ホシノ×クロコ×シロコのアビドス加湿作戦 作:亡霊の文章置き場
それはまるで、水中をもがくように。
夢の感覚はおぼつかない。思い通りに動かない身体はゆっくりとしか走れなくて、息が詰まって声が出せない。ヒレもないのに泳ごうとして、エラもないのに呼吸をしようとしてるせいで。だから、そうして絡め取られて。
『ホシノちゃん、』
ああでも、あのひとって意外と馬鹿力だったような気もするな。もちろん運動神経に関しては比べるまでもなかったし、こんな風に押さえつけられたって抜け出せないなんてことはないんだけど……そう、だからこれは夢なんだと実感する。ホシノちゃん、と熱にふやけた誘う声も、欲の滲む瞳も、向けられた覚えはないもの。
ユメ先輩がおぼつかない手つきで私の胸元を探って、じっと表情を見つめながら笑ってる。私はただ夢の筋書きに身を委ねるだけで、きっと見た目では初々しく反応しているんだろうけど、しょせんは夢の中のこと。まるでヘイローの上から自分を見下ろしているみたいに感覚は分離してる。だってそれは、自分の心の隅に追いやった願望でしかないと知っているから。ホシノちゃん、かわいいね、好きだよ───全部鬱陶しがって受け止めもしなかった言葉だ。ユメ先輩が本当はどういう表情でそう言ってたのかも、その時、確かに目を合わせてたっていうのに思い出せすらしない。破片を貼り合わせれば形だけでも元に戻るポスターと違って、握り潰してしまった砂の像は指の隙間から溢れていくばかりだ。
ユメ先輩の手がスカートの内側に入り込んで、私の輪郭を押し込んで、内側に触れる。心の内側まで触れられそうで、強張る。胸が苦しくなって息が溢れる。……ユメ先輩と目が合った。悲しそうな目と。
『ごめんね、ホシノちゃん』
窓から差し込む日差しに目が眩む。
天井でシールがきらきらと光を反射してる。だるい身体に、じっとりとまとわりつく感覚。……不快感。ぬるく湿った感触と腰の重さに、眉をひそめる。指を下着の中へ忍ばせると、べたつく。
「うわっ……」
じんじんと火照りの残る身体。横たえたままで時計を見る。あまり時間に余裕はないけど、それでも。指を食い込ませて、快感に震えて。
「あ、っ」
背を丸める。指先でちゅぷちゅぷと濡れた感触が跳ね回る。はあはあと荒く息をする。膨らんだ水風船みたいなふわふわとした快感はすぐに弾けてしまいそうで。……写真立ての中のユメ先輩と目が合って、私はみっともなく声をあげて、達する。
ざあざあとシャワーが洗い流してくれる。
微妙な時間の睡眠と、起き抜けの自慰行為と……身体に残る微妙な疲労感を、お湯の温かさで誤魔化す。きゅっ、と勢いを調整する金属部が擦れて不快な音を立てる。曇る鏡を見つめる。瞼の重さに耐えかねてるその顔は、映り込んだ箇所だけでは伸ばした後ろ髪がよく見えない。息を吐く。
「…………最悪」
†
「やっほ〜、精が出るねぇ『シロコちゃん』」
「! ホシノ先輩……!」
黒のドレスをはためかせて、シロコちゃんは振り返る。声を聞いた途端、耳をぴんと伸ばして。寂しげな顔つきにそんな気
持ちが芽生えてくれたのなら、触れ合った甲斐があったというもの。……悲しそうな瞳で、私たちから逃げたがっていた彼女よりは、よほどいい。けれど私が目を細めたのに気付いてか、目を泳がせて、気恥ずかしそうに表情は引っ込んでいった。
「そんな恥ずかしがらなくたっていいのに」
「……ホシノ先輩が、あんまり甘やかすから」
「そりゃあねえ、君もかわいい後輩だもの」
むくれた感じのほっぺたに、ちょうど良いくらいの温度になってきたHOTの缶を触れさせる。「染みるよ〜」と言ってあげたら戸惑いながら受け取って。それから首を傾げた。
「……かに雑炊?」
「そ。珍しいでしょ」
「うん……ふふ、ホシノ先輩らしいね」
シロコちゃんが、綻んで笑う。
「で、どーなの最近はさ」
「……この前、セリカのバイト手伝ったりしてた」
「ああー、言ってたねえ。教えてあげるはずがシロコちゃん結構手慣れててびっくりしたとか」
「それは……元の世界で同じことをした経験があるっていうだけだから」
「いいと思うよ〜? セリカちゃんは助かっちゃったって言ってたし。ま、あっちのシロコちゃんが自分も先輩だから頼りになるって張り切っちゃって一日中引っ付いちゃってたけど」
「ふふっ……それは、気持ちはわかるかも」
「そういえば、シロコちゃん同士は本物の姉妹みたいに仲良いよねぇ」
シロコちゃんの表情が一瞬強張って、あれ、触れるとこじゃなかったかなと迷ったけれど、その表情はすぐに困ったような柔らかい笑みに変わった。
「……最初は、私が邪魔になるかと思ってだんだけど、全然。私が気にする暇もないくらい、構ってくれるから」
「ま、シロコちゃんだからね〜。後輩が出来たとか姉妹が出来たとか、そういうのがまず嬉しいでしょ」
「うん。…………そうだよね」
シロコちゃんがカニ雑炊の缶を見下ろす視線の寂しさに、思わず擦り寄って、寄り添った。
「普段はどんな話してるのさ、お二人さん」
「……いろいろ。皆の近況とか、ホシノ先輩のこととか」
「うへ〜女子高生に噂されちゃうなんてモテモテだあ」
「無茶してないかどうか、とかだけど」
「……もしかして最近あっちのシロコちゃんがやけに距離近いのって、夜更かししてるのがバレてるから?」
「ん、それは私からしても反省してほしいところ」
「うへ〜、そりゃあ多少は気をつけるけどもねえ。おじさんの生き甲斐だからねえ」
「うん……分かってる。ホシノ先輩のそういうところが好きなんだし。でも、そのせいでいなくなってほしくはないから」
だから、とシロコちゃんは手を握ってくる。
どこにも行かないで、置いていかないで、どうせなら連れて行って。……なんていうか、切実で申し訳ないんだけども、でも、どこかそれにふさわしくない気もする自分もいる。
別に今の立場が苦しいわけでもない。……戻れない過去に何もかも捨ててまで戻りたいっていうわけじゃない。でも、ただ、名残惜しく思われるたびに、私は私を再生産しているようなつもりになるというか……いいや、昔の私みたいな無愛想で恩知らずな後輩なんて居ないのだけど、いい先輩みたいな扱いをされるとどうしても比較してしまう。
「私はそんな、立派な先輩じゃないよ」
なんて言ったって、分かるわけないのに。私の心の隅に追いやって、ひた隠しにしてるような背筋にへばりつく嫌悪感なんて、他人から見て分かるわけがない。自分でも他人に見せたくないと思ってるようなことを、それそのものは知らないままで、辛さだけ知って欲しいだなんて、そんなのは……都合のよすぎる話じゃないか?
だけど、シロコちゃんは首を横に振った。
「それでもいいよ」
「…………あー、いやねえ、今のは言葉の綾っていうかさ」
「ん、それもそれでいい。気の迷いでも、思い付きでも」
「めんどくさい先輩じゃないかなぁ、そういうの」
「大丈夫。……ホシノ先輩は元々、ちょっとめんどくさい」
「うっ、うへ……否定はしないけどもさ〜、シロコちゃんから見てもそんな感じだったかぁ」
「うん。でも、楽しかったから」
楽しい。……そう。結局のところ、私たちの学生生活は楽しいかどうか。本当に大事なのはそれだけで。返しようのない借金と、取り戻しようがない学園の栄華も、別にそれをどうこうできる手段が思いついてるわけじゃない。それでも、対策委員会なんて形式を保ったままなのは───それが、青春の形をしているから。温度のない理由や道理じゃなく、汗ばんで火照った人肌の感触があるから。平穏無事に、って考えたらそりゃあきっと、みんなどこかへ編入しちゃった方が手っ取り早いだろう。でもそうじゃない。そうしてしまったら、今の慌ただしい日々の合間の煌めきさえ失せてしまうから。
……一度失ってしまった彼女にとっても、アビドスでの日々がそうであったのなら、それは。選択肢のない彼女を誘った先の、私が意地を張って形を保っていた日々の青さは。
シロコちゃんを見つめる。本当に、本当に幸せそうに、口元を緩めて。ああ……そんなに恋しいくらいなら、彼女は果たして、どんなに。
「だから、ホシノ先輩は……私には甘えてくれていい」
「甘える、かぁ。正直複雑なんだけどね、君のこと思うと……私ばっかり、って思っちゃって」
「ん、それはお互い様」
「シロコちゃんが思うほど、私は背伸びしてるわけでもないよ?」
「でも、私はホシノ先輩が……最期の時までそういう風なままだったのを知ってるから、」
「情けないくらいでろでろに甘やかされちゃってると安心するわけかぁ、うぅん……うん、いやあ、まあ、おじさんとしてもそういう欲求が無いわけでは、」
視線が、無意識に下がって。シロコちゃんの開けた胸元の、たわわに育った膨らみの柔らかさがフラッシュバックする。連鎖的に思い出す。シロコちゃん二人と一線を超えたせいなのかどうなのか知らないけど、ユメ先輩との乾いた記憶にすら滲み始めた私の情欲。
「───ないんだけどもね」
「いいよ、先輩。……ホシノ先輩なら、いい」
誤魔化そうとしてもシロコちゃんは私の視線に気付いて、微笑む。触れ合った手が確かめられるように握られる。夜風に浸った、ひやりとしてしなやかな細い指。意識してしまって、ごく、と唾を飲む。
「っ、ごめん……ごめんねシロコちゃん、その、急に変なこと言うんだけどさ」
触れ合った指をなぞりながら言うと、シロコちゃんは不思議そうな顔をする。あどけない表情に胸がざわつく。こんな風に誘って、幻滅されやしないかな。
「……今は、シロコちゃんにめちゃくちゃにされたい気分なんだ」
†
キスで酸素の足りない身体がぐらついて、腰を撫でられると無意識のうちに体重を預けてしまう。唇が離れると、頬を撫でられる。頭がとろんと熱っぽくて重たくなる。……廃墟の窓から差し込む月光。瞳がぎらついてる。
「ホシノ先輩、」
ブラウスの上からぴたぴたと身体の輪郭を確かめるみたいにまさぐられる。くすぐったい。私の薄っぺらな身体なんていうのは、シロコちゃんの手を広げたら指の先がはみ出てしまいそうなくらいで。そのサイズの違いに、ささやかな不安と期待が膨らんで滲み出てしまう。熱になって、顔が赤らむ。
「……かわいい」
小型の草食獣にでもなった気分で。そう、シロコちゃんはその名の通りに白い狼のよう。私は首根っこを掴まれたような感覚で、それが……たとえば、普段であれば、かわいい後輩ちゃん達を守らなくちゃって名目があるし──少し前ならともかく、皆や先生が悲しむのを思うと受け入れられないものではある。だけど、そうなんだけど、今だけは、ここでだけは……そういう都合は抜きだから。首筋がぴりぴりする。物欲しさに身体が疼く。優しく私の形を確かめてる指を取って、襟の方へと誘う。
「シロコちゃん、その、別に……そんなにゆっくりじゃなくっていいから、」
「ホシノ先輩……もう、欲しいの?」
「……っ」
きゅっ、と咄嗟に内腿をすり寄せる。……切ない、っていうのはこういうことなんだろうか。私のブラウスの皺の影からちらつくシロコちゃんの指を意識すると、どきどきする。シロコちゃんが耳元に唇を寄せてくる。
「まだ、だめだよ」
おあずけの合図。なのに、それにすら期待してしまって。ゆっくりとタイをほどいて、ベルトを緩めていって。ボタンを外していく一つ一つの所作で擦れる布の感触すら心地よくて、息が漏れる。しなやかな指が、肌に触れて。
「んっ……」
インナーをたくし上げて、平べったい胴を這っていって。やや硬い先端の周りをなぞるように。はぁ、と濡れた吐息が溢れる。もっと先、もっと奥を触って欲しくてたまらない。シロコちゃんは私のそんな表情を見つめながら屈んで、その胸の先端に優しいキスをした。
「ん、んん……っ!」
唇だけで挟むようにして、優しい触れ方で。そうしながら、もう片方の胸の先も指の腹の凹凸で撫でるようにして。たまらない私はシロコちゃんの頭を抱きしめて、というか抱きつく。もどかしく唸りながら。柔らかい白い毛並みに愛しさを感じながら。
「シロコちゃん、も、むり……っ」
ぴたり、と優しい愛撫を止めて、シロコちゃんは唇を離す。つう、と濡れた乳首と舌先を、銀糸の端が繋いでいた。
「……ホシノ先輩?」
「ごめんね、もう我慢出来ないから、」
手、借りるね、って絶え絶えの息で吐いた言葉は音にならなくて。荒々しくスカートの下、下着を半端にずり下ろして、シロコちゃんの手を取る。戸惑うその表情と、見つめ合いながら。濡れた入り口に指を当てがって、ぐっ、と押し込んで、飲み込んだ。
「はぁ……っん、あ、っ」
指が内側に触れる快感に震えて、だらしなく弛緩した表情を晒して。シロコちゃんに、そんな風な私を見られてることが、たまらなくて。
「シロコちゃん、ゆび、もっと……っ」
自分から咥え込ませた指を、その手を抱きしめながら、ぐりぐりと腰を揺らして、いいところを擦って。
「今日のホシノ先輩、すごい」
「……幻滅、した?」
「ん、そんなことない。とっても……かわいい」
唇が触れる。しっとりとした舌遣いで、くすぐったい舌同士が絡んで。ぐっ、と指が奥の方へ進んで、腰が逃げそうになる。それを絡め取られて、捕まえられて。それが……きもちよくって。
「シロコちゃん、そこ、擦りながらクリトリスも触って……あ、そう、いい、もっといじめていいから、んぁ……っ!」
とろとろと溢れた雫が指をつたって、内腿を流れ落ちていく。シロコちゃんの指の形がはっきり分かるくらい私は締め付けて、食い付いて、離れなくて、離したくない。
「ホシノ先輩、」
荒い息で名前を呼ばれて、仰ぎ見れば、はだけたドレスから溢れた胸が顔面を包む。シロコちゃんの柔らかくって色素の薄い新雪のような胸は本当に心地よくて、私は、それに包まれながら。───ぱちぱちと弾ける意識と、甘い感覚。ぴんと伸ばした脚が痙攣して、下着を通り越していった雫が床に水溜まりを作っていった。はぁはぁと激しく息をすると、汗ばんだ匂いが胸いっぱいに広がって。白い思考が
またふつふつと湧き立っていく、はあ、はあと深く息を吐いた。絶頂の余韻に、じわじわとした脱力感。たまらず倒れ込んだ先に、柔らかな胸を感じて、また、きゅうきゅうと指を吸い込んでしまう。
「……すごい、ホシノ先輩、いきっぱなし」
「あう、うぅ……っ、だって指もおっぱいも気持ちいいんだも、んっ、あっ、だめ、シロコちゃ、」
ちゅぷちゅぷと自分の下半身から水気たっぷりの音が鳴って、それが恥ずかしいのと同時に、たまらなく気持ちいい。黒のドレスがしわくちゃになるくらい縋り付いて、ふうふうと息も絶え絶え。条件反射で溢れた涙が頬をつたう。……こんな、こんなにもみっともない姿。見られてる感覚に胸の中がざわざわと荒れる。シロコちゃんは、ぼんやりとした表情の中で少しだけ口角を上げて、頬を染めて。私をじっと見つめながら、指先を揺らして。
「ひゃ、あっ」
ぎゅっとその腕を掴むのは、止まってほしいのか、もっと欲しいのか。腰がふらふらして、足の力が抜けて。体重がかかってぐっと押し込まれる手の感触に、お腹がきゅっとするのがわかる。シロコちゃんが頬を優しく撫でる。顔を上げると唇を塞がれて、ぐりぐりと指がいいところをいじめてきて、快感に溺れる。視界が白くなって、ちかちかする。頭の上のあたりがふわふわする。きゅうきゅうとその綺麗な長い指に絡まって、垂れ落ちるどろどろとは違う、さらさらとした何かがとめどなく漏れ出ていく感覚が分かった。とまらなくて、とまってくれなくて、たまらない。シロコちゃんの手をそれで汚して、跳ね落ちた雫が水溜まりになっていった。
ふうはあと息継ぎをする。
キスの合間に見る月光だけが差し込む廃墟の景色は水中から見上げる水面に似てる。思考も視界もとろんとした私の身体をシロコちゃんは優しく撫でてくれて、それすらも快感の余韻の波が跳ねて、ふるふると身体が震える。頬と、首筋と、うなじと鎖骨と。シロコちゃんは私を抱きしめるようにキスを落として、私はされるがまま。時折、あ、とか、うう、とか声を漏らすだけ。そうしてから、柔らかく微笑んで、弱々しくしがみつく私の手を取って、誘う。柔らかくてさらさらの高級なシルクみたいな肌は汗ばんで、指の重みの分だけ食い込んでいく。シロコちゃんは自分から指を誘って、その薄桃色の先端へぐりぐりと押し付けて。
「ん……っ」
吐息混じりに、期待の目で私を見つめる。
「固くなってるねぇ」
「ん……」
「シロコちゃんも、欲しくなっちゃった?」
「うん……いい、ホシノ先輩?」
へにゃりと微笑んで促せば、ぬるりと擦れながら指が抜かれて。悲鳴みたいな細い喘ぎ混じりに身体が跳ねて……名残惜しさに、腰が疼く。
シロコちゃんの細く長い白い指は透明のどろどろとした液体で汚れていて、てらてらと光を反射してる。そんな風になるまで求めてしまったと思うと、恥ずかしくって耳まで熱くなる。
「見てて……ホシノ先輩、」
「え?」
シロコちゃんはうっとりと、恥じらい気味に表情を強張らせながら、濡れた指を自分のスカートの下に潜り込ませ、ショーツの内側。
「ん……っ、はぁ、」
指を飲み込んでいくのが布越しにわかる。シロコちゃんは受け入れた圧迫感に息を吐く。私の分の水気だけでは足りないくらいの水音がちゅぷちゅぷとと響いた。腿もきゅっと閉じて手を挟んで、快感に震えながら背を丸めるシロコちゃんに、歩み寄って、背伸びしてキスをする。ふらつく身体を支えながら、ぴんと主張する胸の先端をいじめて。ぎゅっ、と抱きついてくる身体が、何度か跳ねるのを感じた。
よしよし、と耳の付け根を撫でてあげたら、甘い声で「だめ、」と漏らしながらまた震えた。
「っ、ホシノ、先輩……っ」
「もう、脱いじゃおっか、全部」
「……ん、うん」
裸の薄い身体を、白いベッドの上に横たえる。黒いドレスを脱ぎ去ったシロコちゃんの肢体は、シャープな輪郭と、たぷんと柔らかなバストと、引き締まったお腹と綺麗な丸型のお尻から、すらりと脚が伸びていて。下腹のふわふわの銀の毛先から、朝露みたいな雫が滴って、落ちる。
覆い被さるように寄り添ってくる彼女の体重で、ベッドが軋む。緊張ぎみの手で私に触れようとするシロコちゃんを、薄い笑みで迎えて。私の片足を持ち上げて、シロコちゃんは濡れたところどうしを触れ合わせて、揺れる。ぬちぬちと、低い水音と浅い快感。けれど、お互いの敏感なところどうしでその形を確かめあってる。甘い感覚に身体を震わせながら、おそるおそる指を絡めあった。火照って濡れた身体どうしを重ねた。何度もいろんな方法でキスをした。シロコちゃんが疲れたら、私がリードして触れ合った。結局、お互いに指で奥を触れ合ったりして。
そうして重ねた優しいキスが、一番気持ちよかったりするんだ。
「……悩みごとはもう大丈夫、ホシノ先輩?」
ぐったりとした身体を寄せ合って、微笑むシロコちゃんに曖昧に笑って。……そりゃあ、気持ちは晴れたけどさ。かわいい後輩とこうやって発散するのは健全かっていうと、どうだろ? 少なくとも先生とかに言えるような話じゃないしな。ただ、そんなこと突っ込んだところで、誰かが報われるわけでもない。何か言いたげなシロコちゃんの頭を、ぽんぽんと撫でて、薄い胸に抱き締めて誤魔化す。ユメ先輩がいつかの日にそうしてくれたように。
「べつに、元々大した悩みごとでもなんでもないよ」
†
既視感。
水の中を揺蕩うような感覚。それは少し前に見たのと同じ景色であり、遠い昔の砂に埋もれた記憶でもある。
絡まった手を最初に認めて、見上げれば薄緑色の髪をたなびかせた先輩が、熱に浮かされた表情を浮かべてる。首を軽く振ると、後ろ髪が軽い。……まったく、私もなんていうか。未練がましいというか。シロコちゃんに抱いてもらって発散したのにまたこうなるっていうことは、原因は私の心残りの方だろう。
物は試しに、と指に力を込めてみる。そうすれば意外なことに感覚ははっきりとして、私に握り返されたことに、ユメ先輩は驚いて目を丸くする。……明晰夢っていうんだっけ、こういうの。なら、だったらいっそ都合がいいや。
『えっ……ホシノちゃん?』
『我慢してるのが自分だけ、って思ってたわけじゃないですよね。ユメ先輩』
屈み気味の肩を抱き寄せて、強引にキスをする。先輩は年上風を吹かせてるくせ、こうしたらむぐむぐとへたくそな抵抗をして、そのくせふにゃふにゃに力が抜けて、身体を委ねてくる。……そんなだから。
『脱がせますよ』
『へっ!? うへへ、そ、そうだね? ホシノちゃんおっぱい好きだもんね……?』
『おっぱいが好きというか……元はと言えば、先輩のせいで意識するようになったんですけど』
『そ、そうなんだ』
『…………』
『む、無言にならないで、ホシノちゃん〜』
ベルトを緩めて、ブラウスのボタンを外していけば、締め付けられていた弾力が解放されて、重量感のあるおっぱいがブラから飛び出さんばかりに揺れる。フロントホックを外せば、それはもう荒々しく。…………なるほど。あのシロコちゃんのおっぱいも中々だけど張りというか重さというか方向性が全然違うんだなぁ。それを思うとうちのシロコちゃんの育ちかけおっぱいも筋肉の硬さとのギャップが中々だし、いや……それにしてもしかし……。
『でかっ……いやほんとデカいですね先輩』
『ううっ、もうちょっとロマンチックな感じのこと言ってほしいかな……』
先輩の泣き言を流しながら、手のひらにかかる重みを確かめて、張りのある弾力に溢れた感触を確かめて。それから。優しく、指の溝を微かに擦り寄せるように触れさせていく。じわりじわりと。だんだんと、先輩のふざけ気味の態度の合間に、湿った吐息が溢れ始めるように。だんだんと溢れそうになるそれを、先輩は口元を袖で抑えて隠そうとして。だから、舌を這わせて、表面のざらざらだけを触れさせたりして。ひゃあっ、と初々しい悲鳴が跳ねて、恨めしそうな目が見下ろしてくる。
『っ、ホシノちゃん』
『……欲しくなりました?』
『欲しい、って……?』
とんとん、と、お腹を外側から優しくノックしてあげると、戸惑うような顔をして。
『ここ、触ってほしいんじゃないですか』
指でこのあたりかな、って地点をなぞって。ユメ先輩はぼんやりした顔で、ふわふわした思考で怯えながら、ゆっくりと首を縦に振る。
じわりじわりと、スカートの下、手を這わせていって。明らかに強張ってる内腿を掠めながら、ショーツ越しのそれに触れる、しっとりと、水気を含んだ感触。
『もう濡れてるじゃないですか』
『濡れ、え……?』
苛立ち混じりのため息は、ユメ先輩の無知さ加減でなく、私の気持ちの先走りのせいで。けれどそれを止めることもできずに、ショーツの内側へと指を滑り込ませる。ぬるりとした感触が指に絡む。先輩の粘膜の形を確かめながら撫でていけば、にちにちと指先で溢れる感触。新しいところに触れるたび、先輩は『えっ』とか『ひゃっ』とか言って、私に抱きついてきて。頃合いを見て、指を押し込もうとして。……入り口に差し掛かったあたりで、苦しげな先輩の表情に気付く。
『……ユメ先輩、』
その頬を撫でてあげると、大人しく身を委ねてくるから、唇を塞ぐ。和らいだ合間に指をゆっくりと、ゆっくりと進めていく。指一本だっていうのに、押し潰されそうな圧迫感。
『んっ……ほら、入りましたよ』
『え、あっ……ほ、ホシノちゃんの指、入ってる……?』
『はい。……すごいですね、潰れそうなくらい締め付けてきて。あ、今きゅっとなりました』
『やっ、そ、そんな言わないで……っ』
『……ここ、いいんじゃないですか』
本当に軽く指を曲げてあげれば、あっ、と裏返った濁り気味の喘ぎ声が上がって。ホシノちゃん、と舌足らずの声が私を静止しようとする。だけどやめてあげない。ここはどうせ、私の夢の世界なんだし。くにくにと先輩のいいところを責めながら、腰が抜けて寄りかかってくる身体を抱き止めて、またキスをする。快感に戸惑いながら震えるその身体を優しく撫でてあげる。……これじゃあ、どっちが先輩なんだか。
私に抱きつきながら余韻の中で荒く息をする先輩の手を解いて、寝転がせて。どこか不安そうな、寂しそうな、切なそうな顔に笑いかける。ああ、この人は私の笑顔なんて見たことないかな。
『……ホシノちゃん、今、』
『安心してください、ユメ先輩。まだ終わりじゃありませんから』
上着のベストを脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを荒々しく外す。スカートを緩めて、ばさりとその場に落として、そうして。
『私の方も、ちゃんと満足させてください』
裸の身体で跨って、先輩の手を取って、あてがう。快感に目を細めて、戸惑う先輩の口を塞ぎながら、腰を揺らした。
「…………うわぁ」
我ながらドン引き。なんていうか、夢の世界だとやっぱり本能が勝つのか、どうなのか……。天井のシールが視界に入って冷静になった後、どろりと溶けたみたいに重い下半身で性の乱れ具合を自覚する。いやまあ、ユメ先輩をエロい目で見てたのは確かなんだし、そこを我慢し続けたらストレスになるだろうっていうのはあるんだけど……。
よっこいしょ、と声に出しながら身体を起こせば、写真立ての笑顔の先輩と目が合う。
「どうせなら、夢じゃなく化けて出てきてくださいよ」
なんて、悪態にもならないことを言ったりして。でも、仮に化けて出てきたとしたらどうだろう。私の爛れた性事情を叱ってくれるだろうか。さっきの夢の感じを思うと、ノリで押し切ってしまいそうな気もするけど……何にしたって、夢は夢。現実に関しては現実でなんとかするしかない。と、ふと思い至って、携帯端末を手繰る。連絡先からシロコちゃんを探して、通話。2コール目で繋がる。
「あー、ごめんね朝早くから。ふうん、へえ、シャワー? うへへ〜おじさんも今から浴びようと思ってたとこ。……んー、今度、シロコちゃんが良ければなんだけどさ。三人で行かない? ツーリング。そうそう、あっちのシロコちゃんも誘ってさ。……あはは、そこはお手柔らかにお願いしたいかなぁ。おじさんもう年だしさ〜、え? …………セクハラだよ〜シロコちゃん。うん、こっちで声かけとくからさ。また連絡するね」