それだけの違いだった。
鉄格子の嵌められた窓から見える空は、細雪が降っているようで、景色までは見えないが灰色の空のくせによく映えていた。
自分もこの雪のように自由に風に揺れてどこかに行ければいいのにと詩的に自分の将来に思いを馳せる。
ここ最近は調整も過激になってきていた。
性感帯の開発が凄まじく、俺がここにやってきた時は不感体質だったこの体も腹を押し込まれるだけで震えが走るほどに敏感にされた肉体はもう自分のものではないように感じられる。
食べ物は栄養のあるものに加え、ピンク色のゼラチン質の何かが出されていた。
どんなに腹が膨れていてもこのゼリーだけは残すことを許されずどうしても食べたくなかった俺は最初だけは抵抗していたが少し乱暴な調整を受けただけで食べるようになってしまった。
俺も驚いている。ここまで情けない生き物だったなんて。
きっとバチがあたったのだ。女が楽だなんて。こんな世界を経験すればそんな言葉は出てきやしない。
足枷に着いている鎖が地面を転がる音で俺は現実に引き戻される。
こんな世界でも俺は前世の癖、考え込むことを辞められないらしい。
気づけば俺の今住んでいる牢屋に連れてこられていた。
その牢屋に入る前に看守に言われる。
「今日から新顔が入った。そいつも商品だから余計なことは吹き込むなよ」
新顔。
新たな同居人についてまた考え込んでいると「無愛想なガキが」と頬を張られた。
口角から血が垂れる感覚がするがピンク色のゼリーで回復力も上がっているのか明日には治っている。
食べ物で内側から壊れにくい肉体が作られているなんて、怖気がするがそれがここでの日常だ。
とても痛いがここで反抗的な態度を取れるような精神状態でもない。
「ごめんなさい…」
そう言いながら、牢屋に入る。
俯きながら牢屋の隅に視線を向けると俺と同様の服装なのに小綺麗な少女が体育座りで座っていた。
その子も俺の方向をじっ、と見ている。
ジロジロ見るのも飽き、俺も座り込む。
俺が入った牢屋は俺が最初入っていた『ゴミ箱』とは違い中が全部見えるように鉄格子が全面に嵌められた場所だった。
怪しい行動をすれば直ぐにバレる場所に移動させられたのだ。
俺が最初入っていたのは壊れた奴隷を置いておくいわばゴミ箱であると看守が話していたのを聞いた。
「ねえ。君」
考え事をしていると同居人が話しかけてきた。
茶髪に黒目。そばかすのついた顔は愛嬌がありこれまで送ってきたであろう生活の上等さを物語っていた。
「……なんですか」
…ここでは同居人との入れ込んだ会話はリスクになる。
この前、話好きの看守が話していた。
同居人が話していたことを包み隠さず話せばお前を奴隷から解放してやる、と言っていたらしい。
それによって騎士の奴隷は好事家に剥製で売られ、密告した冒険家は今では看守の肉便器だ。
だから俺はこいつとの会話にも気を配らなきゃならない。
来たばかりの俺だったなら大喜びで友達にでもなっていただろう。
気の滅入る話だ。
「ここがセムルスとダタールの国境あたりにあるって知ってた?」
「は?……知らない」
「奴隷商館がこんなところにあるなんて、私達も知らなかったよ」
「……」
何を言っているんだ。こいつは。
「私ここに来るまでにボッコボコにされたんだよねぇ。私が『魔法』使えるからって勘弁して欲しいよ」
「『魔法』?!」
「えっ?!」
少女の口から漏れたワードが衝撃的に過ぎたため、俺は詰め寄ってしまう。
そうか。ここには魔法が存在するのか。
「ま、魔法使えるなんて珍しくもないと思うん、だけど?」
そしてここは魔法が一般的に普及している世界だということも知ることが出来た。
俺にもツキが回ってきたらしいことも。
こいつはここに来たばかり。
そして俺もゴミ箱から復帰したばかり。
なんだかんだ警備が杜撰なここの看守がこいつに取引を持ちかけていることも考えづらい。
ならばと、俺は賭けをすることにした。
「俺に…魔法と、この世界のことを教えてくれ」
喘ぎに♡を付けるか
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必要(もっと乱れてるところが見たい)
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不必要(雰囲気が崩れるからダメ)