鹿児島湾で揺れる小型フェリー。その甲板から私は海を眺めていた。
季節は春。南九州の温かい日差しの中では、もう長袖も季節外れになりつつある。
私の横にいる少女もまた、涼しそうな水玉模様のワンピースに身を包んでいる。可愛らしい、黒髪の少女。
「ねえねえ提督!あの建物ってなに?」
「うーん…わからないわね。」
「えー?なんで?」
「私も別にこの町出身ってわけじゃないからね。こうやって外出するのだって早々ないし。」
「じゃあ降りたらあそこ行こうよ!」
「あまり時間に余裕はないわよ?行きたい所あるんでしょ?」
「うーん…じゃあまた今度!いいよね、提督?」
「ええ、いいわよ。サム。」
少女の名前はサミュエル・B・ロバーツ。私の部下で、恋人で、今日は同伴者。
可愛らしい同伴者の頭をふわりと撫で、その黒髪を指で掬う。艷やかな髪が私の指の隙間から溢れ、元のまん丸な髪型に元通り。まったく羨ましい。
「どうかした?提督?」
「ん、黒髪のサムってなんだか新鮮だなぁ、って。」
「そう?えへへっ♪似合う?」
「ええ、似合ってるわ。」
彼女は元々水色の髪だったが、今日は違った。今日は私達軍人と…彼女達艦娘に許されたささやかな休暇で、鎮守府を離れてこうして本土の町まで遊びに来ている。
鎮守府の外、人口密集地で休暇を過ごすにあたり私達に求められる事はただ一つ。正体を明かしてはいけないことだ。
年端もいかない少女たちを前線に駆り出し、妖精やら何やらというオカルトに国防を頼る事への批判は未だ少なからずある。私も、出来ることならサムのような少女たちに頼る事は避けたい。
良心だけで国は守れないが、良心のない国に守る価値はない。鎮守府と民間の完全隔離は相反する意見に対する妥協案だ。
身分を隠して過ごすことはもちろん、極力目立ってもいけない。艦娘達の個性的な容姿は良くも悪くも目立ってしまう。
外出時の服飾規定は、それこそ進学校の規則のように事細かに決められている。髪色もそのひとつで、許されているのは黒髪、茶髪、金髪の三つのみ。この金髪にしても十分目立つ。
鎮守府を出る前、どの髪色がいいかサムに聞くと黒髪がいいと即答した。
少し意外だった。彼女の同僚、フレッチャーとジョンストンは金髪だったので、彼女達と同じ金髪を選ぶと思っていたからだ。
理由を聞いて返ってきたのは『提督とおそろいの黒髪がいい!』という答えだった。私はなんとなく照れくさくなって、黙って彼女を撫でた。
その時の感触をもう一度確かめるようにサムの頭を撫でた。ふわふわで、キューティクルで、指でいじってもすぐ元に戻る。
違うのは髪の色だけ。明石謹製のカラー剤とはいえ、髪を染めてもここまで変化がないのは羨ましい。
同じ手で自分の黒髪を撫でてみた。潤いは足りず乾燥していて、少し指に絡まる。その落差に少し落ち込みつつも、もう一度サムの頭を撫でる。
先程から頭を弄くられているサムが、こちらを見て首をかしげる。なんでもない、という風に微笑むと、サムは満面の笑みで答えた。
「あー、北山サン、でしたっけ?そろそろ着きますよー。」
すらっと背の高い、黒髪の若い女性が私に声をかける。彼女は小型フェリーの船長で、長田と言うらしい。普段は海軍の下請けとして鎮守府への日用品などを配送している民間業者だ。
「それと、そこのちっこいの。提督って呼び方はアウトだぞー。北山サンもそこんところ気をつけてくださいね?」
「はーい!」
「ええ、承知してます。」
サムが私の腕をぐいぐいと下に引く。頭を下げると、私の耳元でボソボソとつぶやき始めた。
「…ねえ提督、あの人にはわたしが艦娘ってバレていいの?」
「…ええ。あの人は大丈夫。というか、あの人も元艦娘って話らしいわ。」
「…そうなの?じゃあ戦艦クラスとか?背すっごく高いし。」
「…さあ?でも退役して艦娘辞めると成長するようになるって聞くし、案外駆逐艦かもしれない。」
長田船長が大きく咳払いをする。聞こえていたらしい。
「まあとにかく、私の事は提督って呼ばないでね。ええと…」
なんて呼ばせればいいのだろう。北山さん?他人行儀すぎて不自然な気がする。私達の外見年齢を考えれば家族か親戚を装うのが自然だ。お母さん…いやダメだ、流石に私のプライドが許さない。お姉さん…いやそれはもうキツイだろう。おばさん…いや…これは…年齢的には合致してそうだけど…
「ケイちゃん!」
「えっ?」
「提督の下の名前、ケイコって言うんでしょ?じゃあケイちゃん!」
親戚の子供にあだ名で呼ばれる同伴者。うん、それなら有りかもしれない。
「…わかったわ。それでいい。私は普段どおりサムって呼ぶわ。そうね…あなたは私の親戚の子供で、アメリカ人と日本人のハーフ。そんな設定でいいかしら?」
「うん!ケイちゃん…ケイちゃん!ふふっ♪」
陸地が見えてきたあたりで既に楽しそうにしていたサムだったが、なんだかさらにご機嫌になったらしい。ふんふんと鼻歌を鳴らして左右に揺れている。
髪色、呼び方、他に何か注意すべきことはあっただろうか。
揺れているサムを見下ろしてみる。可愛らしいワンピースの裾がふわりと膨らむのを見て、心配になって確認してみた。
長田船長の方をちらりと見て、先程よりずっと近く、ずっと小さい声でサムにささやく。
「…あなた、今日下着履いてるわよね?上も下も?」
「…うん!履いてるよ!見る?」
思わずサムの口を両手で塞ぎ、長田船長を見る。彼女は目的地の港を見つめており、気がついていないようだった。
「…それならいいわ。あと、町中でそんな事絶対にしちゃダメよ?」
「…うん!提と…ケイちゃんにしか見せないから大丈夫!」
そういう事を言っているのではないのだけれど、面倒になって切り上げた。
頭を上げると、灰色の埠頭がどんどん近づいてくる。毎日見ているものではあるけど、普段とは違う新鮮な感覚だった。
船が止まり、埠頭に渡された細い板切れを、サムの手に引かれながら進んでいく。彼女は両足を揃えて着地すると、船に振り返って大きくお辞儀をした。
「行こ?ケイちゃん!今日はわたしが『Escort』してあげる!」
「よろしく。サム。」
そうして今日一日、様々な場所を巡った。日用品の買い足し、美容室、季節の服を見て、あとはサムが見つけたちょっとした観光地。彼女達の年頃であれば動物園だとか遊園地だとか、そんなものを想像していたけど、実際に回った観光地は史跡や記念館が殆どだった。陸も海も、時代も幕末から戦後のものまで。
自分が思っていたほどサムは子供でもなかったらしい。嬉しいやら寂しいやら。子離れができていない親のようで、なんだか情けなくなる。
色々な所を回ってすっかり日も落ち、今は夕食ついでによくある居酒屋チェーンでサムと二人、個室でゆっくり食事を取っている。
「カラアゲとー、ヤキトリとー、あと…シーザーサラダもあるよ!ポテトフライとタコワサも食べたいなあ~!」
「…やっぱり子供ね。」
思っていたことがつい口に出てしまう。
「え?なに?注文?なにか食べる?」
私が日本酒でチビチビやっている間に、サムは注文用のタブレットを見ながらどんどん料理を追加していった。私が一口二口程度つまむと、その後は全部サムが平らげてしまう。この子のどこにあんな大量の料理が詰め込まれているんだろう。
「あなた…そんなに食べて大丈夫なの?昼もたくさん食べてたけど。」
お昼はチェーン店の回転寿司だった。こちらでも山程の寿司とサイドメニューを注文して一人で平らげていた。特にサイドメニューなんかは一周したと思う。
「うん!平気!だってたまにしか食べられないでしょ?今のうちに沢山食べないと!」
この子の言うこともまあ、一応理解できる。私達の鎮守府は離島にあって、食事のバリエーションにはかなり乏しい。生鮮食品はたまにしか入ってこないし、食堂も無い個食形式で、外から自由に注文出来るのは保存食が殆ど。
こうやって町中であればいくらでも食べられる、ありふれたジャンクな食べ物の方が嬉しかったりする。それに…いいお店でそれなりの美食に触れてしまったら、もう元の食生活には戻りたくなくなってしまうんじゃないかと、そう考えてしまう。
徳利を傾けると最後の一滴がこぼれ落ちた。サムにつられて色々つまむ内に飲み干してしまったらしい。
「ケイちゃん、何か飲む?」
タブレットを掴んだサムが私に聞いてくる。
「んー。そうね、ビールでも貰おうかな。」
「OK!」
ピッ、ピッ、ピッとタブレットを操作してテーブルに戻すサム。そのまま少しおぼつかない手で箸を掴んで再び運ばれた料理に手をつけていく。
子供のようにはしゃぐサムをぼうっとした顔で見つめているとなんだか懐かしい気分になってくる。前にこんな事があったわけではない。私の子供時代、こんな風に私をじっと見つめていた両親の事が不思議だった。誰かを庇護する側になって、それで始めて理解できた。
今日は少し酔いたくて、普段慣れない日本酒に手を出してみた。だけど少し…私には強かったかもしれない。結構体が熱くなってきた。
私が酔いたかった理由。目を閉じて午前中の出来事を思い浮かべる。
「予約した北山です。」
「ええ、伺っております。どうぞこちらに。」
私は予約していた美容院に来ていた。離島に隔離されている関係上、ここへ来れるのは月に一度あるかないか。
私室にケア用品は大量に備蓄してあるけれど、それでも素人の私が出来ることにも限界はある。こうして休暇が取れた時に真っ先に来るのが美容院だった。
日々の疲れとともに、髪にまとわりつくネガティブな気持ちもさっぱり洗い流して―
「あら、お子様もご一緒でしたか。お子様の方はどうされますか?」
私と一緒に入ってきたサムを見て、店員が尋ねる。私達の他に客はいない。つまり、ここでお子様と言われているのはサムで、お母様だと思われているのが私だ。
「え?あれ、えーっと…」
フリーズする私をよそに、サムはどう答えればいいのかわからず、私に目配せをする。そんな私達の反応で察したのか、店員は慌てて訂正した。
「し、失礼しました!親戚のお子様でしょうか?すごく似てらしたので、ついお母様かと…」
「…ええ。そうです。」
作り笑いをした。多分、出来たと思う。
「お子様用のコーナーもありますが、そちらでお待ちになりますか?」
店員が手で示した先にはキッズコーナーがあった。カラーブロックやら絵本やらが置いている託児所のような一角。流石にあそこに放り込まれるほどサムも幼くはない。
「サム、あなたも一緒にどう?髪型変えたいなら変えてもいいわよ。」
「ホント!? …あーでも、髪型はこのままでいいかなあ。」
「じゃあ、この子はトリートメントだけでお願いします。」
「かしこまりました。」
予定外の出費だ。そもそもこの子は艦娘なので、入渠してしまえば黒髪に染めたのも含めて元に戻ってしまう。それでも、こうやって人の文化や趣向に触れるのは無駄ではないだろう。
…しかし、サムが私達の文化に触れたとして、私達の文化は私達を受け入れてくれるのだろうか。親子ほどに年齢の離れた同性の恋人なんて。
サムの元気な姿を見て頬を緩めながらも、少し暗い気持ちになってしまう。
結局のところ、私の不安は的中した。
街中の行く先々で私達は親子と間違われ、途中からは私も面倒くさくなって否定もしなくなった。
別に他人に私達の関係を認めてほしかったわけでもない。期待していたわけでもない。それなのに何故か私の心は傷ついていた。はやくこの気持ちをどこかに押し付けたい。食事でも酒でもいい。
「お待たせしました。こちらビールになります。」
個室の戸を開けて入ってきた居酒屋の店員の両手には、ジョッキが握られていた。両手に。
「あ!わたしとこの人に一つずつね!」
「えっ?一つずつ、ですか…?」
見るからに未成年であろうサムの指示に困惑する店員。
「あーあーあー!すみません!間違って二つ頼んだみたいで!私がちゃんと飲むんで置いといてください!」
「はぁ…」
怪訝な目で見られたものの、店員はジョッキを二つ置いてそそくさと出ていった。
足音が遠くなるのを確認してじろりとサムを睨む。
「サム…何考えてるの?あなたみたいな外見の子がアルコールなんか頼めるわけないでしょ?」
「えー?でもわたし艦娘だから人間の法律って関係ないんでしょ?それに鎮守府でも皆飲んでるよ?」
「それは鎮守府だから飲んでいいってだけよ。あなたに外でアルコールなんて飲ませたら最悪警察行きよ?まあ逮捕されるって事はないでしょうけど、外出は当面禁止にされるでしょうね。」
「むー。」
頬を膨らませたサムは無言で再びタブレットを持ち出し、色々操作して追加注文をしていた。酒の代わりに食欲で紛らわすようだ。
サムに構わずジョッキを掴む。重い。めちゃくちゃ重い。これが二杯。まだたいして飲んでもいないのに、もう頭が痛くなりはじめていた。
…………体が重い。頭も重い。それなのに足取りだけはやたら軽い。宙に浮いた重心がグラグラと揺れ、私の頭がそれに引っ張られる。
冷たい夜風が火照った体をくすぐり、熱を奪って通り抜けていく。気持ちよくて、胸のボタンを引きちぎって前を開けた。とても開放的。
サムの声が四方八方から聞こえてくる。私の事を心配してくれているらしい。でもどこにいるのかがわからない。
時折私の腕を持ったり、体を支えてくれたり。いつもは体温の高い彼女の肌も、今日は私の方が高かった。そのひんやりした肌に吸い付きたかったが、私が手を回す前にはするりと逃げられてしまう。
腕を引っ張られ、知らない道をフラフラと歩く。普段見ることの出来ない街のカラフルな光が私の目を更に惑わしている。
サムが私になにかを聞いている。ホテルがどうの、道がどうの。そんなの私も知らない。私にはサムがいればそれでいい。
「私、眠い…」
そう呟いて、サムに覆いかぶさった。小さい体をぎゅうっと抱きしめ、普段とは違う黒い髪に顔を埋める。
「ごめんね…」
瞼が重くなり、目を閉じた。
「ん…」
暗かった視界が突然真っ白になった。明るい光が瞼越しに私の両目に差し込む。光を遮ろうとして手を挙げる。
じわりと全身の感覚が戻ってきた。どうも私は服を着ていないらしい。腕から脇にかけて涼しさと開放感がある。しかし、先程まで感じていた風がない。明るい光が部屋の蛍光灯であることに気がつく。屋内のようだった。
両手足を伸ばし、大きく息を吐く。私はベッドか何かに寝ているようだ。何やら重い右手を見てみると日本酒の瓶を掴んでいた。多分、店を出る時に買ったのだと思う。
あの後の記憶をたどってみる。そう言えばホテルがどうのとサムが言っていた。あの後泥酔した私をここまで運んでくれたんだろう。サムはどこに?部屋を見回して少女の姿を捉えようとする。
「んん…?この部屋…」
私の知らない部屋だった。休暇の時はいつも同じホテルを使っている。同じ部屋ということはなかったが、どの部屋も似たようなデザインとレイアウトで、見間違えるはずはない。
寝ぼけ眼を擦り、机の上にあった見慣れない銘柄のタバコを手に取る。その紙箱はタバコなどではなく…コンドームだった。見るからに安っぽい、おそらくは業務用のもの。
あたりを見回すとここが普通のホテルでないことはすぐにわかった。机の上のコンドーム、ケバケバしい壁の装飾、丸いベッド、いかがわしい衣装や玩具が載っているカタログ。明らかにラブホだ。
どうしてこうなったのか。頭を抱えて何かをひねり出そうとすると、ドアから一人の少女が入ってきた。サムだ。
「あ、提督起きた?も~!ここまで運ぶの大変だったんだからね!」
「ええ、ごめんなさい…ところでここ、どこ?」
「わたしもよくわかんない。提督に今日のホテルどこ?って聞いても全然答えてくれなかったし。流石に外で寝たら風邪引いちゃうから、とりあえずホテルって書いてた建物に入ったの。」
「…受付の人には何も言われなかったの?」
「受付の人?居なかったよ?パネルで好きな部屋をボタンで選んで、お金を入れて…それでこの部屋の鍵が出てきたの。」
「誰かに見られた?」
「見られてないけど…見られたらダメなの?」
ああ、やっぱりこの子はここがどんな場所かは知らないんだ。
「ちょっと見られるとまずいの。だから何か用事があれば私が出るから。サムはここにいて。いいわね?」
「うん!あっ、お水飲む?自販機あったから買ってきたの!」
笑顔でミネラルウォーターを差し出してくるサム。
「ありがとう。」
それを受け取ろうと手を伸ばして…サムの腕を掴んだ。
「提督?」
怪訝な顔で私を見つめる彼女の目をじっと見つめ返した。一点の曇りもない金色の瞳は太陽のようでとても眩しい。目がくらみ、頭が揺れる。酔ってしまう。
ぐいっとサムの腕を引き、そのまま抱きしめた。私の体の熱はもう下がっていて、サムの方が温かい。それでもこの子の体に触れていると熱が移ったのか、私の体温もどんどん熱くなってきている。
「んもう!まだ酔っ払ってるの?」
「そうね。さっきはごめんなさい。でもあなたの前でなら、もうちょっと酔ってていいわよね?」
サムの顎に手をやり、上を向かせる。いつもの通りに口づけをしようとするとサムが体を引いた。
「て、提督!お酒くさい!今日はしないんじゃなかったの?」
そう、鎮守府を出る前にこの子と約束をしていたのだった。外出中にはそういう行為はしないと。
時間の制約という問題もあるが、リスクが余りにも多すぎる。バレれば一発アウトだし、そもそもそれに適した場所なんてない。サムのよく通る嬌声も、おしっこ癖も普通のホテルではまず間違いなくバレる。
そういう場所に連れて行ってするとしても、事情を知らない街の人間はそれを許さないだろう。いや、事情を知っていてもこの子の外見では許してくれないか。とにかく、リスクを理由に私達はしないと約束していた。
でも今は違う。ここは何の変哲もないラブホテルで、誰もサムの姿を見てはいない。リスクはもうサム自身が支払ってしまっていたのだ。
「ねえサム。ここがどんなホテルか知ってる?」
「?知らないけど…」
「恋人達がセックスをするための場所よ。」
「セッ…」
少女の表情が強ばると共に、少し赤くなる。普段あれだけ乱れているというのに初心な反応がとても可愛らしい。
「私も、するつもりは無かったんだけど。サムが連れてきてくれたのならやっぱりしたいなあ。セ・ッ・ク・ス。」
耳元でそう囁く。薄く小さい可愛らしい耳は真っ赤になっている。意外とこの子は言葉責めが効くかも。
「ん~してもいいけど、提督さっきからお酒臭いよ…一回お風呂入らない?」
「じゃあサム、あなたもお酒臭くなってみる?」
ベッドに放り出した先ほどの日本酒を掴み、サムの前に掲げる。
「え?いいの!?」
「誰も見てないしいいわよ。でも…今日はいつもより刺激的な飲み方を教えてあげる。オトナの飲み方を、ね。」
「ねえ提督、なんで脱いでるの?」
丸いベッドの上に足を投げ出し、リラックスしたままサムを見つめる。サムはよくわからないまま私の指示に従い服を脱ぎ始めていて、私はそれを肴に日本酒の入ったグラスを傾けていた。
酔いと興奮で全身の血管が脈打ち、熱と水分が理性と共に蒸発していく。
目の前の少女はワンピースを脱ぎ、ストライプのスポーツブラとショーツを脱ぎ捨ててベッドの上にちょこんと座った。日本酒の瓶と私を交互に見てそわそわしている。
「ねえサム、わかめ酒って知ってる?」
「ワカメ…?Seaweed?」
「ええ。まあ本当はわかめじゃないんだけど…好きな大人の女性が好きな人に飲ませてあげるものなの。飲みたい?」
「うん!」
目をキラキラ輝かせてサムはそう答えた。お酒が飲めるからなのか、好きな人という言葉に反応したのか。後者だと思っておく。
私は足をサムの方に投げ出すと太ももをぴったりと閉じた。少し膝を浮かせて自分の足と下腹部で三角を形作る。日本酒の瓶を傾け無造作にドボドボと注いでいく。
「えっ?提督?コップは?」
「ふふ…下にあるでしょ?」
日本酒が十分に注がれた三角地帯を指差す。一点の曇もない澄み切った湖の中で、藻のように黒い毛が蠢いていた。
「ワカメって…これのこと?」
サムの金色の目が私の剛毛を見つめている。この子は大人っぽさに強く惹かれているようなので、普段はしていた最低限のケアも最近ではしていなかった。今まで嫌な顔も見せていなかったので大丈夫だと思っていたが、流石に面食らっているらしい。
「やっぱり…汚いかしら?」
私は少し困ったような顔をしつつ、目を伏せて呟く。出来るだけ目を反らして、悲しそうに。
「う、ううん!大丈夫!い、いただきます!」
良心がチクリと痛むが、この鼓動と熱の前ではどうということもなかった。私の太ももに小さな両手を載せて、ゆっくりと顔を沈めるサムを見て口が緩む。
サムはまず、舌先で酒を舐め取る事から始めた。小さな舌先が私の太ももをくすぐる度に、熱いものがこみ上げてくる。揺れる黒髪の下からピチャピチャと可愛らしく、それでいていやらしい音が聞こえる。
埒が明かない事に気がついたのか、サムは顔全体を埋めて酒をすすり始めた。舌先に加えて唇と鼻先も私の太ももに食い込んでくる。アルコールでじわりと熱を帯びた肌でもその感覚だけははっきりと感じ取れた。
下品な音が止み、酒をあらかた飲み終えるとサムは再び舌で私の肌を舐め上げる。残った酒を、汗を、愛液を一滴も残すまいと必死で食らいつく。荒い鼻息がクリトリスまで響いている。
アルコールのほてりが肌から消え、サムが頭を上げる―と思ったその瞬間、下腹部に噛まれたような、引っ張られたような感覚が生じた。
ジュル、ジュルと再び下品な音が鳴る。何かをしゃぶり、口の中で咀嚼する音。
サムは私の股に顔を埋め、酒に塗れた陰毛をしゃぶっていた。舌で絡め取り、唇で挟み、喉奥へと吸い上げる。
「あっ♡サムっ…それ…イイっ…」
陰毛が引っ張られる度に、肌が、女性器が引っ張り上げられるような感覚に陥る。子宮が剥がされるようなふわふわとした感覚。
気がつけば、自分の腹に日本酒を注いでいた。体の正中線を滴り落ち、臍を経由して、サムの待つ股へと流れ込んでいく。
酒が陰毛に染み込むと同時にサムがそれに食らいつく。キスをするように、食らいつくように、引き剥がすように。
「ああ…♡サム…もっと…♡」
我慢できなくなって足を大きく開いた。両手を割れ目にかけて横に広げる。生い茂った黒い毛の中で、大量のアルコールを吸って充血したクリトリスが赤く輝いている。
サムは大きく口を開けて、そこへかぶり付いた。陰毛を口に含み、舌で私の割れ目をすくい上げ、舌先でチロチロとクリトリスを撫でる。
「そうっ!そう!もっと…もっと!」
小さな頭を抑え、自分の股ぐらに押し付けて前後に揺らす。サムの唇が私の粘膜の中で擦れ、少女には似つかわしくない、酒と愛液のムワっとした匂いが口からこぼれ出た。
淫らな舌に絡め取られる陰毛が、私のクリトリスも巻き添えにして少女の口の中で絡み合う。無数の弦に絡め取られるような快感が次々と襲ってくる。
「んちゅ…へぇとく…ひもちいい…?」
私へのクンニを止めずサムが呟く。その声の振動すら、粘膜は快感に変換してくれた。
「あっ♡あっ♡サムっ♡飲んで♡ ああああああああっ!!!!!」
快感でお尻が浮くと同時に、体中の筋肉がびくびくと痙攣する。全身から汗が、割れ目から潮が吹き出る。その間もサムの愛撫は止まなかった。
抱えていた小さな頭から手を放すと、サムはゆっくりと顔を上げた。ずっとクンニを続けていた彼女の息もまた上がっていて、肩で呼吸をしている。
「ご…ごちそうさまでした?」
何を言うべきなのか困惑している少女。口には吸い付いた時に抜けたであろう陰毛が挟まっているが、彼女自身は気がついていない。その可憐で淫猥な表情にムラっと来てしまった。
「んふ…どういたしまして。お口、綺麗にしてあげるわ。」
私はそういって日本酒を瓶のままあおる。飲み込まずに、酒と愛液で汚れたサムの唇にキスをした。
口移しで酒を流し込み、アルコールに塗れた舌で口内を、唇を、鼻先をたっぷりと舐り消毒していく。
サムもまた、私の口内に残る日本酒を舐め取ろうと舌で私を責める。強烈なアルコール臭はもうどちらが発しているのかわからない。お互いの吐息で溶けるように酔っている。
唇を貪りながらサムの後ろに手を回す。ぎゅっと抱きしめる。その体温も、その鼓動も普段よりずっと熱く激しい。
「ぷぅ…ふあぁ…」
サムの唇を解放すると、熱っぽい声が上がった。目線はトロリと曲がり、頬も耳も真っ赤に染まっている。
「あなた…そんなのでよくあの量のビール飲もうと思ったわね…」
「んん…違うよぉ…提督がたくさん飲ませるから…それに…」
「それに?」
「わたし…いつもよりドキドキして…フワフワして…変になっちゃってる…」
この子がこんなにしおらしいのは最初の時を思い出す。泣きべそをかいて未知の感覚に困惑していたあの夜。何かを教える度にこの顔をしてくれる、私だけに見せる始めての顔。
「ねえ、私もサムで飲みたいな。」
「でもわたし、毛生えてないよ?」
「いいのよ。飲みたいの。」
「…うん。いいよ。」
そう言うとサムは私と同じように足を閉じた。そのまま仰向けになり、ぼうっとした顔で天井を見つめる。
「ん…」
そして、自らの指で割れ目を開いた。ピンク色の未発達の粘膜が光っている。
私は日本酒の瓶を少しずつ傾けた。出るか出ないかギリギリの角度を探り、少しずつサムの湖に注いでいく。
「っ…あつぃい…」
サムの割れ目に酒がかかる度に、サムからうめき声とも嬌声ともわからない声が上がる。少女の若々しい粘膜にアルコールは刺激が強すぎるらしい。
「てぇとく…熱いよぉ…はやく飲んでぇ…」
まだ僅かしか注がれていないピンク色の杯に口をつける。ピクピクと踊るそれを唇で撫でると、サムは身じろぎをしながら後ろへと逃げ始めた。その両足を掴み、割り、持ち上げる。
サムの両足を私の肩にかけさせると、彼女はそのまま足で私の頭を優しく抱く。もっとして、と言葉もなく語りかけてくる。
一升瓶を口に含み、ぐいと吸い込む。飲み込まぬまま再びサムの割れ目に顔を埋めた。
ベッドに滴るのも構わずに酒をぶちまけ、しゃぶり、舐め取る。
「あああぁ…熱い…あっ♡すご…あ…♡」
サムが普段は上げない湿っぽい艷やかな声を上げている。いい。たまには飲んでからするのもアリかもしれない。
でも、やっぱり獣のように鳴くこの子が見たい。快感に身を任せて獣になるこの子が。
私は三度瓶を咥えた。しかし飲み込まない。口にも含めない。舌を無造作に動かして流れ落ちる酒を舌にコーティングしていく。
「ねえ、サム…見て?」
口をあんぐりと開き、精一杯舌を突き出す。酒と涎に塗れた舌からは強いアルコールの匂いが漂っている。
悪戯っぽい笑みでサムを見つめる。この子から見て私はどんな顔をしているだろう?笑みを浮かべた魔女?涎を垂らした犬?それともただの酔っ払い?
すごくみっともない顔をしているのは確かだろう。これだけ酒を飲んで体は火照っているのに背中がゾクゾクしてくる。それでいて熱は増すばかり。
「ふぇ…?なあに…?」
私が視線を下に落とすと、サムは何かに気がついたようだった。
「だめ、そんな―」
もう一度だけふっと笑って、サムのクリトリスに食らいついた。アルコール塗れの舌で小陰唇を割り、頂にあるクリトリスを露出させ、舌のザラザラを擦り付ける。
「あーっ!やだ♡あっ♡それ…強すぎるよっ!あっ!んんぅ♡」
びちゃびちゃを舌を動かすが、それを飲み干したりはしない。口と舌に残った酒を念入りにクリトリスに染み込ませる。
「やらぁっ♡あっ♡あつっ♡あ♡あー…♡」
居酒屋で食べた赤貝の刺し身を思い出す。小さくて鮮やかな色、口で転がすとやわらかくて、ちょっと青臭くて、でも美味しかった、あの感触。
サムの赤貝。いや、刺し身じゃなくて酒蒸し?とにかく絶品であることに変わりはなかった。溢れ出てくる汁と日本酒を味わう。
最後に、上下の唇でクリトリスを押しつぶした。リップを塗った時のように、歯で唇を挟み、万力のように可愛らしい豆をすり潰す。
「やっ!あっ♡あああああああああああああーっ♡あっ♡」
サムもまたその両足で私の頭を押しつぶした。逃げ場のない状態で、痙攣するサムの割れ目から潮が吹き出す。汁と酒と涎が混じり合うその混合液を今度こそ飲み干し始めた。
少女の可愛らしい叫び声、甘露な酒、太ももから伝わってくる鼓動。気がつけば自分の体にも手が伸びていた。
浴びるように飲み終えた後、ようやくサムの両足が私の肩を離れた。するりとベッドに落ちた細い足もまだ余韻で震えている。
ベッドの上でぐったりしているサム。顔はすっかり真っ赤になり、その赤い肌の上を更に赤い鼻血が走っている。
とても可愛らしい。その姿をみてもう一杯やりたくなって瓶を傾けた。
「…あら?」
傾けても何も起きなかった。上下逆さまにしても何も出てこない。
ベッドから降り、買い物袋の山を漁る。あの居酒屋で買ったのはこれ一本だけらしい。
「あーもう…いらない時に出てきて欲しい時に出てこないなんて…」
酒の味でもするかと思い、無造作に瓶の口を舐めてみる。残り香はしたがガラスの無機質な感触だけが舌に伝わってくる。
サムはしばらく休憩が必要だろう、でも私はまだ酒も肉欲も物足りなかった。ベッドに腰掛けると空いた手を下腹部に伸ばす。
ラブホなら性玩具はあるだろうし、もしかしたら酒も売ってるかもしれない。一度着替えて外に出てみるのもいいか…自分を無造作に慰めながらそう考えていると、ふと片手に抱えていた瓶が目に入る。
直径は細めで、長さはそれなり。口は丸く加工されている。
唾を飲み込む。その一滴は今まで飲んだどの酒よりも熱く、私の欲望を焦がした。
余韻から解放されたサムがゆっくりと起き上がり、私の姿を捉えた。
「え…提督、何してるの?」
「イケないことよ。ふふ。」
私はベッドの上で膝立ちになっている。その真下には飲み干した日本酒の瓶が、口を上に向けて屹立している。
その口を掴みながら、ゆっくりと腰を下ろしていく。もの言わぬ相手をリードするかのように。
「え、え、わわわ…危なくないの?大丈夫?」
「大丈夫よ。このくらいで割れたりしない。」
ひんやりとした瓶が私の中へと入ってくる。硬いガラスが柔らかい粘膜を押しのけて私を犯していく。
「んっ…ふぅ…」
一度中で突っ抱えたようで、一度腰を上げた。もう一度ゆっくり下ろすと、再び沈み込んでいく。
とても不思議な感覚だった。細い口が私の奥深くを犯すと同時に、湾曲していく瓶がゆっくりと膣口を広げていく。この瓶はどう頑張っても全長の1/3入ればいい方で、瓶が最大直径に至るのは瓶の下半分だけ、つまり細い部分だけしか入らない。それでも挿れるには太いはずなのに、滑らかな曲線のせいか痛みは全く感じない。ただ圧迫感だけがじわじわと快感を伝えている。
「んっ…ひっ!?」
瓶の先端が私の最奥部を捉えた。上下に動かして見ると、私の肚の中身もぐるぐると蠢く。子宮口の前まで来ているらしい。
もう出ないと思っていた汗が再びぶわっと流れ出る。小さくて、ひんやりして、硬い物体。これを中でぶつけたらどうなるだろう。
酒はもう無いのに頭から何かしらの快楽物質が出てくるのを感じる。今やその正体を考える余裕すら蒸発してしまった。
「す、すごい…」
恐る恐る手をかざし、私の下半身に触れるサム。内側からパンパンに膨らんだ膣壁へとその体温が伝わってくる。固くて冷たい瓶と、柔らかくて温かい手。撫でられただけでお腹がきゅっと反応してしまった。
「ね、サム。あなたもまだしたりないでしょ?」
サムのもう片方の手は開いたままの股下へと消えていた。バツが悪そうに座り直すサム。
「うん…フラフラするけど、もうちょっとしていたい、かな…?」
私は瓶を挿れたまま、ベッドに仰向けに寝転ぶ。そのまま足を左右に開き、足で下品な菱形を形作る。
使い込んだ割れ目を指で開き、少女を誘惑する。
「来て。サム。」
サムは私から視線を離さずにゆっくりと近づいてくる。熱っぽい目、いや、実際に熱を帯びた目のまま。
のぼせた顔のまま私の体に抱きつこうとする彼女を手で制した。
「そこで止まって。そのまま、足を開いて座りなさい。」
「えっと…下、瓶あるけど…」
「ええ。瓶にまたがって座りなさい。」
そう命令されるとサムはその場で膝立ちになり、ゆっくりと体を下ろす。可愛らしい女の子座りをする少女の股下には冷たい瓶が横たわっている。
少女の小さな、しかし先程までの行為で真っ赤に染まった敏感な割れ目が、無機質な瓶に覆いかぶさる。
「冷たっ…あっ!でもこれ…気持ちいい…♡」
彼女がゆっくりと瓶に体重をかけていく。ベッドに沈み込むと同時に、その緩慢な動きが私の膣にも伝わってきた。
私は唾を飲み込み、そして…瓶を足で蹴った。
蹴った、という表現が正しいかは定かではない。私と繋がり、サムが今まさに跨っていた瓶を…自分のかかとで、自分に打ち込んだ。
「ッ~~~~~~~~~!!!!」
強すぎた。ダメだ。調子に乗った。鈍い痛みが下腹部を襲っている。それでも何故か、酔いのせいか、痛みはゆっくりと引き、後には快感が残った。
流石にバカになりすぎた。そう思っていたが、瓶はまだ動いていた。
「てぇとく…♡はぁ…はぁ…♡」
サムだ。今の一撃でスイッチが入ったのか、自分で体を前後に揺らし、真っ赤に膨張した可愛らしいクリトリスを両手で持った瓶に擦りつけている。
そのままヘコヘコと腰を振る姿は、まるでサムが私を犯そうとしているみたいだった。
「あぁ…いいわ…あなた本当に最高…」
彼女は恥じらうでもなく、快感に耐えようと目をつぶるわけでもなく、私を見つめ続けていた。口から涎を、鼻からは血を流して一心不乱に前後運動をしている。
私はサムの顔を掴み、自分の胸に無理やり押し込めた。サムの体が私に覆いかぶさり、体が密着する。それでもサムは腰を振るのをやめない。何もかもを真っ赤に染めて、快感を享受している。
「ああ、すごっ…すごい…♡とんじゃう…♡」
サムの両手がするりと私の背中に回る。か細い腕で、今にも力尽きそうな弱々しさなのに、それでも私を捉えるには十分だった。
サムのストロークは回数が増えるにつれより大きくなり、瓶の揺れもそれだけ激しくなる。サムはそれでも物足りなくなったのか、腰を大きく前に突き出すと私の下腹部にも割れ目を擦り付け始めた。
瓶が入ったままの女性器まで到達すると、自分のクリトリスを私のクリトリスに擦り付ける。タワシのような陰毛でゴシゴシと自分を削り、不明瞭なよがり声を上げる。
「てぇとく、ぁ…ぁぁあぁ…♡」
しばらく私の陰毛を楽しむと、また腰を引いて今度は瓶で楽しんでいる。ああ、可愛い…。
「サム、私のおっぱい、飲んでいいわよ。」
そう言うとサムは無言で私の乳首にむしゃぶりついた。わかめ酒を飲んでいた時のような貪欲さで乳首を蹂躙している。
「あー…♡もっと、もっと!噛んで!」
コリ、と硬い感触が甘い痛みと快感を伝えてくる。この状況下でもサムは手加減をしてくれているようだ。その愛らしさに答えたくなって、彼女の頭をくしゃくしゃに撫でる。
サムの全身を使った愛撫はまだ続いている。愛液が下半身に行き渡り、肌がこすれるたびに粘液のもたらす淫靡な響きが頭の中に響いてくる。ぼうっとした頭はもう感覚が薄い。これがアルコールのせいなのか、快楽のせいなのか私はわからない。
「ねえ、サム。最後に…また『ケイちゃん』って呼んで欲しいの。」
その瞬間、サムの目つきが変わった…と思う。熱っぽい目が一瞬だけ冷めて、元の金色の、輝かしいいつもの彼女に戻った…ように見えた。
でもそれは一瞬で、また私に体を擦り付け始めた。甘く囁くように私の名前を呼びながら。
「ケイちゃんっ…!ケイちゃん!ケイちゃん♡ケイちゃん♡ケイちゃんっ♡」
「サムッ!私の…私だけのサム!もっと!もっと!もっとぉ♡」
華奢なサムの体を抱きしめる。でも汗に塗れた体はするりとその手を抜けていった。仕方がないので、腕を絡めた。彼女の腕に、背中に、脇に、指に。
「ケーちゃん♡ケーちゃ…あああ♡けー、けー、ちゃ…はあぁぁぁ♡」
サムも私も限界だった。お互いの名前すらろくに呼べなくなっても、まだ体は交わっていた。言葉ではなく、肉体で呼び合っていた。
下半身の感覚がとろけあって無くなっている。ただ水浸しになっているという感覚と、どこからか湧き上がってくる多幸感が繋がりを示している。
最後の力を振り絞って、またかかとで瓶を叩いた。
「ケーちゃっ!あっ!あああああああああああああ♡♡♡♡♡」
「んっ!~~~~~~~~~ッ!!!!!!!!」
サムの全身が痙攣するのを、同じように痙攣する体で受け止める。サムの体を抱きしめて、縛って、自分の体に埋める。子宮から湧き上がってきた快感を、肌を伝うゾクゾクという快感を互いに交換し合う。
甘い汗と、酒と、午前にしてもらっていたトリートメントの香り。その匂いを追い立てるかのようにアンモニア臭が漂ってくる。きっと下は酷いことになっている。
それでも、まだビクビクと震えるサムの両脇を掴んで、無理やり私の方へと押し上げた。いつもはかっこよく、そして可愛くつり上がっていた口角は緩みきって、輝く眼は焦点が合わずに揺れている。
「ケーちゃん、わたし、わたし、きもち、よすぎて…」
私が腕を下ろすと、そのままサムの顔が重力に従い私の顔に落下する。んぐぅ、という小さなうめき声を無視してサムの顔を舐めた。いつになくしょっぱい。
「あっ…けーちゃんの舌、きもちいい…♡」
こんなサムを見て、こんな快楽を感じて、すっかり満足してしまった。でも何故だか、こうやってサムの顔を舐めてみたかった。
多分これは、性欲とは別のもの。母性本能とか、仲間に対する親愛とか、多分そんなところ。老婆心…ではないと思いたい。
サムの顔を舐め終わると、サムもまた同じ様に私の顔を舐めてきた。
「にゃ、にゃーん…?」
悪戯っぽく鳴いてみるサム。あなたはどちらかと言えば犬だと思うのだけれど。
「ふふっ…」
私はもう一度サムを抱きしめる。額を重ねて、鼻を重ねて、目を瞑って吐息と肌だけで相手の表情を確かめる。
快感の余韻がようやく落ち着き始めると、代わりに疲労と眠気がやってくる。それでも多幸感だけは消えなかった。
深い疲労と、頭にまとわりつくアルコールの痛み、そして目の前にある小さい、柔らかくて柔らかくて、それでいて幸せなものの存在を確かめて、眠りに落ちていった。