チビ殺し 作:時村ニレ
手際は、ある程度は妻と打ち合わせていた。拷問を受ける相手が長時間失神していたから、打ち合わせに
石の床の上、女を仰向けに寝かせる。妻は女の太腿の上に
手のひらを広げさせて、それぞれの指の根元に、きつくきつく包帯を巻く。出来る限り血管を圧迫するように。妻の方も、足の指に同様の処置を行っている。
女は、気付いていただろうか。部屋の四隅のロウソクの灯の上、総監部支給品の数々が消毒のために炙られて熱されていたことに。
まずは先の長いペンチ。女の爪を根元から剥がすのに使う。緊張から汗の湿った左手の手のひらを鷲掴みにして、爪先にあてがい、呪力を流しつつ力まかせに一気に捻る!
指から剥がすごとに意図せず震え、跳ね、動こうとする左手を俺は抑えつける。呪力を込めるのは当然忘れない。これで非力な女は抗う術を持たない。
5本全部剥がし終えたところで、圧迫止血していても当然ながらなお先端に血の滲む左手に、塩をたっぷり入れ込んだ厚地のミトンを被せる。脱げないようにミトンの根元も縛る。
「!! ヒッ! ウゥ、ツッ……」
傷口に塩を塗り込むのと同様の処置に、これまで耐えていた女の口から、初めて悲鳴らしい悲鳴が漏れた。
……足の作業を担当している(こちらは厚地の靴下を被せることになっていた)妻が、呆れるように言った。
「うっるさいわねぇ! 猿ぐつわ噛んどく?」
「……あ、お、おゆるしいただけるなら、その、おゆるしいただけるのでしたらっ、おねがいしますぅ……」
妻は舌打ちしながらハンカチを出し、
――さて、処置を続けよう。
右手の爪も左手と同様とする。呪力の圧任せにペンチで爪を剥がし、塩入りのミトンを被せた。
『謝るな』という指示。完璧にわたしが守り続けられたのかはかなり怪しいところだ。一度言いそうになったから。
『泣くな』という指示が守り抜けているのかも、相当に怪しい。たぶん、私の顔はとんでもなくグショグショになってるに違いないなら。……言うまでもなく、汗とか色々で!!
「……ヒュッ!! ア"ッ、……グュッ!!」
猿ぐつわの効能はてきめんに過ぎる。
――噛ませてなければ、みっともない声があふれ出ていたろう、奥さんの方がキレるタイプの。
無意識に手足をバタつかせてしまうほど、四肢の先端の痛みは、鋭くわたしの精神に染みる。厚手の手袋と靴下の中には何か塗り込められているのか、いや、何も塗ってなかったとしてもわたしには判別はつかないのだけども。
御二人がわたしから離れた。わたしの手足の作業が一段落ついたらしい。
当然ながら、御二人のどちらも傷付いたわたしに動揺するようなそぶりを見せるはずがない。むしろ、……わたしに冷たく呆れておられるのか、この顔は。
仰向けに倒れるわたしを見下ろして、奥さんはそっけなく口を開かれた。この部屋の、呪符だらけの壁の一面を顎でしゃくって。
「あの壁に両手をついて立ちなさい。……いま自力で歩けないなら、ハイハイしてでも壁に向かいなさい」
足の指が一本欠損、手足の爪を全喪失。立つのであれ這うのであれ、指先に体重を掛ける動きは難渋することだろう。
……見込みの通り、女は込み上げてくる痛覚にいちいち顔を歪めている様子。ハイハイを選んだ上でもノロノロした動きは、俺達からしてみると酷くまだるっこしい。
「トロいな、急げよ」
俺は言った。妻との打ち合わせの通りに。
妻は盛大に舌打ちする。演技どころではなく素で苛立っているのか、見せつけるように呪力までも多少含めて女に殺気を飛ばした。
女は震えた。震えて、……硬直して、動けなくなる。
「この程度の呪力に負けるのか!? アホらしいな!!」
このパターンは想定外で打ち合わせから逸脱するが、バカバカしいありさまには俺がキレたって構いはしないだろう。俺は本心から吐き捨て、横から女の脇腹を蹴る。
吹っ飛ばされるようにひっくり返った女の顔は蒼白で、猿ぐつわの下の呼吸は、パニックそのものと言ったように激しくあえいでいる。
その死装束の襟を妻が掴んで、女の顔を一発ビンタした。いい音が鳴る。
「よーく分かったわ。アンタは弱すぎるし、私達は拷問に不慣れすぎる。何もかも私達の手で終わらるってこと、達成感もあるけど『相手の弱さにイライラする』ってデメリットもあるのね。
でもねぇ、たかだかこのくらいの呪力で動けなくなるのは、アンタの怠慢よ。心が弱すぎて、罰を与えるに十分値する。本っ当に、拷問系術式持ちのプロに任せたい気分だわぁ? ……『1日2日どころじゃなく、生きるのを後悔するレベルまで徹底的に痛めつけて下さい』って言い添えてね」
妻は女の襟首を掴んだまま続けた。
「アンタが失神してる間にね、私達は話し合ったの。ウチの夫はね、『拷問としてなら、まだ
……選ばせてあげる、2択のうちどうするか。1つ目、この私達の拷問を切り上げて、拷問系術式のプロのところで苦しむか。……2つ目、ここに居続ける代わりに、失態の罰としてうちの夫に『また』犯されるか。これを選んだら、さっき処女散らした時よりずっとキツく
本来、動きがトロいと無理に言いがかりを付けて、こう提示するはずだったのだが。多少予想から外れても問題ない程度の話だろう。
女が失神していた頃。女を見下ろして、妻はこう切り出した。
「コイツね、首絞めながら犯されるのが心底ダメになってるタイプ、……かもしれないわ。ひょっとしたら、単に首絞めにトラウマがあるタイプ、かもしれないけれど」
「どうしてそう感じたんだ?」
「さっき犯す時、コイツの首元にあなたの手を当てたでしょ? その時から表情のトーンが変わってた気が、する……。緊張が強くなっただけかもしれないけど……」
「……そうか? 俺は気付かなかったな……」
「もしも私の勘が正しいなら、この気付きは拷問に使える気がするの。……あなた、コイツをもう一度犯すことって出来そう?」
女は、苦し気に俯いた。猿ぐつわのせいで発語できずとも、内心で重く葛藤している様子が目に見えた。
俺達の読みはある程度正しかったらしい、と、……思いたい。自分が乱暴に犯されることを『どうでもいい』と断じる性質であったなら、そのどうでもいい方の選択肢に飛びついていただろうから。それでも、妻は決断を突き付けるべく、女の猿ぐつわを乱暴に外す。
「どうするの? 今決めて答えなさい」
初めの頃よりはずっと弱った、途切れ途切れのかすれ声。それでも、はっきりと決断の形をしていた。
「…………。わたし、を、……おかして、いただけませんか。ここで……」
「……いいでしょう。じゃあ、完全に脱いで裸になりなさい。死装束の下、肌着は無いはずよ。アンタが失神している間に布地切って全部脱がしたもの」
「はい……」
妻は女の後ろに回る。猿ぐつわをもう一度女に噛ませた。次いで死装束の帯を緩め、ミトンを装着した女の脱衣を手助けする。最後に、女の髪のゴムを解き、眼鏡を没収した。
俺は女の死装束を受け取り、石の床に広げる。白い布地の上に膝立ちした俺は、更に全裸になった女を妻から受け取るなり押し倒した。
バチン! バチン! バチンバチンバチンバチン!!
いっそリズミカルなほど女の頬に往復ビンタを喰らわせながら、俺は自分の逸物が
呪力を帯びていない軽いつもりのビンタも、やはりそこそこダメージになるらしい。即死させたくないなら力の加減をするしかないのだが、それはそれで気遣っているように感じてしまい、俺の小さな苛立ちは消せない。
叩かれている間も、相変わらず女は両脚を動かしていた、俺の脚に纏わりつかせようとしてくる。俺は、その動きをいなしつつ、自分のズボンと下着をずり下げた。
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