※この作品はR-18です。

キャッツ・ハンター   作:muzineki

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2:挑戦状

翌日の朝。

樹齢40年のケヤキ並木が東西500メートルに続く、犬鳴商店街。

ブティックやレストラン、ケーキ店、輸入雑貨などの洒落た店が並び、若い女性に人気のある華やかな通りだ。

その一角に、来生三姉妹の営む喫茶店『キャッツアイ』はあった。

 

「今日もいい天気ね」

 

日課である朝のジョギングを終えた瞳は、店の掃除をしていた。

そして看板を店先に出す。

その後はバスルームで熱いシャワーを浴び、泪や愛と他愛もない会話をしながら朝食を取る。

怪盗として神経を尖らせる日々を送る来生姉妹にとって、貴重な安らぎの時間だ。

 

「行ってきます、泪姐、瞳姐」

 

「行ってらっしゃい、車には気をつけるのよ」

 

高校へ行く愛を見送った後は、泪は店の仕込み、瞳は洗濯と掃除。

そしてカウンターで泪が煎れたコーヒーを飲みながら、二人で好きな音楽を聴いたり、雑誌を読んだりして開店時間の10時を待つ。

 

「今日の最初のお客さんは、誰かしらね」

 

「決まっているでしょう、そりゃ俊夫よ」

 

瞳が時計を見る。

時間は午前9時20分の少し前だ。

キャッツアイによる犯行があった翌日は、必ず開店前に内海刑事が来て、瞳に仕事の愚痴をこぼすのだ。

 

「今頃は課長さんに怒鳴られている頃かしらね」

 

「毎度のこととはいえ、心が痛むわ。いい加減、他の部署に異動になってくれないかなあ」

 

二人が噂をしていると、入り口のベルが鳴った。

 

「はーい、いらっしゃい」

 

にこやかな表情で瞳が振り向く。

だが現れたのは、俊夫ではなく若い女だった。

長い銀髪に薄茶のサングラス、そして赤いジャケットとタイトスカートでビシッと決めている。

発される空気から、それが昨晩の女だとすぐに瞳は悟った。

 

「キャッツアイブレンドを、ホットでお願いするわ」

 

強張った表情の瞳をよそに、キャッツハンターはカウンター席へと座る。

そして煙草に火を点け、フウッと大量の煙を吐いた。

 

「お客様、申し訳ありません。当店は禁煙となっています。それに開店時間はまだですので、どうかお引き取り願えませんか」

 

仕込みの手を止めた泪が、キャッツハンターに注意をする。

その口調は穏やかだが、目には厳しさが宿っていた。

瞳の目配せで、既に女が敵であることは悟っている。

 

「あらごめんなさい、日本にはまだ来たばかりだから、注意書きが読めなかったのよ」

 

流暢な日本語でそう答えつつ、キャッツハンターは床に落とした煙草を足で踏みつけた

そして敵意を込めた視線を瞳へ向ける。

 

「昨日のことで私に勝ったとは思わないことね。あなた達キャッツアイとの勝負は、これからが本番よ」

 

「お客様、何を言っているかよく解りませんが……」

 

とぼけた瞳の前に、キャッツハンターが写真を置いた。

それはレオタード姿で美術館の屋根に立つ瞳の姿だった。

写真の中には警察官に変装し、絵を盗んでいる泪と愛の姿もある。

 

「なるほど、昨日の盗みは全て、あなたの罠だったというわけね」

 

銀髪の女を睨みながら、泪が言った。

この喫茶店をすぐ見つけたのも、おそらく絵に発信器を仕込んでいたからだろう。

ここまで用意周到に絡め取られては、正体を隠すことは無駄であった。

 

「察しが良くて助かるわ、それでは本題に入るわよ」

 

そう言うとキャッツハンターは、一枚の地図を泪と瞳の前に差し出した。

岬に建てられた大きな洋館に、蛍光ペンで丸がついている。

 

「キャッツアイ、私とゲームをしましょう。ここにハインツコレクションの一つ、『古城の冬』があるの。もし盗み出せたら、絵とこの写真のデータはあなた達に差し上げるわ」

 

横柄に反りかえりながら、キャッツハンターが言った。

泪と瞳に緊張が走る。

彼女の目的は、キャッツアイを捕まえることだ。

この場所が罠であることは考えるまでもない。

 

「ゲームの開始は、明後日の深夜0時。もし時間通りに来なければ、あの写真は内海刑事の所へ行くことになるわ。ここでの生活を捨てるか、それとも私と勝負をするか、3人でよく話し合って決めなさい」

 

そう言うとキャッツハンターは、立ち上がって瞳と泪に背を向けた。

そして肩越しにヒラヒラと手を振りながら、店から出て行った。

 

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