ゆったりとした動きのショーがベッドの上で繰り広げられ、邪魔な物がするすると取り払われていく。淀み無い動きでそれが遂行されれば、やがて一糸まとわぬ姿の女体が現れた。
それは凹凸の効いたカタチをしていて、男の欲望をそのまま体現化した様な理想の姿。その身体は幾度と無く楽しんだものだし、脳が情報としてしっかりと焼き付けてはいる。しかし、こうも下から視覚の情報として取り入れた事は無かった。
まさに芸術品とでも言えよう作りをしていて――だがそれは、人を欺く魔族としては当然の事なのかもしれない。
「意味の分からない謎の力の正体がようやく少し理解できた」
「力……? な、なんだよそれ」
「探知からも外れそうな、羽虫にも劣る矮小すぎる魔力……それをお前から感じていた。だが、違った」
「どういうことだよ……?」
見惚れてしまいそうな女体から凍りつくような視線が投げられる。それは殺意が籠った、恐ろしく冷たい目をしていた。今すぐにでも殺してやりたい、そんな思惑が容易に見て取れる。
リーニエちゃんの様子が、おかしい。
冷静さを存分に含んだ無表情さに、とても淡泊な物言い。
あれだけの防御力を誇っていた謎の力を、本当にどうにかしてしまうような突破口を見つけたとでも言うのだろうか。彼女の本質をまだ理解したわけではないが、冗談というかハッタリを言えるような性格はしていないと思っている。
ならば、本当に……?
「あれ、もしかしてこの状況まずい……?」
今の状況はリーニエちゃんに馬乗りにされているところである。
ついに念願の騎乗位を彼女の方からして貰えるのだと下半身は喜びで固くなってしまっていたが、しかしよく考えてみれば、組み伏せられている場面とも言える。俗に言う、マウントポジションというヤツだ。
普通にヤバイ。
なんか有効策が有れば、普通に殺される。
「ちょ、ちょちょっと待って話し合おう! 話せば分かる! 俺達には、言葉というモノが……」
「だまれ」
ぐしゃり。
ぐしゃり、と。
必死の命乞いを遮るようにして、何かを握り潰すような音がする。
なんとか首を動かして声のする先をすれば、もう一つのリンゴがぐしゃぐしゃになっていった。赤みがかった実で、先ほど潰されてしまったものとは別のヤツだ。
それをリーニエちゃんは自身の胸の辺りまで持ってくると、更に強くリンゴを握り締め始める。
「な、なにを」
「……平常ならば人間は等しく、その身全てに魔力を宿した均衡状態にある」
圧力に耐えられず筈も無く、原形を失ったリンゴ。
そこから溢れ出た汁が、流れるようにして身体を伝っていく。
甘ったるい匂いを伴いながら谷間へと吸い込まれていったソレは、官能的な雫の軌跡を残しながら下腹部へと辿り着く。そして息をつく間も無く、割れ目を伝っていた。
思わずそれを、まじまじと凝視してしまう。
「だが、お前はなぜかソレだけに集中させている」
「……ぐっ?!」
リーニエちゃんが、腰を少しだけ前に動かす。
するとちょうど割れ目の間にぴたりと嵌まった。
「正確に言えば、汚らしい精が魔力を持ってるみたい」
「……えっ?!」
「聞いた事が無い、気持ち悪い、頭おかしいんじゃないの?」
いわゆる素股の格好。
普通ならばここから摩擦を付けて擦り上げるところなのだが、しかしリーニエちゃんは強く動かしてはくれなかった。
ねっとりと焦らすようにして、果汁やら何やらが色々混ざったよく分からない液体を、互いの性器の右へ左へと塗り伸ばしている。
もうぐっちゃぐちゃだった。
「それがどうしてあの防御力に繋がるかは分からないけど、これだけは言える――
その精を出し続けていれば、やがて魔力は枯渇する」
「……………………えぇ?」
俺はちょっとずつ与えられる快感に耐えながらも、告げられる言葉を一字一句聞き逃さないようにしていた。どうにかこの状況を打開する方法を、割と真剣に探っていたからだ。
しかしリーニエちゃんから伝えられた事は、意味不明だった。
「魔力欠乏症。許容量を超えて魔力を放出した者に訪れる症状で、最悪の場合死に至る」
「ん? それがどうしたんだよ」
「……。魔力を持つものなら誰しもが罹りうる可能性が有る物」
「つまり、どういうこと……?」
「はぁ」
すまない。難しい事はさっぱりなんだ。
そんな思いが言葉に出ていたのか、リーニエちゃんは呆れた様子でため息を吐いた。
「――こういうことだよ」
リーニエちゃんはそう言うと、少し前のめりになりながら腰を上げた。
つぅっと流れ落ちる蜜をちょうど陰茎へと垂らせる位置へ来ると――
思い切り、腰を下へと降ろした。
導かれるようにして、秘所へとソレはあてがわれる。
抵抗できたかもしれないのに、俺は見ていることしかできなかった。
ぬぷり、と。
そんな音と共にざらざらとした感触が伝わり、底の方に抑えきれない程の快感が湧き出し始めた。
「……っ?!」
勃起した陰茎は、リーニエちゃんの蜜壺へと吸い込まれていた。途端に、根本から絞り上げるような甘い締め付けが膣内全てを通して襲ってくる。
まだ序盤だと言うのに、容赦無く与えられる快感。俺は思わず身震いしてしまいそうになったが、そんな様子も気にせず、ベッドの上で揺蕩うようにリーニエちゃんは腰をグラインドし始めた。∞の弧を描くように腰を動かしながら、カリと膣肉を強く擦れ合わせている。
しかし、それはただ周期的に行っているものでは無かった。咥え込んでいるモノの形を徹底的に覚えて愛液をくまなく慣らしこむマーキングに近い行為であり、うねる腰を結合部分を通して存分に相手へと見せつけるプレイでもあった。
「……はぁっ、んっ……」
手はちょうど男のひざ辺りに乗せ、少しばかり後ろに身体を倒しながら。
そうしていれば、腰を動かすたびに様々な部位が動いているのがよく見えるからだ。揉みしだきたくなるような乳房はもちろんのこと、モノがしっかりと入っていることを示す少し盛り上がった下腹部や、呼吸のたびに浮き出るあばら骨まで。
およそ性行為を覚えたての女では再現することができない、熟練の磨き抜かれた技。
こ、この動きは……
どこか、どこかで見覚えが――
「私はっ、高級娼館~胡蝶の夢~に在籍する、……ぁっ、ナンバー、ワン嬢、Mの動きを……っ、ぁ模倣、している」
「マジか……」
少なからず覚えていた既視感。点と線が、繋がった。
確かに、この腰の動きは間違いない。あの高級娼館にいる、年間売り上げ一位Mちゃんそのまんまの動きだ。
リーニエちゃんからやられた手コキもそんな感じはしていたが、まさか完全に写しとっていたとは。
「そんな、嘘だ。あの動きは相当熟練度が無いと使いこなせないはず。なのに、どうやって」
「
「ま、魔法……?」
「目にした人間の……っゃ、魔力の流れを覚え……はぁっ、そしてその動きを、完全に……ぁっ、模倣することが、できる――」
動きを、模倣……?
ということは、娼館で働いていたMちゃんの手捌き腰捌きを目で盗んだのだろうか。
わざわざ、忍び込んで……?
なんだその魔法は。
あまりにもえっちすぎるだろ……。
「これでお前を、あっ……容易にっ、イかせることが……んっ、可能と、なった」
「そ、そんな……」
リーニエちゃんの責めは、兎にも角にも苛烈だった。
形に合わせてぴったりと張り付いてくる膣肉もそれだけで相当なのに、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら絡みついてくる腰。
横に擦り付ける動きは、縦に揺するものと比べてそれほど大きなものでは無い。謂わば、まだ前座のようなもの。どうにか本番までに耐え抜きたいものだが、しかし磨き抜かれた技がそれを許さない。
それに加えて、この状況。今では当たり前のように一瞬思ってしまうが、魔族の女の子と明確な意思をもって姦通するのは、人間界の道義にあまりにも反している。しかも当然のように、生でヤってしまっていた。このまま何も考えずに責められ続ければ、膣内に精液を流し込むことになってしまうのだが、そこに避妊という概念は何も存在しない。人間の姿を模して進化した以上種として似通った要素はあるので、絶対に孕まないという確約は無いのに。
もし実際に新たな魔族が産み落とされようものなら、恐ろしい前例となってしまう。
なのに。
それなのに。
目の前の女を貫いているモノは、孕ませたいとばかりに強く張りつめてしまっていた。
本当に、どうしようもない。
「ぐっ、出る……」
「はぁっ、イけ……。んぁっ、イって、しまえ……!」
熟練の娼婦に跨られ腰を振り乱されれば、大抵の男は三分も持たずにイってしまうと言われている。
そんな大抵の枠から抜け出すことができなかった俺は、為すすべなく中へと精液を吐き出した。
目の前の視界が別の何かに映り替わるような、そんな錯覚を覚えてしまう程の快感が一気に流れ込む。
腰を深く押し付けるようにして落とされたせいで、より奥へと精を放つことになってしまった。
「……んっ、っ、んっ……、ぁっ、っ……」
この腰を押し付ける動作も、娼館で嬢が行っていたものの模倣だろう。客を満足させるためにしていた、サービスの一環である。娼館には一人は必ず
なにもかもがちぐはぐで、不完全だった。
その事実がどうにも堪らなくて、興奮してしまう。
膣内からは溢れてきた精液が重力に逆らえずに、下へ下へと伝っていった。
その様子を、ただ荒い息を吐きながら見下ろすリーニエちゃんの姿はとても目に毒である。
「っ、……相変わらず、早すぎる、だろ……」
「ぐっ……でも、これがどうやって俺を殺す手段になりうるんだよ……!」
「まだ、分からないの? ……はぁっ、本当に馬鹿なんだね」
とても気持ち良かった。最高の気分といっても過言ではない。
ただ、相手を楽しませているだけのセックス。まさに最上位の接待をしてもらっているような感じだった。
それがどうやったら、殺す手段と言えるようになるのか。どう頭をこねくり回しても思い浮かばなかった。
「疲れてる、でしょ? 気付いてないの? お前の魔力が、減ってるんだよ」
「……は?」
何を言っているのか、よく分からなかった。
確かに彼女の言う通り、今の俺には気怠さのような疲れが背中に圧し掛かっている。しかしそれは性行為をして精を吐き出したからであり、生物としては避けられない疲れだ。
何もおかしくはない。はず。
「違う、確実に減っている。しかも、ごっそり」
「なっ……」
「これで分かった。回復させる間もなく、何度もヤれば確実に殺すことができる……っ」
「そんな、馬鹿な……っ! なんだそれ、意味が分からないぞ……。出し過ぎたら死ぬとでも言いたいのか?」
「分からない? 私も、意味が……分からない……。でも、確かな、ことだ……っ」
リーニエちゃんはそう言うと、再び腰を動かし始めた。
こちらは射精した直後の敏感な状態だというのに、構わずまた腰を振り乱している。
しかし、今回は前後にグラインドするような生易しいものではない。カリごと搾り取ってしまいそうなぐらい、上下方向に強い刺激を伴っている。
本来ならば縦方向に動かす騎乗位というのはなかなか難しく、慣れないと行為中にすぽりと陰茎が抜けてしまうリスクが有るのだが、熟練の娼婦の動きを模倣しているからか、まったくそんな様子は無かった。
「ぁっ、やぁっ……っ、死ね……ぁあっ……!」
「ぐっ……!」
このままではまずいと本能で理解した。
何もしなければ、また無残にイかされてしまう。
とても気持ちよく、イかされてしまう。
もし彼女の言う通りこの疲れが魔力を放出してる故のものならば、何度も射精していれば魔力が無くなって本当に死んでしまう。いわゆる、腹上死という感じになるのだろうか。それは巷で聞いたことが有る死因で、酒場の冒険者野郎どもが男としては一番の栄誉ある死だと宣っていた覚えがある。当時はそうだろうなとしか思っていなかったが、今は違う。
確かに最高の死に方ではある。
でも俺は死にたくない。
まだ、死にたくない。
色々やりたいことは残っているのだ。美味しい物をたくさん食べたいとか、大金持ちになりたいとか、農家として大成したいとか……いや、繕うのは辞めよう。
まだ、ヤり足りないのである。魔族の女の子は至上の女体を持っているということを、残念なことにこの身体はもう覚えてしまった。だからもっとその身体を貪りたいし、魔族の女の子ともイチャイチャしたい。
特にリーニエちゃん。
あの身体を、たった数回きりで手放してしまうのは勿体ないのだ。
確かに、最終的に彼女によって腹上死という結果をもたらされるのは悪くない結末かもしれない。
でもそれは、今じゃなくてもいいだろう。
もっと先、その身体を存分に楽しんでからでもいいはずだ。
「ま、待って、待ってくれ」
「はぁっ、ぁぁっ……、待つわけがっ……」
「その、怒ってるんでしょ? 最初無理やり犯したこと、謝るからさ。許してよ」
「――――は? ……っ! 許すわけが、ぁっ……無いだろ……!」
魔族の伝統とも言われているらしい命乞い。
それをすれば許してくれるんじゃないかと。
そう短絡的な思考で思い付いた俺は実際に行動に移してみたが、結果は最悪。
怒りからか中はよりキツく締まり、竿を扱く膣肉はより熱を帯びてしまった。縦にカリ首を包み絞り上げられるせいで、気が狂いそうな快感が脳髄へと伝わってくる。
「っ、こんな……ことを……ゃっ、された、せいで……わたしは……っ」
「そ、そうか。その、約束守って無かったのを怒ってるんでしょ。あの伯爵領の結界を解除する算段とか、もう完全に終わっちゃってるって! だから大丈夫!」
「……っ、もうそんなこと……ぁっ、どうでも、いいんだよ……」
必死に出した言葉でなんとか対話を試みようとするが、上手くいかない。
馬鹿なことを言っているのは分かっている。だけど今は、馬鹿なことしか思い浮かばなかった。
あまりにもリーニエちゃんがもたらす膣内の感触が気持ち良すぎて、難しいことが考えられなかったのだ。
夢見心地で、すぐにでもまたイってしまいそうな錯覚さえも覚えてしまう。
否、それは錯覚では無かった。
「私は、魔力の流れを……っ、読み取ることが、はぁっ……できる……っ。やぁっ、んぅっ……っ、お前がまた、っ……すぐにイきそうなことぐらい……っ、お見通し、だ」
もう既に、また限界に近かった。
それはリーニエちゃんの責めが、完全に搾精することしか考えていないものだったからだ。ただ乱暴に、しかし男を狂わせてしまう程の巧みさをもった腰捌き。人間同士ならば、ペースを考えて打ち止めにしてくれるだろう。
しかし、リーニエちゃんは魔族だった。ただ己のことしか考えていない、どこまでも個人主義な一族。そんなのに相手を圧倒する技術を渡してしまえばどうなるか。それは、火を見るよりも明らかだ。
情も何も無い、見た目だけは最高の種族。
そんな魔族の女の子に苛め抜かれた俺のモノは、悲鳴をあげていた。
「ぐぅ……っ!」
「もうイけよ……っ。ぁっ、イって、……っ、死んでしまえ……!」
胸板に手をつけ、そう吐き捨てるリーニエちゃん。
腰を浮かせるたびに揺れ動く瑞々しい乳房が、喋るたびに漏れ出してくる湿った声が、あくまで無表情を装っているのに快楽塗れになってしまったその顔が――どうしようもないくらいに、性感を昂らせてくる。
我慢なんて、できるわけがなかった。
「……ぁっ、っ、っ……、あっ、やぁっ、んぅ、あっ……」
欲望を出すたびにリーニエちゃんの身体がぴくりと揺れ、抑えきれなかった口から嬌声が漏れる。
確かに中へと注がれていることを認識させるその動作に、ならばもっとと呼応するように陰茎が反応していく。
「はぁ……っ、はぁっ……」
リーニエちゃんがくたん、とそのままへたり込んだ。
もう、彼女の膣口はまわりは酷いことになっていた。粘り気のある液体がそこかしこにへばり付き、ぐちゅぐちゅになっている。どう栓をしても、白い物が溢れ出てしまう状況だった。
セックスという繫殖行為ならば、これは間違いなくオスとしての役目を果たしたと言えるところ。
身体に途方も無い疲れが押し寄せてきて、今にも眠りに落ちてしまいそうな気分である。
「はぁっはぁっ、あと……」
しかし、これは違う。
そんな単純な行為とは、まったく違っていた。
温かく荒い息を吐きながら、確かに彼女は観察している。
彼女が、休むことを許さない。
再び身体を起こしたリーニエちゃんが向かってくる。
「あと二回……いや、一回も無いか。次で、終わりだよ」
ぎゅっと、心臓を掴まれるような思いを覚えた。
次回 リーニエちゃんともっとイチャイチャします