※この作品はR-18です。

キャッツ・ハンター   作:muzineki

4 / 14
4:依頼人

「うぅ……」

 

ズキンと、鈍い痛みに襲われて瞳は小さく呻いた。

うっすらと目を開け、俯せのまま顔を上げる。

 

「こ、これは……」

 

身体を動かすと、ジャラリと鎖が鳴った。

首には枷が嵌められおり、鎖で壁と繋がれている。

両手は背中に回され、こちらも頑丈な枷できつく締め上げられていた。

 

「やはり捕まってしまったのね、私……」

 

全身の痛みに顔をしかめながら、瞳は呟いた。

そこは四方を冷たい鉄板で覆われた部屋だった。

窓は無く、出入口にはステンレス製の鉄格子が嵌められている。

床には瞳が横になっているマットと、剥き出しの洋式便器。

天井には監視カメラが、瞬きもせずにジッと瞳を見張っている。

 

「警察……では無さそうね。ここは一体、どこ?」

 

起き上がった瞳は、首輪の鎖が許す範囲まで鉄格子に近づいた。

牢屋の外は、かなり広いスペースになっている。

床や壁は白っぽいコンクリートで、病院にあるような簡素な寝台が中央に置かれている。

他には肘掛けと足に鉄の枷が付いた椅子。

天井には滑車と鎖がぶら下がり、壁にはロープや鞭が掛けられていた。

 

「ま、まさか拷問部屋!? いったい私を、どうするつもり」

 

その時、拷問部屋の向こうでガチャリと鉄の扉が開く音がした。

続いて二人分の足音が近づき、やがてその姿が見える。

一人は瞳を捕えた、キャッツハンターと呼ばれる女だ。

さらにその後ろから、ブヨブヨと太った体形の男が現れる。

その脂ぎった顔に、瞳は驚愕した。

 

(あ、あれは……瀬口!)

 

日本美術連盟の代表、瀬口広幸。

財界の大物であり、美術品の蒐集家としても有名な男。

だがその正体は、多くの美術品犯罪に関わり、瞳を父から引き離したシンジケートの幹部だ。

 

「彼女が本当に、あのキャッツアイなのかね」

 

「はい、瀬口様が手に入れた警察資料によるキャッツアイの指紋と、この女の指紋を照合した結果、同一人物であることが確認できましたわ」

 

「さすがは元スペツナズ、高い金を取るだけのことはあるな」

 

瀬口は大きなアタッシュケース3つ、キャッツハンターに渡した。

中に札束がギッシリと詰まっているのを確認した女は、笑顔で瀬口と握手する。

そして二人で鉄格子の扉を開け、牢屋の中へと入ってきた。

 

「ワッハッハッ、私の財産を何度も盗みおって。その報いはタップリと受けてもらうぞ、キャッツアイ」

 

「フン、あなたの財産なんて汚い金と、汚い手段で手に入れた美術品ばかりじゃない。被害者ぶるのは、やめて欲しいわね」

 

瀬口を睨みつけながら、瞳は言った。

囚われの身になっても、彼女は悪党を前に強気だった。

 

「このコソ泥め! 自分の立場が解っておらんようだな」

 

たるんだ腹を揺らしながら、瀬口が前に出る。

そして瞳の顎を、太い指で持ち上げた。

 

「お前には恨みと、聞きたい事がタップリとある。今日から徹底的に調教をして、私の言う事を何でも聞くペットにしてやるから覚悟しろ」

 

瀬口の手が顎から胸元へと下がり、そして乳房を包む。

レオタードの布越しに豊かな乳肉を掴まれた瞳は、悲鳴を上げた。

 

「キャァッ!」

 

瞳は身体を捻ると、瀬口の手を振りほどいた。

そして後ろ手に拘束された身体をグルリと回転させ、瀬口に蹴りを叩きこむ。

 

「がはっ!」

 

瀬口の丸い体がゴロゴロと転がり、鉄格子へ叩きつけられた。

 

「何をするの、変態!」

 

鋭い眼光で瀬口を睨みつける瞳。

両手を拘束され、首輪で繋がれた姿でも、彼女の眼に込められた強い意志と、凛とした態度は健在だ。

 

「仕方ないわね」

 

そう呟くとキャッツハンターは、ヒュッと鞭を振った。

軌道を読んだ瞳が、初撃を避ける。

だが続く横なぎの鞭は、首輪の鎖のせいで避けることが出来ず、胴に鞭を巻き付けられてしまう。

 

「キャァァァァァァァッ!」

 

電気ショックにより、ビクビクと瞳の身体が痙攣する。

床に両膝を付けた瞳が、前のめりに崩れる。

だが床に倒れる前に首輪の鎖を掴まれ、強引に起こされた。

銀髪の女は、呼吸を荒くする瞳の耳元でそっと囁く。

 

「言うことを聞きなさい。でないとあなたの正体を内海刑事にバラすわよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、瞳の頭がハッと上がった。

激しく動揺し、先ほどまで怒りを孕んでいた視線も勢いを失ってしまう。

 

「オイ、君! 大丈夫かね! 部下を呼ぶなら、早くするんだ!」

 

牢屋の隅でガクガク震えながら、瀬口が叫ぶ。

思わぬ反撃を受けたショックから、まだ立ち直っていないらしい。

 

「大丈夫ですよ、瀬口様。このメスネコにはきつく言い聞かせました。もう逆らう事はありません」

 

キャッツハンターは首輪の鎖を引っ張ると、瞳を瀬口の前に放り投げた。

そして俯せに倒れた瞳の後頭部を、ヒールで踏みつける。

 

「ほ、本当に大丈夫なのかね」

 

「ええ、この女は捕まえる時に、私が徹底的に叩きのめしましたので。少し痛めつけてやれば、すぐ素直になりますわ」

 

「そ、そうなのか。ならもう、触っても大丈夫なのだな」

 

「はい、私の睨みが効いている間なら、暴れたりはしませんよ」

 

キャッツハンターは首輪の鎖を引っ張ると、再び瞳を起き上がらせた。

そして鎖を掴んだまま、瀬口の前で膝立ちになる瞳の耳元で再び囁く。

 

「大人しくしているのよ。少しでも逆らったらどうなるかは、解っているわね」

 

悔しそうに唇を噛む瞳だったが、脅迫者の言葉には逆らえない。

ビクビクしながら近づき、胸の谷間を見下ろす瀬口の前で、瞳は何もせずただジッとしている。

 

「グフフ……見事な胸だ。泥棒にしておくのは勿体ないな」

 

瀬口の両手が瞳の両胸を掴む。

目を瞑り、嫌悪の表情を露わにする瞳だが、今度は逆らわなかった。

 

「おぉ、素晴らしい揉み心地だ」

 

左右の指の中で揉み潰される乳房を見ながら、瀬口が感嘆する。

レオタード越しに感じる乳肉は、マシュマロのように柔らいが、しっかりと弾力もある。

その感触は、男を夢中にさせるには十分過ぎた。

キャッツアイに対する恐怖心が薄れた瀬口は、次第に厚かましさを増し、顔を舐めたり、脚を触ったりし始めた。

 

「イ……イヤッ!」

 

キスを迫られた瞳が、思わず顔を背ける。

するとキャッツハンターに、後ろから頭を押された。

これ以上逃げるな、ということらしい。

観念して瞳が正面を向くと、ヒキガエルのような瀬口の唇が吸い付いてきた。

 

「んっ、んむぅ! むぅん!」

 

それは悪夢のような衝撃だった。

恋人でもない男に触られるのも嫌なのに、よりによって父の敵である男と接吻をしているのだ。

我を忘れて瞳は首を振る。

だがキャッツハンターに後ろから頭を掴まれ、ささやかな抵抗すらできなくなる。

 

「むうっ! んんっ! ふぅん!」

 

生温かい大きなナメクジのような舌が、瞳の口内に侵入する。

口の中を舐め回され、犯される度に、背筋がゾゾッと凍り付く。

すぐに瞳の舌も絡め取られた。

唾液ごと淫らな水音を立て、舌が吸い上げられる。

 

「クックック、なかなか良かったぞ、キャッツ。」

 

そう言いながら、瀬口はハァハァと呼吸をする女怪盗の頭を撫でた。

生意気だった女とのディープキスを終え、気分を良くしたらしい。

 

「どうです瀬口様。もしよろしければこの女の監視と調教も、私が引き受けますよ」

 

そう言うとキャッツハンターは、瞳の髪の毛を掴んで頭を上げさせた。

あのキャッツアイがすっかり従順になっている姿に、瀬口は満足する。

 

「うむ、追加料金は払うからぜひ頼む。そしてこの女を、私の言うことを何でも聞く従順なペットに躾けてくれ」

 

楽しそうに笑う瀬口の足元で、瞳は悔しそうに身体を震わせる。

そんな姿をキャッツハンターは、口元を歪めつつ眺めていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。