櫛名アンナは11歳を迎えると胸に違和感を覚えた。気がつくと真っ平だった胸はぷっくり膨らみ始め、お気に入りのブラウスを着ると乳首が目立ち始めた。
最初は少し気になった程度だったが、日を追うごとに違和感は大きくなり、まだ乳房は小さいながらもその存在感を主張するようになった。
(また大きくなったのかな)
確認するように触れると柔らかくふわふわと体を包み込む感覚が気持ちよくて一人になると、つい何度も触ってしまうようになった。
ある日伏見猿比古とその上司、淡島世理が話しているのを鎮目町で見かけた櫛名アンナ。
淡島は制服に大きな胸がはち切れんばかりに主張しており、歩くたびに大きく揺れるため周囲の男たちの視線を集めていた。
街を歩くカップルのように身長差も程よい二人は制服でなければデートをしているようにも見えるだろう。アンナは気がついてしまった。淡島への嫉妬が自身の中で芽生え始めていること、同時に伏見への気持ちに。
しかしアンナの周りの環境は特殊で朝帰りする周防の首元にはキスマークがあり、ふと能力で見てみると相手はよくわからないが少女漫画でも見かける、[エッチなこと]をしていた痕跡だというのはわかった。
朝帰り後の周防は満足げで恋人とすると気持ちいいらしいということも知り、興味を持ってしまったのだ。
バーということもあり夜になるとそういう話題も増えるため、水を飲む口実でカウンターに座りながら聞き耳を立てている。子供だからわからないと思われているのが幸いだった。
「草薙さん、最近ご無沙汰でしょ」
「まあな忙しいし相手もおらんからな〜」
「だったらいい店ありますよ〜?うちの嬢たちはみんな粒ぞろいだし、きっと気に入ってもらえますよ!」
「せやなぁ、考えとくわ」
草薙と客との会話に耳を傾けていると、どうやら大人の男にとってはセックスとは娯楽でありコミュニケーションの一環であることがわかった。性行為に興味があったアンナは、さらに興味が湧き、端末で性行為等の知識が深まっていき、
対象として頭に浮かぶのは伏見で、伏見を気持ちよくさせたいという気持ちが強くなっていったのだった。
草薙が買い出しで不在の夜に櫛名は周防の部屋に向かう。
「アンナかどうした」
「ミコト……イズモには言えなくて」
いつものように抱き上げ髪を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めるアンナを見て、まるで猫のようだと思った。
「サルヒコのこと好きになっちゃった」
「ほう?」
周防はアンナから伏見のことを相談され驚いたが、それと同時に嬉しくもあった。この少女が人を好きになるということは成長の証だからだ。
「まあ草薙ならうるさそうだな……でも伏見なら平気だろ?」
「イズモにいえないのはね……エッチしたいってサルヒコ見てると思っちゃうから」
そう言って恥ずかしそうに俯く姿には周防でも少し驚きを隠せなかった。確かに幼いとはいえ女なのだと思い知らされた。
「そりゃ草薙には言えないな、あいつ過保護だからな」
周防はそう言ってアンナの頭をポンっと撫でる。
「サルヒコも私のこと子供だって思ってるかなぁ……」
「好きだって言ってみろ。意識し出すかもしれねえ……明日草薙が居ないうちにバーに来るように言っとく」
周防はアンナが部屋出ていくのを見届けて、宗像に連絡を入れた。
「室長がここに行けって……まあ休みたかったんでいいですけど」
制服のままやって来た伏見に、周防はアンナの居場所を伝えると伏見は不思議そうな顔のまま、アンナの自室へ足を運んだ。
ノックをすると中から声が聞こえ、中に入るとそこには珍しく丈の短いワンピースを着たアンナがいた。
いつもは膝下まであるスカートにタイツを履いている姿しか見たことがなかった伏見にとってその姿は新鮮に映った。
「サルヒコありがとう来てくれて」
「……まあ、歩いて来れるし」
そう言うとベッドに腰掛けるように促される。伏見は素直にそれに従い座ると、隣に座った櫛名がぎゅっと抱きついてきた。
突然のことに驚いていると櫛名の身体が震えていて、泣いているのだと気がつく。
「サルヒコのこと好きになっちゃったの……ごめんね」
「……なんで謝るんだよ」
「……だって私子供だし」
ただの誰にでも言う好きではないとさすがの伏見も理解した。
「そこまでびっくりするほど歳離れて、ないだろ。ただ俺は恋愛とかよくわからない……」
「うん、知ってるよ。でも好きなの」
そう言って顔を上げた櫛名の頰は赤く染まり、目は潤んでいた。
そしてそのまま唇を奪われる。初めての感触に驚く暇もなく、すぐに離れた。
「サルヒコは嫌じゃない?」
不安そうに見つめてくる少女に対して嫌悪感などない。
「……爛れた恋愛しようとすんな」
「でも……そういう意味でも好き……」
再びぎゅっと抱きつき柔らかな身体を押し付けてくる。伏見はされるがままになっていた。
「……押し付けんな……思ったより柔らかいからびっくりした」
顔を真っ赤にした伏見に気をせず、櫛名は抱きついたまま囁く。
「おっぱい当たってドキドキする?もっとくっつけばいい……?」
そう言いながら身体を密着させてきた。
「おいっ!やめろって」
「ふふ、可愛いね」
いたずらっぽく笑う顔は年不相応な色気を纏っていた。伏見は頭がクラクラしてくるようだった。
「まだ好きじゃなくてもいいから……恋人にして?」
そう囁いた後、もう一度キスをしてくる。今度は触れるだけのキスではなく、舌を絡ませ合う濃厚なものだった。
「他の人には秘密だからな……」
「ん……わかってる」
唇を離すと唾液が糸を引くほどに激しく絡み合っていたことがわかる。伏見は初めての経験で戸惑いながらも興奮していた。
(こんなの知ったらもう戻れない)