※この作品はR-18です。

盗みのチャンスは一度だけ BAD END   作:muzineki

12 / 30
12:研究所にて

その日の午後。

喫茶店『キャッツアイ』の地下アジトで、泪と愛は作戦を練っていた。

 

「本当に、瞳姉はこの場所にいるの?」

 

「ええ、深夜に平山美術館から出たワンボックスが、ここへ入ったのを確認したわ。おそらく瞳を移送したのよ」

 

泪は机の上に図面を広げた。

それは都内の一等地に居を構える、平山の屋敷であった。

 

「大企業の会長の自宅だけあって、さすがに広いね」

 

「屋敷を囲む壁は高さ4メートル、その上には電気の流れる有刺鉄線。庭には赤外線警報装置が網のように張り巡らされ、警備用ロボットが常に巡回している。まさに難攻不落ね」

 

「いくら何でもここまでの警備は異常だよ、絶対に何かを隠している」

 

要塞化された平山邸の図面を、愛が見渡す。

すると母屋から少し離れた場所に、コンクリート造りの建物があるのを見つけた。

 

「泪姉、この場所は何?」

 

「それは平山が個人で運営している、ロボットや防犯装置を開発する研究所よ」

 

「個人運営の割には、大きな建物だね、何だか怪しい」

 

「この研究所は平山の会社でもトップシークレットで、出入りも一部の人間しかできないらしいわ。よほど知られたくない何かが、あるのでしょうね――」

 

 

 

その頃、瞳は暗闇の中で息を殺していた。

壁を背にして音も立てず、慎重に歩みを進めている。

 

(……あれね)

 

標的の絵を見つけた瞳は、周りを確認しつつ駆け寄った。

そして額縁を掴んで壁から外そうとした、その時―――

 

「侵入者ハッケン! 侵入者ハッケン!」

 

威嚇灯の光が、パッと瞳の後ろ姿を照らす。

振り向くと3体の警備用ロボットが、ゴム弾の銃口を向けていた。

 

「しまった!」

 

とっさに逃げ出す瞳に向けて、ロボット達が一斉にゴム弾を発射する。

驚異的な反射神経でゴム弾を避けた瞳は、スキをついてロボット達の間をすり抜けると、部屋から逃げ出した。

 

「侵入者二告グ、今スグ服従の姿勢ヲシテ、降伏ノ意志ヲ示シナサイ」

 

廊下に出ると、スタンガン付きの警棒を持つロボットが待ち構えていた。

ロボットに突進した瞳は、間合いに入る前に跳躍する。

 

「たあっ!」

 

掛け声とともに、フワリとロボットの頭を飛び越える瞳。

そして地面に着地すると、ゴム弾に狙われないようジグザグに走って逃げる。

これまでの経験から、円錐型の警備用ロボットは足が遅いことを知っている。

機動力のあるメカドックがいないのなら、逃げるのが一番だ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

息を切らせて瞳は走り続ける。

行く手にはレーザーや落し穴、そして警備用ロボット達が待ち構えていた。

持ち前の運動神経と勘、そして女怪盗としての経験を総動員して、瞳は何とか切り抜けていく。

 

「次の部屋を抜ければ脱出口……今度こそ逃げ切ってみせる……もう捕まるのは嫌っ!」

 

瞳はガラガラと落ちる防犯シャッターの隙間に飛び込むと、間一髪で通路を抜けた。

その美貌には、焦りと恐怖が浮かんでいる。

脱出口に続く小さな部屋を見つけると、飛び込むように入った。

すると突然、警報が鳴り響いた。

 

「侵入者ヲハッケン! 侵入者ハッケン! 直チニ捕獲シマス!」

 

警告を発したのは、自動追尾式の監視カメラであった。

天井の3カ所に設置されたカメラは、瞳の独房にあるものと同じ型で、金属のアームをクネクネと駆動させて向かってきた。

 

「!!」

 

カメラに気が付いた瞳は、バックステップで逃げた。

だが3台のカメラはヘビのようにしつこく、汗にまみれたレオタード姿の女怪盗を、どこまでも追いかける。

 

「くっ!」

 

逃げ回る瞳だが、飛んで上に逃げても、横に逃げても、カメラを振り切ることが出来ない。

カメラは常に瞳の前へと回り込み、パシャパシャと音を立てて、焦る女怪盗の素顔を撮影する。

 

「どうしたキャッツアイ、これが本番なら、もうお前の顔はバレているぞホイ」

 

「クッ!」

 

カメラから聞こえる平山の声に、瞳は唇を噛んだ。

そして何とかカメラを振り切ろうと、スピードを上げようとする。

だがその時、床の凹みにハイヒールを引っかけてしまった。

 

「きゃぁッ!」

 

バランスを崩した瞳が、受け身さえ取れずゴロゴロと床を転がる。

それは怪盗キャッツアイとは思えない、無様な姿であった。

痛みに呻きながら立ち上がると、既に周りをカメラに囲まれていることに気が付く。

同時にカメラから凄まじい轟音が発された。

 

「アァァァァァァァァッ!!」

 

悲鳴を上げた瞳が、絵を床に落とす。

カメラから発されたのは、ガラスを釘で引っ掻いた音だ。

それを大音量で聞かされた瞳は、反射的に両耳を手で抑える。

しかし轟音を遮断するには至らず、瞳は悶え苦しむ。

 

「うあぁっ!! くぅっ!! あああっ!!」

 

轟音から少しでも逃れるため、瞳は何とかカメラから逃げようと試みる。

だが思うように脚が動かない。

人間は一定以上の大音量を聞かされれると、三半規管が狂ってしまう。

それが続くと、船酔いしたような眩暈と、嘔吐感に襲われるのだ。

 

「あうっ!! あぁぁっ!」

 

瞳の身体が崩れ、床に膝を付ける。

その間にロボット達が追いつき、部屋へと入ってきた。

すぐに瞳に向けてゴム弾を発射する。

避けようとする瞳だが、もはや脚が動かない。

 

「あうっ! があっ! ひぎぃ!」

 

背中にゴム弾を受けた瞳が悶絶する。

ロボット達は動けなくなった瞳を取り囲むと、スタンガン付きの警棒を振り下ろした。

 

「ギャァァァァァァァァッ!!」

 

肩へ打撃と電撃を受けた瞳が、床の上に倒れる。

さらに別のロボットの警棒が、背中へ叩きつけられる。

 

「アァァァァァァッッ!!」

 

2度目の電気ショックは、瞳から抵抗する気力を完全に奪った。

さらにカメラが瞳へ近づき、耳元で轟音を聞かせる。

 

「キャァァッ!! ヒィィィィィッッ!!」

 

頭が揺さぶられるような轟音に、悲鳴を上げて悶える瞳。

その間にロボットたちは瞳を取り押さえ、キャッツアイのマークが入った専用の手錠を手首に当てがった。

 

ガチャリ

 

「囚人番号WLA0116、キスギヒトミ、通称キャッツアイヲ逮捕」

 

「場所ハGブロック7号室。実験開始カラ逮捕マデノ時間ハ、12分27秒」

 

「囚人番号WLA0116、次ノ命令マデ服従ノ姿勢デ待機デス」

 

ロボット達に命じられた瞳は、のろのろと跪いた。

そして手錠を嵌められた両手を頭の後ろで組み、服従のポーズで待機する。

しばらくすると、護衛のロボットを引き連れた平山が現れた。

平山は瞳に近づくと、いきなり鞭で撃った。

 

「あうっ!!」

 

太腿を撃たれた瞳が悲鳴を上げ、ガクガクと身体を振るわせる。

両手に嵌められた手錠の鎖が、頭の後ろでチャラリと音を立てた。

 

「また捕まったのかホイ、キャッツアイ」

 

「くぅっ!!」

 

怒鳴りながら振り下ろされた鞭が、今度は右の乳房に炸裂する。

焼きごてを押し付けられたような激痛に、瞳が絶叫する。

 

「こんなにアッサリ捕まったのでは、ろくなデータが取れんではないか。お前は実験動物の仕事すら満足にできんのかホイ」

 

「ひいっ!」

 

横なぎの鞭が、極薄レオタードの上から乳首を撃つ。

ビクンと身体を反り返らせた瞳は、平山に土下座するようにして、前のめりに倒れた。

そんな彼女に、平山は冷徹に言い放った。

 

「何を休んでいるホイ、すぐに次の実験を始めるぞホイ」

 

ビクッと反応した瞳は、許しを乞う表情で頭を上げる。

研究所の実験施設で行われる防犯装置の実験は、もう4度目だ。

その度ロボットからリンチを受けた瞳の体力は、限界を超えている。

平山もその事には気が付いているが、かまわず話を進めた。

 

「次は2階の窓から侵入、ターゲットは1階という設定だホイ。今度こそ逃げ切り、良いデータを提供してくれホイ」

 

平山が言うと、警備用ロボットが瞳に向けて威嚇灯を向けた。

命令に従わなければ、電気ショックの懲罰を与えるという合図だ。

 

「囚人番号WLA0116、指定ノ位置マデ移動デス。両手ヲ頭ノ後ロデ組ンダママ、ユックリト立チ上ガリナサイ」

 

観念した瞳は、のろのろと立ち上がった。

そして両手を頭の後ろで組んだまま、ロボットに連行された。

 

 

 

指定された地点に到着した瞳は、合図と同時に手錠を外された。

そして即座に走り出し、ターゲットがある部屋へと向かう。

美貌には早くも恐怖が浮き出ている。

そんな哀れな女怪盗の姿を、監視カメラは静かに見据えていた。

 

「さて子猫ちゃん、次はどうしてやろうかホイ」

 

実験施設の隣にある監視部屋。

20を超えるモニターを前にした平山は、ニヤリと笑った。

そこには壁に背を付け慎重に進む瞳の姿が、あらゆる角度から映し出されていた。

 

「どこへ逃げようがお前の動きは筒抜けだぞホイ、キャッツアイ」

 

平山は楽しそうにコンソールを操作して、ロボット達に指示を出す。

瞳に嵌められた青いチョーカーは、発信器にもなっている。

そのため平山は、常に的確な指示を出すことができた。

神の視点から動きを読まれる瞳に、勝ち目など最初からありはしない。

これは哀れな女怪盗を嬲って楽しむ、平山のゲームにすぎないのだ。

 

ガタッ!

 

狭い通路を進む瞳の背後で、突然、物音が聞こえた。

背筋をゾクリとさせた瞳が振り返ると、メカドックの群れが見えた。

 

「ひ、ひいっ!!」

 

恐怖の混じった悲鳴を上げた瞳が、慌てて逃げ出す。

すると物陰から、新たに2匹のメカドックが飛びかかって来た。

 

「きゃぁっ!!」

 

とっさに身体を伏せて、攻撃を避ける瞳。

ゴロリと前転すると、全力疾走で逃げ出す。

美術館で捕まった時と同じ、メカドックとの追いかけっこが始まる。

だがあの時とは異なり、メカドックとの差はすぐに縮まった。

 

「はぁ……はぁ……身体が……重い……」

 

走りながら泣き言を漏らす瞳。

ロボットに警棒で打ち据えられた身体がジンジンと痛む。

万全な状態でさえ逃げきれなかった相手だ。

囚人としての生活に疲れ果て、ダメージもあるこの身体で追いつかれるのは、時間の問題であった。

 

「いやぁ! もう、ロボットはいやぁっ!」

 

半泣きになって逃げる瞳には、恐怖しかない。

限界が近づいた頃、視界に通気口らしき穴が見えた。

瞳は考えるよりも先に穴へ飛び込むと、這って奥へと逃げた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

暗く狭い通気口の中で、ようやく息を整える瞳。

振り返ると、入り口から中を除きこむメカドックの姿が見えた。

彼らの図体では、狭い通気口には入れないらしい。

 

「とりあえず、メカドックからは逃げられたわね」

 

ホッとした瞳は、匍匐前進で狭い通気口を進む。

しばらくすると、ゴウンゴウンと鈍い音が耳に響いてきた。 

 

「換気装置の音かしら。一体、どこへ繋がっているの?」

 

曲がったり、上がったりして、穴の中を進む瞳。

すると不意に冷たい空気を感じた。

 

「これは、風?」

 

ふわりと前髪が掻き上げられて、ひんやりとした空気が額を撫でる。

明らかに外の空気だ。

思わぬ脱獄ルートの発見に、瞳の手足が急ぐ。

だがその時、足を強い力で引っ張られた。

 

「ああっ!」

 

瞳の長い脚が、強い力で締め付けられる。

それは瞳の体を這いずり回り、やがて瞳の上体にも張り付いた。

 

「きゃ、キャァァァァァァッ!!」

 

暗闇の中で悲鳴を上げながら、瞳はようやくその正体に気が付いた。

それはクネクネと動く金属の蛇であった。

ロボット蛇は瞳の身体に巻き付くと、レオタードに包まれた肢体をゆっくりと締め付けた。

 

「あぁっ! あぁぁぁっっ!」

 

ロボット蛇に全身を圧迫され、苦悶の表情を浮かべる瞳。

自由になる手で振りほどこうとするが、締め付けはますます強くなる。

 

「がっ……かはっ! はぁ……はぁ……くぅぅ……」

 

全身を締め付けられた瞳は、呼吸困難から意識が朦朧とした。

それを見計らうかのように、ロボット蛇は残酷な攻撃を開始する。

 

「ギャァァァァァァァァァッ!!」

 

強烈な電撃が瞳の身体を襲う。

体力の限界を超えていた瞳は、すぐに失神した。

ロボット蛇は無抵抗になった瞳の身体を引きずると、通気口の外へと連れて行く。

そして外で待っていた警備用ロボット達に、瞳は再び逮捕された。

 

 

 

「また失敗かホイ! お前は真面目にやっているのかホイ!」

 

「ひっ! ああっ! きゃぁっ!」

 

ビシッ、バシッと鞭の音が実験施設の中に響く。

失敗した瞳には、またも制裁が加えられた。

手を頭の後ろで組み、服従の姿勢をする瞳の全身に、平山の激しい鞭が浴びせられる。

 

「キャッツアイの名が泣くなホイ!」

 

「ひいっ!」

 

鞭が性器に炸裂し、瞳が悲鳴を上げる。

あまりの痛みに全身を痙攣させた彼女は、服従の姿勢を崩して前のめりに倒れた。

 

「誰が姿勢を崩していいと言ったホイ!」

 

「ギャァァァァァァッ!!」

 

首輪へ電気ショックが流され、瞳の身体が反り返る。

平山は瞳の前髪を掴んで顔を上げさせると、半開きになった口にペニスをねじ込んだ。

 

「んむっ! んふっ!!」

 

ペニスで口を塞がれた瞳が、苦しさで悶える。

 

「これは失敗に対するペナルティだホイ。ワシを気持ちよく出来たら、今日はこれで許してやるホイ」

 

瞳は頭を動かし、平山のペニスに奉仕をする。

今度はフェラチオに抵抗しなかった。

 

「……ちゅっ……じゅぶ……ぺちゅっ……れろ……」

 

「おい、ちっとも気持ちよくならんぞ。もっと口の中で舌を使えホイ!」

 

叱責された瞳は、慌てて口の中で舌を絡ませた。

少しでも平山を満足させるよう、口内で愛撫する。

これ以上の労働は、心身ともに不可能であった。

少しでも早くこの地獄から逃れるため、瞳は懸命に口で奉仕をする。

 

「ほら、もっと奥まで咥えろホイ!」

 

平山が瞳の頭を抱え込み、ペニスを喉まで突き立てる。

イマラチオを強制された瞳の眉間の皺が深まる。

鼻呼吸を強いられ、悪臭を思い切り吸い込んだからだ。

だが瞳は何とか耐え、涙を浮かべながらストロークを続ける。

そんな姿に平山はさらに昂り、ペニスが痙攣を始めた。

 

「そろそろ出すぞ。今度こそ全部飲むんだホイ!」

 

「ん……んぐぅ!」

 

瞳の喉奥に熱い体液が直撃する。

ペニスを咥えながら呻く瞳だが、生臭さをこらえて必死に粘液を嚥下する。

 

「はあっ……はぁ……はぁ……」

 

「フン、まだまだヘタクソだなホイ」

 

平山が言うと、瞳はビクッと反応した。

叱責に美貌が蒼ざめる。

 

「まあ、今日は初日だからこの辺で許してやるホイ。寛大なワシに感謝するんだなホイ」

 

「は、はい……ありがとうございます、ご主人様」

 

「ならばその気持ちを態度で示せホイ、囚人の礼儀作法は教えたはずだホイ」

 

「はい、ご主人様……」

 

瞳は跪いたまま、床に三つ指をついて頭を下げた。

そして額を床にこすりつけて土下座をする。

惨めすぎる行為であったが、あまり屈辱を感じていない自分が不思議だった。

少しでも早くこの地獄から逃れたい気持ちの方が、勝っていたからだ。

懲役1日目にして、瞳は早くも怪盗キャッツアイとしての矜持を失っていた。

 

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