異世界転生
「オラ! オラ! オラ! 喰らえや! オラ!」
「グッ! ウグ! や、やめっ、グ!」
記憶が完全に定着する5歳の時、俺は少し年上のガキを殴っていた。
…………別に記憶が定着しても、それまであったことを忘れるわけではない。
ムカつくことは、ムカついたままだ。
だから、そのまま馬乗りでボコボコにし続けた。
周囲にいる大人も子供もこちらに関わりたくなさそうに、一歩引いてみてる。
唯一俺の後ろにいる少女、俺がこのクソガキを殴ることになった原因の女の子だけは、ビクビクしながらも俺の傍から離れずに立っている。
満足するまで殴り続け、ようやくそのガキの上から降りる。
「ふぅぅ、クソがよ」
「あ、あの! て、てからちが…………」
「ん? あぁ、気付かなかった……」
未だに俺について来ている女の子に指摘され、見てみるとコブシから血が出ていた。
まぁ殴った相手が相手だからな……。
転生してからの記憶を思い起こしてみると、この世界、H×H世界じゃない。
…………死んだ後、なんかテンセイじゃなくてイセカイテンセイって出てきていた、ような気がするし。
記憶の中の情報的にこの世界、現代ファンタジー臭がプンプンしている。
なんというか現代日本にかなり近いのだが、異形と超能力者がいるのだ。
さっきぶん殴っていたガキも人間とトカゲの合いの子みたいな異形で、そのせいで殴った手の方が傷ついたわけだ。
「けが、せんせいにいって、みてもらったほうが…………」
「いやいらないよ。あんまりあいつらに弱い所見せたくないし……」
俺の後を付いてくる女の子も、頭から山羊の角らしきものを生やし、足の方も膝から下は動物のモノで蹄がある。
この施設にいる子供は俺以外、全員が何かしらの異形を持っている。
そう、施設。
ここは孤児院みたいなもんだろうと思う。
グレース何とか園、というのが正式名称だったはずだが、ここの職員は「フリーク園」か「ギフテッド園」と呼んでいる。
「フリーク園」と呼んでいる職員は子供達を蔑んだ目で見ているし、「ギフテッド園」と呼んでいる職員は羨んだ目で見ている。
その反応からもわかる通り、大人たちに異形は1人もおらず、大人たちの話を盗み聞く限りこういった異形持ちの子供は最近産まれるようになったようだ。
なるほど。
異形とそれ以外の人間で対立する系の世界観か。
そういうのも大好物だ。
現代とファンタジーの組み合わせは妄想意欲を掻き立て、脳細胞を特に活性化させてくれる!
あ! そうだ!
イセカイテンセイで前世の能力を引き継ぎできているか、確認しなきゃな。
できているのと、いないのとじゃ、人生設計が大きく変わってくる。
「
ステータス
名前:的場 中
チート:テンセイ イセカイテンセイ
能力:念能力(特質系:
操作系:
具現化系:
個性(『必中』)
「グヌッ!」
「だ、だいじょうぶ!? や、やっぱり、せんせいを、よんで」
「いや! 大丈夫だ! 呼ぶな!」
やべぇよ、やべぇよ……、これ、この施設まるごと証拠隠滅のために潰す必要が出てくるかもしれねぇ…………。
能力の引継ぎを確認できた。
それはいい。
それはいいのだが、新たに付け加えられていた項目、個性(『必中』)、コイツが問題だ。
個性。
これが存在するという事はこの世界は、僕のヒーローアカデミア、という漫画の舞台となった世界で間違いないと思う。
その原作では敵の親玉、金玉フェイスの魔王は、悪行の限りを尽くしており、人体実験などのために孤児院を利用している描写がある。
…………そしてここはおあつらえ向きに異形、個性を持ったガキがたくさんいる施設。
間違いなく、ラスボス傘下の施設ですね、ありがとうございました。
と、そこまで慌てながら考えてあることに気が付いた。
大人に個性持ちがいないな、と。
そうして思い返してみると、個性について異形や超能力という呼び方はされても、「個性」と呼んでいる人は見たことがない。
…………これは、もしかしたら、もしかするかもしれないな。
立ち止まって、女の子の方を振り返る。
「なぁ、個性って聞いたことある?」
「な、なんだろ? こせい? よくわからない…………」
「光る赤子は?」
「あ! それはしってる! せんせいが、よくいってる、はじめてのぎふてっど、だって!」
「何年前に産まれたのかはわかる?」
「わたしたちより、すこしはやく、うまれたみたいだけど……。よくわからない。せんせいに、きいてみる?」
「いや、いいや。ありがとう。少し考える…………」
第1世代に産まれたのか…………。
いやそうだよ、自分でも「異形は最近産まれるようになった」って確認してただろ、慌てすぎていた。
つまり、原作黒幕の暗躍までには、もう少し時間があるという事だ。
そこは少し安心…………。
うーん、ヒロアカ世界、かぁ。
それも原作よりも前、主人公の師匠的存在がいない時代とか、ゴッサムシティ以下の治安になるんだよなぁ。
治安の悪さは犯罪をするなら利用できるが、目立つと漏れなく金玉フェイス魔王が現れて、個性を奪う個性を使われるんだよなぁ…………。
ヴィランルートは無しか、または極力目立たずコツコツやるかに限られるな。
悩ましい。
でもこうして色々と将来を妄想するのは楽しくもあるな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
見た目が異形ではない子供で、この施設にいるのは俺だけだ。
そもそもの話、ここはそういった異形を持つ子供のための施設として作られたらしいからな。
そしてそんな施設になぜ俺がいるのか。
その理由は以前の孤児院で、個性を使ってしまったからである。
たった3歳の時に。
まぁ、それに加えて個性で人を傷つけたというのもあるかもしれないが。
俺は産まれたばかりの頃、母親に捨てられ、こことは違う孤児院に送られた。
捨てられた理由はわからないが、まぁ俺に対しての唯一正しい取り扱いだと思う。
普通の子供として育てていたら
まぁ、それで俺は普通の孤児院にいた。
そこでの事はほとんど覚えていないが、追い出される羽目になった事件についてだけは記憶している。
俺はその日の深夜、トイレに行きたくなり廊下を歩いていた。
そしてなぜだか明かりがついたままになっている部屋を見つけ、こっそりとそこを覗いた。
そこでは女の子と男の職員がいて、エロエロな行為を行っていた。
それを見た瞬間、3歳の俺、中君はなぜか頭に血が上り、近くにあった鉛筆立てを腹立ち紛れに思いっきり倒した。
その時に俺の中にあった個性『必中』が発露して鉛筆達が飛翔し、その男の職員の顔面へと全弾命中!
女の子の方には当たらず、正確に男の顔面のみに突き刺さり、そいつの重傷を負わせたわけだ。
そうして男は病院へ、俺はこの施設へと運ばれたのである。
俺がキレた理由は、今では俺自身にもよくわからないが、恐らく他人がエロエロなことをやっているのに自分はできないという環境にムカついたんだと思う。
今のこの施設の職員は全員、俺が前の施設で何をしてここに送られたのか知っていて、この施設を「フリーク園」と呼ぶ異形嫌いな奴らは俺のことを異形を脅かすのに便利な猛獣、「ギフテッド園」と呼ぶ異形に好意的な奴らは危険な怪物として見ている…………のだと、感じる。
…………そう見られても仕方ないくらい、他のガキ共とイザコザを起こしてきたしな。
意識が定着するまで俺、どんだけ暴力に飢えてたんだよ…………、根っからのヴィランかな?
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