盗みのチャンスは一度だけ BAD END 作:muzineki
その日の午後。
喫茶店『キャッツアイ』の地下アジトで、泪と愛は作戦を練っていた。
「本当に、瞳姉はこの場所にいるの?」
「ええ、深夜に平山美術館から出たワンボックスが、ここへ入ったのを確認したわ。おそらく瞳を移送したのよ」
泪は机の上に図面を広げた。
それは都内の一等地に居を構える、平山の屋敷であった。
「大企業の会長の自宅だけあって、さすがに広いね」
「屋敷を囲む壁は高さ4メートル、その上には電気の流れる有刺鉄線。庭には赤外線警報装置が網のように張り巡らされ、警備用ロボットが常に巡回している。まさに難攻不落ね」
「いくら何でもここまでの警備は異常だよ、絶対に何かを隠している」
要塞化された平山邸の図面を、愛が見渡す。
すると母屋から少し離れた場所に、コンクリート造りの建物があるのを見つけた。
「泪姉、この場所は何?」
「それは平山が個人で運営している、ロボットや防犯装置を開発する研究所よ」
「個人運営の割には、大きな建物だね、何だか怪しい」
「この研究所は平山の会社でもトップシークレットで、出入りも一部の人間しかできないらしいわ。よほど知られたくない何かが、あるのでしょうね――」
その頃、瞳は暗闇の中で息を殺していた。
壁を背にして音も立てず、慎重に歩みを進めている。
(……あれね)
標的の絵を見つけた瞳は、周りを確認しつつ駆け寄った。
そして額縁を掴んで壁から外そうとした、その時―――
「侵入者ハッケン! 侵入者ハッケン!」
威嚇灯の光が、パッと瞳の後ろ姿を照らす。
振り向くと3体の警備用ロボットが、ゴム弾の銃口を向けていた。
「しまった!」
とっさに逃げ出す瞳に向けて、ロボット達が一斉にゴム弾を発射する。
驚異的な反射神経でゴム弾を避けた瞳は、スキをついてロボット達の間をすり抜けると、部屋から逃げ出した。
「侵入者二告グ、今スグ服従の姿勢ヲシテ、降伏ノ意志ヲ示シナサイ」
廊下に出ると、スタンガン付きの警棒を持つロボットが待ち構えていた。
ロボットに突進した瞳は、間合いに入る前に跳躍する。
「たあっ!」
掛け声とともに、フワリとロボットの頭を飛び越える瞳。
そして地面に着地すると、ゴム弾に狙われないようジグザグに走って逃げる。
これまでの経験から、円錐型の警備用ロボットは足が遅いことを知っている。
機動力のあるメカドックがいないのなら、逃げるのが一番だ。
「はぁ……はぁ……」
息を切らせて瞳は走り続ける。
行く手にはレーザーや落し穴、そして警備用ロボット達が待ち構えていた。
持ち前の運動神経と勘、そして女怪盗としての経験を総動員して、瞳は何とか切り抜けていく。
「次の部屋を抜ければ脱出口……今度こそ逃げ切ってみせる……もう捕まるのは嫌っ!」
瞳はガラガラと落ちる防犯シャッターの隙間に飛び込むと、間一髪で通路を抜けた。
その美貌には、焦りと恐怖が浮かんでいる。
脱出口に続く小さな部屋を見つけると、飛び込むように入った。
すると突然、警報が鳴り響いた。
「侵入者ヲハッケン! 侵入者ハッケン! 直チニ捕獲シマス!」
警告を発したのは、自動追尾式の監視カメラであった。
天井の3カ所に設置されたカメラは、瞳の独房にあるものと同じ型で、金属のアームをクネクネと駆動させて向かってきた。
「!!」
カメラに気が付いた瞳は、バックステップで逃げた。
だが3台のカメラはヘビのようにしつこく、汗にまみれたレオタード姿の女怪盗を、どこまでも追いかける。
「くっ!」
逃げ回る瞳だが、飛んで上に逃げても、横に逃げても、カメラを振り切ることが出来ない。
カメラは常に瞳の前へと回り込み、パシャパシャと音を立てて、焦る女怪盗の素顔を撮影する。
「どうしたキャッツアイ、これが本番なら、もうお前の顔はバレているぞホイ」
「クッ!」
カメラから聞こえる平山の声に、瞳は唇を噛んだ。
そして何とかカメラを振り切ろうと、スピードを上げようとする。
だがその時、床の凹みにハイヒールを引っかけてしまった。
「きゃぁッ!」
バランスを崩した瞳が、受け身さえ取れずゴロゴロと床を転がる。
それは怪盗キャッツアイとは思えない、無様な姿であった。
痛みに呻きながら立ち上がると、既に周りをカメラに囲まれていることに気が付く。
同時にカメラから凄まじい轟音が発された。
「アァァァァァァァァッ!!」
悲鳴を上げた瞳が、絵を床に落とす。
カメラから発されたのは、ガラスを釘で引っ掻いた音だ。
それを大音量で聞かされた瞳は、反射的に両耳を手で抑える。
しかし轟音を遮断するには至らず、瞳は悶え苦しむ。
「うあぁっ!! くぅっ!! あああっ!!」
轟音から少しでも逃れるため、瞳は何とかカメラから逃げようと試みる。
だが思うように脚が動かない。
人間は一定以上の大音量を聞かされれると、三半規管が狂ってしまう。
それが続くと、船酔いしたような眩暈と、嘔吐感に襲われるのだ。
「あうっ!! あぁぁっ!」
瞳の身体が崩れ、床に膝を付ける。
その間にロボット達が追いつき、部屋へと入ってきた。
すぐに瞳に向けてゴム弾を発射する。
避けようとする瞳だが、もはや脚が動かない。
「あうっ! があっ! ひぎぃ!」
背中にゴム弾を受けた瞳が悶絶する。
ロボット達は動けなくなった瞳を取り囲むと、スタンガン付きの警棒を振り下ろした。
「ギャァァァァァァァァッ!!」
肩へ打撃と電撃を受けた瞳が、床の上に倒れる。
さらに別のロボットの警棒が、背中へ叩きつけられる。
「アァァァァァァッッ!!」
2度目の電気ショックは、瞳から抵抗する気力を完全に奪った。
さらにカメラが瞳へ近づき、耳元で轟音を聞かせる。
「キャァァッ!! ヒィィィィィッッ!!」
頭が揺さぶられるような轟音に、悲鳴を上げて悶える瞳。
その間にロボットたちは瞳を取り押さえ、キャッツアイのマークが入った専用の手錠を手首に当てがった。
ガチャリ
「囚人番号WLA0116、キスギヒトミ、通称キャッツアイヲ逮捕」
「場所ハGブロック7号室。実験開始カラ逮捕マデノ時間ハ、12分27秒」
「囚人番号WLA0116、次ノ命令マデ服従ノ姿勢デ待機デス」
ロボット達に命じられた瞳は、のろのろと跪いた。
そして手錠を嵌められた両手を頭の後ろで組み、服従のポーズで待機する。
しばらくすると、護衛のロボットを引き連れた平山が現れた。
平山は瞳に近づくと、いきなり鞭で撃った。
「あうっ!!」
太腿を撃たれた瞳が悲鳴を上げ、ガクガクと身体を振るわせる。
両手に嵌められた手錠の鎖が、頭の後ろでチャラリと音を立てた。
「また捕まったのかホイ、キャッツアイ」
「くぅっ!!」
怒鳴りながら振り下ろされた鞭が、今度は右の乳房に炸裂する。
焼きごてを押し付けられたような激痛に、瞳が絶叫する。
「こんなにアッサリ捕まったのでは、ろくなデータが取れんではないか。お前は実験動物の仕事すら満足にできんのかホイ」
「ひいっ!」
横なぎの鞭が、極薄レオタードの上から乳首を撃つ。
ビクンと身体を反り返らせた瞳は、平山に土下座するようにして、前のめりに倒れた。
そんな彼女に、平山は冷徹に言い放った。
「何を休んでいるホイ、すぐに次の実験を始めるぞホイ」
ビクッと反応した瞳は、許しを乞う表情で頭を上げる。
研究所の実験施設で行われる防犯装置の実験は、もう4度目だ。
その度ロボットからリンチを受けた瞳の体力は、限界を超えている。
平山もその事には気が付いているが、かまわず話を進めた。
「次は2階の窓から侵入、ターゲットは1階という設定だホイ。今度こそ逃げ切り、良いデータを提供してくれホイ」
平山が言うと、警備用ロボットが瞳に向けて威嚇灯を向けた。
命令に従わなければ、電気ショックの懲罰を与えるという合図だ。
「囚人番号WLA0116、指定ノ位置マデ移動デス。両手ヲ頭ノ後ロデ組ンダママ、ユックリト立チ上ガリナサイ」
観念した瞳は、のろのろと立ち上がった。
そして両手を頭の後ろで組んだまま、ロボットに連行された。
指定された地点に到着した瞳は、合図と同時に手錠を外された。
そして即座に走り出し、ターゲットがある部屋へと向かう。
美貌には早くも恐怖が浮き出ている。
そんな哀れな女怪盗の姿を、監視カメラは静かに見据えていた。
「さて子猫ちゃん、次はどうしてやろうかホイ」
実験施設の隣にある監視部屋。
20を超えるモニターを前にした平山は、ニヤリと笑った。
そこには壁に背を付け慎重に進む瞳の姿が、あらゆる角度から映し出されていた。
「どこへ逃げようがお前の動きは筒抜けだぞホイ、キャッツアイ」
平山は楽しそうにコンソールを操作して、ロボット達に指示を出す。
瞳に嵌められた青いチョーカーは、発信器にもなっている。
そのため平山は、常に的確な指示を出すことができた。
神の視点から動きを読まれる瞳に、勝ち目など最初からありはしない。
これは哀れな女怪盗を嬲って楽しむ、平山のゲームにすぎないのだ。
ガタッ!
狭い通路を進む瞳の背後で、突然、物音が聞こえた。
背筋をゾクリとさせた瞳が振り返ると、メカドックの群れが見えた。
「ひ、ひいっ!!」
恐怖の混じった悲鳴を上げた瞳が、慌てて逃げ出す。
すると物陰から、新たに2匹のメカドックが飛びかかって来た。
「きゃぁっ!!」
とっさに身体を伏せて、攻撃を避ける瞳。
ゴロリと前転すると、全力疾走で逃げ出す。
美術館で捕まった時と同じ、メカドックとの追いかけっこが始まる。
だがあの時とは異なり、メカドックとの差はすぐに縮まった。
「はぁ……はぁ……身体が……重い……」
走りながら泣き言を漏らす瞳。
ロボットに警棒で打ち据えられた身体がジンジンと痛む。
万全な状態でさえ逃げきれなかった相手だ。
囚人としての生活に疲れ果て、ダメージもあるこの身体で追いつかれるのは、時間の問題であった。
「いやぁ! もう、ロボットはいやぁっ!」
半泣きになって逃げる瞳には、恐怖しかない。
限界が近づいた頃、視界に通気口らしき穴が見えた。
瞳は考えるよりも先に穴へ飛び込むと、這って奥へと逃げた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
暗く狭い通気口の中で、ようやく息を整える瞳。
振り返ると、入り口から中を除きこむメカドックの姿が見えた。
彼らの図体では、狭い通気口には入れないらしい。
「とりあえず、メカドックからは逃げられたわね」
ホッとした瞳は、匍匐前進で狭い通気口を進む。
しばらくすると、ゴウンゴウンと鈍い音が耳に響いてきた。
「換気装置の音かしら。一体、どこへ繋がっているの?」
曲がったり、上がったりして、穴の中を進む瞳。
すると不意に冷たい空気を感じた。
「これは、風?」
ふわりと前髪が掻き上げられて、ひんやりとした空気が額を撫でる。
明らかに外の空気だ。
思わぬ脱獄ルートの発見に、瞳の手足が急ぐ。
だがその時、足を強い力で引っ張られた。
「ああっ!」
瞳の長い脚が、強い力で締め付けられる。
それは瞳の体を這いずり回り、やがて瞳の上体にも張り付いた。
「きゃ、キャァァァァァァッ!!」
暗闇の中で悲鳴を上げながら、瞳はようやくその正体に気が付いた。
それはクネクネと動く金属の蛇であった。
ロボット蛇は瞳の身体に巻き付くと、レオタードに包まれた肢体をゆっくりと締め付けた。
「あぁっ! あぁぁぁっっ!」
ロボット蛇に全身を圧迫され、苦悶の表情を浮かべる瞳。
自由になる手で振りほどこうとするが、締め付けはますます強くなる。
「がっ……かはっ! はぁ……はぁ……くぅぅ……」
全身を締め付けられた瞳は、呼吸困難から意識が朦朧とした。
それを見計らうかのように、ロボット蛇は残酷な攻撃を開始する。
「ギャァァァァァァァァァッ!!」
強烈な電撃が瞳の身体を襲う。
体力の限界を超えていた瞳は、すぐに失神した。
ロボット蛇は無抵抗になった瞳の身体を引きずると、通気口の外へと連れて行く。
そして外で待っていた警備用ロボット達に、瞳は再び逮捕された。
「また失敗かホイ! お前は真面目にやっているのかホイ!」
「ひっ! ああっ! きゃぁっ!」
ビシッ、バシッと鞭の音が実験施設の中に響く。
失敗した瞳には、またも制裁が加えられた。
手を頭の後ろで組み、服従の姿勢をする瞳の全身に、平山の激しい鞭が浴びせられる。
「キャッツアイの名が泣くなホイ!」
「ひいっ!」
鞭が性器に炸裂し、瞳が悲鳴を上げる。
あまりの痛みに全身を痙攣させた彼女は、服従の姿勢を崩して前のめりに倒れた。
「誰が姿勢を崩していいと言ったホイ!」
「ギャァァァァァァッ!!」
首輪へ電気ショックが流され、瞳の身体が反り返る。
平山は瞳の前髪を掴んで顔を上げさせると、半開きになった口にペニスをねじ込んだ。
「んむっ! んふっ!!」
ペニスで口を塞がれた瞳が、苦しさで悶える。
「これは失敗に対するペナルティだホイ。ワシを気持ちよく出来たら、今日はこれで許してやるホイ」
瞳は頭を動かし、平山のペニスに奉仕をする。
今度はフェラチオに抵抗しなかった。
「……ちゅっ……じゅぶ……ぺちゅっ……れろ……」
「おい、ちっとも気持ちよくならんぞ。もっと口の中で舌を使えホイ!」
叱責された瞳は、慌てて口の中で舌を絡ませた。
少しでも平山を満足させるよう、口内で愛撫する。
これ以上の労働は、心身ともに不可能であった。
少しでも早くこの地獄から逃れるため、瞳は懸命に口で奉仕をする。
「ほら、もっと奥まで咥えろホイ!」
平山が瞳の頭を抱え込み、ペニスを喉まで突き立てる。
イマラチオを強制された瞳の眉間の皺が深まる。
鼻呼吸を強いられ、悪臭を思い切り吸い込んだからだ。
だが瞳は何とか耐え、涙を浮かべながらストロークを続ける。
そんな姿に平山はさらに昂り、ペニスが痙攣を始めた。
「そろそろ出すぞ。今度こそ全部飲むんだホイ!」
「ん……んぐぅ!」
瞳の喉奥に熱い体液が直撃する。
ペニスを咥えながら呻く瞳だが、生臭さをこらえて必死に粘液を嚥下する。
「はあっ……はぁ……はぁ……」
「フン、まだまだヘタクソだなホイ」
平山が言うと、瞳はビクッと反応した。
叱責に美貌が蒼ざめる。
「まあ、今日は初日だからこの辺で許してやるホイ。寛大なワシに感謝するんだなホイ」
「は、はい……ありがとうございます、ご主人様」
「ならばその気持ちを態度で示せホイ、囚人の礼儀作法は教えたはずだホイ」
「はい、ご主人様……」
瞳は跪いたまま、床に三つ指をついて頭を下げた。
そして額を床にこすりつけて土下座をする。
惨めすぎる行為であったが、あまり屈辱を感じていない自分が不思議だった。
少しでも早くこの地獄から逃れたい気持ちの方が、勝っていたからだ。
懲役1日目にして、瞳は早くも怪盗キャッツアイとしての矜持を失っていた。