「むっ……むぐっ……むぅん!」
その頃、地下ではローターから与えられる強烈な快感に、瞳が身を仰け反らせていた。
汗にまみれた肉体が動く度に、手足を拘束する鎖がガチャガチャと音を立てる。
秘められた部分からは、愛液が止めどめなく流れ、地下にむせぶような女の芳香を漂わせていた。
「むぐぅ……むぅぅぅん……んぐぅぅぅぅっ!」
繰り返されるローターの刺激に、瞳の身体は悲鳴をあげていた。
もはや快楽に抗する体力は、残っていない。
イキっぱなし同然なのだが、その一歩手前でローターは刺激を弱め、寸止めされたような状態が続く。
全身がピクピク痙攣し、呼吸するのさえ辛い。
なのに瀬口の調教を受けた身体は、刺激にますます強く反応してしまう。
瞳の精神力は、限界に達していた。
(も……もう、ダメ……
わずかに残された理性が弱音を吐いたとき、瞳の中で何かが決壊した。
(ゴ、ゴメン……姉さん……愛……もう私、これ以上は……耐えられない……)
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、瞳はわずかに自由を許された首をぶんぶんと振った。
全身をべっとりと汗で濡らし、髪を振り乱し、アイマスクの下から涙を流すその姿は凄絶だ。
(……ダ、ダメよ……瀬口に正体がバレたら、私たちは終わりなの……最後までがんばらないと……)
限界を超えた肉体を自覚しながら、悲壮な決意を新たにする瞳。
だが悪魔のささやきが、彼女の頭に考えてはいけない一言を注ぎ込む。
(で、でも……その最期って……いつ?)
その瞬間、ピシッと何かが砕ける音を瞳は聞いた。
同時に鉄格子の扉が鈍い音を立てて開く。
目隠しをされた瞳はすぐに反応し、手足を拘束する鎖をガチャガチャと鳴らした。
「むぅ……むぅん……んむぅ……」
もどかしそうに身体を捻り、ボールギャグを嵌められた口元からせつない喘ぎを漏らす瞳。
その姿に入って来た者は、小さくため息をつくと、ボールギャグを外した。
「あっ……はぁ……はぁ……は、話すわ……ぜんぶ……だからもう許して……」
アイマスクの下からボロボロと涙を流しながら、瞳はそう呟いた。
そして何かに取り憑かれたように、言葉を並べ始める。
「わ、私の名前は……来生瞳……です……住んでいる場所は……犬鳴商店街にある……キャッツアイという名前の喫茶店……家族は……姉の泪と……妹の愛で……」
「知っているわよ」
「…………!」
クールな女の声を聴いた瞬間、瞳は雷に打たれたように身体を震わせた。
アイマスクを外されると、目の前には太った醜い瀬口ではなく、冷たい美貌の女がいた。。
「こんな美人を瀬口なんかと間違えるなんて、まったく失礼な話ね。」
キャッツハンターはそう言うと、リモコンを使ってローターの振動を一気に引き上げた。
「は、はぅあっっっ! あぁぁぁぁっ! ひぃぃぃぃぃっ!」
「ウフフ……これ本当に面白いわね。瀬口が夢中になるのもわかるわ」
キャッツハンターが動きを操作する度に、鎖で吊るされた瞳がダンスを踊る。
上気した美貌は快感にゆがみ、半開きの唇から熱い喘ぎがもれる。
「あぁんっ……ひいっ……あっ、あぁぁん……と、とめて……」
「本当に止めてもいいの? あなた、イキたいんでしょ、イかせてあげるわよ」
「えっ……あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
その瞬間、瞳の頭が真っ白になった。
子宮の奥から甘美な電流が噴出し、体中を突き抜ける。
瞳はかつて経験できなかったほど深い絶頂を味わった。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
ジャラリと鎖の音をさせて、瞳は項垂れていた。
両手を広げて吊るしている鎖はピンと伸び、全体重を支える枷が細い手首に食い込んでいる。
全身は弛緩して力が入らず、絶頂の余韻でまだ体が震えている。
枷を外せばそのまま床に崩れ落ちてしまう状態だ。
「ウフフ……そんなに感じるなんて、よっぽど気持ちよかったのね」
キャッツハンターが、鞭の柄でクイッと瞳の顎を持ち上げる。
虚ろだった視界が少しずつクリアになった瞳は、不敵な笑みを浮かべる女の視線に一瞬で気圧された。
そして怯えたように首をすくめてしまう。
「あらら、もうすっかり借りて来た猫ね。警察を翻弄し、私にも歯向かって来たあのキャッツアイは、一体どこへ行ってしまったのかしら?」
「ほっといてよ、私が何をされて来たのか、知っているのでしょう。今の私は惨めで無力なただの女。笑うなら笑いな………あうっ!」
言葉の途中でドスッと音が鳴り、鞭の柄が瞳の鳩尾にめり込んだ。
「がはっ……うぇぇ……おぅぇ……げほっ! げほっ!」
「フン、すっかり瀬口のペットに成り下がったようね。貴女がそんな様だから、私が瀬口に軽く見られるようになったのよ。おかげであの男とのビジネスもここまでだわ。」
八つ当たりの言葉を吐きかけられた瞳の顎が、再び鞭の柄で持ち上げられる。
矜持を失った女怪盗には、もはや抵抗する気力すら湧いてこない。
「そこで提案なんだけど、キャッツアイ、次は貴女が私を雇ってくれないかしら? もし私と契約してくれれば、貴女をここから逃がして、泪と愛の所へ帰らせてあげるわ」
「…………」
快感で狂わされ、逃げ場もなく、ただ弄ばれるだけのか弱い女となった瞳にとって、その提案は天から降ろされたクモの糸であった。
だが瞳はこの期に及んでもなお、その糸を掴むことに躊躇した。
「……そ、そちらの要求は何なの? 絵を渡せというなら、お断りよ」
「ウフフ……そんな事を言っていいの。身も心もペットになりかけている貴女が、これ以上の尋問に耐えられるの? あの男はキャッツアイの正体を知ったら、仲間も捕まえて3人ともここでペットとして飼うつもりよ。泪と愛も貴女と同じ目に合わせたいの?」
瞳は言葉が無かった。
先ほどだって、耐えきれず自白をしていたのだ。
このまま瀬口の調教に耐える自信は無い。
(私一人ならどうなってもいいけど……姉さんと愛まで巻き込むわけにはいかないわ……もう他に手は無いというのなら……)
思案する瞳だが、結論を出すのに長くはかからなかった。
「わ、わかったわ、あなたと契約する。でも一つだけ条件があるわ、報酬は絵ではなく、お金で払うというにして。」
「へぇ……お金? まあいいけど、私を雇うなら高いわよ。」
「……仲間と連絡を取らせてもらえれば、10億くらいならすぐ用意できると思う。足りない分は、また後から払うわ、それでどう?」
ピュゥと、キャッツハンターは口笛を吹いた。
「アハハハハハハ、あなた達、瀬口よりお金持ちじゃない。そりゃ『お金の為に盗みはしない』なんて戯言、言えるわけだわ」
「う、五月蠅いわね。いいでしょう、そんな事は! さあ、いますぐ電話を貸して。姉さんたちに連絡すれば、すぐに前金を払ってくれるはずよ。だから早く私を助けて……あうっ!」
キャッツハンターの平手が、瞳の頬を打った。
銀髪の女は瞳の髪の毛を掴むと、グイッと顔を近づける。
「金を払うからって、主人面しているんじゃないわよ。貴女と私、どっちの方が立場が上なのか、まだ判ってないのかしら?」
そう言うとキャッツハンターは、瞳にスマートホンを見せた。
画面に映っているのは、肥満体の男に口で奉仕する瞳の姿だった。
「こ、これは……」
「どう、瀬口のモノをおしゃぶりしている貴方の姿は。よく撮れているでしょう。」
キャッツハンターが動画を切り替えると、瞳の痴態が次々と現れた。
その中には、瀬口に抱かれながら甘い声を漏らし、絶頂する瞳の姿もあった。
「い、イヤァッ! そんな物見たくない! やめてっ!」
「ウフフ……これを愛しの内海刑事に見せたら、どういう反応をするのかしら? あまり生意気な態度を取るなら、あなたがキャッツアイである証拠と一緒にこれを送りつけるわよ。」
「お、お願い! お金なら言い値で払うわ! だからそのデータを消して!」
「ダーメ、これは私にとって、貴女に約束を守らせる保険みたいなものですから。内海刑事に見られるのが嫌なら、これからは私のペットになると誓いなさい。そうすれば秘密は守ってあげるわ。」
言葉に詰まった瞳だが、もはや答えは決まっていた。
瀬口のペットとして身体を淫らに調教され、逃げ場も失った女怪盗には、目の前の女に従う以外に道など無いのだから。
「わ、わかったわ……あなたのペットになるわ……そうすれば本当に助けてくれるのね。」
「それは貴女しだいね。まずはここから逃がす方法を考えて、泪や愛とも連絡を取らなきゃいけないもの。おそらく三日ほどかかるわ、それまで瀬口に屈服しちゃダメよ。」
「み、三日……そんなにかかるの?」
「ゴールが見えているのだから、それくらい耐えられるでしょう。私は言うことを聞かない奴隷は嫌いよ。もしそうなったら、契約は破棄して遠慮なく見捨てるからね。」
そう言うとキャッツハンターは、瞳にボールギャグとアイマスクを嵌めた。
そしてリモコンを使って瞳のローターを動かす。
「むっ……むぅん……むぅぅん!」
「じゃあね、瀬口に見つかったら面倒だから、そろそろ私は失礼するわ。今日も夜までタップリと調教されるでしょうけど、瀬口を油断させるために頑張って猫をかぶりなさい。」
そう言ってキャッツハンターは牢屋から出て行った。
その美貌には、勝ち誇ったような満面の笑みが浮かんでいた。