盗みのチャンスは一度だけ BAD END 作:muzineki
「うう……」
「お目覚めかホイ?」
「……っ!?」
嘲けるような声に反応して、瞳は顔を上げた。
気が付くと、後ろ手に手錠を嵌められた状態で、パイプ椅子に座らされている。
目の前には、ニタニタと笑う小太りの男がいた。
平山美術館の館長、平山であった。
「お前がキャッツアイかホイ。女とは聞いていたが、泥棒にしておくのが勿体無い美人だホイ」
「それはどうも、でもこの状況で褒められても、嬉しくは無いわね」
そう答えた瞳が、辺りを見回す。
平山の両隣には、ボディーガードらしき2人の大男がいた。
どちらもプロレスラー並みの巨体で、瞳の動きに目を光らせている。
「で、これから私を、どうするつもり?」
「まあ善良な市民の一般常識としては、警察に突き出すべきなのだろうなホイ」
平山の回答に、瞳の美貌が引きつる。
今日の警備担当は、彼女の恋人である内海刑事だ。
彼がこの場に現れれば、瞳は全てを失う。
「しかしワシは、お前を警察に引き渡す気は無いホイ」
「えっ?」
その言葉に驚く瞳だが、すぐに険しい目つきに戻る。
目の前にいる男が、ただで自分を解放するなど有り得ない。
「目的は、何?」
後ろ手に拘束されたまま、瞳は太った館長を睨みつける。
平山はその反応にニヤリと笑うと、太い指で女怪盗の顎を持ち上げた。
「ワシは美術館に忍び込んだ賊は、自分で罰を与える事にしているホイ。お前はこれから、ワシの私設刑務所に入るんだホイ」
「し、私設刑務所!?」
瞳の額に冷たい汗が流れる。
この平山には、一つの噂があった。
美術館で捕えた泥棒を、コレクションとして飼っているという噂が。
(じょ、冗談じゃないわ、それなら刑務所の方がまだマシよ)
瞳は首を振って、顎を掴む平山の手を払った。
こんな男にコレクションとして飼われるなんて、絶対に御免だ。
「ではキャッツアイ、まずは身体検査をさせてもらうホイ」
平山は昂奮した息を吹きかけながら、瞳の肩を掴んだ。
「やめてっ、触らないで!」
立ち上がって逃げようとする瞳。
しかしボディーガードに肩を抑えられ、身動きを封じられる。
「ヒッヒッヒッ、物を隠すとすれば、やはりここだろうホイ」
平山の手が胸へと移動し、V字カットされたキャミソールへと向かう。
そして大胆に露出された谷間へと差し込まれた。
「イッ、イヤァァァァァァッッ!!」
悲鳴を上げる瞳だが、平山はかまわず奥へと手を潜り込ませる。
そして柔らかな乳房の感触を楽しみつつ、レオタードの内側を探った。
「おっ、発見だホイ」
レオタードの中から、平山の手が抜かれる。
その手には、胸元に隠されていたキャッツカードがあった。
「これはキャッツアイの象徴とも言える道具、重要な証拠だぞホイ」
平山は机の上にカードを置くと、再びレオタードの中へと手を侵入させた。
「やめてっ、変態っ!!」
必死に声を荒げて抵抗する瞳。
だが後ろ手に拘束され、二人の男に掴まれては、逃げることなどできない。
無駄な抵抗は、男たちの加虐心を刺激するだけであった。
「また発見だホイ」
今度は胸の谷間から、ペンライトが取り出される。
「ここはどうかなホイ?」
腰まわりを丹念に探られる。
ウエストに巻いた黄色い布から、小型の催涙スプレーが奪われた。
「ここには何があるかなホイ?」
今度は太腿からつま先までを、徹底的に撫で回された。
そしてヒールの底に隠していた、小型の工具が奪われた。
「ヒヒヒヒ、まだまだタップリと調べさせてもらうぞホイ」
その言葉の通り、平山による身体検査は、時間をかけてじっくりと行われた。
いやらしい手が瞳の全身を這いずり回り、特に胸や太腿、尻などは念入りに探られる。
柔肉を揉まれる度に、瞳はビクンと身体を反り返らせ、男たちの目を楽しませた。
そんな恥辱の身体検査は、平山が満足するまで続けられた。
「キャッツアイ、お前が持って来た物は、これで全部かホイ」
そう言うと平山は、道具を入れたプラスチックケースを見せた。
瞳はこくりと頷くと、首を垂れたまま黙ってしまう。
話す気力も無いようだった。
「もう参ったのかホイ、もっと生意気なメスネコと思っていたが、意外とカワイイものだホイ」
平山はフンと鼻を鳴らすと、机から何かを取り出した。
それは銀色の鋲が打たれた、黒いバックル型の首輪であった。
「さあ子猫ちゃん、次はこの首輪を嵌めてもらうホイ」
「い、嫌ッ!」
屈辱のアクセサリーの装着を、瞳は全力で拒絶した。
だがすぐにボディーガードに両肩を掴まれ、動きを封じられる。
「これは囚人の証だホイ。いずれお前に似合うのをプレゼントしてやるから、それまでこれで我慢するんだホイ」
「やめてっ! やめてっ!」
イヤイヤと首を振る瞳に、かまわず平山は首輪を巻き付けた。
その姿にボディーガード達も興奮し、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
ガチャリ
瞳の首に黒い輪が嵌められ、ワンタッチ式のバックルが閉められた。
平山は首輪のすきまに指を差し込むと、長さが丁度いいことを確認する。
そして後ろに一歩下がった。
「似合っているぞホイ、キャッツアイ」
囚人の証を嵌められた女怪盗を、平山が嘲笑する。
キャミソールで胸元が大きく開いたレオタード姿に、黒い首輪はよく映えた。
男達のギラギラとした視線が、鎖骨が映えるデコルテラインに集まるのを瞳は感じた。
「これからお前は囚人として生きてもらう、首輪はその証だホイ。罪を償い真人間に生まれ変わるまで、外すことは絶対に許さん、わかったなホイ」
鼻をヒクヒクさせながら、平山は言った。
瞳はフンと鼻を鳴らし、小太りの男へ軽蔑の視線を向ける。
「ん? なんだホイ、その態度は」
不機嫌になった平山は、机から黒皮の一本鞭を取り出した。
「言っておくが、ワシは犯罪者に人権があるとは思っておらん。態度を改めんと、痛い目に合うぞホイ」
鞭が空気を切り裂き、床をピシャリと叩く。
だが瞳は怯むことなく、平山を見据えている。
「良い覚悟だホイ」
ニヤリと笑いつつ、平山が鞭を振り上げる。
だが振り下ろそうとした瞬間、レオタード姿の女怪盗がフッと目の前から消えた。
「たぁっ!」
掛け声と同時に、瞳はボディーガードの手をするりと抜けた。
そして平山のたるんだ腹に掌打を叩きこむ。
「ぐげっ!」
間抜けな声を出しながら、平山の丸い体が床をゴロゴロと転がる。
「このアマッ!」
ボディーガードの一人が、背後から瞳に殴りかかる。
瞳は振り向くことなく拳を避けると、その腕を掴んだ。
そして勢いを利用して、男を一本背負いで投げ飛ばした。
「ぐわっ!」
堅い床に叩きつけられた大男は、ぐったりと伸びてしまった。
続いて瞳はクルリと身体を回し、もう一人の男へ鋭い回し蹴りを放つ。
「がはっ!」
長い脚が男の側頭部に命中し、鈍い音を立てる。
巨体がドスンと音を立て、床へと崩れた。
「油断したわね」
瞳は足元にある手錠を蹴飛ばした。
身体検査が始まる前、瞳は後ろ手に拘束された手の中に、ヘアピンを隠していた。
そして男たちの警戒が緩むのを見計らい、手錠を外したのだ。
「さあ、早く逃げないとね」
瞳は館長室から飛び出した。
本当は首輪も外したかったのだが、こちらは鍵穴が無くヘアピンでは外せなかった。
時が経てばいつメカドックや警備ロボットが現れるかわからない。
首輪を外すことを諦めた瞳は、出口へ向けて走り出した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
薄暗い通路を走る瞳。
捕まっていた場所は2階だったらしく、やがて長い下り階段が見えた。
ロボット達に痛めつけられた身体を奮い立たせ、一気に階段を駆け下りる。
「姉さんと愛、心配しているだろうなあ」
瞳の頭に姉妹の笑顔が浮かぶ。
だが次の瞬間、首輪から放たれた電撃が全身を貫いた。
「ギャァァァァァァァ!!」
激痛と同時に、瞳の視界がグルリと回転する。
レオタード姿の女怪盗は、そのまま階段を転がるようにして落ちた。
「首輪をしておいて、助かったホイ」
瞳を追って来た平山が、階段の上に現れる。
逃げようとする瞳だが、既に周りはロボットに囲まれていた。
「手錠を外して逃げ出すまでは、見事だったホイ。だが最後の詰めが甘かったなホイ」
ポケットからリモコンを取り出した平山は、瞳へ向けてボタンを押した。
「ギャァァァァァァァァァァ!!」
悲鳴を上げ、全身をのけ反らせて悶える瞳。
5秒ほど悶絶した後、ようやく電気ショックが止まる。
糸が切れた人形のように、瞳は膝から崩れ落ちた。
「がはっ! はあっ、はぁっ、はぁっ……」
「スタンベルトという物を知っているかホイ。生意気な囚人に遠隔操作で電気ショックを与える、素晴らしい発明だホイ」
平山は説明しながら、ゆっくりと階段を降りる。
そして右手に持ったリモコンのボタンを無造作に押した。
「キャァァァァァァァッ!!」
瞳の絶叫が美術館に響く。
「そしてこれはワシが開発した、首輪タイプだホイ。遠隔操作だけでなく、脱走や命令違反をカメラが察知して、自動的に罰を与えることもできる。どうだ、凄いだろうホイ」
自慢げに説明しながら、平山は階段を下まで降りる。
足元では、瞳が肩で息をしていた。
電気ショックの余韻で、立ち上がる事さえできない。
「さあキャッツアイ、取り調べを再開するホイ。まずは脱走の罪を謝罪し、二度と逃げないと誓うんだホイ」
命令する平山に、瞳は返事が出来ない。
両手を床に付け、苦しそうに身体を震わせている。
その様子を見た平山は、再びリモコンのボタンを押した。
「ギャァァァァァァァ!!」
瞳の身体が床に転がり、海老のように反り返る。
「やめてぇぇぇぇぇッ!! もうやめてぇぇぇぇぇッ!! お願いぃぃぃぃぃッ!!」
絶叫し許しを乞う瞳。
だが平山はかまわず、リモコンのボタンを押し続ける。
「わ、わかったわ!! ごめんなさいっ! もう二度と脱走しないと誓うっ! だからっ! 許してぇぇぇぇぇッ!」
涙を浮かべて悶えながら、瞳は必死に謝罪の言葉を口にする。
美しい女怪盗の無様な姿に満足した平山は、ようやくリモコンのボタンを押すのを止めた。
「かはっ! はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
瞳は床の上に転がったまま、喘ぎとも取れるような声を漏らしていた。
半開きになった口からは、だらしなく涎が垂れている。
全身が弛緩してうまく動かせず、呼吸することさえ辛い。
「ではキャッツアイ、今度は服従の態度を行動で示すんだホイ」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
苦しそうな呼吸を続ける瞳。
その様子に平山はチッっと舌打ちすると、リモコンを瞳に向けた。
「やっ、やめてっ!」
ビクッと反応した瞳は、俯せになり両手を背中に回した。
すぐにロボット達に両手を掴まれ、細い手首に幅広の頑丈な手錠が嵌められる。
ガチャリ
「それは電子ロック式の特殊手錠だホイ、もう自力では外せんぞホイ」
ロボットに手錠を掴まれた瞳は、無理矢理立たされた。
しかし電気ショックの余韻で膝が震え、うまく歩くことができない。
「さあ行くぞホイ、館長室へ戻ったら、まずは脱走の罰を受けてもらうホイ」
バシッ!
乾いた音と同時に、平山の平手が瞳の尻を打つ。
屈辱に美貌を歪ませる瞳だが、リモコンを見ると逆らう気力が萎えてしまう。
逆らえなくなった瞳は、諦めきった表情でトボトボと来た道を戻らされた。