野比のび太に転生したんだけど、何故かドラえもんじゃなくてロボ子が来た… 作:生牡蠣
「それではみなさん、クラヤミ族からヒカリ族を助けに出発しましょー!」
「「「おぉー!!」」」
ロボ子の掛け声に僕達は勇ましく答えた。
はい、日本誕生をビデオテープが擦り切れるほど見た人達なら分かる通り、前回のロボ子とのスペアポケット騒動(意味深)から結構時間が進んでます。
流石に遅くなりすぎると怪しまれるし、何よりロボ子不在の中で古代の危険な野生動物に襲われる事も考えられた為、まともに弁解も出来ないままその場を後にしたのであった。
最後にチラリと3匹を見たんだけど、特にトラウマを植え付けられて怯えた様子とかなかったから問題ないよね。……ごめんなさい、後で何かしらのケアはするから今は現実逃避させて…
その後はほとんど原作通りの流れだった。
スネ夫が『畑のレストラン』で作った大根を丸ごと食べたり(中の料理食えよって?そりゃそうだけど、映画みたいに一回丸かじりしてみたいやん?)、皆が軽いホームシックを起こしたから一時帰宅する事になったり、こまめな家出を再開しようとしてククルに遭遇して彼の看病をしたり…うん、ほとんど僕の記憶通りに進んでいる。
……そう、原作通りにククルと出会ったのだ。
子ども達の家出という微笑ましい理由から始まる『のび太の日本誕生』だが、その流れはククルの登場を皮切りにシリアスな物へと変わっていく事となる。
ククルは7万年前に地球に住んでいた原子人の一族・ヒカリ族の子どもだ。
ヒカリ族は温厚で、狩りをしたり道具を作ったりと一族が協力して生活する一族である。
紆余曲折ありながらも平和に暮らしてきたヒカリ族であったが、その平和は崩れる事となる。ヒカリ族に敵対する一族、マックラ族によって。……あっ、クラヤミ族だった。ジャイアンの言い間違いのインパクト強すぎんよぉ…
クラヤミ族はとある人物に付き従う一族で、その人物の望みを叶えるための労働力としてヒカリ族を一族丸ごと攫ったのだ。
ククルは偶然魚を採る為に村から離れていたので襲撃を免れた唯一のヒカリ族なのだ。
…しかし襲撃を回避できたのはいいが、その時発生した時空間のゆがみ、時空乱流に居合わせてしまい、僕達が済む現代に迷い込んでしまったのである。
そしてククルと出会い、彼の境遇に同情したのび太たちは、ヒカリ族を救い出す為の冒険に出発するというわけだ。
冒頭の掛け声から察せる通り、今はククルと共にヒカリ族を救出する旅に出発するところである。
…さて、話は少し逸れるが、僕達の拠点とヒカリ族の集落とは距離がめちゃくちゃある。なんたって日本から中国に移動するくらいだからね。その為、徒歩以外の移動手段が求められるわけだ。
そしてドラ映画ではこういった場合、タケコプターでの移動が基本となるのだが日本誕生では違う。何故ならば―――
「それじゃあ頼んだよ、みんな!!」
「ヒヒ―ン!」
「あぎゃーす!」
「グォォ!」
―――立派に成長したペガ達がいるのだから!!
僕達はそれぞれ、ペガ・グリ・ドラコの背に乗り、大空を飛んでいた。
そうだよこれこれこれぇ!これぞ日本誕生最大のわくわくシーンと言っても過言ではない空想動物に乗っての大移動!!
うっわ、すっげぇぇぇぇ!!タケコプターも悪くないけど、こっちの方が迫力段違いじゃん!めっちゃテンション上がるわぁ!!
いや~、もう前世で何度このシーンを見て『のび太羨ましいなぁ…』と思いを馳せた事か…それをこうして肌で体験できるなんて、もう転生最高っすわぁ!やっぱ日本誕生の生物に乗るのとトトロのお腹に引っ付いて飛ぶのは人類共通の夢だね!
「野比君、なんかすごく楽しそうだね!」
よほど目に見えて上機嫌であったからか、ジャイアン達とドラコに乗った出木杉に声を掛けられた。
「うん!だって、大切に育てたペガ達の事をこうして皆にすごいって分かって貰えたんだもの!こんなに父親冥利に尽きる事なんてないよ!!」
「ガハハ!なんだよのび太、一丁前に父親面かよぉ!」
僕が言った事を冗談かと思ったのか、ジャイアンが愉快そうに笑う。
『別に冗談で言ったわけじゃないんだけどなぁ…』と思いながら乗っているペガの背を見る。生まれたばかりの時は腕に抱えられるくらいに小さかったのに、今じゃ僕とククルを背に乗せても問題ないくらいに大きく、立派に育ったその姿は頼もしさすら感じる。
ペガだけではない、グリは鷹の様な反射神経で獲物を捕らえられるし、ドラコだってバカデカいオオサンショウウオを撃退するなど最強の幻獣であるドラゴンの名に恥じぬ強さを持っている。……オオサンショウウオがどれくらい強いかは知らないけど、とにかく立派に育っているのだ。
今なら自分が丹精込めて育てた子どもが立派に育つのは感動するものだという親たちの言っている気持ちが分かる気がする。だって、今の僕は胸の奥から湧き上がる表現できない思いでいっぱいだもの。
まさか小5で子育ての感動を覚えるとは思わなかったなぁ…グルメンの力で割とすぐに大きくなったから実際の子どもの期間はめっちゃ短かったけど。
と、とにかく!生まれて早々あんな光景(雄と雌の逢引き)を見せられてトラウマにもならず、グレもせずに立派に育って良かったよ!
……ただ、身体は大きくなっても精神はまだ幼いままなのか、3匹ともまだ僕にベッタリなのが少し気になるなぁ。
具体的に言うと…どこかれ構わず僕に身体をすり寄せて来たり、親の匂いで安心したいのか脇とか下半身とかやたら嗅いで来たり、親愛の証なんだろうけど顔とかめっちゃ舐めてきたり……とにかく距離がめちゃくちゃ近いのだ。
おまけに独占欲も強いのか、1匹に構っていると他の2匹も嫉妬したように激しめの構ってアピールしてくるし、今回の冒険だって誰が僕を背に乗せるのかで互いに争っている様子も見られた。結局ペガに乗ることになったけど、あの時のペガの勝ちほかった表情とギリ・ドラコの乾いた視線はしばらく忘れられないだろう。
3匹の生まれた年数を考えれば自然と言えばそうなんだけど…なんか今から親離れの事が心配になって来たなぁ……
「ブルムッ?」
「……あぁ、何でもないよ。心配させてごめんね」
僕が憂いていた事をなんとなく感じ取ったのか、ペガが僕へと振り向く。
そんなペガを安心させるため、僕は心配する事はないと言いながらペガの顔を撫でた。
ペガは僕の手の感触を楽しむかのように、目を閉じて気持ちよさそうな鳴き声を上げる。
……本当、僕にはもったいないくらい可愛い子だよ。色々と不安はあるけど、何よりまずはここまで大きくなってくれた事を素直に喜ぼう。
「「…………」」
……あの、グリとドラコ?なんでそんなクマ吉君を見るうさみちゃんのような視線で僕を見てるの?前向かないと危ないよ?
………ほらペガも、また撫でてあげるからちゃんと前向いて。前向かないと危ないよ?
「よいっしょっと……よし、これでいいだろう。本当に今日はお疲れ様ね~」
「ヒンッ♪」
「グアァ♪」
「ぐぉぉん♪」
僕は水の入ったバケツを片付けながら3匹にねぎらいの言葉をかけた。
ふうぅ…流石に自分より大きい身体の生物を、それも3匹一気に洗うとなると時間かかるねぇ。もうすっかり日が沈んじゃったよ。
はい、お察しの通りあれからまた時間が進んでいます。
……だって、しょうがないじゃん。移動途中の事とか空飛んでただけでマジで語る事ないもん。なんなら前半テンション爆上がりだったジャイアンも後半刺激に慣れたのと疲れで無言だったからね。映画では見れないリアルな部分見えてテンション下がったまであるよ。
………まぁ、強いて語るなら移動途中に何度か休憩挟んだんだけど、その度にペガ・グリ・ドラコの内、僕が誰に跨るかで一々揉めてたぐらいかな?映画では尺の都合もあるからかっとされてたんだろうけど、こんな出来事もあったんだねぇ…。休憩の度に違う子に乗って移動する事で収まったけど、お尻疲れちゃったよ…
そんな感じで数時間長距離移動を続けていたわけだが、まだヒカリ族の集落には程遠い。日も落ち始めていた為、原作通り夜間の移動を避けて一度キャンプをする事となったのだった。今は丁度一日中飛んで疲れたであろう3匹のブラッシングを終えた所である。
「それじゃあ明日も頼んだよ~。……さて、僕も早めに休もうかな「くわぁ…」……うん?」
3匹のケアを終え自分の寝床に戻ろうとしたところ、何かに服の端を掴まれたような感覚を覚え、歩みを止める。
振り向くと、グリが目を潤わせながら寂しそうに僕の服をくちばしで引っ張っている光景が見えた。
「お~、どうしたんだいグリ?できれば僕も休みたいからお遊びは明日にしたいんだけど…」
そう言いながらグリに言い聞かせていると、ペガとドラコも同じような視線をして僕に何かを訴えかけているのに気が付いた。
なんだろう…? 晩御飯はもうあげたし、いつもやってあげてる寝床の掃除も今日は必要ないと思うんだけど……ん?いつも??
「…もしかして、いつもと違う場所だから不安なのかい?」
「ぐあっ」
僕の言葉を肯定するように、グリが短く吠えた。
あ~…これは完全に僕の配慮不足だね。
3匹は身体は大きいが、精神年齢的にはまだ生後数日の赤ちゃんの様なものだ。そりゃ少し環境が変わっただけで敏感に反応してしまうのも仕方ないだろう。
この子たちにとってこの場所は安全か危険なのかも分からない未知の場所だ。安心して眠れないのも当然である。
「そっか~…ごめんね、気づいてあげられなくて。じゃあ、今日は一緒に寝ようか」
「グぁ!」 「ブルムぅ!」 「ガぁ!」
僕の提案に、3匹は嬉しそうに鳴きながら僕を取り囲んだ。
「わわっ!そんなに慌てないで…うわっ!」
3匹に押されるようにその場に倒される僕。しかし、背中に痛みなどは感じず、逆に“もふぅ”とした心地の良い感触が伝わって来た。
背後に視線を向けると、ふかふかの体毛で覆われたグリの身体が見えた。どうやら僕はグリの身体にもたれ掛かっている体勢になっている様だ。
現在の状況を把握すると、今度はペガとドラコが左右を固めるように僕に寄り添ってきた。
ペガが羽を下ろし、掛け布団を作ってくれる。おぉ、これは良い感じでぬくい。まさに天然の羽毛布団だ。
ドラコは身体が鱗で覆われている為不安であったが、生物特有の暖かさをちゃんと持っていて、呼吸するたびにテンポよく上下するお腹もなんだか安心する。
これは良いものだ…生き物に囲まれてベッド天然のベッドを楽しみたいという願望を持った人がいるのも頷けるよ。
ははっ、さっきまでこの子たちの親離れについて心配してたのに、これじゃあ僕の方がこの子たちから離れられなくなっちゃいそうだよ…
「………………」
そう思った瞬間、僕は心の中に隙間風が吹いたような寂しさを覚えた。
(……やっぱり別れたくないなぁ…)
できる事なら、僕もこの子たちとずっと一緒にいたい。親としてこの子たちの成長を見守っていきたい。
でも、それは不可能だ。
何故なら、この子たちとの別れは、
ドラえもん映画において、一部例外を除いてその作品のゲストキャラはその後本編に登場することはない。別の星の住民だったり、異世界人だったり、様々な理由でその後のび太達と関わる事が難しい登場人物が多いからだ。
それは
映画のラストでは、この子たちを現代に連れて帰ろうとするのび太であったが、その行動にタイムパトロールは待ったをかけた。
当たり前だが、ペガサスやグリフィンは僕達が住む現代には生息しない生き物。というかどの時代にも生息していないだろう、空想上の生き物だ。
そんな生き物たちが現代で生活できるわけがない。その時代の生態系を崩しかねないし、下手をしたら未来を変える重罪になってしまう可能性だってあるのだ。
その為、映画のラストでのび太はこの子たちを未来世界の空想動物サファリパークで面倒を見て貰えるようにとタイムパトロールに託すのである。
別れ際に『また会いに行く』という言葉を掛けたのび太だが、本編ではその後の登場はなく、再会できたのかは不明。描かれないだけで定期的にあっているのかもしれないし、なんらかの理由でそのまま会えなくなっているのかもしれないのだ。
もしかしたら、そのまま今生の別れになってしまうかもしれない。きっとそれは原作知識があっても避けられない、いわば運命の様なものだろう。
(………せめて、出来る限り一緒にいてあげよう)
だからこそ、僕はこの子たちをいっぱい甘やかす義務があるのだ。
それが
「みんな、大好きだよ」
「……っン」
そんな言葉に帰って来たのは鳴き声とも呼べないくらい小さいもの。きっと3匹も疲れて眠ってしまったのだろう。
それじゃあ、明日も早いし僕も眠ろうかな。こういう時ってのび太の身体は便利だよね、だって0.93秒で眠れるんだもの…
そんな事を考えながら、僕は夢の世界へ旅立った。
次の朝…
「………………」
「すぅ…すぅ…」
「むにゃ…えへへ、パパ~♡」
「ぐごぉ…お腹、すいた……」
なんか起きたら3人の少女に囲まれていた件。
………なにこれ?????
・新日本誕生で地味に好きなシーン…ドラコのオオサンショウウオ撃退
多分3匹の凄さを解らせるために追加した描写なんだろうけど、そもそもオオサンショウウオがどれくらい強いか分からないから完全にギャグシーンと化してて笑っちゃうんすよね。
最後に突如として現れた3人の女の子……いったい何ペガ・グリ・ドラコなんだ!?!?(迫真)
……すまん、性欲を抑えられんくてな。
とりあえず詳細に関しては次回解説予定。
ちなみに次回は未定。これから暑くなるからますます遅筆になるで…皆様の熱中症にはお気を付けを。
ここまでご拝読ありがとうございました