※この作品はR-18です。

フランスから来た牝猫 BAD END   作:muzineki

8 / 10
8:死闘

深夜の遊園地、メリーゴーランドの前。

キャッツアイとカトリーヌ、3対1での戦いで、最初に仕掛けたのは瞳だった。

 

「たぁっ!」

 

鋭く短い気合いと共に、瞳の右足が鞭の様にしなる。

 

「がっ!」

 

脇腹を蹴られ、カトリーヌがバランスを崩す。

そこへ愛が顔面にエルボーを入れて追撃。

更に泪が足を払いカトリーヌに尻もちをつかせると、背後からスリーパーホールドをかけた。

 

「くそっ!」

 

カトリーヌは絞められたまま立ち上がると、強引に泪の腕を振りほどいた。

そして怯んだ泪に向かい、強烈なラリアートを繰り出す。

 

「危ない!」

 

瞳は叫ぶと、カトリーヌの背後からドロップキックを繰り出す。

背中を蹴られたカトリーヌはバランスを崩して転倒し、メリーゴーランドの柵へと叩きつけられた。

 

「ふぅ……危なかった。ありがとう、瞳」

 

「オッケー、どういたしまして」

 

笑顔で目配せする泪と瞳。

カトリーヌの支配から脱した瞳には、いつもの快活さが戻っていた。

 

「調子に乗るんじゃないよ!」

 

カトリーヌはすぐさま立ち上がると、鬼の形相で瞳に飛びかかった。

しかし瞳は冷静にそれを避け、カウンターを顔面へ叩き込む。

 

「がはっ!」

 

さすがのカトリーヌも、激痛の呻きと共に足を止める。

そこへ泪と愛が、掌底やエルボーを繰り出す。

カトリーヌも応戦するが、3対1の打ち合いでは敵うはずもない。

三姉妹の繰り出す攻撃を捌ききれず、まるでサンドバッグのようになっていく。

 

(行ける……今度こそ勝てる!)

 

瞳はそう思った。

泪と愛も同様であったが、それは甘い考えであった。

三姉妹の打撃を全身に受けながらも、カトリーヌはじっと防御を固めて隙を伺っている。

そして愛がスキの大きい踵落としを繰り出した瞬間、恐るべき気迫で反撃に転じた。

 

「ナメてんじゃないよ!」

 

高々と振り上げられた愛の右足首を、カトリーヌの左手が掴む。

 

「あっ!」

 

愛がバランスを崩して転倒しかけた所で、カトリーヌは足首を掴んだまま反動をつける。

そして棒切れでも扱うかのように、愛の身体を放り投げた。

 

「がっ!!」

 

なすすべもなくメリーゴーランドの鉄柵に叩きつけられた愛が、ずるずると滑り落ちる。

 

「愛!」

 

「次はアンタだよ」

 

愛に気を取られていた泪に、カトリーヌのショルダータックルが迫る。

 

「キャァァァァァ!!」

 

まるで交通事故のように、泪の身体が吹き飛ばされる。

カトリーヌはそれを追いかけ、仰向けで倒れた泪の腹へ右足を振り下ろした。

 

「がっ!!」

 

口を目一杯に開いた泪が、飛沫をほとばしらせた。

あまりの激痛に両手で腹を抱え、げほげほと咳き込みながら痙攣している。

 

「フフフ……3人がかりなら、勝てるとでも思ったかい?」

 

不敵な笑みを浮かべたカトリーヌが、残った瞳にゆっくりと歩み寄る。

 

「ひっ…」

 

瞳は肩を震わせ、怯えるように後ずさりする。

頭にはこれまでの「躾」で叩き込まれてきた、カトリーヌへの恐怖が蘇る。

 

「さっきまでの威勢はどうしたんだい、仕掛けてこないなら、こっちから行くよ」

 

カトリーヌが瞳へ向かって突進し、強烈なラリアートを繰り出す。

瞳はしゃがんで回避すると、カトリーヌの顎に掌底のアッパーを叩き込んだ。

 

「がっ!」

 

カトリーヌの顎が上がる。

瞳はさらに得意の回し蹴りで追撃した。

並の相手なら即座に行動不能へ追い込む連続攻撃。

だがカトリーヌは2、3歩よろめいただけで体制を立て直し、大振りの鋭いストレートを放ってくつ。

 

「ひっ!!」

 

寸前の所で瞳は拳を避ける。

迫力のあるパンチの空振りに瞳の背筋は凍り付き、カトリーヌに隙が出来たにもかかわらず、バックステップで距離を取ってしまう。

 

「どうしたキャッツアイ、せっかくのチャンスだったのに、攻めてこないのかい?」

 

「くっ…」

 

瞳は舌打ちすると、カトリーヌの周りを素早く動き回りながら、掌底やキックを繰り出した。

しかしカトリーヌは暴挙の構えすら見せず、全てを受け止めている。

顔はニヤニヤと笑ったままで、全く効いているそぶりがない。

カトリーヌに対する恐怖心は、無意識の内に瞳の踏み込みを浅くしていた。

 

「効かないねぇ……そんな逃げ腰の攻撃、蚊が刺しているのと同じだって、野球場で忠告したじゃないか」

 

カトリーヌは自分の周りを動き回る瞳の、長い黒髪をつかんだ。

 

「あうっ!」

 

自分の走る勢いで髪の毛を引っ張られた瞳が、悲鳴を漏らす。

カトリーヌは瞳の髪を掴んだまま右足を上げると、背中を蹴り飛ばした。

 

「きゃぁぁ!!」

 

前へ倒された瞳は、地面と強烈な口づけをする。

さらにカトリーヌは俯せに倒れた瞳に近寄り、背中を踏みつけた。

 

「がはっ!」

 

「どうだいキャッツアイ、そろそろ降参かい」

 

言いながら、カトリーヌが背中に体重をかける。

腹這いのまま瞳が悲鳴を上げる。

 

「あっ……ああああっ!!」

 

「さあ早く詫びを入れて、いつものようにブーツを舌で綺麗にしな。今なら胸と性器へ鞭10発ずつの罰で勘弁してやるよ」

 

カトリーヌが瞳を踏みつける脚に更に力を入れる。

その時、ダメージから回復した泪がカトリーヌへ飛びかかった。

 

「ぐっ!」

 

勢いの付いた膝蹴りを顔面に受け、カトリーヌが吹き飛ぶ。

 

「姉さん!」

 

助けられた瞳が立ち上がると、泪が目配せをする。

姉の意図を理解した瞳は、二人でカトリーヌに向かう。

 

「チョコマカとうるさい子猫達だね!」

 

カトリーヌが瞳に向かってミドルキックを放つ。

だが瞳はそれを避けて懐に入ると、至近距離から掌打を浴びせた。

 

「がっ!」

 

腰の入った一撃にカトリーヌがわずかに怯む。

その隙をついて泪が背後に回ると、再びスリーパーホールドをかけた。

 

「くっ……またかい!」

 

カトリーヌは力任せに泪を振りほどこうとする。

しかし、今度はそうはいかなかった。

カトリーヌの下半身に力が入らないよう、瞳が足にしがみついていたからだ。

 

「愛、今よ!」

 

泪が叫ぶ。

身体を押さえつけられたカトリーヌの正面には、ショットガンのようなものを構えた愛が立っていた。

暴徒鎮圧用のゴム弾を装填した、ライオットガン。

当たればヘビー級ボクサーのパンチにも匹敵する威力がある。

これがキャッツアイの用意していた切り札だった。

 

「いけぇ!」

 

愛がカトリーヌに向けてゴム弾を発射する。

先端に掘られた裂け目から風圧で十字に広がり、カトリーヌへ迫る。

 

バシッ!

 

鈍い大きな音と同時に、来生三姉妹の動きが止まる。

彼女たちの期待とは異なり、ゴム弾はカトリーヌの拳にいともたやすく弾かれてしまった

 

「こんな物で私を倒すつもりだったのかい、舐められたものだねぇ」

 

続いて愛が2発目を発射する。

だがカトリーヌはフンと鼻を鳴らすと、今度はゴム弾を素手で掴んでしまう。

 

「ば……バケモノ……」

 

泪がそう呟く。

瞳もただ呆然としている。

身体を押さえつけられていた力が弱まったカトリーヌは、瞳と泪をあっさりと振りほどくと、愛に向かって突進した。

 

「ひっ……ひいっ!!

 

恐怖に顔を引きつらせて愛がライオットガンを構えるが、その前にカトリーヌの拳が腹に突き刺さる。

 

「がはっ!」

 

「こういう物は人に向けちゃいけないって教わらなかったのかい。悪い子猫には、躾が必要だね。」

 

カトリーヌはライオットガンを愛から奪うと、彼女へ向けて発射した。

 

「ひぎゃあああぁぁぁぁ!!」

 

ゴム弾を足に受けた愛が絶叫する。

 

「足がぁ、足がああぁぁぁぁぁっ!!」

 

ふくらはぎを抱えて愛が転がり回る。

 

「ふぅん、そんなに痛いのかい」

 

言いながら、カトリーヌは愛の足を踏みつける。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁっ!!」

 

「愛!」

 

妹の余りの痛がり方を見た泪が、カトリーヌに飛びかかる。

しかしカトリーヌは泪の拳を簡単にいなすと、背中へ拳を叩きつけた。

そして前傾姿勢になった泪の頭を股で挟み、胴に腕を回して持ち上げる。

逆さになった泪の頭の下には、愛の身体があった。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

泪の悲鳴と同時に、渾身のパワーボムが愛へ叩きつけられる。

苦悶の表情を浮かべながら、愛はピクピクと身体を痙攣させ、白目をむいていた。

頭部を思い切り打ち付けた泪も同様に、愛の身体の上で失神している。

 

「さて、お次は……」

 

「ひ、ひいっ!!」

 

視線を合わせて震える瞳は、既に戦意を喪失していた。

 

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