※この作品はR-18です。

【TS】ルディ子SS_単発R18   作:みいけ

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1.「初体験」_【百合】エリス×ルーディア

月が綺麗ですね。

と、言ってみても彼女には通じなかった。

ベッドの上に隣り合った時の言葉だった。

 

---

 

長い旅路の末、ルーディアはフィットア領の難民キャンプに辿り着いていた。

ルイジェルドは去り、エリスからは一人にしてと言われ。

今は、当てがわれた部屋のベッドで無気力に倒れ込んでいた。疲れきっていた。身体も、心も。

 

エリスの家族は全滅だったという。

サウロス、フィリップ、ヒルダ。

自分を迎え入れてくれた3人の結末を知らされて、言い知れぬ喪失感を覚えた。

悲しみという言葉だけで片を付けられる心情ではなかった。

けれど、エリスはもっと辛いだろう。

そう思うほど、哀しみが一層深まってしまうかのようにルーディアには感じられた。

 

エリスはこれからどうするのだろう。

脳裏には、先ほど行われた家臣団の会議が思い起こされた。

フィットア領復興のために変態貴族に引き渡されるのか、家を捨てて自由に生きるのか。

 

酷な話だ。

帰る家があると信じて戻って、その末に迫られる決断としては、あまりにも。

だから、せめてエリスには、自分が支えてあげられる方を選んで欲しいとルーディアは思った。

結局のところ決めるのはエリスなのだとしても、家を捨てて逃げさえすれば一緒に居る道を選ぶことだってできるのだから。

 

それに、貴族の義務だなんて小難しいことよりも自分を選んで欲しいという思いもあった。

そう考えたのは単なる仲間意識としてなのか、あるいは他の何かなのか。

ルーディアはあまりハッキリさせたいとは思わなかった。

ギレーヌに「エリスとルーディアは一緒に居るのが良いと思う」と言われ、そこに字面以上の意味を深読みしてドキリとしたのは悟られなかったと信じたいのだ。

 

ベッドに倒れ込んでどれだけ時間が経ったのかは判然としなかった。既に陽は落ちたのか、はたまた夕焼けが空に映るのか。

忍び込む隙間風には夜の気配が滲んでいたような気がした。

 

動きたくない。

けれど、このままでいては自分が駄目になる。それが経(・)験(・)則(・)で分かるから、ルーディアは無理にでも身体を起こした。

湯浴みでもすれば少しは気が晴れるだろう。そう言い聞かせなければ、手に付くものも付かないというものだ。

まだ、陽は落ちていなかった。

 

準備は手慣れたものだった。

旅荷物から取り出した手拭いと石鹸は、端がほつれ、身が痩せ、買い入れた時よりも随分とくたびれている。落ち着いたら新しいものを買うべきだろう。

お湯は魔術で。木桶は備え付けのものを使わせてもらった。

 

するりと髪留めを外してポニーテールの髪を解くと、長髪が肩にかかる。一房手に取ってチラと見てみれば、父親譲りの茶髪はいつの間にか随分と伸びていた。

シーローンでリーリャに会った時に切ってもらっておけばと、今更になって思う。

服を脱いだら適当に畳んで、下着をその上に放り投げた。

 

木桶の中で湯を浴む。

頭から被って、しとしとと身体を伝う熱が心地良い。あまり泡立ちの良くない石鹸を手拭いにこすりつけて、身体を拭っていく。

肩から二の腕、脇の下。

脇腹からお腹に移動し、反対側へ。

胸は優しく撫でる程度に。ふにりと伝わる感触は、ルーディアにとってもはや慣れ親しんだものだった。

 

それが終わったら背中側。

手拭いの両端を器用に持ち直して擦ろうとするが、あまり上手くできている気がしない。

 

────いつもならエリスにやってもらうのにな。

 

旅の間、湯浴みを共にすることはよくあった。

男としての自意識を抜きにしても、エリスのすらりとした肢体にはいつだって息を呑んだものだった。

鮮やかな赤い髪がとても綺麗で、背中を洗うときに覗くうなじの色っぽさといったら、もう。

それが同性ならではの憧れなのか、同性にあるまじき欲情なのかはさておいて、順番を交代するときに真正面からその裸体をまじまじと見てしまった時などは、エリスから胡乱な目を向けられたのを覚えている。

 

いつの間にか「何よ」と言われることも無くなって、代わりに仕返しのつもりなのか、エリスもルーディアの裸体を繁々と見てくるようになってようやく、見られる恥ずかしさを覚えて反省したものだ。反省したところで、エリスは全くやめてくれなかったのだが。

 

なおざりに背中を終えて、脚と臀部も手早く洗う。

最後に下腹部を優しく綺麗にすると、一通りはスッキリしたように思えた。

 

「ふぅ……」

 

お湯を追加して寝転ぶように身体を浸す。

熱めのお湯が、肌を撫でるように揺らめいている。

目を瞑ると、ともすればそのまま眠りつけるくらいには心地良かった。

 

「……」

 

エリスがフィットア領のためにその身を犠牲にする道を選ぶと言ったなら。

そんなもしもがルーディアの頭をよぎる。

 

アルフォンスの話によれば、変態貴族が目を付けたのはエリスだけではないらしかった。

エ(・)リ(・)ス(・)と(・)同(・)い(・)年(・)く(・)ら(・)い(・)の(・)使(・)用(・)人(・)の(・)少(・)女(・)もご所望なのだという。

エリスと並んでご指名とは、自分も捨てたものではないのだな。ルーディアにしてみれば反吐が出るほど光栄なことだった。

だから、エリスの世話役として着いていく事自体は叶うだろう。問題なのは、エリス共々別のお(・)世(・)話(・)に従事する羽目になるであろうことだから、この選択肢は端から考えるまでもないのだが。

エリスを見捨てるようなことだけはしないというのも、譲れなかった。

結局は、自分にとって都合の良い方を選び取ってくれるのを待つしかできないのだ。

だから悩ましかった。

 

名残惜しさを感じながらも、人肌に冷めてきたお湯から引き揚げる。風邪を引いては敵わない。そろそろ湯浴みは終わりにしようと、乾いたタオルで身体を拭う。

気付けば窓辺に差し込んでいた陽光は既に無く、燭台に火を灯す時間になっていた。

いそいそと新しい下着を身に纏い、15センチ程の真新しい蝋燭に手をかざす。

音もなく点いた火の揺らめきは、ルーディアの心を写しているかのようだった。

 

エリスがどんな道を選ぼうとも、必ず彼女を支えきろう。

そう決心するには今一歩何かが足りなかったのだ。

ゼニスは探さなければならない。その上で、再び家族と合流する。

今後のことを思えば、選択肢は無いも同然だった。

いざとなればエリスの決断に反してでも彼女を説得し、逃避行しなければなるまい。

 

寝巻きには、いつだったかエリスとお揃いで買ったワンピースを着る事にしていた。

薄手の生地で少しドレスのようでもあるそれは、ネグリジェと言った方が良いかもしれない。

ルーディアが灰色、エリスは黒だ。

エリスがその黒いワンピースを着ているところは終ぞ一度だけしか見なかったが、また見たい。そう思うくらいには似合っていたのだ。

 

「こんばんは、ルーディア」

 

だから、ノックの音に扉を開けて、瞼の裏に描いた姿のままで現れたエリスにドキリと胸が跳ねたのは、致し方のないことだった。

「もういいんですか?」と取り繕うように訊ねても、「大丈夫よ」と答えるエリスの顔は、ルーディアにはいつもの調子のように見えた。

いや。いつもよりも、表情が少し硬いような気もした。

 

「これからどうするんですか」

 

ベッドに腰掛けてそう問いかけても、答えは「どうでもいいわ」とだけ。エリスは座りもしなかった。

 

「どうでもいいって……」

「ねえ、ルーディア。私、一人になっちゃったわ。……それでね、私この間15歳になったのよ」

「えっと、すいません。気付いていなくて……今からでも、何か用意を」

「必要ないわ」

 

慌てたルーディアをよそに、エリスの態度は変わらず素っ気なかった。

どこか怒っている風でもあった。

そんな様子が、ますますルーディアの焦りを生んだ。

 

「あの、えっと、エリス。その……怒らせちゃったなら謝ります。でも、誕生日のことは、決してどうでもいいと思っていた訳じゃなくて」

「別に、怒ってないわよ。……怒って見えるの?」

 

見える。

ルーディアにはそう見えた。

けれど怒っていないと言われて見れば、その通りのようにも思えた。

腕を組んで、仁王立ちで、口は無愛想な一文字。

よくよく見ればいつものエリスだ。

暗がりにいるから少し威圧的に見えただけで。

 

「エリス……?」

「用意をする必要はないわ。……けど、そうね。欲しいものならあるわ」

 

エリスはルーディアのすぐ隣に腰掛けた。

ベッドの軋む音が、やけに響いて聞こえた。

距離が近い。

肩と肩、太腿と太腿がぴたりと触れ合うほどに。

 

「あの、エリス、近い……」

「嫌なの?」

「嫌なわけじゃ、ないですけど」

「そう……」

 

ふわりと石鹸の香りと、何か別の甘い香りがした。

エリスもまた、湯浴みをしてきたのだろうか。

そう思って横目でチラとみたエリスの横顔が紅潮していたのは、湯浴みのせいだけでは無いように思えた。

 

「……ねえ、ルーディア。嫌だったら、言いなさい」

「……? だから別に、嫌ではないですけど、どうして……」

 

同じことを聞くんですか。

そう言おうとした矢先、ルーディアは撫でられる感触を知覚した。

ワンピースの上から、太腿の辺りをさわさわと。

 

「……エリス?」

「嫌じゃ、ない?」

「……、うん」

 

太腿を撫でる手は、様子を探るように移動した。

徐々に、徐々に。

ワンピースの裾をめくって膝小僧に触れたかと思えば、再び太腿の方へ。

今度は、直に。脚の付け根の方へ向かって。

 

「嫌じゃ、ないの」

「……うん」

 

エリスの眼差しは熱に浮かされたようだった。

ごくりと生唾を飲み込む喉音がはっきりと聞こえた。

 

「……ルーディア、ねぇ、私、変なの」

 

確かに今日のエリスは変だ。けれど嫌ではない。

というのがルーディアの率直な気持ちだった。

 

「女の子どうしなのに……あなたのこと、いやらしい目で見ているわ」

 

気付けば、ルーディアはエリスに抱き寄せられていた。

赤髪はしっとりと艶やかで、エリスの香りが淡く鼻腔をくすぐった。

背中に回された手はぎゅっと握られて、耳に囁く吐息は熱っぽい。

 

「……い、いつから?」

「わかんないわよ。気付いたらそうだったもの。

あなたが欲しいの。……家族に、なりたいの」

 

重なる身体に伝わる鼓動は早鐘を打っていた。

囁かれた言葉を反芻して、ルーディアは顔に熱が集まるのを自覚する。

言葉は出ない。けれど、けれど。

嫌ではないのだ。寧ろ嬉しい。

しかし、エリスの方にしてみれば返事がないのは不安だった。

 

「ルーディアは、どうなの」

「どうって……」

「だから……い、一緒に寝ましょうって、ことよ。どうなの」

 

ルーディアに断る理由などなかった。

旅の間、どうせ叶わないと思って眺めるだけに留まっていた。

そこをエリスから言い出してくれたのだから、ぜひお願いしますというのが本心だった。

それでも曝け出すのはそこはかとなく憚られて、風情の無い返答が口をついて出てしまう。

 

「エリス、やり方知ってるんですか……?」

 

すなわち、知っているなら寝(・)て(・)良いよと聞こえた。

気持ちが早るエリスには。

 

「知っているわ」

 

許可と受け取った途端に目の色が変わっていた。

待ての状態から解き放たれて、手始めにと目の前に見えた小さな耳を食(は)んだ。甘噛みよりも甘く咥えて、形をなぞるように舌先を這わせた。

 

「ひぃうっ」

 

予想していなかった刺激にルーディアの喉から悲鳴がこぼれる。

驚いて、思わず顔を背けてしまう。

 

「こら」

 

エリスは止まらなかった。既に獲物を捕らえた心持ちで、露わになった首筋に顔を埋(うず)めて深呼吸をした。

すぅ、はぁ。

鼻息のこそばゆい感触の後に、小さな舌先で舐められるのをルーディアは感じた。

 

「今さら嫌がってみせてもダメよ。ルーディアだって、私をエッチな目で見てたことくらい分かってるんだから……」

 

嫌がったつもりはない、のだが。

 

「……バレてましたか」

「バレバレよ……ふふ」

 

目線を合わせてそう言い合うと、どちらからともなく含み笑いが伝播した。

知らない間に強張っていた力が弛緩する。

エリスはリラックスした表情になり、ルーディアも肩の力をくてんと抜いた。

 

「ん……」

 

エリスの口付けは続いた。首筋に、鎖骨に、肩。

力を抜いたことで、先程よりも敏感に感じる気がした。

 

「エリス、何処でこんなことを覚えて……」

 

ルーディアにとって、先立つ疑問はそれだった。気持ちが良いにしてもその知識の出自は気になった。

 

「お祖父様が、メイド同士でさせているのを見たことがあったのよ。あの時はよく分からなかったけど……」

 

何故だか目が離せなかったのを、エリスは覚えていた。

そのお陰でこうしてルーディアを可(・)愛(・)が(・)る(・)ことが出来ているのだから、感謝の念が湧こうというものだ。

だが、サウロス(お祖父様)はもういない。フィリップ(父)も、ヒルダ(母)も。悲しみがエリスの元を去る気配は一向に訪れない。

 

思い出して、途端に心細くなってしまった。

事実として認識はしている。しかし現実感がない。

ルーディアには大丈夫と言ったけれど、心が追い付いていない────と、直感的にエリスは悟った。まるで穴が空いてしまったかのような感覚を、どうやって慰めたら良いのかも。

 

「エリス……?」

 

そんな心の機微を感じ取れる程、ルーディアは聡くない。それは自認するところでもあった。だから、エリスの動きが止まったことには気付いても、あどけない表情(かお)の上目遣いで様子を伺うのが精一杯だ。が、その仕草がどれだけ情欲を煽るものなのかは自覚していないのだから質(たち)が悪い。

 

「……!」

 

エリスは辛抱たまらなかった。

こうしよう、ああしようと考えていた段取りなんて吹き飛んで、引き寄せられるように顔を近づけた。

 

互いの唇が触れ合うだけの口付けをした。

柔らかい。

お互いにそう思った。

 

「ん……」

 

声を漏らして、もう一度。

肩に添えられたエリスの手が、ルーディアの両頬に移動する。

優しく包み込むように、しかしその手は絶対に離さないという意思が感じられた。

 

「……んむ、ぅ」

 

エリスの舌先がルーディアの唇を僅かに濡らし、そのままキュッと結ばれた口をこじ開けるように蠢いた。

拒絶しているのではない、知らないだけだ。

程なくしてルーディアの口は緩み、エリスの侵入を許した。

 

ぬるりと舌が絡み合う。

主導権(タチ)を握る少女。子猫(ネコ)となった少女。

その動きは拙くぎこちない。

互いの未成熟を鑑みれば、それは無理からぬことだった。

 

けれど飲み込みの早さにおいてエリスは殊更に優秀だった。

ぎこちなくとも大胆に。

剣の修行で培った勘所を探る嗅覚は、どうやら夜伽にも通じるところはあったらしい。

舌を這わせる動きに慣れると、エリスはルーディアの味(・)を貪った。

 

「ぷぁ……まっ……エリス……んふぅ」

「いやよ……まてない……」

 

嫌なのではない。ただ息が続かない。

こういう時、息ってどうすれば。

余裕など、ルーディアの内からはとうに消え去っていた。

 

息苦しい。窒息してしまいそうなほどに。

ただしその苦しさは甘美だ。

 

もっと、もっと。もっと欲しい。

溶け合って、彼我の境目を蕩(とろ)けさせるような魅惑の甘露がもっと欲しい。

ルーディアの左手はエリスの右手に指を絡ませていた。

研鑽を積んだ力強さが伝わってくる手だった。

この手に何度守られたことか。

当然のように、エリスは応じて慈しむ。

繊細で華奢な細指だった。

この手に何度導かれたことか。

 

溺れそうになりながら息継ぎをした。

合間を惜しんで蜜の交換をした。

脳天が痺れるような多幸感に包まれる。

ああ、キスってこんなにイ(・)イ(・)ものだったんだ……。

ルーディアがすっかり惚(ほう)けた頃に、エリスはひとまずの満足を得たようだった。

二人の間に透明な糸が引いた。

肩で息をして、求めてやまなかった空気を吸う。

 

「えり、す……もっと。もっと、して……」

「……!」

 

求めてやまないものは即座に切り替わった。

エリスの中で、何かがプツンと音を立てた。

満腹になったはずの獣が、再び涎を垂らして獲物に飛びかかった。

 

「私も、もっとしたい……ルーディアがほしいの……」

 

押し倒されていた。

気付いて間もなく、再び甘美が訪れた。

舌先から脳天へ。

息継ぎする間がもどかしい。

鼻で息をすれば良いのだと、無意識の下で気が付いた。

気付いたことにも気付かない。

それほどまでに没頭していた。

 

重力に従い、エリスの赤毛が垂れ下がる。

小ぶりながらも形の良いルーディアの乳房が、それを上回るエリスの山脈に押し潰される。

その最中にも、時折の身じろぎが布越しに先端のイ(・)イ(・)部分を擦って、下腹部に切ない熱を伝えていた。

柔らかい双丘の先端の、隆起した果実。

平時よりも硬度を増したそれが互いに擦れ合うと、まるで禁忌を咎めるように、腰の浮くような刺激に苛まれた。

擦れ合うほどに、敏感になっていく。

 

快楽の一つ一つは、焦らすように微量だった。

けれども積み重なって燻るそれは、着実に感度を研ぎ澄ましていく。

毛先にくすぐられる首元でさえ、ルーディアは何かいけない悦びを覚えてしまいそうなほどだった。

 

「なんで、目、瞑るの……見て……みせて」

 

問うたのはエリスだ。

深紅を湛えた真っ直ぐな瞳は、熱に浮かされていた。

片時も、ルーディア以外を見なかった。

 

「……だって、はずかしい」

「だめ。みせて……こっちを、見なさい」

「……うぅ……えりすぅ……」

 

弱々しく、ゆっくりと。

臆病な小鼠のように薄目を開けると、翡翠のような瞳もまた、熱に浮かされているのがエリスには見てとれた。

 

見つめ合う。

 

静かな部屋で、艶かしい少女たちの息遣いと水音が微かに空気を震わせる。

平生の快活な声音とは異なるコケティッシュな囁き声が、ルーディアの耳元を撫でた。

 

「ねぇ……い(・)い(・)……?」

 

煽情に浮いた問いだった。

ルーディアには何のことかが分からない。

いいや、それは分からないふりだった。

ただ何(・)処(・)の(・)許(・)可(・)を(・)求(・)め(・)て(・)い(・)る(・)の(・)か(・)がわからなかった。

順当に双丘か。あるいは一足飛びに無毛地帯の秘境か。

けれど、どちらであろうと拒む理由はとうに無かった。

 

こくり、と頷く。

その了承に感激したかのように、エリスは再びルーディアにキスを降ろした。

懸命に突き出された小さな舌を優しく吸い、蜜を味わい、自身も舌を突き出した。

同時に空いた左手で灰色の衣を捲ると、ルーディアの乳房をまさぐった。

小ぶりな双丘がすっぽりと手に収まり、中央の果実が手中に堕ちるまでは同時だった。

指の腹で、優しく、優しくこねくり回す。

その度に身を捩(よじ)るルーディアのなんと可愛らしいことか。エリスは己の興奮が一段と昂るのを感じた。

右手は繋ぎ、左手には乳房。右の小丘にも触りたい。

何とはなしに、繋いだ手は離したくないと思った。

 

「ぁぇ……?」

 

永遠かと思われた深い口付けが不意に終わる。

ルーディアは口を半開きにしたまま、離れてしまったエリスの顔をぼぅっと見つめた。

そんな顔を満足げに見つめ返して、エリスは口の端の蜜をぺろりと舐めとった。

そして、右(・)の(・)果(・)実(・)を迎えに口を開く。

 

「あっ、エリスぅっ……!」

 

ルーディアは右側からも微熱を感じた。

ぷっくりと芯の通った先端が、丹念に愛撫されていく。

 

「……痛くない?」

 

気遣わしげに上目遣いをするエリスの口元では、淡い桃色の果実がいやらしく濡れていた。

 

「きもちい、です」

「そう……よかった」

 

誰に教わった訳でもない。

ただ、どうすればルーディアが悦んでくれるのか。

それを探りながらルーディアをわ(・)か(・)っ(・)て(・)いくのが堪らなく嬉しかった。

そうしながら頭を撫でられれば、ルーディアが褒めてくれているようでそれも嬉しかった。

 

「ね……エリス」

 

口が自由になって少しの余裕ができたのか。

ルーディアはそう言うと、繋いだエリスの右手を導いた。

 

「こっちも……おねがいします」

 

行く先は、指先が触れただけで期待の程がわかる秘裂だった。熱を帯び、物欲しそうにヒクついているその場所は、今この瞬間まで誰にも触れられたことのない場所だった。

下着の隙間から滑り込ませた指の腹で優しく撫でると、抵抗なしに指先が割れ目にぬぷりと沈んでいき、ルーディアの腰を跳ねさせた。

 

旅の間、ルーディアには頼りっぱなしだったとエリスは思う。

自分の方が年上なのに、背丈だって高いのに、この小柄な少女を頼ってばかりだったと。

ルーディアが自分に何かを請うなんて、腕っ節が必要な時だけだった。

そんなルーディアが、今は弱々しくお(・)ね(・)だ(・)り(・)をしているのだ。

精一杯可愛がることで、どんなに心が満たされることか。

 

「……わかったわ」

 

指1本は、難なく受け入れられた。

2本目もすぐだったが、体格か、あるいは経験の少なさからか。

それが今のルーディアにはいっぱいのようだった。

デリケートな部分を傷つけないように、けれど悦ばせるように。

ルーディアの膣内のイ(・)イ(・)ところを探りながら、エリスはゆっくりと抽送を繰り返した。

 

「はぁ……ん、私も……エリスに、したいよ」

「ちょっ……ルーディぁんっ」

 

と。ルーディアの秘処に夢中になっていると、自身のそれにもルーディアが触れてきた。望外の刺激に、エリスも腰を跳ねさせた。

修練で硬くなった己のものとは違う、華奢で柔らかな指先が与えてくる甘美な感覚は、自分でするより遥かに良かった。

 

「ダメよ……今日は、私がしてあげるって決めてたんだから……」

 

だから、良くなかった。

頼りにはなるけれどルーディアは歳下。

その意識がエリスの対抗心を燃やした。

あるいは奉仕の精神とも言えるその気持ちが、エリスの体勢を大きく変えた。

 

ルーディアの細腕を痛めないように抑えつけつつ、身体を下げる。するとエリスの目の前には、今しがた指先をぬらりと湿らせたルーディアの秘処。

半端に脱げ掛けた下着を取り払うと、いつしか部屋に漂っていた淫靡な性臭がいっそう強くエリスの胸を高鳴らせた。

 

「あ、やっ。えりす、そこはぁ……!」

 

反射的にルーディアは脚を閉じようとした。

いくらなんでも初めてで、それは飛び級しすぎじゃないか。というか恥ずかしすぎる。そんな抗議を含んだ抵抗だった。

 

「……だめ?」

 

しかしエリスは一歩も引かない。ルーディアの抵抗など容易に抑えつけて、ご(・)開(・)帳(・)の体勢に持っていく。

 

「汚いです、から……あっ」

「ルーディアのなら汚くなんてないわ」

 

その言葉を即座に体現するようにエリスは口付けをした。

続けて、一番外側を撫でるように舌で触れた。

先程までとは異なる快感に、ルーディアの意志はいとも簡単に組み伏せられる。

元々、快楽には弱いのだ。

 

ソ(・)コ(・)にエリスの口が触れた、その事実だけでルーディアの興奮は上り調子の一方だった。

うわ言のように発せられる拒絶の言葉は既に弱々しく、更なる慰めを期待しているのがエリスにはよくわかった。

 

様子を伺いながら愛撫を外側から内側へと進めていくと、いつもの利発そうな顔立ちが余裕など微塵も感じられないように歪められていく。

その原因が自分だと思うと、エリスもまた疼いていくのを自覚した。

その疼きをもっと昂らせるように、エリスは夢中で舌を這わせた。

 

そうして丹念にルーディアを愛していると、弱点がいくつか分かってくる。

イ(・)イ(・)場所を引き当てると、ルーディアは声をくぐもらせ、身体を強張らせるのだ。時にその場所を重点的に、時にその場所を避けて焦らしてみたり。

それを繰り返していると、やがてルーディアの柔肌は汗ばんで、呼吸も荒くなっていた。

 

もう一押し。

直感したエリスは、あえて触れていなかった一点を優しく唇で挟み込んだ。

ぷっくりと主張する陰核。

そこが一番敏感なところだと、エリスはわかっていた。

 

「〜〜ッ!」

 

これまでとは明らかに違う反応。

ルーディアが声もなく全身を硬直させ、ビクビクと細かに痙攣したのを見届けて、エリスは一仕事終えたことを実感した。

 

絶頂の余韻に身を浸すルーディアのあられもない姿。

普段は頼りになる2歳下の少女の痴態は、エリスの疼きをますます刺激する。

気怠そうに虚空を彷徨う翡翠の瞳、息も絶え絶えで半開きになった唇。

どれも自分にのみ見ることを許されていると思うと、エリスはこれまで感じたことのない満足を覚えた。

独占欲、あるいは支配欲。

どこか仄暗い欲求が満たされる感覚に溺れていく。

 

汗で額に貼りついた前髪。

覗く潤んだ眼差しが、エリスには「もっとめちゃくちゃにして」と訴えているように見えた。

 

「ルーディア……」

 

手始めに、エリスは自身の衣服を脱ぎ去った。元々そ(・)う(・)い(・)う(・)つ(・)も(・)り(・)で訪ねてきたから下着は着けていない。

続けてルーディアも脱がせにかかる。

弛緩した腕を上げさせて、乱れに乱れたネグリジェをベッドの端に追いやった。

 

「エリス……?」

 

まだ快感が尾を引いているのか、ルーディアの呂律は少し拙い。

そんな様子さえ愛おしく思いながらエリスは体勢を整える。

再びルーディアの両脚を開くようにして持ち上げ、その間に腰を寄せて膝立ちになる。

 

あ、これ正常位だ……と。

ぼんやりとした頭で、ルーディアの知識に経験が加わる。女性同士で、自分が下側になるとは思いもしていなかったが。

仮に自分がリードする側だったならこうもスマートには出来なかっただろう。

そう思えばこそルーディアは身を委ねた。

エリスなら巧くやってくれる。そんな確信があった。

 

「や、やさしくしてね……きゃぁ」

 

優しく、というのは少し難しいかもしれない。

目の前の小柄な体躯に覆いかぶさりながらエリスはそう思った。

身体を目一杯密着させて、ゆっくりと腰を動かし始める。

 

「あぁ……」

 

敏感な部分が擦れ合い、溜息のような声が漏れた。

ルーディアとし(・)て(・)い(・)る(・)。

エリスにしても、その事実だけで既に頭が沸騰していた。

それに加えてこの快楽がトドメになった。

 

「ルーディア、ルーディア……っ」

 

愛する名前を呼びながらエリスは一心不乱に腰を動かした。

気持ち良さに囚われて、懸命にルーディアを感じた。

 

「まって、エリスっ……、そんなにしたら……ッ」

 

優しくは出来なかった。

速いペースで敏感な部分を擦られて、ルーディアはあっという間に果ててしまう。

先に絶頂していたせいで、達しやすくなっている。

 

「イッてる、イッてますからぁ! まっ、んッ」

 

ルーディアが二度目の快楽に酔い知れる間も無く、エリスは止まらない。

もっと良くなりたい。もっと欲しい。

何かを必死に訴える唇を奪いながら、エリスは体勢を変えた。互いの脚をクロスして、より密着する形でルーディアを貪った。

 

「〜〜〜ッ!!!」

 

ルーディアは堪らなかった。

腰砕けになりそうな快楽に被せるように、休む間もなく次の快楽の波が押し寄せてくるのだ。唇も半ば強引に塞がれて静止することもできないのに、エリスの方はまだまだ達する気配もないのだから、頭がどうにかなってしまいそうだった。

それなのに、なんとかしてエリスを一度落ち着かせないと……と思う合間にもう一度達してしまい、まともに思考することさえ困難だ。

 

「んはっ、んむ……」

 

ちゅる、ちゅぱ……と舌と舌が絡み合い、

ぐちゅり、ぱちゅ、と下半身はびしょ濡れだった。

その背徳的な水音が、より一層とエリスの興奮を掻き立てた。

 

「ぷはっ、エリっ、まってっ、

またイッちゃ……〜〜♡!!」

 

「ルーディアっ、気持ち良いっ?

私、ちゃんと、できてるっ……あぅっ……ッ♡!」

 

そして、ルーディアが何度目か分からない絶頂を迎えたタイミング。

睦み合いの中で、ようやくエリスも一際大きい快楽の波を感じるに至った。

身体を震わせてその幸せを噛み締める。

 

はぁ、はぁ。

乱れた呼吸が二人分、情事の痕跡を物語るように木霊した。

ベットのシーツはすっかり皺が寄り、汗や体液が染みていた。

蝋燭もとっくに短くなって、もう僅かにしか残っていない。

 

呼吸が整ってきた頃に、エリスはようやく窓辺から月光が差し込んでいることに気が付いた。

 

「……ルーディア、気持ち良かった……ねぇ、私、まだしたい…………あ」

 

薄明かりは枕元を照らしていて、ルーディアの顔がよく見えた。

半泣きになって、虚な目でどこかを見つめるルーディアの顔が。

 

「ごっ、ごめんなさいルーディア! わ、わた、私……」

 

エリスは即座に過ちに気が付いた。

行為の最中、ルーディアは何を訴えていた?

気持ち良さそうにはしていた。でも、途中からは……。

 

血の気の引いたエリスの目には、ルーディアの胸の中心にある傷跡が目に入った。赤竜の上顎で、龍神に貫かれた痕跡。

もう決してルーディアを傷つけはさせまいと決意したのではなかったか。

今しがた初めて同士で浮かれていたが、ルーディアの身体はこんなに小さくて……。

知らず、エリスの目から涙が溢れた。

あんなにめちゃくちゃにして、もう、嫌われてしまったに違いない────

 

「月が、綺麗ですね」

 

と。溢れた涙を、華奢な指先が拭ってくれた。

気怠げな声の主は、さっきまで虚な目をしていたルーディアをおいて他にない。

 

「今夜は満月ですね。そういえば、前にエリスが泣いてくれた時もそうでしたっけ」

「月なんてどうでもいいわよ! ……その、大丈夫なの?」

 

問われ、ルーディアは瞑目した。

大丈夫かと訊かれたら、あまり大丈夫ではない。

快楽の余韻が残っていて、足腰はまだガクガクとしているのだ。

けれど、エリスが泣いているのを見てしまったら、大丈夫と言う他なかった。

そう言わなければ、エリスが自分の元を去ってしまう気がしたから。

 

「大丈夫ですよ。さすがに疲れましたけど……」

 

そう言って、ルーディアは魔術で杯を作り出した。水を注ぐ姿は実に手慣れていて、エリスが呆気に取られている間に二人分を用意してしまった。

どうぞと言われて口に含んで、初めて喉がカラカラだったことに気が付いた。

 

「……あ、ありがとう」

「どういたしまして」

 

水を飲んで、おかわりを貰ってまた飲んで。

すっかりとは言わないまでも平静を取り戻しつつあるルーディアに、エリスは聞かずにはいられなかった。

 

「……ねえ。その、どう、だった?」

「すごく良かったです。

むしろ、体力が追いついていなくて申し訳ないくらいで……その、今日はもう無理ですけど、またしましょうね」

 

即答だった。

あれほど泣かせてしまったのに、ルーディアは良かったと言って、次の約束までしてくれた。

嫌われていない。

そのことに心底ホッとして、エリスは今度こそ涙が止められなくなってしまった。

 

「え!? どうしたんですか!?」

「な、なんでも、ないわよ……。ぐすっ、明日するからね、絶対よ」

「なんでもないって……何か辛いなら言ってくださいよ?」

 

隣でオロオロとするルーディアの様子に、さっきまでとは逆ねと思いながら。

月光の差し込む窓を見上げれば、確かに今日は月が綺麗だった。

 

「……綺麗ね、月」

「え? あ、はい、死んでも良いです」

「ダメよ、ルーディアは私が護るんだから」

 

涙を拭ったエリスは、はにかみながらルーディアの頬を撫でた。

その手つきがこそばゆくて、ついとエリスを見てみれば。

彼女にしても先の台詞は面映(おもはゆ)いようだった。

 

 

 

-了-

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