エロ創作でよくある、都合の良い魔力設定を採用しました
住み慣れた土地というのは、どうにも愛着を感じてしまうものだ。
街離れた郊外に建つ自宅――農家をやるにあたってはその場所しか無かったのだが――は、今年で築10年を過ぎる。
冒険者になりたい!
……みたいな今となっては恥ずかしい世迷い言、それを宣して旅立ってからずっとお世話になってきた場所だ。なのでとても見慣れたものではあるし、実家のような安心感とでも言おうか、ここでないと中々気も休まらない。
間取りは一人暮らしなのでワンルームと生活設備だけ……というわけでは無く、結構な大きさの部屋がもう一つ付けてある。用途はまあ、ただの倉庫である。農家故に収穫時期は結構な量を置いておかねばならず、どうしても必要だったというわけだ。本来ならば相場はそれほど高くは無かったのだが、このオプションを付けただけで相当に値段は上がってしまっている。足元見られてんなあ、とその時はしみじみ思い入ったものである。
夜道を歩き、農園へと着いた。
数日開けていたが、ここは特に変わってはいない。備え付けの魔導具も特に何の反応も無かったので、荒らされてはいなかった。この魔導具はちょっと値が張るのだが、持ち主不在でも自動的に作物を守ってくれる優れものである。
一般的な野生動物からちょっと強い魔物まで、ある程度ならば撃退してくれるのだ。この辺に生息している魔物が弱いのもあるが、今まで突破された回数はなんとゼロ。まさに最高の防衛機関なのである。
これが有るからこそ、俺はこの平穏を享受できていると言っても過言では無い。
そんな守られたものを、しかし何か異変が無いか見回ってから。
愛すべき自宅に、俺は帰ってきた。
白雨にしばしの間晒されたのか少し重くなった戸を開けると、懐かしい感じが漂ってくる。
がらんとした部屋の中には、簡素なテーブルと少し最近ガタが来ているベッド、そしてその他諸々の家具。いつも通りの我が家がそこには有った。
さて、今はまだ月も天上に上がりきらない頃。
いつもなら街から買ってきた適当なものを肴に夜通し晩酌へと洒落込む時間帯なのだが、最近色々有って生活の周期がずれ始めている頃でも有る。明日の事も考えて、そろそろ床に就くのが良いだろう。
というか、とても眠かった。
「――……ん?」
そんな事を思った途端。家の中に何かの気配が居るような気がした。もちろん、俺以外の誰かである。住み慣れた空間だからこそ気付いた、微かな違和感。倉庫のほうか、天井裏か、はたまた床下か。よく分からないが、何か居る気はする。
「……いいか」
だけど、面倒くさかったので確認する気はおきなかった。
畑に置いてある魔導具は、家の周りを守る役目もある程度は果たしている。どうせどこからか湧いてきたネズミか何かだろう。それならば、放っておけばすぐにどっかに行くに違いない。
「もう寝るか……」
本当はまあ、身支度とか色々有ったけれども。
部屋中に潜む微睡んだ眠りの空気に耐えられず、俺はさっさと眠ることにした。
◇
俺はその時、夢を見ていた。
夢には自分が抱えている不安やこうなりたいといった期待、特に深層心理に近い願望が表れると聞く。どんなものであれ、やはりそれに近い思いや感情が出来事となってお出迎えしてくれるのだ。
そんなわけで、夢の内容は……まあ、うん。
エロい事しか考えていなかったからか、そんな感じの夢だった。
誰かも分からない女の子が、夢の中で寄り添っていてくれて。そしていつの間にか、俺はふわふわとした空間で寝転んでいた。するとその女の子は何も言わず、こちらの下の方の衣服を器用に取り去ると、嫋やかな動きをもって優しくソレを手で扱き始めた。
予想もしていなかった方向から来た感触と、女の子の体温に思わず震えてしまう。
迫りくる快感に身体を動かしてしまいそうになるが、夢だからか思い通りには行かなかった。
そんな自由が効かない俺に対して女の子は、扱いているその音をわざとらしく聞かせてくる。ねちょねちょと液体が絡まってできる摩擦の音を、存分に、愉しそうに奏でている。感触だけでは無く聴覚をも通して行われる責めに、俺は至上の幸福感を覚えてしまっていた。
思わず夢から覚めてしまいそうな。
現実でもなかなか得られない、最高の夢だった。
ん?
夢だった……?
「……!」
何か長い洞穴を、光を辿って抜けたような感覚。それを何とか脳で自覚した途端、下半身のほうにちょっとした寒さを感じた。夢が夢だったと、思考が徐々にクリアになっていくのを覚える。
窓の外には日の光すらまだ見えない、真夜中がただひたすらに続いていた。
まだ四季を感じさせるような時期ではないが、真夜中となれば流石に少しは冷え込む。そんななか、冷気を感じる下半身。夢と同じく衣服が取っ払われてしまっているような気がした。
気がしたというか、実際に履いて無かった。
淫夢を見ていたせいで、自分から脱いでしまったのだろうか。
これは酷い、どこの世界にそんな寝相が悪いヤツが居るというのだ。
俺はなんだか恥ずかしくなって、何か布に包まりたい気分になった。
「ふぅ……」
……少し頭を落ち着かせる。
完全に目が冷めてしまった。
怠い身体を動かすには早すぎる時間なのに、こうも早く目が冷めてしまうとは。
明日の事を考えて早く寝たのに、これではいけない。風邪ひくぞまったく。
「あーもう、落ち着いたら気合で二度寝するか……」
誰に聞かれているわけでも無いのに。
そんな事を呟きながら、とりあえず脱げてしまった服を探すことにした。
いくら寝相が悪いとはいえ、未だ身体はベッドの上。ズボンはまだその辺に有るに違いない。
そう思い、身体を起こそうとして――
気が付いた。
「……?!」
身体にかけていた寝具のシーツ。それが股間の辺りで、大きく盛り上がっている。エロい夢を見ていたから勃起したとか、そういうのでは無い。横に人が一人、入り込めるようなガッツリとした隙間が空いているのだ。
居る。
間違い無く居る!
なんか、居る――ッ!!
「…………ッ!!」
よく分からない恐怖心と共にその存在を暴くべく、俺は思い切りシーツを捲った。
すると。
「……ちっ」
なんか、リーニエちゃんが居た。
月明かりから外れた場所にいるのでよく分からないが、多分いつもの無表情である。
「いやマジか」
盛り上がっていたシーツからは、特徴的な突起が二つ見えた。丁度それは侵入者の頭の部分に位置するもの。いわゆる角みたいなもので、それが生えてる生命体だとしたら魔族ぐらいしか俺は知らないわけだったのだけど。
まさかほんとに魔族で、しかもリーニエちゃんだったとは。
「……」
睨んでいるのか、それとも何も思っていないのか。
何も言わずに、じっとこちらを凝視される。
……今気が付いたが、リーニエちゃんはどういうわけかいつもの上品な服装ではなく、一つ脱いだ薄着の状態だった。
潜り込むのに邪魔だったのだろうか、肌を隔てるものがそれしか無いというその姿は、さながらまだ何も知らなそうなあどけない村娘のかたちをしていて――
しかし、どこかその内に形容し難い不安定な妖艶さを含んでいる。
そんな子が、俺の身体へと這おうとしていた。
後少し膝を進めれば、そのまま覆い被さられてしまいそうな、そんな状況である。
しかも、下半身の衣服を脱がされて。
意味が分からず、しかし湧き上がるほどの高揚を俺は覚えていた。
彼女がここに来た目的は多分、アレしかない。
「もしかして、会いに来てくれた感じ?」
「……っ」
「いやあ嬉しいなあ。気持ち良いの、忘れられなくなっちゃったのかな? それで、ここまで来てくれたと」
「違う……私は、ただその、食べにきた、だけで……」
「んん?」
体勢を整え直したリーニエちゃんはそう言うと、いつの間にか手に持っていたリンゴをこちらに見せつけるようにして掲げていた。
それ俺が作って倉庫に置いてたやつなんだけど。また盗んだぞこいつ。
……しかしそうは言っても、そのリンゴには一口さえも齧られた形跡は無かった。
好物なのにも関わらず、だ。
「なんか、体の良い理由付けに使われてる気がするなぁ~」
「ちが……」
「あー分かったなるほど。癖になっちゃった、ってわけね」
「ぐ……っ」
「そのためだけに、ここまで来てくれたんだ」
俺はニヤニヤと。
最高の笑みをもって、リーニエちゃんに分かってもらえるようにその事実を反芻した。
今日この時ほど、言葉という物が在って良かったと思う事は無いだろう。人を言葉を真似るために進化した、そんな彼女の祖先へと大いなる感謝を捧げてもいいくらいに。
俺はとっても上機嫌だった。
「……うるさい」
そんな様子を見せつけていれば、流石に怒ったか。
リーニエちゃんは強く語気を荒らげた。
「なら早速気持ちよくしてく……んぐっ?!」
リーニエちゃんを煽ろうとした寸前、陰茎をぐっと手で掴みこまれる。
もちろん、やってきた相手は一人しかいない。
「……こんなすぐに大きくして、バカじゃないの?」
「ちょ、いきなり……」
彼女の言う通り、ちょっと掴まれただけで張り詰めていてしまっていた。
遠目に見れば寝巻きにも見えなくない――そんなリーニエちゃんの姿を捉えたら、夜這いされているような気分になってしまって……いや実際にそれで合っているのだろうが、興奮でもうどうにもならなくなっていた。
こんな女の子がこれから奉仕してくれようとしているのだ、大きくならないハズが無い。
「確か、こうだった……」
リーニエちゃんは小さく何かを呟くと、上向きに反っている陰茎へと細い指を絡み付けるようにして回してくる。視点は思いっきりそれに注視したままで、おそらく無意識にその柔らかな肢体をぐっと押し付けていた。
彼女の思考が今どうなっているか知らないが、むにゅむにゅと面白いほどに形を変えて伝えられるその感触。それだけもう、俺は至高の幸福感を覚えていた。
ただ欲を言えば、もうちょっと滑らかに手の方を責めて欲しいかもしれない。やはり手コキとなると、手を滑らかに側方へ回すための潤滑剤が必要だ。
いわゆるローション的なものなのだが……。
「いいね、でもできたらもうちょっと……」
「変な液体使ってたけど、無いからこれでいいか」
リーニエちゃんはそう言うと、ちょこんと置かれていたリンゴを手に取り。
何を思ったのか、それを陰茎の真上でぐしゃりと握り潰した。
思わずあらぬ想像をしてひゅっと縮こまりそうになったが、流れ落ちる生暖かい感覚によってすぐに現実へと引き戻される。
途端に、甘ったるい匂いが空間を支配し始めた。
「ちょっ……な、なんてことを」
リンゴは瑞々しい見た目をしているだけあって、可食部における水分の割合は八割も有るとされている。そんな果実を握りつぶせば果汁が周りに散乱してしまうのだが、リーニエちゃんは全く気にしてはいなさそうだった。おかげでもうぐちょぐちょである。
いや、たしかにローションが欲しいとは思ったけれども……!
俺が手塩にかけて作った作物が、こんな風に扱われてしまうなんて――!
「こ、この! 勿体無い、とは思わないのか……?」
「べつに。まだ幾らでも有るでしょ? 置いてるの見たから」
「いや、そうだけど……なるほど、これが魔族か」
「なんか納得してるけど、大きくしてたら説得力無いよ」
たしかに。
農家のプライドをかけて食べ物と大切さを説こうと思ったが、しかし俺は何も思い浮かばなかった。
「バカじゃないの?」
「くっ、くそ……」
水気をもったことで、扱く手にぬちゃぬちゃとした音が伴うようになる。腹は立つが、正直結構気持ちがいい。
果汁自体はそれほど粘性を含まないものの、先走りと混ざり合っていい感じに滑っている。
力加減も悪く無い。強すぎず、かと言って弱すぎず、熱をもって敏感に仕上げられてしまった俺のモノを、丁寧に優しく扱いて蕩けてしまいそうな快楽を与えてくる。
夜のひんやりとした空気と代わりとなったローションのせいで、暫くは冷たさに覆われていた。しかし手を通して与えられる体温によって、絶妙な調和をもった温かみが海綿体を包み込む。腟内のような、熱くて暑くて思わず溜め息が出てしまうようなものではなく、適度な
よく分からないものまみれになってしまった手が、頂点から玉に至るまで潤滑液をこまめに揉み込んでいく。
「それで、こう……」
どの生物にも言えることだが、オスの生殖器は欲望にまみれた醜悪な形をしている。それ故に、たとえ将来を共にする相手であったとしても、いきり立ったものを恐ろしく感じてしまうメスは多いと言われている。
しかし目の前にいる可憐な姿をした生き物は、まるで自身の知識を深めるために研究を続けている学者のように熱心で、それで一切怯むことなく奉仕を続けていて――
その事実が、どうしようもないくらいにこの身を昂らせた。
「こう、だっけ……」
汁にまみれた表面を、白くほっそりとしたリーニエちゃんの指が縦横無尽に這い回る。
一緒にぐちょぐちょになった手のひらで滑るような音を出されながら扱かれ、そうしていれば、もう片方の手で陰嚢の辺りを揉みほぐされる。
やがて親指と人差し指で輪っかのようなものを作ったかと思えば、根本から掬い上げるようにして動かし、特に敏感なカリ首のある段差へと重点的にいじめ抜いてくる。恐ろしいほどに甘く、ねちっこい責めによって、下半身を支える力の根源が段々と溶けていってしまうような感覚に陥った。
「うわ、出しすぎだろ……気持ちわるいな」
ぬちゃぬちゃ、くちゃくちゃと絶え間無く扱きながら、リーニエちゃんは悪態を吐く。もはや表面も側面も何の液体か分からないぐらいにぬたっているというのに、先走っているものを見分けることができるのだろうか――なんてしょうもない疑問が浮かんだが、蕩けてしまいそうな快感によってすぐにどうでもよくなってしまった。
そっと撫で回したり、睾丸を優しく揉み上げたり、かといって快楽を直接叩き込んでくるような激しいストロークも忘れない。
あまりの心地良さに、狂おしいほどの疼きが奥底から込み上げてくるのを感じた。射精にまだは至らないものの、もっと強く扱かれればすぐにイってしまいそうな責めだった。
「くそっ、気持ちが、いい……」
「こんな単純な動きだけでいいの?」
無機質な声音と、しかし男を挑発するような囁きをもって扱き続かれる。
やがて織りなす指の輪っかが縮められ始めた。亀頭の間を通り抜けるには少々小さい穴で、くぐり抜けるためには圧迫が必要だった。通り抜ける度に刺激され、何もしなくても穴が居場所を主張してくる。それが上から通り抜けるだけなら良いものの、下から来るとカリ首に引っかかり、くびれがきゅっと抵抗して甘美な快楽を伝えてくる。
全身の毛が総毛立つような、恐ろしくも甘い責め。それがしばらく続いたかと思えば、我慢できないほどの射精欲が込み上がってくる。それを機敏に察知したのか、動かされる手は輪っかを解き、五本の指全てを使いながら行われる激しい扱きへと移行した。
まるで射精のタイミングを測ったかのような責めだった。
「もうこれだけでいいんじゃない? 簡単だし」
「ふざけ……っ」
リーニエちゃんは極めて冷淡に、単純で簡単だと言い放った。
しかし違う。俺は、そうは思わない。
複雑すぎる。
あまりにも複雑で、上手すぎるのだ。
彼女の責めは一朝一夕で覚えられるようなものでは無かった。
とにかく、気持ち良すぎる。
気持ち良すぎて、最高だった。
指標で測るとすれば、その道を突き進んで長いプロの娼婦と同等か、もしくはそれ以上の技術を持っている。それをただ、さも当然かのように振りかざしているのだ。
これに対抗できるほどの責めを披露できるのは……街の、それこそ高級娼館で売上一位を年間連続で達成している、ナンバーワン嬢のMちゃんぐらいだろう。
最近はご無沙汰だったけど、お世話になっていました。
そんな子に匹敵するぐらいの、素晴らしい手コキ。
リーニエちゃんが千人斬りを成してしまうような熟練の使い手だったのならば変ではないが、ちょっと前まで性経験が無い処女の生娘だったはず。
明らかに、おかしい。
「はい」
「ぐぅっ……気持ちが、良すぎるっ……!」
「うわ、ほんとに単純だね。頭ん中単細胞で詰まりきってるのかな?」
しかしそんな疑問もどうでも良くなってしまうほどに、鮮烈な快感が身体を襲う。
なんとも情けない感情を覚え、下腹部に力を入れて抵抗をしようとするが、そう長くは続かない。
端的に言えば、もう限界に近かった。
「もうイきそうなんだね。面倒だから、さっさとイけよ」
「くっ、くそ……っ!」
射精が近いことを察知したリーニエちゃんは、陰茎を扱く速度を更に上げる。ラストスパートとでも言おうか、何の情緒も無くただ精を絞ることしか考えていない事務的な本気搾精手コキに、為す術も無かった。
やがってうっとりとしてしまいそうな脱力感が、下半身を覆っていく――
「イけ」
そんな言葉と共に、脈打ちに合わせられた手は強い扱きをもって駆け抜ける。
絞りあげきってしまうような、そんな握力を施されれば、込み上げてきたものが一気に外へと溢れ出していった。
――どくっ!! ドクドクっ、ドクっ、どくっ……どくっ!!
「ぐっ……ッ!!」
「うわ」
あまりの快楽に吐き出る言葉を抑えようとするが、叶わない。思いきり、ただ一直線に、精液が虚空へと発射された。外であれば間違いなく一番強い勢いだったと思われるその射精は、手のひらだけでは防ぎれるわけもなく。
リーニエちゃんの可愛いお顔にへばり付くようにして引っかかってしまった。
予想していない結果だったのか、見て分かるほどに嫌そうな顔になっている。
「きたないな……」
そう吐き捨てると、蜘蛛の巣を振り払うかのようにして邪魔なモノを除けようとする。
しかし、それは粘着性の高い液体。なかなかうまくいかず、指と指の間に綺麗な一本の橋を形成してしまった。
リーニエちゃんは、それを鬱陶しそうに眺めている。
「――――――――……え」
すると、どういうわけか動きが止まった。
さっきの嫌悪感たっぷりだった表情は消え、何かを見定めるような――そんな不思議な様子をしていた。
「――そういう、ことか」
やがて、徐ろに頷いた。
意味も分からず困ってしまった俺は、リーニエちゃんへ謎の行動の意図を尋ねようとするが――しかし、それよりも先に彼女の口が開かれる。
いや、口を開くという手段は別の意味を成していた。
リーニエちゃんは、粘ついた精液が絡む指を顔へ近付けると――
「んっ……」
「……!」
それを口に垂らして、そのまま中へと含んでしまった。
まるで採れたてのさくらんぼを食べているかのようにそれを摘んで、ただ重力に耐えきれずに落ちていく姿を楽しんでいる。
呆気にとられている俺の姿をまったく気にせず、ただ淡々と。
白い喉がこくこくと動いてる姿を見ることしか、俺にはできなかった。
やがて手に纏わりついたものも全て卑しく舐め上げると、リーニエちゃんは口を開いた。
「まっず」
「……えぇ」
「人間はこんなものがよく飲めるな」
そう言うと、口直しのつもりなのかリーニエちゃんは先程ぐしゃりと潰してしまったリンゴを手に取った。しかし汁が抜けきってしまっているのか、これも非常に不味いといった顔をしていた。
役目を果たせないリンゴは、そのままベッドの上へとほっぽり出されてしまった。
「意味が分からない、って顔してるね。それなら教えてあげる」
「――えっ……っ?!」
そんな言葉を皮切りにして。
何の前触れもなく、リーニエちゃんの顔がこちらに近付いてきた。突然の出来事に抵抗できるわけもなく、無理やり口をこじ開けられ、舌をそのままねじ込まれる。
口内に入っている全ての液体を交換する、あまりにも情け容赦無いディープキス。およそ少し前までの彼女からは思いも寄らない行動に、思わずたじろいだ。
やがて酸素が足らなくなりそうな頃合いで、キスから開放される。
「……ぷはっ。……どう? 美味しい? 自分の精の味は」
「くそっ……やりやがったな、コイツ……」
「苦かった? それともりんご食べてたから甘かったのかな。どうでもいいけど」
なんとも最悪な気分が、口の中で広まっている。
娼館でよくある、フェラした後のキスはNGかどうかみたいな文言を俺は思い出した。満足度が高い嬢はこういう所を徹底していて、客が不快感を覚えるような行為は全くしてこなかった。それ故に全く慣れていないし、やりたいとも思わなかった。そりゃそうだ、この世のどこに自分のモノを飲んで嬉しいヤツがいる。
「その様子だと、分からなかったみたいだね。まあ、いいか」
そうすると、リーニエちゃんはまるで蛇のように這ってくる。
仰向けになった俺の身体を軸にして……やがて、力を抜けば丁度覆い被さってしまう位置へと来た。
普段ならば積極的な態度に、興奮尽きぬ所だった筈なのに。
どうにも、彼女の態度が恐ろしく見えてしまった。
「私は、ようやく理解った。どうやったらお前を消せるかどうか」
「――えっ」
リーニエちゃんは、首元についていたリボンをするりと外した。
すると皮を剝かれたリンゴのように、その先が露わとなった。
「殺してあげる」
次話のサブタイトルは模倣する魔法<エアファーゼン>です