはここからよ。見てなさい」
そう言ってベケスが本に視線を向けると、ページに書かれた文字が染み込むように消え白紙になった。そして再び文字がにじみ出しそこには“飛行魔法”や“浮遊魔法”など、空に浮かぶ事に関する魔法の説明と習得方法についての文面が浮かび上がった
「うわぁ⋯!」
「どう?凄いでしょ!この魔導書はね、わたしが知りたい、気になる魔法を思い浮かべると、その魔法やそれに近しい魔法を開いたページに出してくれるのよ!それで、空を飛ぶ魔法についてだったわね⋯⋯うーん、覚えるのは相当難しいわ。一級の魔法使いでも扱えてるのはほんの僅かみたい⋯当然わたしでも無理ね」
「そっかぁ、それは残念⋯⋯それにしても調べたい魔法がすぐに出てくるなんて、凄い本だね」
「ええ、それに習得方法だけじゃなくてその魔法の歴史や解説も見れるのよ!効果についても詳しく知れるから、最近は効果の相性が良さそうな複数の魔法の合わせ技を試したりしてるわ」
(ああ⋯ベケスちゃんがよくやる魔法の実験ってこの本が原因だったんだ⋯⋯)
思い返せば、彼女が魔物に対し新しい魔法を試す時はいつもこの本を片手に持っていた。思わぬタイミングで真相を知ったリョシーセは、なんとも言えない表情で魔導書を見下ろす
「⋯⋯実はね、わたしがホウマ聖王国に向かう理由は試験の他にもう一つあるの」
「もう一つの理由って⋯もしかしてこの魔導書?」
話の流れから予想して魔導書を指差すとベケスが頷く
「ええそうよ。見せた今なら分かると思うけれど、この魔導書は相当凄い代物よ」
「うん、それは素人の私でもすぐにわかったよ」
どんな魔法でも効果から習得する方法まで瞬時に詳しく知る事ができる魔導書⋯魔法使いなら喉から手が出るほど欲しい代物の筈だ
「でもこの魔導書、著者が誰か分からないの。名前がどこにも書いてないのよ。街で他の魔法使いの子達に、この本の事をぼかしてそれとなく聞いてみたことがあったんだけれど⋯誰も見たことも聞いたこともないって言ってたわ」
「つまり⋯ベケスちゃんの両親がベケスちゃんの為に作った本だったりする?」
「そうかもしれないわ。でもだとしたら、この本を作れるわたしの両親は相当な魔法の使い手のはずでしょ?でもそんな話調べても全く出てこなかったの」
「そっか、確かにベケスちゃんくらい特徴的な名前なら両親のこともすぐに分かりそうだもんね。だとしたら⋯誰か他の人に作ってもらったのかな?」
リョシーセの言葉に再び彼女が頷く
「わたしはパパやママのこと、何も知らない⋯覚えていない。でも魔法を創り出した女神ポトジス様がいるホウマ聖王国に行けば、この魔導書について何か分かるかもしれない。もしかしたら書いた本人に会えるかもしれないわ。そしてその人から、わたしのパパやママについて分かることがあるかもしれない⋯⋯⋯それがホウマ聖王国に向かうもう一つの理由よ」
「ベケスちゃん⋯」
リョシーセはベケスが自身の過去について話してくれた時の事を思い出す。両親が残してくれた杖と魔導書についてとても嬉しそうに話していた。二人からの贈り物だと、自分は愛されていたのだと⋯⋯けれど、その記憶がある訳では無い
もしかしたら彼女は不安なのかもしれないと、リョシーセは推測する。両親についても、贈り物と思われる魔導書についても分かっている事は全くと言っていいほど無いのだ。魔導書は本当に自分への贈り物だったのか、自分は本当に両親から愛されていたのだろうか、と⋯⋯であれば、自分に出来ることは一つだと、リョシーセは口を開く
「だったら、聞き込みは私に任せて!情報収集は私の役目、でしょ?」
「⋯いいの?これはわたし個人の問題よ?」
「うん!ベケスちゃんは私の親友だもん、それくらい手伝わせてよ。それに困っている人を助けるのが冒険者の役目だからね!」
「⋯⋯ありがとう、リョシーセ」
「どういたしまして!その時が来たら、ベケスちゃんが試験に集中出来るように頑張るね!」
意気込むリョシーセを見て、先程まで硬い表情を浮かべていたベケスの顔がようやく綻びを見せた
「それじゃあ十分休めたし、修行を再開させるわよ。試験も大事だけれど、お世話になっている以上こっちの仕事も頑張らないとね」
◇◆◇◆◇◆
陽が傾き始めた頃、揺れていた馬車が動きを止める。何事かとベケスが御者席に顔を向けると、ルアーナがそこから顔を覗かせる
「今日はここまでっす。暗くなる前にこの辺りで野営の準備をしましょう」
「わかりました。⋯⋯⋯リョシーセ、動ける?」
「うぅぅ⋯⋯⋯な、なんの⋯これしきぃ⋯⋯」
野営を告げられたベケスは、床に這い
「魔力の枯渇による疲労なんだから、無理に動いちゃ駄目よ。特に魔法の練習の後だと、体を動かすことに無意識に魔力を使おうとして、無くなった魔力の代わりに生命力が消費されてそのまま⋯⋯って事も有り得るから」
「ひぇっ⋯⋯!」
「ポーションで回復しましょ⋯⋯ってあら?しまった⋯⋯全部使っちゃってた⋯ルアーナさんにポーションが余ってないか聞いてくるわね」
「であれば、僕の出番だね!」
「わっ」
「あら、キスメ?どうしたの?」
ベケスが外に出ようとした時、幌の上で見張りをしていたキスメが垂れ落ちてきた。そして床に寝そべるリョシーセを自らの粘液で覆っていく
「よいしょ⋯っと」
「ふあぁ⋯⋯あったか~い♪」
動けないリョシーセの身体を持ち上げ、自身の胸部分を枕替わりにして首から下を完全に浸からせた状態で仰向けに寝かせる。温かいお湯に入った時のような、心地よい感覚に少女が顔を蕩けさせる
「僕は粘液の部分を二人が口にしたことがある液体に変える事が出来る!そしてもちろんポーションも学習済み!だからこうやって身体をお湯とポーションを合わせたお風呂にもできるんだよ」
「そういえばそうだったわね。ん?て事はもしかして⋯⋯ポーション、無限に作れたりするのかしら?」
「できるよ!けどルアーナさんから色々とややこしい問題が生まれるから他人の前では使っちゃダメって禁止にされてるんだ。こうやって身内でちょこっと使ったりする分には良いんだって」
「まあ⋯そうよね、無限にポーションを生み出せるスライムがいるなんて知られたら⋯絶対ろくでもない事態に巻き込まれる事間違い無しね」
「でもこんな気持ちいいのを私達だけで使うってのも気が引けるねぇ~⋯ふわぁ⋯⋯」
などと言いつつ、リョシーセはそのまま溶けて混ざり合いそうなくらい気の抜けた声を出しながらポーション風呂を満喫していた
「ルアーナさんが言ってた旅のサポートの一つだと思いましょ。この修行だって実験の為にやってる訳だし」
「それもそっかぁ~⋯」
「⋯⋯えっと、分かってるけど一応聞くね?おかあさん達って自分の愛液を元にポーションが作られて、それを口にされることに抵抗は無い感じ?」
「?⋯抵抗も何も、性質が変わって効能も同じならそれはもうポーションでしょ?」
「う~ん、気にしないかなぁ。ほら、セックスの時に精液と愛液の混ざったおちんぽよく舐めてお掃除したりするでしょ?だから飲めない事はないんじゃない?」
「⋯⋯⋯⋯うん、それぞれ予想通りの回答をありがとう。おかあさん、ママ」
「じゃ、野営の準備してくるから。復活したらあんた達も手伝いに来なさいね」
「「はぁーい」」
◇◆◇◆◇◆
「はい!という訳でおかあさん達の寝床はこちらです!」
夕食を終え、あとはゆっくり寛ぐだけとなったリョシーセとベケス。そんな時キスメからとっておきの寝床を見せたいと言われ案内に付いていくと、そこにはスライムで出来た大きな円の形をしたベッドが置かれていたのだった
「これは⋯なんと言うか⋯⋯」
「森を背景に地面に直置きのベッド、違和感が凄いね」
「僕の粘液で作られてるけど、寝心地はおかあさん達が普段使ってた物と遜色ないよ!さらに!」
続けてキスメが指を鳴らす。すると円形のベッドの縁が盛り上がりドーム状の透明な膜を作り出した
「この膜はね、おかあさん達以外は通さないようになってるんだ。そして周囲には“近付く魔物を追い払え”って命令した僕の分体たちを配置済み。虫除け、魔物避け完備の安心安全ベッドだよ!」
「どれどれ⋯わ、ほんとだ。面白〜い!」
リョシーセが膜を指で突くとすんなりと通り抜ける。それを何度か繰り返したあと、靴を脱いでベッドへと飛び込んだ
「キスメ、あんたとルアーナさんはどこで寝るの?」
「僕は夜通し見張りだよ。空気中から水分と少しの魔力さえ吸収できれば寝なくてもいいからね。ルアーナさんにもベッドを作ったんだけど、慣れてるところがいいって馬車の方に行ったよ」
「そっか、ならよろしく頼むわね。ルアーナさんにも今日は色々とありがとうって伝えてくれる?」
「うん、わかった!あ、それと⋯⋯はい!今日使った分のポーションも補充し直したから、今のうちに渡しとくね!」
「わ⋯!ありがとう、これなら明日も練習に励めるわ!」
「どういたしまして!それじゃママ、おかあさん、おやすみなさい!」
「おやすみなさい」
「おやすみー!」
馬車の方へと走り去るキスメを見送り、ベケスもベッドへと上がり込む。中ではすでにリョシーセが寝っ転がり、リラックスした状態で本を読んでいた
「もう寛いでる⋯ご丁寧に明かりまで用意しちゃって」
「今日は頑張ったんだもん、後はゆっくり過ごすんだ~。⋯⋯さすがにもう何もしないよね?」
「しないわよ。今日の特訓の成果をまとめて、明日どんな魔法を練習するかの確認くらいね」
そう言ってベケスは今日の特訓の過程を細かく記録したメモを広げる
(う~ん⋯正直に言って芳しくないわね。元々の魔力量が少なすぎて疲労がすぐ来る割にはそこまで消費出来てない⋯もっとこの子の魔力を限界ギリギリまで一気に減らせる魔法があれば⋯⋯⋯)
「ふんふふ~ん♪ふんふんふ~ん♪」
「⋯そういえば、リョシーセもよく本を読んでるわよね。何々⋯『勇者ユーシャの大冒険』?聞き慣れない響きの名前⋯タイトルも初めて見るわね」
隣で上機嫌に鼻唄を歌いながら読書をしているリョシーセが気になったベケスが、本のタイトルを覗き込んでタイトルを読み上げる。するとベケスの初めて見たという反応にリョシーセが驚きの声を上げる
「え!?ベケスちゃん知らないの!?笑いあり涙ありのちょっぴりえっちありの冒険小説、その名も『勇者ユーシャの大冒険』!⋯の二百十巻!めちゃくちゃ有名な小説の最新巻だよ!?」
「いや知らないし相当長く続いてるわね⋯⋯どんな内容なの?」
「ふっふっふ、いいよ。では説明して上げましょう!」
待ってましたと言わんばかりの表情で、小説の表紙をベケスに見せながら説明を始める
「まずさっき言った通り、この本は二百十巻も続いている大長編物語だよ。内容は日記形式になっていてタイトルにあるユーシャって女の子の視点で書かれてるの。毎年一冊のペースで世界中の宿のどこかにいつの間にかポツンと置かれていて、それが二百年以上も続いてるんだよ」
「そんなに!?作者が長生き⋯⋯ってそんな訳ないわよね。誰かに引き継がせながら書いてるのかしら?」
「作者は不明だよ。でもこの小説のファンの間では誰が作者かわかってるんだ。それがタイトルに書かれているユーシャって子だよ」
「え⋯いやいや有り得ないでしょ。二百年も経ってるんでしょ?さすがに途中で家族に引き継がせてるとかじゃ─────」
「ベケスちゃん、勇者って知ってる?」
「な、何よ急に⋯それくらい知ってるわ。魔王討伐の為に、四女神様から力を分け与えられた四人の勇者のことでし?勇者達は魔王を倒したけれど、帰っては来なかったって⋯⋯⋯」
「そう伝わってるね。でも、実際は違ったんだ。四人の勇者は実は生きてたんだよ!ユーシャさんはその内の一人で、今も世界中を旅しながら色んな事件を解決してるんだ。それを記したのがこの小説なんだよ!」
「つまり⋯これは日記形式で書かれた小説じゃなくて、本物の勇者の日記だったって事?」
「そういうことになるね。さっき言った寿命の話も、女神様から力を授かっているなら生きてても不思議じゃないと思わない?」
「確かに⋯⋯いえ、だとしても、どうしてそれが本物の勇者が書いた日記だってわかったのよ?」
「日記に書かれた事件の内容が、現実に起きた事件と細かい部分まで一致してたってのもあるんだけど、決定的だったのはあれかな。魔王を討伐したのは勇者たちじゃなくて、女神様本人たちだったってやつ」
「────────はい?」
「「女神様たちは結界で聖王国を守っているからそこから動けない。だから魔王討伐の際に、結界の代わりとして力を分け与えた自分たちに聖王国を守らせて、女神様たちが直接倒しに行った。それが真実だ」っていうのがこの日記に記されてたんだ。当然殆どの人は信じなかったんだけど、そこである事件が起きたの」
「事件?」
「その真実が書かれた日記が見つかって少しした後に⋯⋯なんと、女神様直属の聖騎士隊の人が日記を回収しに来たの。同時に、この日記を置いていった人物がどこに行ったのかも聞かれたって話だよ。しかも、秘密裏にね」
「あー⋯話の流れが読めたわ。それが逆に信憑性を高めてしまったのね」
「うん⋯⋯「あの聖王国の騎士が動いたって事はやっぱりこれは隠したい真実なんじゃないか」って大騒ぎになったんだ」
「そりゃそうよ⋯勇者の話は聞いた事がない人はいないってくらい有名な話よ。それが嘘だってわかったんだもの。混乱したでしょうね⋯」
四人の勇者の冒険は様々な形で後世に伝わっている。山ほどあるオークの頭を斬り落とした、津波のように押し寄せるスライムの群れを剣の一振で仕留めた等である。その中でも多くの人に希望を与えた話が魔王を討伐した話だ。そんな勇者たちの伝説に憧れて冒険者になった人も数多くいる
だがリョシーセが話した内容は、それを根本から覆すものだった。人々が混乱するのも無理は無いだろう。だが────────
「ううん、実はそうでもないんだ。むしろ女神様も勇者様も逆に人気が高まったみたいだよ。「魔王を女神様直々に倒しに行くなんてさすがは女神様素晴らしいです!」「結界という女神様のなさった奇跡を人の身一つでやり遂げるとか勇者様かっこいい!」ってね」
「えぇ⋯⋯いやまあ、混乱が起きるよりかはいいわね」
「で、その後なんやかんやあって結局、聖王国側は日記の回収を止めたの。日記の内容は依然認めてはいないものの、信仰する人が増えてる以上強くは否定できないでいるみたい。ちなみに作者は騎士の人に見つかったらしくてね、それ以降日記の最後に見張りがうるさく言うから思い通り書けないって愚痴が書かれるようになったんだ⋯⋯⋯以上!この本が有名になるまでの経緯と歴史でした!」
語り終えて満足気のリョシーセにベケスが拍手を送る
「面白かったわ。伝説の勇者は今も世界中を冒険しているのね」
「そうなんだよ!かくいう私もユーシャ様の大ファンでね!このシリーズを見つけてからは欠かさず読んでるんだ!あぁユーシャ様⋯どこにいるんだろう。会ってみたいなぁ」
「わたしも興味あるわ。女神様の力で寿命を延ばすなんて⋯見た目も変化してないのかしら?もしもそれを魔法で再現出来たら⋯⋯興味が尽きないわね。そもそも身体の何かしらを増幅させる魔法って、付与に使う魔力はかけた人の魔力だけど、それが尽きた後の維持はかけられた本人の魔力量次第なのよね。これを女神様の加護に当てはめると────────」
(あ、ベケスちゃんがまた自分の世界に入っちゃった)
ぶつぶつと考察を始めるベケスを見て、こうなると長いことを知ってるリョシーセは止めることなくそのまま読書へと戻る
だが、リョシーセはこの時の行動をすぐに悔やむ事になる
(ん?待って⋯⋯能力を伸ばす⋯魔法の付与⋯リョシーセの魔力量を減らす効率の問題─────)
「そうよあれよ!あれがあるじゃない!」
「うわ!?びっくりしたぁ⋯どうしたの急に?まさか、寿命を延ばす新しい魔法を思い付いたとか⋯?」
「いいえ、思い付いたのはあんたの特訓のほうよ!なんでこの魔法のことを忘れてたのかしら!」
「え、そっちなの?⋯ていうことは、まさかとは思うけど⋯⋯⋯」
突如立ち上がったベケスにリョシーセが思わず驚いて身を引く。尋ねるとベケスが目を輝かせながら自分の方へと顔を向ける。嫌な予感がリョシーセの脳内によぎる
「リョシーセ、今から特訓を再開するわよ!」
「やっぱり⋯!ね、ねぇベケスちゃん?今日はもう疲れたし明日にしない⋯?」
「大丈夫よ。特訓の内容を聞けばあんたも気に入るわ」
渋るリョシーセの両肩にベケスが手を置く。そして満面の笑みでこう言い放った
「リョシーセ、今からあんたにはおちんぽを生やしてもらうわ」
四女神「人間に力を分け与えて向かわせるより自分達が直接出向いた方が手っ取り早いよね」というスタイル。四女神視点だと姉妹が八人捕まってて人類は聖王国の住人のみ、このままだとジリ貧だからどうせならワンチャンに賭けよう→色々あったけど解決したのでヨシ!という流れ。ここら辺の話も後々書く予定
勇者編もいつか書くよ。どこの時系列にねじ込むかまだ決まってないけど