「時間操る系のチート能力」を手に入れた 作:あああああ
桃崎あけびを殺した。
特に思うところはない。
それよりも殴り付けた手が痛い。
さっきまでアドレナリンが出てて感じなかったが、痛みに鋭さが増してズキズキする。
俺は手だけの時間を戻して傷を巻き戻した。
逆再生のように傷が塞がってゆく。
俺の手は完全に元に戻っていた。
これって定期的に肉体を巻き戻せば永遠に老いることは無いんだろうな。
やはり時間に関して俺に出来ないことはない。
改めてそう実感した。
さて、続きを始めるか。
俺は桃崎の死体に注視し巻き戻しを念じる。
その際に、「肉体のみ」という条件付けをした。
先程までの記憶を保持したまま巻き戻したかったからだ。
意識まで巻き戻ってしまったら、拳を痛めた意味がない。
散らばった血や欠けた歯が桃崎の顔面に集まって、パズルみたいにハマって傷を塞いでいく。
腫れもどんどんと治まって、やがて桃崎の顔は完全に癒えた。
ゆっくりと桃崎が目を開く。
「よう、いい夢見れたかよ。桃崎」
桃崎はこちらの姿を認めると、「ひっ」と小声を漏らし、みるみる顔色が悪くなっていった。
「こ、殺さないで……」
俺は思わず笑った。
彼女の中では殴られているうちに意識を失って目覚めただけなのだろう。
実際は顔面をぐちゃぐちゃにされて死んでいたというのに。
「いいや。お前はもう死んだんだよ。
俺が蘇らせたんだ」
「なんなの、あんた。一体なにが、どうやって……」
俺は桃崎に全て話すことにした。
聞かれても困らないし、より絶望して欲しかったからだ。
「朝目覚めたら時間を操ることが出来るようになっていた」
「時間……」
呟く桃崎を無視して、
俺は教室の棚にある花瓶から花を抜きとった。水仙の花だ。
「この能力はなんでもできる」
俺は水仙の花の時間を進めた。
みるみるうちに水仙が萎れて枯れてゆく。
やがて原型を失い茶色い繊維質になったそれをぐしゃぐしゃに握り潰した。
手を開いてパラパラと落とす。
「うそ……」
桃崎が信じられないって感じで呟いた。
俺はできる限り威圧的に続けた。
「殺す事なんて簡単だ。そして、蘇らせるのも」
俺は朽ちて粉々になった水仙の時間を巻き戻した。先程の逆再生のように手元に水仙が集まり、みるみるうちに瑞々しい元の姿になった。
桃崎は唖然とこちらを見るだけだ。
「これは、これからのお前だ。
この水仙のように何度も殺して蘇らせてやるよ。絶対に逃がさない。
逃げたり自殺したり誰かに言っても、無駄だ。
全部巻き戻せるからな。永遠に苦しんでもらうぞ」
「い、いやああああああああ!!!」
俺は笑いながら叫んだ桃崎の肉体時間を進めた。
みるみるうちに桃崎は老いていった。
珠のようだった肌に深いシワが刻まれ、
頭髪が白んで抜け落ちてゆく。
ポロポロと何本か歯が抜け床に落ちる。
ハリのあった胸がシワシワになって干し柿のようになった。ピンクの乳輪がシワシワのレーズンのように縮んだ。
「あ、ああ……」
しゃがれた声で呻く老婆になった桃崎。
「だが、俺の言うことを聞けばある程度は勘弁してやる。従わないなら老婆のまま終わらない地獄を見せてやる……。どっちがいい?」
「従います! なんでも!」
歯抜けのババア桃崎がそういうので、俺は元の年齢まで桃崎を戻してやった。
自分が一瞬で老いる感覚というのは来るものがあったのか、明らかにホッとした表情を桃崎は見せた。
俺は桃崎の時間停止を解除して、服を着させた。
恥じらいよりも恐怖が上回っているのか着替えている所を凝視しても特に反抗的な気配はなかった。
言いがかりを付けられて殴られたり老いさせられたり殺されたりされたくないんだろう。賢明だ。
そうして2人で教室に戻ると、止まっているクラスメイトに桃崎は驚いていたようだが、俺に少しでも悪く思われないようにその驚愕を隠す仕草が伝わってきて、愉快だった。
桃崎を元の位置に行かせ俺は時間停止を解除した。
喧騒がまた戻ってきた。ざわざわと弛緩した空気だ。俺は自分の席に座って、ちらりと桃崎の方を見た。
顔色が幾分か悪く見えるが、それは俺が前後関係を知ってるからだろう。特に何かを悟られることも無く、クラスメイトとの会話をしているようだ。
俺はそれを確認して、HRが始まるのを待った。
次の復讐を考えながら。
次回:裏切り者に復讐