盗みのチャンスは一度だけ BAD END 作:muzineki
身体検査が終わった瞳は、いつもの極薄レオタードに着替えさせられた。
乳首はもちろん、陰部のスジさえ浮き出る卑猥な恰好で、今日は特別製の手枷を後ろ手にして縛められている。
両足には頑丈な足枷、さらには腰縄と首輪のリードでロボットに繋がれていて、周りはメカドックに囲まれている。
いつもより輪をかけて厳重な警備で連行される瞳は、がっくりと項垂れていた。
平山に犯されて、気をやってしまったせいであった。
女の尊厳さえも失った瞳は、虚ろな表情のまま長い廊下を歩き続けた。
「行進止め、回れ右だホイ!」
指示に従い振り向いた瞳の前には、木目調の大きな扉があった。
平山が静かに開くと、豪華な調度品と、有名画家の絵が飾られた部屋が現れる。
ふかふかの絨毯の上に並べられた席には、偉そうな男達が座っていた。
「お待たせしました、これから囚人番号WLA0116の審査会を開催しますホイ」
テーブルの間に連れ込まれた瞳は、周りにいる男たちを見回す。
何人かはニュースや新聞で見た顔だ。
みな政治家や名の通った大企業の社長であった。
「囚人番号WLA0116、本名と罪名、懲役年数を言った上で挨拶しろホイ」
命じられた瞳は、レオタード姿に後ろ手錠、そして足枷という姿で一歩前に進んだ。
瞳が反抗した時の備えであろう、首輪のリードと腰縄はロボットに繋がれたままで、男たちとの間は電気柵とメカドックが遮っている。
既に抵抗を諦めている瞳は、はあっと小さくため息をつく。
そして背筋をピンと伸ばし、拘束具で戒められたまま深々と頭を下げた。
「囚人番号WLA0116、来生瞳、窃盗罪で懲役10年です、今日はよろしくお願いします」
瞳は頭を上げると同時に、男たちのねっとりとした視線を感じた。
「ほぅ、これがあのキャッツアイか」
「美人という噂だったが、想像以上だな」
男たちの声に瞳の背筋が凍り付く。
同時にこの審査会が、自分を晒し者にする場であることを悟る。
遠慮のない嘲笑とざわめきに、瞳は膝を震わせた。
「それでは来生瞳懲役囚、通称キャッツアイについての概要を説明しますホイ。みなさまスクリーンをご覧くださいホイ」
部屋が暗くなり、大型のスクリーンに映像が映し出される。
最初に出てきたのは、手錠を嵌められて身長表の前で板を持つ瞳のマグショットであった。
「来生瞳懲役囚は23歳、東京都の犬鳴町に居住。家族構成は姉の泪、妹の愛との3人。現在は姉の経営する喫茶店『キャッツアイ』の従業員として勤務していますホイ」
平山の説明と同時に、スクリーンの画面が切り替わる。
映し出されたのは、『キャッツアイ』で働く瞳の姿だ。
好色な男たちの前に、怪盗キャッツアイの正体が晒されていく事実に、瞳は枷で縛められた長い脚が震えるのを止められなかった。
「最終学歴は都内にある私立長浜高校卒、学生時代は店の手伝いを理由に部活動には入って無かったようですが、明るく活発でクラスでも人気のある生徒でしたホイ。ちなみにこれが来生瞳懲役囚の高校時代の姿ですホイ」
スクリーンにブレザー姿の瞳が映し出される。
続いて水泳大会でのスクール水着や、運動会でのブルマの写真が『資料』として晒された。
過去を覗かれる恐怖と、こんな写真をいつ手に入れたのかという不気味さに、瞳は身の毛がよだつ思いがした。
「資料の4ページ目をご覧ください。この女は高校時代からの恋人がいるのですが、なんと警察官でした。しかもキャッツアイの担当刑事ですホイ」
スクリーンに内海刑事と腕を組む瞳の写真が現れると同時に、男達がざわめく。
最も暴かれたくない事実が晒されたことに、瞳の目の前が真っ暗になる。
(あぁ……)
全身の力が抜けた瞳の膝が、ガクリと落ちる。
すると腰縄で繋がれているロボットが、瞳の尻を警棒で打った。
「あうっ!」
「囚人番号WLA0116、審査会ノ間ハ常ニ直立不動ノ姿勢ヲ維持スルヨウニ、次ニ失敗ヲシタラ電気ショックデス」
その言葉と同時に、瞳の脚がピンと伸びる。
心身に刷り込まれたロボットへの恐怖が、反射的に身体を動かしたのだ。
拘束された状態でまっすぐ立つ瞳の前で、平山は手に入れた卒業文集を紹介する。
「これによりますと、来生瞳懲役囚の将来の夢は、素敵なお嫁さんになって、好きな人と幸せな家庭を作ることだそうで。いやはや、キャッツアイにも可愛い時代があったのですなあホイ」
平山の呆れるような口調に、男たちがどっと嘲笑する。
羞恥と屈辱に、瞳は思わず声を出しそうになるが、背中で拘束された両手をギュッと握って耐える。
続いて平山は、瞳の交友関係、喫茶店の常連客から見た勤務態度などを説明した。
来生瞳として生きてきた過去、そしてプライベートが蹂躙される度に、瞳の自尊心は一枚ずつ剥かれていき、思考することさえままならなくなる。
「このような人生を送って来た来生瞳懲役囚ですが、いつしか人の道を踏み外し、キャッツアイとして窃盗を繰り返すようになりました。そのことは新聞報道等で皆様もよくご存じでしょう。そして先日、私が運営する平山美術館に盗みに入ったところを、遂に逮捕となった次第ですホイ」
スクリーンに、平山美術館で逮捕される瞳の姿が映し出される。
レーザーの網を抜ける姿、階段を駆け上がり2階の部屋に閉じ込められる姿、そしてメカドックに追い回される姿。
盗みに入ってからの一部始終が全て、素顔も含めて撮影されていた事実に瞳は愕然とする。
(最初から全てを撮影されていたなんて……つまり私は平山美術館に入った時から、平井の掌の上。逃げられるわけが無かった、運命は決まっていたのね)
敗北感に打ちのめされる瞳の前には、ゴム弾を受け、ロボット達に叩きのめされる青いレオタード姿の女が映っていた。
それはあまりに無様で、自分とは思いたくない惨めな姿だった。
完全拘束され、晒し物にされた上でそれを見せられる事実に、心がまた砕かれる。
メカドックの電気ショックを受けて失神し、手錠をかけられるところになると遂に耐え切れず、瞳は目を伏せてしまった。
対照的に平山は誇らしげに胸を張っている。
「以上が来生瞳懲役囚、通称キャッツアイの経歴と逮捕までの概要です。何かご意見や質問はございますかホイ」
すると瞳の正面に立っていた男が手を上げた。
男はいきなり上から目線で、瞳を怒鳴りつけた。
「オイ、来生瞳!」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれた瞳は、慌てて背筋を伸ばす。
男は手元にある資料をパンパンと叩きながら、威圧的な口調で言葉を続けた。
「この逮捕されてからの生活態度についての資料を見たが、お前はまだ一度も労働のノルマが未達成らしいな」
「はい、その通りです、先生」
「なぜノルマを達成できない。最初の掃除の時に出来なかった理由から説明しろ!」
一方的に怒鳴る男を前に、瞳は黙ってしまう。
その姿は教師に叱られている生徒のようだ。
囚人としての立場を叩き込まれているうちに、瞳は卑屈な態度が身に付いていた。
「オイ、誰が黙っていいと言った! 理由を言え! でないと懲罰だぞ!」
男が机の上にあるボタンに指を乗せる。
それは首輪に電気ショックの懲罰を与える為のボタンであった。
美貌を蒼に染めた瞳は、羞恥をこらえて小声で話す。
「そ、それは……レオタードの中に仕掛けられた……ローターのせいで……」
「声が小さい! ローターがどうした! ハッキリ言え、来生瞳!」
「ロ、ローターが乳首とアソコを刺激して、そのせいで力が入らなくて…………キャァァァァァァァァァッ!!」
首輪から発された電気ショックに、瞳が悲鳴を上げて悶絶する。
弁明を最後まで聞くことなく、男は懲罰用のボタンを押した。
「言い訳をするな! そのローターもお前に課せられた労働の一環だろうが!」
「は、はい! そ、その通りです、先生!」
電気ショックに悶えながら、哀願のまなざしで必死に答える瞳。
しかし男の指はボタンから離れない。
「出来なかったのは、お前にやる気が無かったからではないのか! えっ、言ってみろ!」
「は、はい、おっしゃる通りです、申し訳ありません、先生!」
額を床にこすりつけて謝罪する瞳。
そこでようやく電気ショックが止まった。
全身から汗を流して呼吸をする瞳に、男は一分以内に起立するよう命じる。
かろうじて息を整えた瞳が立ち上がると、再び尋問が開始された。
「では来生瞳! 何故お前にやる気が無いのかわかるか?」
「は、はい……」
頭をグルグルと高速回転させる瞳。
男の機嫌を損ねる回答をすれば、また電気ショックの罰を受けるからだ。
瞳は相手の心理を分析し、男が望む回答が何なのかを必死に考えた。
「それは私に罪を償う意識と、反省する態度が足りないからだと思います」
「その通りだ!」
男が腕を組んで頷くのを見て、瞳はほっと息を撫でおろす。
自分を卑小に見せる言葉を吐くことに、既に屈辱感は無くなっていた。
続いて他の男たちからも尋問が開始される。
彼らは瞳の人格を非難し、怒鳴り、そして長々と説教をした。
「来生瞳、お前はマスコミに怪盗とか言われて、自分がスターか何かと勘違いしているのだろう!」
「来生瞳! お前は奉仕に対する積極性が足りない! 容姿がいいことを鼻にかけて、内心は男を見下しているのではないか!」
「来生瞳! 懲罰を受ける時の態度が見苦しいぞ! お前は罰を受けて当然の犯罪者なのだ、その自覚を持て!」
理不尽な言葉が次々と浴びせられる。
それに瞳は逐一、卑屈な言葉を口にする必要があった。
プライドを捨てて自己批判と謝罪を繰り返し、男たちに媚を売る。
それでも少しでも意に反する回答があれば、容赦なく電気ショックの懲罰が与えられた。
地獄のような時間を、瞳はひたすら頭下げて耐えるしか無かった。
「貴重なご意見、ありがとうございましたホイ」
平山の言葉でようやく尋問が終わった。
人格を否定され、徹底的な自己批判を強いられた瞳は、精神的な疲労でぐったりとしていた。
しかし直立不動の姿勢を崩すことは許されない。
残酷な審査会は、ここからが本番であった。
「問題点も見えてきましたので、続いて来生瞳懲役囚の処遇について検討したいと思いますホイ。この囚人が罪を償い更生するにはどのような躾が必要か、皆様のご意見をお伺いしますホイ」
平山が男達をぐるりと見まわすと、端に座っていた若い男が発言した。
「来生瞳懲役囚への反省を促すため、『労働』の時間をこれまでの倍に増やしましょう」
いきなり、とんでもない意見が提案された。
続いて反対側の席に座っていた初老の男が発言する。
「男に対する服従心を躾けることも必要だ。増えた労働時間は、我々に対する夜の奉仕に充ててもらおう」」
「それは良い、セックスだけでなく、SMやソープといった様々な含めたプレイも仕込みましょう」
「我々を満足させられない場合、反省の態度無しという事で折檻が必要ですな、ハッハッハッ」
楽しそうに話す男たちの前で、瞳は眩暈を感じた。
ここで話されている事が冗談では済まない事を、平山の薄ら笑いで悟ったからだ。
「礼儀作法の改善も必要ですな。男に対して最大限の敬意を示すよう躾けましょう」
「指導を受けたら必ず口での奉仕、それと入浴時にはカメラの前でオナニーを義務付けましょう」
「これからは定期の食事会を開きましょう。もし生活態度に改善が無ければ、そこでキャッツを折檻をして楽しもうじゃありませんか」
身勝手で悪夢のような提案が次々と出される。
男たちの胸三寸で性の道具として扱われてしまう現実。
そんな立場を思い知らされ、瞳は気が狂いそうになった。
「キャッツアイにより強い反省を促すため、身体にタトゥーを刻むのはどうでしょう」
それは正面にいる若い男の言葉であった。
瞳の美貌から一瞬で血の気が引いていく。
対照的に男達は楽しそうにざわめいた。
「それはいい、入れ墨は伝統的な刑罰ですからな」
「場所は下腹部から性器にかけての場所で、そこが最も屈辱的なはずです」
「刻む言葉は、私はキャッツアイとして多くの罪を重ねた盗人です、といったあたりが妥当でしょうな」
「それならキャッツアイのマークも刻みましょう、そちらの方がより罪が明確になります」
瞳の身体に刻むタトゥーについて、男達は楽しく意見を交わす。
永遠に消えない罪の証を自分の身体に刻まれる
それは瞳にとって悪夢のような会話であった。
だが容赦なく執行される刑を前に、無力な囚人である瞳にはなす術がない。