今日だけは気絶するわけにはいかなかった。
腹を殴られ、子宮が喜んでも。
後ろの穴が完全に感じるようになっても。
蝋燭が照らす廊下を、調整係に鎖を引かれながら歩く。
「楽しんでたらこんな時間か…今日は気絶しなかったな。どんどん体が丈夫になってるようで何より」
気絶しなかったとはいえ、体の惨状はいつもの調整の比じゃない。
度重なる腹への殴打で青アザが目立ち、そんな痛々しい見た目にもかかわらず、股からのヨダレは絶えず溢れ、足を伝って床に落ちていく。
顔は紅潮し、吐息は熱い。
下半身が震え快感を享受している時点で手に負えない。
だがこうなったのは初めてで気絶しなかった調整も初めてだったためいちばん困惑しているのは俺だったと思う。
隙間風がびゅうびゅうと体にあたるが冷やしてはくれない。
ただ、今日は体の震えは収まりそうにないことは悟ることが出来た。
◆◆◆
「…大丈夫?」
目の前の少女、アッシュが調整から帰ってきたのは夜も更け月光が映える時間に牢屋に帰ってきた。
いつも以上の乱暴をされたのか、全裸で帰ってきた時は目をむいたがそれよりも腹部に夥しい範囲で青アザが出来ていることに、私は呆然とするしか無かった。
即座に魔法を使おうとしたが、アッシュはそんな私を止める。
「大丈夫…無駄に魔力を使わないで…」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
むだ?
何にも使うことの無い魔力だ。同情すべき同居人に使うべき魔力のどこが無駄なのか。
「むだ?あなたに使う魔力のどこに無駄が!」
「これから、自分のために使うからだょ…」
語尾を小さくしながらアッシュは目を閉じる。
これは、この子が魔力を使う時の挙動だ。
予想通り、アッシュの右手に白く光る結晶のようなナイフが現れる。
「動かないで」とそう言った彼女は私の首、手、足の枷を瞬く間に切ってしまった。
カランと転がる枷の音と久しぶりの開放感で、謎の非現実感が頭を支配する。
…逃げろって?無理だ。
外は極寒。こちらは室温調整の魔法のおかげで凍えていないだけで外の寒さは想像を絶する。
まともな服すらない。
現在地はたしかにわかる。だが地理に詳しい訳でもないのだ。
そんな私を見てか、アッシュが口を開いた。
「…看守の連中が、ひと月後に麓の村を襲撃して略奪するって言ってた。その時に逃げた奴隷も全員連れ戻すって」
…そんな話は、ここには聞こえてこない。
アッシュには話していないが、観測魔法には別の側面がある。
自分の周りの地理の把握にも使える。
この奴隷商館の看守室の位置ならば把握ができているのだ。
こちらはこちらで脱出するための算段を探していた。
…この子の言うように、看守の話し声が聞こえるほど看守室が近い訳では無い。
ダタールの侵攻を阻止している標高の高い山、サグラネ山の中腹に位置するこの奴隷商館は4階建ての建造物で私たちの牢屋は最上階に位置している。
そして、看守室は地下にある。
牢屋の鉄格子には魔法の細工が施されているためか、調整室に隣接しているようだ。
アッシュは、『祝福』を持っている。
『遠聞き』の祝福。
『光輝』魔法に祝福。
やはり…アッシュは…
「カナリア?」
「え?」
「麓の村を目指して。カナリアに教えてもらった日光の加護の魔法、覚えたから」
日光の加護。
様々な効果があるが、体温を上昇させる効果もある魔法でそれもあって教えた。
この短期間で覚えるとは思っていなかった。
あたたかい感覚が体を包む。
これで、短剣の魔法と加護の魔法を使ったことになる。
アッシュの魔力は覚え始めたこともあり少ないはず。
使えてあと一回。
私“たち”で逃げるためにはあと一歩足りない。
「いくよ。飛び降りたら足が痛いかもしれないけど、回復しながら無理やり下山して」
私が止める前に、アッシュは
◇ ◇ ◇
ナイフを再度形成して、体の魔力を全部込める。
力が抜ける感覚を無視して、壁に突き刺す。
ナイフが自分の制御を離れる感覚と共に、牢屋の壁から数多の光る結晶が生えた。
俺が崩れ落ちると同時に光の結晶が霧散し、後にはスポンジの様になった壁が残されるのみとなった。
「ばかっ!あなたが逃げられないじゃない!!」
「…カナリア…あの壁、押せば崩れるから…はやく!」
虚脱感でだるい体を無理やり動かして、カナリアの手を握る。
「俺は、多分大丈夫。カナリアに教えてもらった魔法があるし、カナリアが全部一人でやったことにするから、あはは」
冗談が言えるぐらいの元気はある。脱出する算段はあると。
虚勢を張る。
カナリアは、顔を強ばらせて歯を食いしばったあと呻くように言う。
「助けに来るから…」
「…それよりも前に買われるか、脱出するよ」
「……あなたの魔法なら、買われても」
『背後から刺せばさ、逃げられるよ。きっと』
泣きながら、精一杯の笑顔を顔にのせてカナリアは言う。
そして、カナリアは崩れる壁から飛び降り、その姿を見送ったあと、俺は魔力欠乏で気絶したのだった。
◇ ◇ ◇
ピチョン…
ぎし…
目が覚めると、俺は椅子に縛られていた。
淫臭漂う部屋だった。
体は、四肢の関節が痛む。
股は、ヒリヒリとする痛みと快感が同時に俺を刺激している。
汗で髪がはりつき、未だに頭にモヤがかかっている。
記憶の最後で経験した魔力欠乏で経験した感覚とも違う、感覚。
そして、俺はこれを経験したことがある。
股座を見れば赤く充血したクリトリスがよく主張している。
寝ている間にも調整されたらしい。
窓もなく、思考もモヤがかかり、自分の淫靡に改造された体を眺める趣味もない。
再び瞼を閉じようとした時、調整室の扉が開く。
「おや…起きましたか」
初めて見る顔だった。
小綺麗な服にメガネにオールバックの髪型。
鼻にハンカチを当てながら、こちらを見る男。
「誰…」
「おっと、私としたことが。自己紹介を。ハルネア・アルテニアと申します」
「………」
「ああ、聞きたかったのは名前ではなかった様子ですねぇ…」
クククと喉を鳴らして、ハルネアは自分の身分を明かす。
「ワタクシ、この商館の支配人でアナタの今の持ち主です」
「そう…ですか」
「さあ、新しい牢屋に移りましょう。あの牢屋はもう使い物になりませんからねぇ…枷をわざわざ粗悪品にして浮いたお金を懐に入れてた不届き者は罰しておきましたから。もう安心ですよ!」
「………」
「それにしたって、魔法使いと同室なんて災難でしたね〜…そうだ。あそこで不可思議な魔力痕跡を見つけたんですが、何か知りませんか?」
「知らないです」
「即答ですか!知ってるって言ってるようなもんですねぇ!」
意地の悪い笑顔を浮かべながら、俺に言う。
ボロ布をまとい発情した小娘と、俺をここにぶち込んだ最悪の人間では、どちらが場を支配できているのか傍目に見ても明らかだった。
俺が、『あ、無理だ』と冷や汗を流すには十分な雰囲気。
裏の人間というのはこういうのを言うのだろうな、と場違いな考えが溢れるぐらいには、現実逃避をしたくなっていた。
「まあ、大丈夫です!こちらとしても厄介払いができたと思っていますからねぇ!取引先との兼ね合いもありますが、代わりは見つかりましたから!」
そんなことを俺に言われても、と俯く。
「元気を出してください!彼女は無事逃げ延びたようですよ?私もここから撤退するしかなさそうですねぇ…その前に大きな仕事を終わらせなければ…!忙しくなるぞぅ!」
嬉しそうに、この場に合わないテンションで叫ぶ貴族然とした目の前の男は酷くミスマッチで、なんというか滑稽だった。
「さ、立って立って!」
ハルネアは椅子の縄を解いて、俺の腕を持って俺を立たせようとする。
だが、立った瞬間、足元が崩れるような感覚に襲われた。
立てない。
足首からさきが、ぐねんぐねんする
なんで、なんで
しかも、おやゆびのうごきがにぶい
というか…うごかない
おそろしいかんがえが、あたまにうかぶ。
ハルネアのほうをみれば、あいつは、うれしそうにいう。
「あっ、そういえばアキレス腱と親指の神経を切ったんでしたねぇ!!!大事な商品を逃がして罰がないと思ったんですかぁ?!?!そんな道理どこにもありませんよォ!!!」
嬉しそうな顔が、癪に障る。
悔しくて、涙が溢れた。
だが、次の一言で俺は、この絶望はまだ序の口のものであると知ることになる。
「ま、罰はまだ終わってないんですが」
おい、運んでおけ、というハルネアの指示で男が部屋に入ってくる。
うごかない足に呆然としながら、俺は、これから来るであろう、『罰』について考えるしか無かった。
喘ぎに♡を付けるか
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必要(もっと乱れてるところが見たい)
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不必要(雰囲気が崩れるからダメ)