まだまだ道は長い
「はぁっ、はっ……んっ……」
しがみつくようにして肩へと回されたリーニエちゃんの手に強く力が入っていた。それが肉欲によって引き起こされた昂りなのか、はたまたただの気まぐれなのか、あてがわれた穴から絶え間無く伝えられる生暖かい刺激に、思わず身体が震えた。
狭く、滑った膣肉を押し広げるようにして進められれば、熱を持った愛液がソレを馴染ませるかのように取り囲んでくる。
ぐちゃぐちゃと後先考えずに押し付け、そして生のままで粘膜同士が触れ合って起きる音が、どうしようもない位に淫靡な音を奏でていて、興奮のあまりすぐにイってしまいそうだった。
「……あぁ、くっ……んぁっ」
いわゆる生殖の手段としてはやはり人間も魔族も同じなのだろう、しかしリーニエちゃんはまだあまり慣れてはいないようで、拙いままに腰を激しく打ち付けてかき乱してきた。お互いの事を何も考えず、ただただ欲望に従ったままに行動している。
今までに娼館でお世話になった嬢達の中には男の自尊心を満たすためというべきか、こちらの絶頂に合わせて調整してくれる子達も少なからず居た。その道に長けているからこそ分かるというのだろうか。中には少し演技っぽい子も居たけれども、終わった後の満足度も良いのでよくお相手して貰っていた覚えがある。高望みだとは思っているが、やはり相手と一緒に満足できたという事実は、男にとってこの上無いくらい幸福な事なのだ。
「はぁ、ぁあっ、んっ、やぁっ……」
しかしリーニエちゃんは、そんな子達は全く違う。
何というか、ただ本能のままに貪られている気がする。
相手のペースなんて何にも考えていない、ただ自分が気持ち良くなる為だけのセックス。それを思うがままに押し付けられている感じがした。そこには愛とか、相手を慕う感情は欠片も存在していない。
きっと、おそらく。
嘘偽り無い程にこの子は、俺の事を気持ち良くなれる棒が付いてるだけのなんかとしか思っていないのだ。
なんて悪い子なんだろう。
正直、最高だ。
「リーニエちゃん気持ち良い? 我慢できなくなっちゃったんだね」
「……あぁっ、んぁっ、……うるさ、ぃっ……っぁ、んっ……」
そんな事を言ってみれば、まさに図星というくらいに面白い反応を返してくれた。
リーニエちゃんは気が付いていないかもしれないが、モノを受け入れる際に彼女の口角は上がっていた。それはもう待っていましたとばかりに、嬉しそうに。リーニエちゃんにとってあの日の出来事は、とても真新しい体験だったに違いない。
魔族に限らず寿命が長い種族は、生殖意欲が他の種族や生物と比べて少なくなるようになっていると聞く。例えば何千年も生きるエルフとか、それに続く魔族やドワーフなどがあたる。機会が長ければ大繁殖してそうなものだが、そうなっていないのは種としての宿命なのだろうか。人間なんか、いつも使命感なしに機会が有れば発情してるというのに。
魔族であるリーニエちゃんも、またそれに倣って生殖意欲なんてまだ無かったに違いない。
でも、あの日。
彼女はソレを知ってしまったのかもしれない。
「色々やってるうちに昂ぶっちゃって。あの日のこと、思い出しちゃったのかな。それで欲しくなった、って」
「ちがっ……ぁっ、やぁっ……んぁっ……!」
そして忘れられずに、沼に引きずり込まれてしまったのだろう。
言葉では否定していても、身体が受け入れていた。
否定しつつも、ただ本能のままに腰を揺り動かしている。俺の方からは少しも動かしていないので、リーニエちゃんが攻めているだけだ。
魔族には人間が備え持つ感情である――いわゆる社会性が欠落していると言われている。個人主義というか社会を運営する為の良識が無い故に、社会的に人と関われば当たり前のように軋轢生じるし、そこに血が流れる事は避けられない。
でもそれ以外の、他の部分は一緒なのだ。
「自分で動かしちゃってるよ、我慢できなかったんだね」
「そんなっ、ぁっ……ことは……っ!」
美味しいものを食べれば美味しいと言うし、楽しい事をすれば楽しいとも言う。
もちろん、気持ちいい事をすればそれに続く感情を覚えるだろう。
それなのに人間と共存できないのは、ただ社会性を保つだけの道徳が無いだけなのだ。仕方のない事である。
まあ、それが致命的なのだけれども。
少なくとも、気持ちいい事をするにあたってそんなモノは必要ない。もちろん、こちらもだ。
「俺も気持ち良いよ。魔族の女の子とこんな事しちゃって、もう背徳感で辛抱堪らないよ。もしこれが他にバレたら、嫉妬で殺されちゃうかもしれないね」
人間の宿敵である魔族とこうして交わりあっているのだ、もしこれが原因で新たな魔族が増えようものならそれこそまさに大罪人として扱われるだろうが、そんなのは快楽に比べれば塵にも等しかった。
「ぁっ、……お前、なんかっ……死んで、っ……しまえ……っ」
リーニエちゃんはそんな事を言いながらも、腰を動かすのをやめなかった。
膣のひだがぬたりとした粘膜を纏いながら陰茎を甚振ってくる。全く予測が付かないほどに緩急を付けて攻められるので、快感を全て受け入れてしまっていた。次に与えられる締め付けや掻き起される快感が分かっているのならば身構えようもあるのだが、しかしそれは叶わない。
ぐちゃりと、そのまま溶けてしまいそうな至上の快楽を直に伝えられる。
「顔、もうぐちゃぐちゃになってるよ。そんなに気持ち良かったんだ」
「はぁっ、っ……――っ」
先程からこちらの情感を更に高める要因となっていた事をそのまま伝えれば、リーニエちゃんは返答に詰まった。どうやら素で気が付いていなかったらしい。
彼女は今、向かい合って座った状態で行為に及んでいる。
かなり密着度の高い体位な事と座高によって体格差が埋まる事で、目の前では快感に歪んだ表情を面白いまでに歪ませるリーニエちゃんを拝む事ができた。熱い吐息がそのままかかってしまうくらいに近い距離でそんな顔されたら、思わず理性が全て飛んでしまうような錯覚を覚えてしまう。
「……くっ、……ゃぁっ、ぁっ……」
「隠そうとしてもバレバレだよ」
それを聞いたリーニエちゃんは、その面持ちを隠そうといつも通りの澄ました顔を作ろうとするが――しかし続きを物欲しげにねだるゆらゆらと揺れる瞳が、依然として抑えきれていない甘い音色の嬌声が、それを偽る事を許さない。
年頃の乙女がまるで禁断の果実に触れてしまったかのような、少女の可憐さと妖艶さを奇妙な具合に混ぜ合わせたそんなアンバランスな様子は、オスの性衝動を過敏に誘発させてしまいそうなくらいの恐ろしさを含んでいた。
「やぁっ……見る、っ……なぁ……ぁっ……!」
そう言うと、どうしてかリーニエちゃんが擦り寄るようにしてそのまま抱き着いてきた。女体特有の柔らかさが胸板にぎゅっと伝わってきて、とてもいい感じにくにゃりと押しつぶされている。
手を他へやっている以上、顔を直接どうかする事はできない。そう認識したのだろうか、俺の肩の上に頭を置いて隠してしまった。
「あぁっ……これでっ、……っ、ぁっ……!」
背中に手を回されて思いきり抱きつかれる。そしてそのまま避ける事もできずに、快楽のままに腰を振られた。その度に回された手に力が入って、より強く密着してくる。
ここまでがむしゃらに求められたのは初めてだった。まるで将来を添い遂げると心に決めた恋人と行為に及んでいるかのように、心の底から蕩ける程の幸福感を感じてしまう。
彼女はただ気持ちよくなっているだけなのに、その一挙手一投足全てが愛おしく見えて堪らない。
「あっ、やぁっ……ぁっ、ぁあっ……っ」
拙いながらも己の欲求を満たすためだけに腰を動かす貪欲さと、耳元で囁かれる事によってかえって凶悪性を増した弾むような彼女の嬌声。それを認識する度に身体が震え、頭が真っ白になってしまって、全てがどうでも良くなってしまう程の快楽を引きおこす。
上と下、その全てを余す事無く使われながら奉仕されているという事実に、抑えきれないほどの射精欲が込みあがってきた。
この上ない至福の時をまだ味わいたい。そんな気持ちであったが、限界だった。
「ぐっ、もうだめだ……」
「ぁっ……はぁっ――っえ?」
「もう、中で出すぞ……っ!」
快感に喘ぐ声を止め、少し困惑した様な声を出しているのも気にせず。
上下に振動して締め付けてくる膣の、最奥の位置へと突き入れて留めると。
その瞬間を待っていたといわんばかりに膨らみ、途端に思考が爆ぜた。
――――――どくっ、どくっ、どくっ、どくっ……どく、どく……とく……
膣内にぶちまけれる精液の音なんて聞こえる筈も無かったが、出し込む度に脳髄が揺れ、実際に耳にしている様な感覚になってしまっていた。
種としての身体の作りが似通っている以上その可能性も有り得るのに、ろくな避妊もせずに生中出し。またがられて身動きを封じられているので、出すなというのも難しい話だが回避しようとする行動すらも取らなかった。それどころか、より深くより近くに流し込むようにして突き入れる始末。
ただ欲して焦がれた膣内へと再び精を注入した事実を認識してか大いに増したソレは、考えられないほど長く、そして大量の白濁液を発射していた。
女体の構造上、中出ししたとしても陰茎を更に上下させなければ精液が溢れてくる事は少ないが、今は何もしなくても溢れてきそうな――そんな感じがした。
そんななか、当の本人であるリーニエちゃんはというと――
「――――――――――は?」
怒っていた。
「はぁっ……っ……もう……っ、終わりかよ。まだっ、して……ないん、だけど……っ」
息を切らしながらも、しかしまだ全く満足していない様子でこちらへと不平を言うリーニエちゃん。
どうやら俺は彼女をイかせる事に失敗して、先に射精してしまったらしい。
「いや……先にイかせるなんて、めちゃくちゃ難しいって」
「使えない、ぁっ……やつ、だなっ……死ねよっ……」
こんな可愛い子が己の欲望のままに腰を振り乱しながら善がっているのだ、こんな至福の状況に耐えられる男がいるものかと声をあげようとする。
しかしそんな言い訳も聞いてくれず、一度は精液を受け入れる為に止めた腰を、お構いなしにまた動かし始めた。
射精直後の陰茎をしごかれればどうなるか。結果は、男ならば誰でも知っている。
「ちょっ、出したばっかりだから……もう少し、ゆっくり……」
「まだ硬い、からっ……ぁっ、だいじょうぶ……っ、はっ、だろ……っ」
しかしまだ元気が有るからという理由だけで、リーニエちゃんはまた動かし始めてしまった。
確かに萎える要素は一つも無い。見目麗しい極上の女を相手にして抱いているので余裕は有るし、自分でもまだまだし足りないと思っていた。後、繋がりながら罵倒されてるのにも結構興奮する。
生中出しという人間同士ならば新たな生命を生み出すに等しい行為を行っている最中なのに、それに関わらず死ねと言われているのだ、意味が分からなくてとても興奮する。
言われなくても連戦はするつもりだったが――しかし、抜かずにニ連戦とは聞いていない。
「……はぁっ、ぅぁっ……ぁあっ……!」
だがそんな抗議の声も聞かずに無視し、腰を振り乱される。さっき出した精液がさらなる潤滑油となって互いの性器の中でぐちゃぐちゃと心地良い音を立てていて、それだけで元気を取り戻してしまっていた。
むくむくと、射精寸前のモノと同じくらいの太さを保ったまま、膣肉によってもたらされる柔らかな攻めの全てを享受しようと、固くキツく張っている。
「やぁっ……ぁっ、ぁあっ……っ」
一度動かれれば膣の中に無数に存在するひだにカリが引っかかり、同時に締め付けるような圧力と共に側面が撫で上げられる。そんな耐え難い快楽が、ひっきりなしに続けられるのだ。いくら精を出した直後だといっても、敏感なうえにこうも攻められ続ければすぐに限界は来てしまう。
リーニエちゃんの攻めは、まさに自分の事しか考えていないもの。当然こちらの状況なんてどうでも良いだろうし、また出そうになっても止めはしないだろう。
二度目の膣内射精だって、構わずに受け入れてくれる。そんな事実にどうしようもなく興奮して、さらに射精欲は高まっていった。
このままいけば、為す術なくまたイかされてしまう。
そんな感じがした俺は、なんとかしようと身体の自由な部分を使って抵抗する事にした。
「――――んんっ?!」
開いた口から覗く魅惑的な色をした舌を、隙を見て無理やり絡め取った。
崩れた情けない顔を隠すために一度こちらへと抱き着いてきたリーニエちゃんだったが、射精されてからは少し余裕ができたのか前と同じように肩に手を当て、台座にまたがってバランスを取りながら行為を楽しんでいた。
つまり、こちらから攻め放題である。
「――――んっ、……ぷはっ、れろっ……っ、はぁっ……!」
そして開いている手を動かす事も忘れない。
間に割り込むようにして擦り入れた手を、形の良い胸の上に被せる。
ピンとはったモノが手のひらに触れる感触がしたら、容赦無く揉みしだき始める事にした。
「……ぁっ、れろ……っ、ぁっ……ぁっ――……っ」
男にこうも胸を揉まれた事に耐性が無いのだろう。揉む度に息があがり、絡め取っている舌が面白いくらいに跳ね、くぐもったような声が外へ逃れようと溢れ出てくる。指と指の間で摘まむようにして擦れば、さらに吐息は激しくなった。間違いなく、効いている。
しかし、当然の事ながらこれは自爆技である。
こんな痴態を披露されていたら間違いなくやってる側も興奮するし、どうにかして腟内に欲望の象徴をぶちまけたいという思いも強くなってしまう。
脳内が快楽物質で占められれば、もうそれで終わりだ。
ただ、目の前にある身体を堪能する事しか考えられなくなる。
それが、当然の帰結だった。
「……はぁっ、……っ、ぁっ……ぁっ――!」
やがてリーニエちゃんは、自分の身体を前のめりにして再度抱き着いてきた。
それと同時に、地に付けていた両足をこちらに絡み付けるようにして後ろへ回してくる。おそらくもう、限界が近いのだろう。こうなったらもうこれを外さない限り、中に出す以外の選択肢は無くなってしまう。
肉体的にも、精神的にも、それ以外を選べる気はしなかった。
「……あぁっ、……っ、っ、……ぁっ!」
ずっと耐え続けていたが、もうダメだった。
快楽の波を自分で制御したいという思いに取りつかれた俺は、リーニエちゃんと合わせるようにして腰を動かし、子宮口を突き上げた。上手くいかなければ陰茎が抜けてしまいそうな行為だったが、なぜか波長は合っていた。まるで連動しているかの様に動き、収縮して、何か別の生き物かのように妖しく鳴動している。
とどめと言わんばかりの締め付けを最後に、脳内の思考はまっさらになって弾け飛んだ。
「……っ、……ぁっ、――――――――――っッッ!!!」
愛おしい程の痙攣と共に、彼女は絶頂すると。
お前も道連れとばかりに極上の締め付けを与えられ、なすすべも無く大量の精を吐き出していた。
◇
「はぁっ、はぁっ……」
息も絶え絶えといった感じで絶頂後の余韻を楽しんでいるリーニエちゃん。力無げにこちらへ枝垂れかかっている。しばらくは起き上がれないほどの快楽を受けた人間である俺も、もうまともに居られるきはしなかった。
どっちの体液か分からないほどにぐちゃぐちゃになってしまっているが、それを拭う気すらも起きない。ただ、時間が経つのに身を任せたい気分のままだった。
言葉にならない声をあげている彼女に上手いピロートークを渡せる筈もなく。
なんとなくで気を紛らわせるためにちらりと彼方を眺めようとすれば、肩に若干の違和感を覚えた。
よく見てみれば、右肩に赤いなにかが一つ。
「……おお、痕が付いてる……」
おそらくそれは絶頂寸前、快楽の波に流されないようリーニエちゃんが無意識のままに付けたのだろう。
肩には軽く噛み跡が付けられていた。
ほっとけば数日も経たずに治りそうなものではあるし、痛みも特に無い。
そんな事を声に出してみれば、リーニエちゃんも反応した。
「――――――は? 傷……? あれだけやっても効かなかったのに、なんでこれだけ――いや、魔力の流れもおかしい……」
すると何やら一人でぶつぶつと考え込み始めてしまった。
よく分からないが、まだ向かい合いながら挿入し続けている途中である。
そのまま考え続けるのは、色々と精神に悪いのでやめてほしい。
「――あ、もう朝だ」
心の中に眠る情欲を動かして気の向くままにもう一回戦するのも良いかもしれないと思っていると、辺りに光が差し込んできた。
暗い夜が終わり始めていたのだ。
名残り惜しいが、もう時間だろう。
街から少し遠回りした場所だとはいえ、道は一応近くに有る。誰かにこんな逢瀬を見られたら、俺はもう人間社会では生きていられないかもしれない。
「――――――」
そんな思考を読み取ったのか、リーニエちゃんは何も言わずにずっと突き刺さっていた俺のモノを引き抜いた。
途端、低い音と共に入りきらなかった精液が外へと溢れ出してくる。
彼女は極めて無表情で――いや、ジト目でこちらを見つめていた。
何が言いたいか、すぐに分かった。
「いや、ごめん。流石に出しすぎた」
「…………」