盗みのチャンスは一度だけ BAD END 作:muzineki
囚人の労働を終えた瞳は、獄舎へと連れ戻された。
そして独房へと戻る前に、まず入浴を命じられる。
「通常の刑務所では入浴は週に2日か3日だが、当刑務所では囚人の美容と健康を維持するため、毎日の入浴を義務付けている。どうだ、人道的だろうホイ」
鼻の穴を膨らませて説明する平山の前で、瞳はしきりに腰をよじっている。
実験を行った部屋からこの囚人用浴室へと連行される間、ずっとレオタードの上からヒップを揉みこまれていたからだ。
労働で気力すら消耗した瞳は、もはや平山に逆らうことはできず、美貌を恥辱で紅潮させて従順に耐えていた。
「さあ囚人番号WLA0116、入浴を済ませろホイ」
「……はい、ご主人様」
脱衣所へと入った瞳は、長袖の青いレオタードを下ろした。
囚人の監視のため壁は全てガラス張りで、瞳の前では平山がニタニタと脱衣を眺めていた。
(まるでストリップじゃない……いったい、私をどこまで辱めれば気が済むのよ)
瞳は心の中で毒づくと、脱いだレオタードをかごの中へ放り投げた。
そして囚人用の首輪だけを付けた状態で、手を頭の後ろで組み、膝を床に着けて服従の姿勢になる。
「囚人番号WLA0116ノ脱衣ヲ確認、コレヨリ身体検査ヲ開始シマス」
脱衣所にある2台の監視カメラが、金属のアームをクネクネと動いて瞳の周りを動く。
そして全裸の瞳へレンズを向け、パシャパシャと撮影を始めた。
「これも必要な検査だホイ、キャッツアイ、そのまま動かぬようになホイ」
「くっ……」
瞳は奥歯を噛んで恥辱に耐える。
カメラは胸や尻だけでなく、大きく開いた股下にも容赦なくレンズを向ける。
性器の前でシャッター音が鳴った時は、恥辱で膝がワナワナと震えた。
それでも瞳は何とか全裸の撮影に耐え切った。
「囚人番号WLA0116、キスギヒトミ、通称キャッツアイノ身体検査ヲ完了」
「3Dスキャナノ映像ヲ分析シマシタガ、異常ハアリマセン」
「囚人番号WLA0116、服従姿勢ノ解除、及ビ入浴ヲ許可シマス、時間ハ15分デス」
命令が出ると、瞳はすぐに浴室に入った。
そしてバスタブに入らずシャワーに向かい、備え付けのシャンプーとリンスを使って、髪をシャカシャカ洗う。
若い女性に15分の入浴時間はあまりに短い。
艶やかなロングヘアが自慢の瞳は、なおさらであった。
手際よく済まさねば、身体を清める事などとても出来ない。
「囚人番号WLA0116、残り5分だホイ!
(ええっ、もう!)
瞳は慌ててボディーソープで身体を隅から隅まで洗った。
そしてシャワーで洗い流すと、ザブンと浴槽に入る。
「囚人番号WLA0116、残り1分だホイ!」
(う、嘘でしょう)
身体が温まる間もなく、瞳は浴槽から出た。
時間内に出なければ、もちろん懲罰が与えられる。
囚人である瞳には、入浴すら心安らげる時間にはならない。
ただ一つ良かったのは、忙しすぎて入浴を平山に見られていることを、あまり意識せずに済んだことだけであった。
「囚人番号WLA0116、来生瞳、入房だホイ!」
入浴を終えた瞳は、独房へと連れ戻された。
電子ロックが解錠され、ガラガラと音を立てて独房の扉が開く。
陰鬱な部屋に戻った瞳は、奥にある壁に手を付くよう命じられた。
そして身体検査を実施される。
「くっ……あぅっ……」
「ふふふ……ほぐされたせいか、だいぶ楽に入るようになったホイ」
ローションを塗った平山の指が、瞳の尻の中でクネクネ動く。
脱衣所で与えられた新しいレオタードは、クロッチの部分に穴が開いていた。
穴はお尻の部分まで広がっていて、性器と肛門が余すことなく晒されている。
恥辱のレオタードを着せられた瞳は、唇を噛んで壁に爪を立て、ただ時が過ぎるのをじっと耐えた。
「膣口検査、肛門検査、共に異常なしだホイ。続いて労働のノルマを達成できなかった罰として、この戒具を装着してもらうホイ」
平山が言うと、ロボット達が瞳に黄色いベルトを装着した。
ベルトの後ろには2つの枷が付いていて、そこに瞳の両手首が通される。
「な……何、これ」
「お前のために作った革手錠だホイ、デザインはウエストマークの黄色いリボンを模してみたホイ」
腕に力を入れる瞳だが、黄色い革手錠はビクともしない。
厚みは無いが頑丈で、きつく締められている。
両手は腰の後ろで完全に固定されており、全く動かせない。
「罪を反省する態度が身に付くまで、お前には常時の身体拘束を行う。そのレオタードなら排泄に支障はないはずだホイ。では明日までゆっくりと休めホイ」
そう言うと平山は、独房から出て行った。
ガラガラ音を立てて扉が閉められ、瞳の孤独な時間が始まる。
「囚人番号WLA0116、背筋ヲ伸バシシナサイ!」
監視カメラの命令に、瞳がビクッと震える。
そしてすぐに正座をしたまま背筋を伸ばした。
「囚人番号WLA0116、指ヲ伸バシ、手ノヒラガハッキリ見エルヨウニ!」
後ろ手に拘束された手を、瞳は思いきり広げた、
正座で待機する瞳に、今日もカメラの注意が続く。
同じ姿勢のまま強い緊張に晒されるため、瞳の体力と精神力はみるみる擦り切れていく。
(就寝時間まで、身体がもつかしら)
革手錠で常時拘束されることは、思った以上の苦痛であった。
ベルトをきつく締められていため、息をつく度に腹が圧迫される。
背中に回された両手首は、腰のあたりで固定されたまま少しも動かせない。
さんざんに痛めつけられ、ただでさえ限界にきている瞳の身体は、すぐに悲鳴を上げた。
「囚人番号WLA0116、顎ヲ上ゲ、口ヲ開キナサイ」
言われた通り、瞳は頭を上げて口を大きく開いた。
追尾式カメラが瞳の前に来て、口内に何か隠していないかをチェックする。
他にも身体へのチェックが、1時間に1度は必ず行われた。
(出入りの度に身体検査をされるのに……いくら何でもやりすぎよ)
カメラの前で口を広げ、舌を上下に動かしながら瞳はそう思った。
同時に脱獄を考えることが、無駄であることを悟る。
この平山私設刑務所にいる限り、瞳には一切の自由もプライバシーも無い。
全てを管理され、意のままに操られる平山のコレクションに過ぎないのだ。
「囚人番号WLA0116、耳の中ヲチェックシマス」
スゥッ、とカメラが耳に近づくと、瞳は美貌を蒼に染めた。
泥棒として鍛えられた観察眼により、瞳は監視カメラが付け替えられていることに気が付く。
身体をチェックしているこのカメラは、実験室で使われた轟音を発するカメラだった。
(少しでも逆らえば、今度は電気ショックや首絞めだけでなく、あの轟音による責め具もされるのね……)
瞳の身体が小さく震える。
それは身体に染み込まされた恐怖心を刺激し、彼女の思考をさらにネガティブな方向へと変えていく。
(泥棒コレクターの異名は伊達じゃ無かったわね。私が……キャツアイが勝てる相手じゃなかったわ。ああ……平山美術館なんて盗みに入らなければ良かった……)
再び湧き上がる敗北感、そして絶望。
女怪盗としての自信さえも砕かれた瞳の心は、すっかり弱まっていた。
そんな時、彼女の鼓膜を合成音声が叩いた。
「囚人番号WLA0116、夕食ノ時間デス」
鈍い音がして、鉄扉の足元にある食事口が開く。
紙の食器に入った食事を、外から警備用ロボットが差し入れたのだ。
(これで少しは楽ができる……)
ホッとした瞳は頭を垂れた。
食事の時間だけは、勝手に立ち上がりさえしなければ、ある程度は姿勢の自由が認められるからだ。
膝を擦りながら前に出た瞳は、食事の前で正座する。
だがそこで動きが止まった。
(えっ、どうして外してくれないの?)
手に力を入れるが、革手錠により後ろで拘束された手は全く動かない。
平山や監視用のロボットが、解錠に来る様子もない。
瞳が食事とにらめっこをしていると、監視カメラが大きめの声で警告をする。
「囚人番号WLA0116! 夕食ヲ食ベナサイ! 食事ノ拒否ハ懲罰デス!」
監視カメラのレンズが、瞳に向けてチカチカ光る。
これ以上反抗するなら懲罰を与えるというサインだ。
(そ、そんな……どうしろっていうのよ。)
瞳がそう心の中で呟いた瞬間、首輪に電気ショックが流された。
「キャァァァァァァァァァッ!!」
5秒間の電気ショックが2度、瞳の首に流される。
弾き飛ぶように倒れた瞳は、床をゴロゴロ転がって悶えた。
さらに彼女の頭の近くへ、2台の追尾式監視カメラが近寄る。
監視カメラは瞳の耳元で、スピーカーのハウリング音を発射した。
「ヒィィィィィィィィッ!!」
革手錠で拘束された身体を反り返らせて、瞳が悲鳴を上げる。
この音は瞳が最も苦手にしているものだった。
頭がガンガン痛み、苦しさに耐え切れなくなった瞳はマットの壁に頭を打ち付ける。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
轟音が終わると、瞳は俯せになって倒れた。
全身から脂汗が流れ、ベットリとレオタードを濡らしている。
涙と涎で顔が汚れているが、革手錠で拘束されているため拭う事すらできない。
「来生瞳、それでは入浴した意味が無いぞホイ。まったく仕方のないメスネコだホイ」
平山の声に、瞳がはっと頭を上げる。
声は監視カメラのマイクから発されていた。
「説明したはずだホイ、革手錠は明日の身体検査まで外さないと。食事は手を使わず、口だけで食べろホイ」
(そ、そんな……)
瞳は湯気を立てている食事に目をやった。
あれを口だけで、犬のように食えというのだ。
屈辱に瞳の身体が固まる。
「来生瞳、説明を理解したなら返事だホイ!」
叱責にビクッと体を震わせる瞳。
従わなければ、また電気ショックや轟音の懲罰を受ける事になる。
それに耐える体力と気力は、もう無かった。
「わかりました、ご主人様……」
カメラに向かって頭を下げた瞳は、大きく息をついた。
そして俯せになり、食事に口を近づける。
「あむっ」
白米を口に含んだ瞳は、良く噛んで飲み込んだ。
続いて汁物を舌ですくうようにしてすする。
「おやおや、初めてにしては犬食いが上手いではないかホイ」
監視カメラから、平山の嘲るような声が聞こえる。
実況されると屈辱感は更に強まった。
「おっと、お前には猫食いといった方が妥当だったなホイ」
ハッハッハッと嘲笑する平山の声が、監視カメラ聞こえてくる。
屈辱に耐えながら、瞳は口と舌だけで野菜スープをすすった。
涙で味が足されたスープは、少しだけ塩辛く感じた。
「ん……ずずっ……ぺちゅっ……ずずっ……」
「いいかキャッツアイ、囚人は与えられた物は、全て完食するのが義務だホイ。残したり、こぼしたりしたら懲罰の対象とする。農家の皆さんに感謝し、一粒残らず食べるんだホイ」
平山のご高説を聞きながら、瞳は茶碗についた米粒を丁寧に舐め取った。
自殺防止のため食器は全て軽い紙製のため、舐め取るためには顔で食器を押さえなければいけない。
必然、食器に顔を突っ込んで食べる姿勢になる。
一つ一つ舐め取るごとに、人としての尊厳を失っていくのを瞳は感じた。
「ん……ずっ……ずずっ……」
紙コップを咥えた瞳が、お茶をすする。
飲み終わって口を離すと、そこでようやく食事の終了が告げられた。
「来生瞳、通称キャッツアイの完食を確認だホイ。やはりメスネコはその喰い方がお似合いだぞホイ」
楽しげな笑い声が独房に響く。
ロボットが食器口から食器を下げると、再び正座での待機が命じられた。
瞳は革手錠をされた身体で、息苦しさに支配された長い夜をひたすらに耐えた。