※この作品はR-18です。

盗みのチャンスは一度だけ BAD END   作:muzineki

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4:取り調べ

次の日、牢屋の中で一晩を過ごした瞳は、マットの上で膝を抱えていた。

昨晩は泥のように疲れていたが、わずかにまどろんだだけで、ほとんど眠れなかった。

脱獄不可能な檻の中、瞳はぼうっとコンクリートの壁を見て、時が過ぎるのを待った。

 

コツ、コツ、コツ

 

足音に気が付いた瞳は、すぐに頭を上げた。

そして鉄格子の前に現れた男を見据える。

 

「待たせたなホイ、キャッツアイ」

 

現れたのは、ブランドのスーツで身なりを整えた平山だった。

キャッツアイの件で、マスコミの相手でもしていたのだろう。

 

「当美術館の留置場の居心地は、どうだったかねホイ」

 

「決まっているでしょう、最低よ」

 

瞳はプイと顔を背けた。

 

「ほう、少しは元気になったようだなホイ」

 

ニタニタと不快な笑みを浮かべる平山。

サディストの彼にとって、獲物はある程度は反発してくれた方が好ましいのだ。

 

「では取り調べを行う、出るんだホイ、キャッツアイ」

 

電子ロックを解除した横開きの鉄格子が、ガラガラと音を立てて開く。

すぐに2台の警備用ロボットが入って来て、瞳を前後から囲んだ。

 

「囚人番号WLA0116、通称キャッツアイ、腰縄ヲ装着シマス」

 

警備用ロボットの手には、青いロープがあった。

2体のロボットは、瞳の腰に巻いたロープを、器用に手錠に結ぶ

これで瞳は両手を腰の前から動かせなくなった。

 

「囚人ノ胴体拘束ヲ確認。WLA0116、出房デス」

 

前後をロボットに挟まれながら、牢屋から出る瞳。

両手は手錠で拘束されているが、両足は自由だ。

しかし背後のロボットと腰縄で繋がれているため、逃げることは出来ない。

 

「まるで犬の散歩だなホイ」

 

腰縄姿で連行される女怪盗を、平山が嘲笑する。

 

「いや失礼、お前の場合は猫の散歩だったなホイ」

 

はっはっはっと、自分の下手な冗談に笑う平山。

瞳は言い返す事もできず、取調室まで歩かされた。

 

 

 

取調室は、殺風景な部屋であった。

地下にあるため窓は無く、スチール机とパイプ椅子だけが置かれている。

 

「囚人番号WLA0116、奥ノ席ニ座リナサイ」

 

ロボットに命令された瞳が、パイプ椅子に腰かける。

手錠は外されたが、腰縄はロボットに握られたままだ。

唯一の出入り口には鍵がかけられ、前は警備用ロボットが見張っている。

スキを見て逃げ出すことは、不可能であった。

 

「さてキャッツアイ、取り調べを始めるホイ。まずは名前と住所、そして生年月日を言うんだホイ」

 

スチール机の向かい側に座った平山は、加齢臭たっぷりの息を吹きかけながら質問した。

それに対し、瞳は顔を横へ向ける事で応じる。

 

「黙秘しても意味は無いぞ。お前のような美人は目立つから、調べればすぐわかるホイ」

 

「あっそう、だったらご自由にどうぞ」

 

ぶっきらぼうに瞳は言った。

囚われの身となっても、強気な性格は失われていない。

そんな女怪盗の態度に、平山は薄汚く口元を歪めた。

 

「ワシは警察に友人がたくさんいる。キャッツアイの捜査資料を手に入れる事もできるホイ。身体検査で手に入れたお前の情報と、警察の資料を照らし合わせたら、どんな結果が出るか、興味深いとは思わんかホイ?」

 

「ふ、ふん……それは面白そうね」

 

鼻を鳴らす瞳だが、内心は動揺していた。

過去のミスで、瞳は警察に指紋を取られている。

さらに警察の中には、瞳がキャッツアイではないかと疑っている女刑事もいる。

平山の言うことが本当なら、正体は隠しきれないと思った。

 

「では次の質問だホイ。ときにキャッツアイ、恋人はいるかホイ」

 

「へっ?」

 

唐突な質問に、瞳は間抜けな声を出してしまう。

 

「な、何でそんな事を聞くの」

 

「キャッツアイは3人組の泥棒と聞く、交流関係を調べるのは当然だろう。で、恋人はいるのかホイ」

 

質問から少し間を置き、瞳は小声で答えた。

 

「……いないわ」

 

「それは、今は、という事かホイ」

 

「そうよ」

 

目を逸らし気味にして答える瞳。

すると平山は、信じられないことを聞いてきた

 

「ならばキャッツアイ、セックスはご無沙汰という事かホイ」

 

「!!」

 

いきなりの質問に、瞳は息を呑み込んだ。

手は自然と握りこぶしになっている。

 

「お前は今まで、どんな男と、どの程度の頻度でセックスしてきたのだね? 答えるんだホイ、キャッツアイ!」

 

机をバシッと叩き、平山が強い口調で問いただす。

平山の言葉に我慢できず、瞳は遂に激昂した。

 

「どうして、そんなことを答える必要があるの!」

 

立ち上がる瞳の姿に、平山が口元を歪ませる。

同時にロボットの目が光り、感情の無い合成音声を発した。

 

「囚人番号WLA0116ノ威嚇行動ヲ確認、直チニ制圧シマス」

 

「ギャァァァァァァ!!」

 

ロボットの声と同時に、絶叫した瞳がパイプ椅子から崩れ落ちる。

首輪からの電気ショックに、ビクビクと床の上で痙攣する。

そんな瞳にロボット達の持つ警棒が、勢いよく振り下ろされた。

 

「あうっ!! ぎゃっ!! やめてっ!! やめてぇっ!!」

 

硬質ゴム製の警棒が、瞳の身体を何度も打ちすえる。

10も打たれた所で、ようやく電気ショックは止まった。

 

「囚人番号WLA0116、椅子ニ座リナサイ。1分以内ニ従ワナイ場合、電気ショックヲ再開シマス」

 

「はぁ……はぁ……は、はい……」

 

ヨロヨロと立ち上がった瞳は、椅子に戻った。

全身を汗でびっしょりと濡らし、肩で息をしている。

 

「キャッツアイ、今のような行動はいかんぞホイ」

 

諭すような口調で、平山は言った

電気ショックの余韻のせいか、瞳は項垂れたまま頭を上げることすらできない。

 

「お前には黙秘権がある、だが今のように威嚇的な行動はいかんぞホイ。わかったかホイ」

 

「はい……すみません」

 

反射的に、謝罪の言葉を口にする瞳。

下手なことを言って、また懲罰を受けるのが怖かったからだ。

計算どおり女怪盗から気力が削ぎ落されているのを見て、平山はニンマリと笑う。

 

「それではキャッツアイ、お前がどんな男とセックスしてきたのか、答えるんだホイ!」

 

怒鳴りつけるように、平山は言った。

瞳はビクリと反応し、怯えの表情になる。

言葉はときに百万の鞭よりも威力を発揮する。

謝罪の言葉を口に出した瞬間から、瞳は平山に対して精神的に下に立たされていた。

 

「では言い方を変えるホイ。キャッツアイ、最後に男としたのはいつなのだホイ」

 

はっと顔を上げた瞳が真っ赤になる。

その様子から察した平山は、ニヤリと笑った。

観念した瞳は沈黙の後、小声で答えた。

 

「一度も、ないわ」

 

「なんと、それは本当かホイ!」

 

平山は、わざとらしく大声で驚いた。

恥辱に顔を染めつつ、瞳は首を縦に振る。

 

「いやはや、その美貌と身体で生娘とは意外だホイ、これは貴重な証言だぞホイ」

 

側面に座る書記役の男に、平山は目配せする。

彼はすぐにノートパソコンを叩き、瞳の言葉を記録した。

自分が処女という事実を記録されることに、瞳は強い羞恥を感じた。

だが地獄はここからが本番だった。

 

「次の質問だホイ、キャッツアイ、オナニーはしているのかホイ」

 

「!!」

 

その質問に、瞳は思わず固まってしまった

 

「そんな淫乱そうな身体をして生娘では、性欲処理が大変だろう。オナニーはどの程度でしているか、答えろホイ!」

 

平山の言葉に身体を震わせる瞳。

頭の中が羞恥と怒りに満ち、感情は今にも爆発しそうになる。

 

「いつまでも口を閉ざすのなら、拷問もあるぞホイ。素直に話すのが身のためだホイ」

 

(ご、拷問……?)

 

その言葉に、今度は瞳の表情が蒼ざめる。

この男ならやりかねないと思った。

僅かな沈黙の後、瞳は遂に口を開く。

 

「週に……1回か……2回よ……」

 

消え入りそうな声で、瞳は答える。

羞恥に美貌を赤らめる女怪盗に対し、平山はさらに畳みかける。

 

「オナニーをする時間帯は、いつ頃なんだホイ?」

 

「夜よ……だいたい……寝る少し前……」

 

「場所は、どこでしているのだホイ?」

 

「自分のベッドの……上……」

 

瞳が答える度に、ノートパソコンを叩く書記の男がニヤニヤ笑う。

己の自慰行為が記録されている事実に、瞳は眩暈を感じた。

平山の質問は、初めてのオナニーはいつとか、オカズは何だったのかとか、更に答えづらいものになった。

時が経つたびに、瞳の声はどんどん小さくなった。

 

「次はオナニーのやり方を、具体的に言うんだホイ」

 

「!!」

 

瞳の声が詰まる。

すんなり答えられるような質問では無かった。

 

「さあ言うんだホイ。オナニーする時、どこを刺激するんだホイ。乳首かね、それともクリトリスかね、解りやすいよう、机の上で実演しても良いぞホイ」

 

平山の言葉と同時に、思わず瞳は腰を浮かせた。

自分の失敗に気が付いた時には、もう手遅れだった。

 

「囚人番号WLA0116ノ威嚇行動ヲ確認。直チニ制圧シマス。」

 

「キャァァァァァァァ!! ヒィィィィィィィィッ!!」

 

首輪から放たれた電撃が、瞳の身体を貫く。

悲鳴と同時に大きな音を立てて、瞳が床に倒れた。

 

「すみません!! もうしません!! 許してぇぇぇぇぇっ!!」

 

身体をビクビク痙攣させつつ、謝罪の言葉を口にする瞳。

だが電気ショックは止まらない。

ロボットの目が光る度に、瞳は大きく背中を反らして悲鳴を上げた。

それを見た平山と書記の男は、ゲラゲラと笑い続けた。

 

 

 

その後も瞳への取り調べは続いた。

ボロ雑巾のようになった瞳は、自らの自慰行為について詳細に説明させられた。

それらの証言は供述調書として形にされ、瞳の前へと差し出された。

 

「キャッツアイ、内容に間違いないよう、確認してくれホイ」

 

「はい……」

 

力なく返事をしつつ、瞳は供述調書に目を通す。

そこにはオナニーのやり方はもちろん、自分の性感帯、乳首とクリトリスの感度、絶頂感の有無に至るまで細かに書かれていた。

平山はそれを読み上げて、瞳の恥辱をさらに煽る。

恥辱の自白を念入りに確認させられた瞳は、自尊心がガラガラと崩れていくのを感じた。

 

「さあキャッツアイ、お前のオナニーライフがここに書かれたとおりなら、指印を頼むホイ」

 

調書を前に、瞳は金縛りにあったかのように動きを止める。

書かれた内容は、おおむね事実であった。

だがこんな証言を認めることは、あまりに耐えがたかった。

 

「どうした、認めたくないのかホイ? ならもう少し、取り調べに付き合ってもらうぞホイ」

 

言いながら平山が見せたリモコンに、瞳の背筋がビクッと震える。

首輪から放たれる電気ショックには、もう耐えることは不可能であった。

さらに背後に控えるロボット達が、ゴム弾の銃口を突き付けたり、警棒で背中を突いたりして威嚇をする。

圧力に負けた瞳は、手をためらいがちに動かすと、調書に指印をしてしまった。

 

「よし、認めたなホイ」

 

平山は勝ち誇った笑みを浮かべつつ、調書をヒラヒラと動かした。

卑劣な取り調べに屈した瞳は、敗北感に打ちのめされる。

世間を騒がした怪盗キャッツアイも、平山の奸智とロボットの暴力の前では、一人の無力な女であった。

 

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