一 この規則は奉仕部に所属していない人間、及び女性には読むことができず、文字を書くことも捨てることもできない
二 総武高在校生で最も美人な生徒は奉仕部に所属しなければならない
三 奉仕部の理念は__________に性的に奉仕することである
四 __________に性的に奉仕することは全てにおいて優先されいかなる社会的理念、一般常識よりも優先される
「おぃーす」
いつも通りの放課後。比企谷八幡が奉仕部の扉を無造作に開けた先は無人であった。
鍵が開いていたことから、この奉仕部の主人である〝雪ノ下雪乃〟が既に来ていると思っていたが姿は見えない。
比企谷八幡と同じクラスメイトであり最後の部員、由比ヶ浜結衣も日直の仕事で遅れてえるので、珍しく部室に1人の状況である。
いつものように己が座っている定位置に移動しようとしたところ、ふと何も入ってないであろう棚が目に入った。
この奉仕部という部活は、総武高校の本館とは別のところにある空き教室を利用しており、部屋の中にはいくつかの机と椅子、それにお悩み相談を受け取るためのノートパソコン、壁においてある何も入っていないだろう棚しかない。
(………そういえばこの棚って開けたことねぇな。誰もいないし開けてみるか)
いつものように席にはつかずに、なんとなく棚を開ける。そこには思っていたとおり何もなく少しの埃があるだけだと思いきや、一冊の黒い手帳が置いてあった。八幡はなんとなしにその黒い手帳を捲ると〝総武高校奉仕部 規則〟と書いており、そのままページを捲り続ける
一 この規則は奉仕部に所属していない人間、及び女性には読むことができず、文字を書くことも捨てることできない
二 総武高在校生で最も美人な生徒は奉仕部に所属しなければならない
三 奉仕部の理念は__________に性的に奉仕することである
四 __________に性的に奉仕することは全てにおいて優先されいかなる社会的理念、一般常識よりも優先される
空欄には文字が消されたような微かな跡があり、残りのページは白紙のページが残っているだけだった。
(なんだこりゃ? エロ漫画とかでよくあるジョークグッズか? 雪ノ下に見つかったら俺が社会的に殺されかれねぇぞ……)
恐ろしい想像をして背筋が寒くなり、手帳を見なかったことにして元の場所に戻そうとする。
しかし、八幡が手帳を戻す直前に奉仕部の部室が開かれた。
そこから現れたのは雪ノ下雪乃。この奉仕部の部長であり、学年のみならず学園一といえる美麗を誇り、成績優秀文武両道の、慎ましい体力と胸以外は完璧な黒髪美少女であった。
「あら、先に来てたのね比企谷くん。……どうしたのその顔? 蛙が蛇に見つかったような顔しているけど。大丈夫?」
「お、おぅ……。なんでもな……、いや、誰もいないから棚でも開けてみようかと思ったら悪趣味なジョークグッズを見つけてな。どうしたもんかと思っただけだ」
そう言って黒い手帳を雪ノ下に差し出す。一瞬、隠してやり過ごそうと思ったが万が一にでも後々にバレた場合、部活のみならず社会的に抹殺されかねない。自らの潔白を示すためにも恐る恐ると黒い手帳を雪ノ下に手渡した。
雪ノ下はパラパラとメモ帳をめくり、再び最初から読み始め、三度読み返した後に黒い手帳をこちらに差し返してきた。
「ふぅん? 何が悪趣味かわからないけど、返すわね。由比ヶ浜さんは遅れてくるのかしら?」
「…は? あ、あぁ。由比ヶ浜は日直で少し遅れるってよ」
「…? そう。じゃあ先にパソコンつけときましょうか」
そう言って雪ノ下はノートパソコンの電源をつけ、何事もなかったかのようにいつもの席に座る。まるで手帳に書いていたことが読めていないかのように。それにならって八幡もいつもの席に座った。
(雪ノ下はこれを読めてない……のか? いや、ありえん。ドッキリか? エロ漫画みたいなジョークグッズを見つけた時にどう反応するか……みたいな? いや、そんなことをあの雪ノ下が、やるか? 何かの依頼?撮影?生徒会のイタズラ? いや、そうだな……)
八幡は先程の黒い手帳とシャーペンを取り出し、雪ノ下に見えないようにメモ帳を身体に隠しながらバカみたいな文章を書き、閉じる。これがエロ漫画に出てくるようなものならば、メモ帳に書かれたことが現実になるとかそういう類のモノだろう。八幡が手帳に書いた理由はこの手帳に書いてることが本物だと思ったのではなく、何かしらのドッキリであることを証明し、裏で見ている奴らを嘲笑うために。そして雪ノ下に向かって話しかけた。
「そういえば雪ノ下。今日って挨拶したっけ?」
五 女生徒が奉仕部で行う挨拶はスカートをめくって三回まわって動物の鳴き真似を叫ぶことであり、必ず実行しなければならない
「貴方はいきなり何を言っているのかしら?
当然、するに決まってるじゃない」
そう言って雪ノ下は立ち上がり、スカートを捲る。そこにはこの総武高校の男たちが一度は見たいと思いながらも叶わない、白色の聖域が存在した。雪ノ下はそのままスカートから白いパンツと汚れひとつない脚を、周囲に見せつけるかのようにその場でクルクルと三回まわり
「ニャー!」
と叫んだ。
「……これでいいかしら? 別に忘れてたわけじゃなくて後でしようと思ってただけよ。勘違いしないで」
「お、おう。ありがとう」
羞恥で顔を赤く染めながら雪ノ下は明後日の方向を見ながら椅子に座る。八幡は今目に焼きついた光景を反復しながら、朧げに応える。
頭の中には衝撃と混乱と、そしてなにより性欲という名の欲望が溢れ始めていた。そんな考えが纏まらないまま、再び奉仕部の扉が開かれる。
「やっはろー! 日直で遅くなっちゃった。会いたかったよー、ゆきのーん!」
いつものように快活で元気な声で入ってきたのは、この奉仕部最後の1人、由比ヶ浜結衣。明るい髪と目を引く胸部が特徴で学年でも雪ノ下と並ぶ美少女である。可愛らしく髪を団子にしており、雪ノ下よりもスカートがやや短く、今時の女子高生と言える明るい少女であった。
由比ヶ浜の姿を見た雪ノ下は、再び席を立ちスカートを摘まむ。それを見た由比ヶ浜も同じようにスカートを摘んだ。そして
くる
くる
くる
「「わん!/にゃー!」」
「こんにちは、由比ヶ浜さん」
「えへへ、なんか恥ずかしいね。ヒッキーもやっはろー!」
そう言って2人はいつもの席につき、いつものように仲良く話し始める。
由比ヶ浜の捲られたスカートの中には、ピンク色の可愛らしい生地が見え、2人の美少女が目の前で、見せつけるようにパンツを回転する様は非常に倒錯的であり、八幡を興奮させ、同時に冷静にもさせた。
少し考えた八幡は先程の手帳を取り出し、己がシャーペンで書き足した一文を消しゴムで消す。そして2人に話しかけた。
「なぁ、奉仕部での挨拶って決まってるんだっけ?」
「はぁ。貴方は何を言ってるのかしら? それはさっきまでの話でしょう? あまりおかしなこと言わないでちょうだい」
「そうだよヒッキー。恥ずかしかったんだからあまり思い出せないでよ、もー」
「そうだよな、すまん。変なこと言った。…………、それより少し調子悪いから先に帰ってもいいか?」
「そうなの? それならメールも来てないようだし、今日はもう解散しましょうか。風邪だったら小町さんに移さないようにしなさい」
「大丈夫ヒッキー? 1人で帰れる? い、一緒に帰ってあげようか?」
「お前はお前の母さんか。別に1人で帰れるわ。……それじゃ、ありがたく帰らせてもらうわ。また明日な」
「ええ、また明日」 「バイバイヒッキー 気をつけてね」
そう言って黒い手帳を鞄にしまった八幡は、いつもと変わらない様子、ではなくやや腰をひきながら帰っていく。帰り際、2人を見るその腐ったような瞳は数刻前と違って下卑た欲望に満ち始めていた。