PERSONA5 Osaka's Phantom Thieves 作:ボルメテウスさん
本来の目的であるオタカラの場所は、未だに分からない。
なので、ここでこのパレスの主である暗殺者と戦う意味は、まるでない。
むしろ、すぐにでも脱出しなければならない。
だが、ここで逃げようにも隙は見せてくれない。
「だとしても、どういう事だよ」
パレスの主は、目の前にいるのに、輪郭がはっきりしねぇ。
そう、疑問に思っている間にも、次の瞬間にはパレスの主は動いた。
「お前が何者だろうと、死んで貰う」
それはまるで高速で煙が動くような感じだった。
その手に持つクナイは、そのまま俺に向かって突かれていた。
「ぐっ」
すぐに手にあるナイフを盾にして、防ぐ事は出来た。
しかし、それだけで攻撃は終わらなかった。
その一撃が無駄だと理解すると共に、流れるようにパレスの主は、その手にあるクナイの軌道を変えて再び攻撃を仕掛けてきたのだ。
今度は二撃目。しかも、さらに速い。
俺は何とか、身をよじってかわす。
パレスの主の攻撃はまだ止まらない。
三撃目は、俺の首を狙っていた。
それを後ろに下がって避けた所で、ようやく攻撃が終わった。
「なんだよ、こいつ……」
攻撃が見えないわけではない。
パレスの主の動き自体は、しっかりと見えている。
しかし、それが、煙のように掴みどころがないのだ。
そして何より恐ろしいのは、こちらの手の内を全て見透かされているかのような、そんな動きだ。
先ほどの攻撃を、ギリギリまで引きつけて避けることが出来たのも、実力の差故だろう。
「ふむ…… どうやら、まだ本気を出してはいないようだね」
パレスの主が言った。
確かに、今はまだ本気を出していない。
だが、こいつの前では、それも無意味に思えた。
相手の姿が見えず、動きも捉えきれないこの状況では、無理だ。
「だとしてもな」
この場で、俺は退く事は出来ない。
ここで、退けば、千束達に被害が出る。
だからこそ、俺は退かない。
次に来る一撃。
それに対して、俺はナイフを手に持ち、防ぐ。
パレスの主からの次々と放たれる攻撃。
最初の方は対処をするのは難しかった。
しかし、徐々にだが、その動きが見えるようになってきた。
「なんだこれ」
それは、目の前にいるパレスの主の動きなのか、それとも別の何かなのか。
殺気が籠もった攻撃。
それらが、俺の中にある何かが溢れ出そうになった。
今ならば、このパレスの主も簡単に殺せるんじゃないのか?
そんな事も可能ではないのか。
そう、考えた時に。
「バーカ!」
「へっ」
聞こえた声、それと共に、俺はナイフでパレスの主からの攻撃を受け止め、後ろに跳ぶ。
それはパレスの主も同じだったのだろう。
同時に俺の腹部に襲い掛かる衝撃。
「ぐへぇ!」
「何をやっているの、馬鹿! そんな事をしたら、あの人、死んじゃうでしょ!」
その蹴りを放ったのは千束だった。
「いや、それは、あれ」
すると、先程までの黒い感情が抜け落ちた。
俺は一体。
「命を大事に、それが私達だったでしょ」
「……あぁ、そうだったな」
その言葉で、俺はようやく自分を取り戻せた気がする。
これまでにない戦いに、俺もヤバかったからな。
「……命を大事にだと」
その言葉にパレスの主の動きも止まった。
「そう、あなただって、なんでそんな殺しの仕事をしているの!」
そう、千束はなんと問いかけた。
「わっちは」
その問いかけが、俺達の常識を覆す結果になるとは、この時は知らなかった。